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2009年12月 9日 (水)

GDP成長率の下方修正は「統計の信頼性」に起因するわけではない!

本日、内閣府から7-9月期のGDP統計、エコノミストの業界でいうところの2次QEが発表されました。ヘッドラインの実質成長率は前期比で+0.3%、前期比年率で+1.3%となりました。いずれも季節調整済の系列です。先月発表された1次QEが前期比+1.2%、年率換算で+4.8%でしたから、すでに一昨日のうちに予測しておいた通り、大幅な下方修正でした。設備投資、在庫投資、公的需要は大きく下方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

内閣府が9日発表した7-9月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.3%増(速報値1.2%増)、年率換算で1.3%増(同4.8%増)となり、11月公表の速報値に比べ、年率で3.5ポイントの下方修正となった。速報段階で前期比1.6%増だった設備投資が改定値で2.8%減と大きく下方修正したことが響いた。
改定値は速報値の公表後にまとまる法人企業統計などのデータを基にGDPを推計し直したもの。成長率の見直し幅は現在の速報値の仕組みを導入した02年4-6月期以降で最大となった。日経グループのQUICKがまとめた民間調査機関の事前予測の中心値(年率換算で2.7%増)を大きく下回った。
会見で津村啓介政務官は「景気回復が各方面に波及しつつあるとみていたが、今回の数字を踏まえるとより慎重にみる必要がある」と述べ、設備投資がマイナスに転じたことに警戒感を示した。GDPが改定値で大きく変わることについて「統計の信頼性にかかわる」と述べ、原因を細かく分析したいとの考えも示した。

それから、いつもの表は以下の通りです。正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、完全性は保証しません。統計については最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2008/
7-9
2008/
10-12
2009/
1-3
2009/
4-6
2009/
7-9
1次QE2次QE
国内総生産(GDP)▲1.0▲2.7▲3.1+0.7+1.2+0.3
民間消費▲0.1▲0.9▲1.2+1.2+0.7+0.9
民間住宅+3.9+2.5▲6.4▲9.4▲7.7▲7.9
民間設備▲4.4▲6.7▲8.4▲4.6+1.6▲2.8
民間在庫 *+0.2+0.9▲0.4▲0.7+0.4+0.1
公的需要▲0.1+1.1+1.1+1.3+0.1▲0.4
外需 *▲0.5▲2.3▲0.7+1.4+0.4+0.4
輸出▲2.0▲13.9▲21.3+6.5+6.4+6.5
輸入+0.7▲1.6▲15.0▲3.3+3.4+3.3
国内総所得(GDI)▲1.9▲0.5▲1.5+0.4▲0.0▲0.7
名目GDP▲2.2▲0.8▲3.0▲0.7▲0.1▲0.9
雇用者所得▲1.4+0.4▲0.7▲0.9+0.7+0.7
GDPデフレータ▲1.2+0.4+0.3▲0.5+0.2▲0.5
内需デフレータ+1.5+0.2▲1.2▲2.6▲2.6▲2.8

次にいつもの寄与度表示したGDP前期比のグラフは以下の通りです。

GDP成長率の推移

今日の午後は5時間以上も会議で費やし、今夜のエントリーがかなり遅くなったので、需要項目ごとの細かい点は、先週の法人企業統計を取り上げたエントリーや一昨日にすでにお示ししてあると思いますから、1点だけ指摘すると、引用した日経新聞の記事にある津村政務官の「統計の信頼性」に関する議論は間違っているということです。GDP統計は国連からマニュアルが示された統計ですし、2次統計とはいえ推計方法は確立しています。1次QEから2次QEで大きく下方修正されたのは、「統計の信頼性」が低いからではなく、新たに発表された指標を入れて推計し直すと成長率が低下したという事実です。すなわち、1次QE推計後に公表された指標が軒並み低成長を示していると受け止めるべきです。内閣府のことですから、分かっているエコノミストは大勢いるんでしょうが、先日の確報のミスもありましたし、官僚バッシングの皮肉を込めて政務レベルで曲解したのだろうという気はするものの、そもそも、速報性と正確性はトレードオフの関係にあるわけですから、「原因を細かく分析」するよりも、もっと重要な仕事があるような気がします。

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コメント

速報性と正確性のトレードオフは、ご出身の日本銀行の所管する統計には、存在しないのかもしれません(w  

ただ、ご指摘の「一次統計の数値の違い」の他にも、そもそも、1次QEと2次QEでは推計のモデルが異なるわけで、「そのモデル自体を再検討する」、という話であれば、かつての17年度の確報が速報から大きく乖離したという問題の延長上にあることで、一笑に付すような話でもないような気はします。実際、下記のとおり、確報と速報の乖離に取り組んでいながら、1次QEと2次QEの乖離に取り組まない理由というのは、なかなか立ちづらいのではないでしょうか・・・。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/070419/gijiroku.pdf

とはいえ、データのAvailability、速報性と正確性のトレード・オフについては、だれか早めにご説明に伺うべきですね・・・。

投稿: TOMOHIKO SENGE | 2009年12月10日 (木) 23時19分

まあ、確かに、設備投資は1次QEでは資本財出荷ですから供給側の統計を使って、2次QEでは法人企業統計の需要側のデータを使います。そのあたりは、速報性と正確性のトレードオフだという気がします。

投稿: 官庁エコノミスト | 2009年12月11日 (金) 07時32分

データの Availability が改善されない限り、モデルを「改良」しても、データがなければ回らないという事態が発生するわけで、「原因を細かく分析」したところで、抜本的な改善には、およそ繋がらないですよね。

とはいえ、何もしない訳にもいかないでしょうし、統計委員会の国民経済計算部会あたり、開くことになるのでしょう・・・。

投稿: TOMOHIKO SENGE | 2009年12月11日 (金) 22時53分

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