10月の貿易統計から何を読み取るか?
本日、財務省から10月の貿易統計が発表されました。輸出が5.3兆円、輸入が4.5兆円、差引き貿易収支が8071億円の黒字と、市場の事前コンセンサスに比べて、輸出が上振れ、輸入が下振れ、貿易収支は大幅に上振れとなりました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
財務省が25日発表した10月の貿易統計速報では、輸出額が前年同月比23.2%減となった。減少率は9月より7.4ポイント縮小したが、輸出額の水準自体は前年同月の8割にとどまる。2008年9月の「リーマン・ショック」から1年以上たっても、日本の輸出は本格的に回復していないといえる。
昨年秋からの金融危機で、米国の過剰消費に頼った世界経済の成長メカニズムは壊れた。米国の経済が悪化するとともに、米国向けの家電や玩具などを生産していたアジアの製造拠点の稼働率も低下した。
その結果、日本の輸出は米国向けもアジア向けも大幅に減少した。外需の落ち込みが響き、日本の実質経済成長率は08年10-12月期、09年1-3月期とも2ケタのマイナス成長となった。
次に、いつものグラフは以下の通りです。上の2つのパネルは輸出入とその差額たる貿易収支です。左軸の単位は兆円です。一番上のパネルは季節調整していない原系列、真ん中のパネルは季節調整済みの系列、一番下のパネルは季節調整していない原系列の輸出金額の前年同月比を価格と数量の指数で要因分解したものです。左軸の単位は前年同月比パーセントです。
日経新聞の記事なんかは、メディア独特のかなり悲観的な論調を展開してるんですが、おそらく、市場では輸出が盛り返したと評価されているような気がします。季節調整済みの系列で見て、輸出は9月の前月比+0.6%増から10月は+2.5%増まで、夏場の横ばい傾向から10月になって回復を再加速させました。やや不思議な気はします。単月の数字ですから、これから少し振れる可能性はあります。でも、この傾向は上のグラフでも真ん中のパネルや下のパネルで明瞭に読み取れると思います。日経新聞は輸出が前年同月比でまだ8割にしか回復していないと嘆いていますが、むしろ、輸入が前年同月比で▲35.6%減と、2/3 にも達していないことの方が重要だと私は受け止めています。内外の景気回復の差が出ています。外需に比べて内需の回復が遅れていることは上のグラフからも明らかです。もっとも、輸入金額の落ち込みは為替の円高傾向にサポートされており、この先、輸出に何らかのマイナスの影響を及ぼすと私は考えています。これは従来の主張から変わりありません。
現在の金融政策を前提とすれば、為替の円高傾向は定着しつつあるように私は感じています。政府の内需拡大策と円高の両者から、外需依存を脱して内需拡大に成功するか、2番底や景気腰折れにつながるか、どちらかの可能性があり得ます。現在の政府と日銀の経済政策はややギャンブルを張っているように見受けられなくもありません。
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