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2009年12月31日 (木)

スーザン・ボイル「夢やぶれて」を聞く

Susan Boyle - I Dreamed A Dream

11月末に発売されたスーザン・ボイルさんの CD 「夢やぶれて」 I Dreamed A Dream を聞きました。さすがに歌唱力は素晴らしいものがあります。声に透明感があるともいえます。これ以上の評価は私には下せませんから、以下は適当に周辺情報を収集しておきます。まず、曲目構成は以下の通りです。

  1. ワイルド・ホース
  2. 夢やぶれて
  3. クライ・ミー・ア・リヴァー
  4. 偉大なるかな神 (輝く日を仰ぐとき)
  5. 愛をこえて (ユール・シー)
  6. デイドリーム・ビリーバー
  7. アップ・トゥ・ザ・マウンテン
  8. アメイジング・グレイス
  9. フー・アイ・ワズ・ボーン・トゥ・ビー
  10. プラウド
  11. この世の果てまで (ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド)
  12. きよしこの夜
  13. 翼をください ∼ Wings To Fly (日本盤ボーナス・トラック)

Brirtain's Got Talent logo

もはや世界の有名人ですから、特に説明の必要もありませんが、Brirtain's Got Talent で歌った場面が YouTube にアップされて世界のみんなが注目しました。今夜の「NHK紅白歌合戦」にゲスト出演するために来日していることはニュースなどで広く報じられている通りです。

YouTube にアップされている動画もいいんですが、Sony Music のサイトにあるプロモーション・ビデオがコンパクトでよく出来ています。いつもの通り、直リンしています。Brirtain's Got Talent のシーンを中心に取りまとめられています。サイモンやアマンダのびっくりした表情、アマンダが観客に先立ってスタンディング・オベーションを送るところ、スーザン・ボイルの得意の投げキスなどが印象的です。

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2009年12月30日 (水)

表参道通りのイルミネーション

表参道のイルミネーション

我が家からほど近い表参道のイルミネーションです。昨夜、皇太子さまご一家が車中からご覧になったと毎日新聞のサイトで報じています。我が家は赤坂にある東宮御所よりも表参道通りに近いと自負していますので、今日になって私も少し見て来ました。上の写真は表参道交差点近くの青山ダイヤモンドホール前あたりから原宿方面を望んだものです。約1キロの距離に並ぶ約140本のケヤキにLED63万個を点灯しているそうです。1991-98年にイルミネーションが実施されていた折は豆電球だったんですが、今ではLEDです。11年振りのイルミネーションの復活です。
でも、何と申しましょうかで、表参道通りはすでにお正月の明治神宮への初詣で態勢に入っていました。通りの真ん中には明治神宮の提灯が吊り下げられ、表参道通りにかかる歩道橋はロープが引かれて使用禁止になっており、お巡りさんが大量に配置されていました。例年のことです。私は基本的に東京でも長崎でも信号はそんなに守らない方なんですが、今夜ばかりは信号に従って歩いていました。

今年も残りわずかです。

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遠藤武文『プリズン・トリック』(講談社) を読む

遠藤武文『プリズン・トリック』(講談社)遠藤武文『プリズン・トリック』(講談社)を読みました。今年の江戸川乱歩賞を授賞された作品です。すなわち、ミステリです。しかし、私には構成がやや荒っぽいと感じました。なお、知ってる人は知ってると思いますが、講談社のサイトに pdf ファイルで5ページの「真犯人からの手紙」がアップされています。小説の最後の行に対応するものです。よく知られた通り、江戸川乱歩賞に応募した時、作者はこの作品のタイトルを「三十九条の過失」としていました。法律はいっぱいあり、39条まである法律も数え切れませんが、私が知っているのは憲法第39条の「一時不再理」です。ハッキリ言って、他は知りません。そして、物語は市川交通刑務所から始まります。当然、交通事犯で裁かれた人物が実は交通事故を装った殺人を犯していて、交通事故で判決を受けたために「一時不再理」が適用される、という弁護士を主人公にした法廷ミステリを私は想像していました。まあ、ミステリで弁護士が主人公になっているのはいっぱいあります。しかし、最初は嫌になるくらい延々と交通刑務所が描かれます。
以下、ネタバレがあります。
結局、アチコチで指摘されているように、いっぱい瑕疵のある作品ですが、私が不満に思うのは以下の2点に尽きます。第1、村上諒子は安曇野トマトファームの社員だったのか、村上や戸田と同じ会社の社員だったのか。第2、SDカードの動画を見て、武田にもすぐに分かったにもかかわらず、どうして村上が戸田に気づかなかったのか。後は、よく言われているように、視点主人公が多過ぎて、誰の視点から書いているのか分からない、笠原と小笠原、野口と野田など、同じような名前の登場人物がいて書き分けられていない、などの欠点もあります。

