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2009年10月29日 (木)

いくつかの経済指標と冬季ボーナスを考える

今夜の本題に入る前に、昨夜のエントリーなんですが、「リスク」を前面に打ち出しましたが、やっぱり、「リスク」よりも「裁量」とか「責任」の用語の方がよかったのかもしれないと考えを改め始めています。「リスク」そのままでもいい部分が何か所もありますが、私のココロは「裁量」だと受け止めて下さるよう訂正したいと思います。

さて、本題に入って、本日、経済産業省から9月の鉱工業生産指数が発表されました。市場の事前コンセンサスは季節調整済みの前月比で+1.0%の上昇だったんですが、実際には+1.4%となりました。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する記事を引用すると以下の通りです。

7-9月期の鉱工業生産指数は2四半期連続で高い伸び率となった。ただ単月ベースでみると9月の上昇率は1.4%にとどまり、持ち直しの勢いは鈍化してきた。先行きも国内外の景気刺激効果が徐々に薄れるとみられ、生産回復の持続力が問われそうだ。
9月の生産指数は85.1。昨年2月のピーク時と比べると8割にも満たず、水準は依然として低い。エコカー減税などの政策効果で自動車や電子部品が伸びているが、足元並みの月1-2%程度の伸び率が続いても、ピーク時に戻るまで1-2年かかる計算だ。
新政権は公共投資の見直しなどを急ピッチで進めており、景気対策効果がどこまで続くか不透明。雇用不安などで国内の個人消費も弱含んでおり、民間需要の自律回復には時間がかかりそうだ。政府は「内需主導の経済成長」を掲げるが、当面は中国など新興国向けの輸出が頼みの綱となりそうだ。

いつものグラフは以下の通りです。いずれも季節調整済みの系列ですが、上のパネルは赤い折れ線が鉱工業生産指数で、影を付けた部分は景気後退期です。暫定的に今年3月を景気の谷としています。下のパネルは出荷と在庫の四半期データの前年同期比をプロットした在庫循環図です。緑色の上向き矢印の1999年1-3月期からプロットし始めて、下向き矢印の今年7-9月期のところまで達しました。45度線を超えるのももうすぐです。

鉱工業生産指数の推移

鉱工業生産指数は4-5月の5%台後半の伸びから、6-7月の2%台前半の伸びへ、そして、8-9月の1%台の伸びへと、エコカーやグリーン家電などに対する政策効果の剥落もあり、着実に鈍化して来ていることは確かですが、年末にかけてもっと鈍化すると私は予想していただけに、かなり底堅いと評価しています。特に先行きについては、製造工業生産予測調査では10月が前月比+3.1%増、11月も+1.9%と9か月連続の増産を見込んでいて、特に、10月については先月の時点で+2.2%でしたので上方修正されています。今後は輸出の動向、特に新興国向けの輸出とその背景となる為替に注目したいと私は考えています。
また、四半期の計数が出ましたので計算してみると、7-9月期の生産の伸びは季節調整済みの系列で前期比+7.2%となりました。GDPのシェアは2割そこそこですが、それでも鉱工業生産だけでGDP成長率を+1.5%ほど押し上げる効果を持ちます。先週10月22日に貿易統計が発表された日のエントリーにおいて、外需だけで7-9月期GDP成長率に対して+0.2-0.3%くらいの寄与があると書きましたが、設備投資などの減少を考慮しても、4-6月期に続いて7-9月期もかなりの大きさのプラス成長が見込めると私は予想しています。内閣府のサイトによれば、7-9月期のGDP統計1次QEは11月16日の公表予定ですから、近づいた時点でシンクタンクなどの予想を取り上げたいと考えています。

企業物価上昇率の推移

続いて、日銀から9月の企業向けサービス価格指数が発表されました。すでに10月14日に発表されている国内・輸出・輸入の企業物価指数とともにグラフを書いたのが以下の通りです。その昔に卸売物価と呼ばれていた企業物価もほぼデフレの最悪期は脱しつつあるように見受けられます。

業種2008年冬2009年冬
製造業919,461円
(+0.30%)
737,063円
(▲18.53%)
非製造業822,473円
(▲2.40%)
793,982円
(▲2.80%)
総平均904,885円
(▲0.03%)
747,282円
(▲15.91%)

さらに、昨日、日本経団連から東証一部上場と従業員500人以上を原則とする主要21業種・大手253社を対象とした年末賞与・一時金の妥結状況の第1次集計が発表されています。回答99社の加重平均で上の表の通りです。日経新聞朝日新聞などのメディア各社の記事によれば過去最大の減少だそうです。もちろん、先行きの消費に大いなる影響を及ぼすことは確実です。

最後に、経済の話題とは何の関係もなく、本日午後4時から、プロ野球のドラフト会議が開催されました。さすがにあれだけの球団が競合したんですから、我が阪神は菊池雄星投手を逃してしまいました。城島捕手の獲得とともに、日を改めて週末にでも取り上げたいと思います。

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