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2009年12月 4日 (金)

新しいペーパー「相対的貧困率に関する考察: 第14循環における動向」を書き上げる

厚生労働省が唐突に相対的貧困率を計算して発表したのが10月20日だったと記憶しています。その夜のエントリーで数式のいっぱい並んだ貧困指標に関するエッセイを大学の紀要に書くつもりと予告しましたが、かなり方向がズレてしまい、結局、相対的貧困率そのものに関するエッセイを書き上げてしまいました。3月号の大学の紀要に掲載される予定です。
このエッセイでは第14循環の景気拡大局面において、その前半で経済理論通りに相対的貧困率が下がって格差縮小が見られたのに対して、後半では格差が広がって相対的貧困率が上昇したパズルを取り上げています。このパズルに対して、企業と労働者の雇用行動に起因する可能性があることを指摘しています。厚生労働省の毎月勤労統計によれば、この景気拡大前半期には、というより、1998年からフルタイムの削減とパートタイムの増加が同時に進行していて、この動きは2004年まで続いています。要するに、雇用者がフルタイムからパートタイムにシフトして、所得中位線より左側の相対的貧困層に裨益する景気拡大だったと結論しています。2004年までの景気拡大前半の所得分布線の変化は下のグラフの通りです。

景気拡大前半の所得分配ラインの変化

相対的貧困率に関係しない中位線から右側については無視しているんですが、左側の相対的貧困層については、パートタイムの労働機会が増加したことにより、左側の所得分布線がやや持ち上がるため、確実に相対的貧困率の減少に寄与したと私は考えています。それを概念的に表現したのが上のグラフです。それに対して、2005年からはパートタイムだけでなく、フルタイム労働者も増加し始めます。結局、所得分布線は元に戻ったような傾きで上方シフトします。そうすると、我が国では大竹教授の『日本の不平等』で指摘されているように、高齢化の進展により所得格差も拡大しますから、元の木阿弥以上に相対的貧困率が上昇する結果となります。それを概念的に表したのが下のグラフです。

景気拡大後半の所得分配ラインの変化

所得分布や分配についてはかなりマイクロな要因が大きく、私のペーパーのようにマクロの観点から捉えるのは少し無理があることは承知の上で、やや牽強付会ながら、興味あるトピックだったので紀要の研究ノートに掲載するべくエッセイを書いてみました。もともと書くつもりだった貧困指標については別途考えます。

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