私は、江戸川乱歩賞受賞作品は東野圭吾さんの『放課後』しか読んでいないと思うんですが、ややレベルが低いなと感じたことも事実です。その東野圭吾さんも加わった江戸川乱歩賞の選考委員には悪いですが、せいぜい2ツ星ではないでしょうか。

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2009年12月29日 (火)

今年最後の経済ブログ - 長崎は貧しいか?

実は、先週に長崎と東京でいくつかメディアの取材があり、地方経済とか、長崎経済についていろいろとお話ししました。私は本来は日本経済論担当であって、地方経済やましてや長崎経済は詳しくないんですが、一応、今年の締めくくりとして地方経済や長崎経済について、あるいは、東京や都市圏との格差について私なりの考えを取りまとめておきます。
まず、「長崎は貧しいか?」という、直球ど真ん中の質問を受けました。私の答えは Yes, it is. で、「長崎は貧しい」と答えて、ど真ん中の直球をバックスクリーン方向へ素直に打ち返しておきました。ひょっとしたら、否定的な回答が期待されていたのかもしれません。でも、大雑把に、経済的な豊かさの指標をみると、都道府県別で長崎は下から5番目くらいに入ります。全国で下から10パーセントといえます。これを貧しいと言わずして何と言うべきか、エコノミストとして事実を直視しないのは最悪の態度です。なお、今日の統計はすべて総務省統計局の『日本の統計』から取っているんですが、まず、1人当たり県民所得です。p.63 表3-15 県民経済計算から作成したグラフです。

1人当たり県民所得

見れば分かると思うんですが、1人当たり県民所得が低い順に並べてあります。横軸の単位は1人当たり年間百万円です。最高は東京都で1人当たり4.8百万円、最低は沖縄の2.0百万円、長崎は所得の低い方から5番目で2.2百万円です。全国平均は3百万円を少し超えたところで、広島や大阪あたりになります。まあ、下から5番目で東京の半分以下なんですから、繰返しになりますが、これを貧しいと言わずして何が貧しいのか、と考えるべきです。もっとも、豊かさや貧しさはレベル=水準だけで決まるものではなく、モメンタム=方向性も大いに関係します。例えば、中国は平均的に水準では日本よりも所得が低いんですが、日本よりも伸び率が大きいですから将来への期待は高く、その分、貧しいとは感じない場合もあり得ます。所得水準に話を戻すと、この長崎の貧しさの原因は人口減少にあります。特に、自然増減ではなく社会的な転出入で人口が減少しています。下のグラフは p.23 表2-16 都道府県別転出入者数のデータからグラフを作成しています。

都道府県別転出入者数

これも、純転入が少ないというか、純転出が多い順でソートしてあります。2007年度1年間で純転出が最も多いのは北海道で、次いで青森、長崎となっています。純転出が1万人を超えているのはこの3道県だけです。この指標を見ても、長崎が貧しいと言わざるを得ません。そして、この貧しさと人口減少は、いわゆる「ニワトリとタマゴ」の関係にあります。すなわち、人口減少と経済の停滞が長崎においては負のスパイラルに陥る瀬戸際にある可能性を指摘しておきたいと思います。そもそも、人間がどこに住むかといえば、私は経済的な所得とアメニティの関数だと考えています。この場合の「アメニティ」とは私独特の用語かもしれませんが、各個人にとっての暮らしやすさとか、言葉とか、雰囲気は理解できると思います。所得はマクロの意味でバッチリ数量化できますが、アメニティは個々人のマイクロな感じ方ですから数量化は難しいです。でも、長崎から転出している人が多いということは、所得を求めてアメニティを犠牲にしている可能性があります。
そして、長崎ではそのことに気づいていない人が多い可能性もあります。私の長崎での言い分は、パングロシアンに「それでいいのだ」や「これでいいのだ」はバカボンのパパに任せておけばいいんであって、九州は今や「どげんきゃせんといかん」の状態に入りつつある、というものです。もっとも、私は九州言葉に詳しくないので、「どげんきゃせんといかん」であってるかどうかは自信がありません。さらに、残された時間はそんなにありません。一般的に、全国レベルの経済問題も含めて、残された時間は最大で10年くらいと私は考えています。理由は、昨年の流行語大賞にノミネートされた「アラフォー」という言葉がありましたが、元気あるこの「アラフォー」世代が50歳近辺になるまでの間に「どげんきゃせんといかん」と受け止めるべきだからです。昨年のこのころに取り上げた年金改革についても、50歳を境にして人間は変革に対して否定的になるというのが世界の常識です。ですから、一般的に10年であって、長崎の場合は全国平均よりも状況が悪いですから、それよりも短く残り5年くらいと考えた方がいいかもしれません。
ただし、1点だけ指摘すると、現在の東京との格差2倍は許容できる範囲だということです。いつも話題になる「1票の格差」の裁判の判例ではありませんが、「法の下での平等」を保障した憲法下ですら2倍の格差を許容する判例が主流となっているんですから、経済的な格差がマクロの平均ながら2倍というのは許容すべき範囲です。しかも、最低ラインが沖縄の1人年間2百万円ですから、この平均額であれば3-4人家族を考えるとシビルミニマムを十分に満たしているような気もします。マイクロな地域内の格差については地方経済圏よりも都市経済圏の方が大きい可能性もありますから、ここで論じることは差し控えます。

