12月調査の日銀短観をどう見るか?
本日、12月調査の日銀短観が発表されました。ヘッドラインとなっている大企業製造業の業況判断DIは▲24と9月調査の▲33から9ポイント改善しました。しかし、水準はまだまだ低い上に、改善幅は前回調査の15ポイントより低くなり、かつ、改善はこの先鈍化すると予想されています。また、業種や規模のどのカテゴリーを見るかで少し印象に違いは生じるものの、全般的に設備投資計画はかなり落ち込んでいます。私がグラフでお示ししている大企業全産業の前年度比では9月調査の▲10.8%から▲13.8%となり、一段と設備投資は冷え込んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
日銀が14日発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でマイナス24となり、9月の前回調査(マイナス33)から9ポイント改善した。改善は3期連続だが、前回の改善幅(15ポイント)より縮小した。好調な新興国経済にけん引され、輸出や生産の回復が続いているものの、円高やデフレが企業収益の圧迫要因となりつつある。2009年度の設備投資計画は大企業製造業は前年度比28.2%減で、過去最大の減少幅となった。
業況判断DIは、景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。3カ月先の見通しは大企業製造業でマイナス18と6ポイントの改善を見込むが、企業の景況感は依然大幅な水面下での推移が続く見通しだ。
12月のDIを業種別でみると、製造業では28ポイントの大幅改善となった自動車をはじめ、鉄鋼、電気機械などで大きく回復した。輸出関連産業を中心に景況感の回復が進んでいる。エコポイントやエコカー減税などの景気対策の効果も続いた。
次に、いつもの産業別規模別の業況判断DIのグラフは以下の通りです。上のパネルが製造業、下のパネルが非製造業で、上下のパネルに共通して、赤の折れ線が大企業、青が中堅企業、緑が中小企業です。影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の景気の谷は今年1-3月期と仮置きしています。
グラフの最終四半期は、12月調査時点での3か月先の先行き見通しなんですが、大企業を別にして中堅企業と中小企業は3か月先は業況感が悪化すると判断しています。今回の短観の大きな特徴だと私は受け止めています。まだまだ、先行きの不透明感が大きいと考えるべきです。場合によっては来年前半の2番底が念頭にある可能性も排除できません。
次に、設備と雇用の生産要素需要に関するグラフです。一番上のパネルは設備判断DI、真ん中のパネルは雇用人員判断DI、いずれもプラスは過剰感を示しています。一番下のパネルは大企業全産業の設備投資計画の前年度比です。どんどんマイナス幅が広がっています。
少し前まで、設備に比べて雇用の過剰感の解消が速いと私は感じていたんですが、基本的には変わりないものの、雇用の過剰感解消のペースがやや鈍化しつつあるようにも見えます。設備投資は今年度内は大きく減少することで間違いありません。来年半ばくらいからGDPベースの設備投資がプラスに転じるとしても、今しばらくは力強さに欠ける動きを示すと考えられます。また、為替の動向も気にかかるところですが、大企業製造業の想定為替レートは今年度下期でまだ91.16円/ドルと、9月調査の94.08円よりやや円高修正されたものの、現時点の90円を割るようなレートに比べると少し円安水準を想定していて、為替の動き次第ではさらに景況感が悪化し、設備投資や雇用に影響することも考えられます。
最後に、下のグラフは日銀長崎支店支店で取りまとめている長崎短観です。資源高に伴う造船需要から、全国よりも景況感はよかったんですが、そろそろ、この局面も終わりに近づいている気がします。なお、長崎においてはITバブル崩壊後の2001年景気後退が極めて軽微だったという景気循環上の特徴が見られたんですが、下のグラフの通り、今回の景気回復局面もかなり全国とは様相の異なる動向を示しているという気がします。
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