私は同じことをお話したつもりなんですが、解釈については編集者に広範な権限を認めていますので、今までも、同じことをお話したつもりなのに、かなり違った角度で取り上げられたこともあります。いくつかのメディア、長崎ローカルのメディアと全国のメディアでどのような取り上げられ方をするかにも興味があります。

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2009年12月28日 (月)

輸出に支えられた鉱工業生産はどこまで伸びるか?

本日、経済産業省から11月の鉱工業生産指数が発表されました。季節調整済みの生産指数が88.3、前月比で+2.6%の増産となりました。市場の事前コンセンサスを少し上回りました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

経済産業省が28日発表した11月の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)は88.3となり、前月に比べて2.6%上昇した。指数が上昇するのは9カ月連続で、中国などアジアや北米向けの自動車生産の増加が全体の伸びをけん引した。ただ、生産の水準はピーク時の8割程度にとどまっており、本格回復にはなお時間がかかりそうだ。
11月の生産は市場予測の平均(前月比2.4%上昇)をやや上回った。生産の伸び率は10月には0.5%に縮小したが、輸出の回復などに支えられて上昇傾向が続いている。経産省は基調判断を「持ち直しの動きで推移している」に据え置いた。
生産の増加をけん引したのは自動車などの輸送機械工業で、前月に比べて5.9%上昇した。エコカー補助などの国内の政策効果に加えて、中国を中心とするアジアや北米向けの普通乗用車の生産が伸びた。国内向けの小型乗用車も堅調だった。

いつもの鉱工業生産のグラフは以下の通りです。季節調整済みの系列です。

鉱工業生産指数の推移

まず、11月実績が前月比で+2.6%なんですが、製造工業予測指数で見て、12月が+3.4%、来年1月が+1.3%と増産が続くと見込まれています。要するに、生産は堅調に推移するようです。しかし気になるのは円相場の先行きです。輸出に支えられた生産増であることは確かです。しかし、私も日銀の白川総裁総裁と同じで、「『外需依存から内需主導への抜本的な転換が必要』とする見方には与していない」からです。引用は必ずしも正確ではありませんが、日銀のサイトからで、この発言は日本経済団体連合会評議員会における講演の p.9 冒頭にあります。

項目2009年度2010年度
実質成長率▲2.6+1.4
内需寄与度▲2.2+1.1
外需寄与度▲0.5+0.4
失業率5.45.3
消費者物価▲1.6▲0.8
鉱工業生産▲11.2+8.0

上の表は一昨日に掲載した政府経済見通しなんですが、一昨夜と違って、鉱工業生産指数を入れてみました。来年度、生産は+8%の増産と見込まれています。単純にGDPに占める比率を20%とすれば、鉱工業生産だけで+1.5%を上回る成長率を達成してしまいます。輸入に漏れるのかもしれません。

稼働率指数の推移

最後に、引用した記事に生産はピークの8割とありますが、実は、上のグラフに見る稼働率指数は7-8月の夏場以降足踏み状態にあります。8月の79.0から9月80.3、10月80.5と、生産が順調に回復しているにもかかわらず稼働率は上がりません。グラフからも1次微分が正で2次微分が負であるように見えると思います。残業時間も11月は10月に比べて減少しました。雇用も回復過程にありますから、ひょっとしたら、景気循環の局面として、機械設備を労働で代替している段階にあるのかもしれませんが、この稼働率が上がらなければ設備投資が本格的に増加しないことは言うまでもありません。

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2009年12月27日 (日)

2009年報道写真展を見に行く

今日は、フラリと外を出歩いて、2009年報道写真展を見に行きました。三越本店7階の催し物会場で開催されています。入場無料です。どうしても、こういった文化的な催しは長崎まで回って来ませんので、東京にいる間にせっせと回っておきたいと思います。ということで、私はかなりじっくりと拝見しましたので1時間近くかかりましたが、その気になれば10-15分で見終えることも出来そうな気がします。入口近くに一連の皇室の写真がありました。ところどころに、富士フィルムの銀写真プリントであるとか、Canonのプリンタ名が小さく宣伝してありました。

報道写真展

東京写真記者協会の主催ですから、地方の報道写真はありません。ですから、長崎の漁船転覆事故の写真はまったくなく、長崎に関する報道写真としては、釜山の射撃場火災の写真があっただけです。政治にとどまらず、スポーツや芸能関係の写真も満載でした。さすがに、プロの写真ですから素晴らしい出来栄えでした。私の目に留まったのは、上の通り、鳩山総理大臣と米国のオバマ大統領が握手しているところなんですが、やっぱり、オバマ大統領訪日時の写真も多く、米国で物議をかもした、天皇陛下に深々とお辞儀するオバマ大統領の写真もありました。スポーツ関係では、WBCなどの野球やゴルフの石川遼選手とともに、今年限りで引退したテニスの杉山愛選手の写真が印象的でした。全米オープンでの活躍を思い起こさせる大きな写真が素晴らしかったと感じました。なお、報道写真の範疇に入るかどうか微妙なんですが、私の見た範囲で最高の1枚は、横浜のみなとみらいの沖合から富士山頂に沈む月を捉えた写真でした。改めてプロの力量に感服しました。

最後に、やっぱり経済は絵にならないと感じてしまいました。8月末の総選挙の写真はいくつか見かけましたが、あえて経済の写真と言えそうなのは、「西目屋村」ののし袋に入った定額給付金をうれしそうに受け取るおばあさんの写真だけだったような気がします。

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2009年12月26日 (土)

来年度予算案をどう見るか?

昨夜、来年度政府予算案が臨時閣議で決定されました。広く報じられているところですが、「コンクリートから人へ」を掲げ、公共事業の削減率を▲18.3%減として過去最大となった一方、社会保障は手厚く配分したことから、一般会計総額は92.3兆円と過去最大に膨らみました。下の画像は朝日新聞のサイトから引用しています。

来年度政府予算案

今回の政府予算案の特徴はアチコチで報じられているので、このブログで取り上げるまでもないんですが、私独特の見方も入れて以下の5点だと思っています。特に最後の「政治主導の破綻」はこのブログで早くから主張して来たところであり、特筆大書すべきであると受け止めています。さらに、今後の政権運営に影を落とす可能性も指摘しておきたいと思います。

  1. 政府支出、特に、公共事業から社会保障、特に、各種手当てに歳出を振り向けたことは、経済効果重視から国民の裁量権重視という意味での「小さな政府」への転換の第1歩と評価できる。
  2. いわゆる霞が関埋蔵金で10兆円の歳入を確保したものの、財政のサステイナビリティには不安が残る。
  3. 行政刷新会議の「事業仕分け」による削減額は約7千億円でパフォーマンス倒れの印象。
  4. マニフェストの政策の中で実行できなかったものがあることは無責任であり、野党の批判にも一理ある。
  5. 政治主導の予算編成は完全に破綻した。

最後に、政府予算案と同時に政府経済見通しも昨夜の閣議で了解されました。主要な計数を以下に取りまとめておきます。単位はパーセントで、水準を示す失業率以外は前年度からの増減率となっています。内需と外需の寄与度の合計が成長率に一致しないのは四捨五入のためです。

項目2009年度2010年度
実質成長率▲2.6+1.4
内需寄与度▲2.2+1.1
外需寄与度▲0.5+0.4
失業率5.45.3
消費者物価▲1.6▲0.8

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2009年12月25日 (金)

本日発表された経済指標から

本日、総務省統計局から消費者物価指数失業率が、また、厚生労働省から有効求人倍率などの職業安定業務統計が、それぞれ発表されました。いずれも11月の統計です。いずれも、物価はマイナス幅が縮小し、労働統計は失業率こそ0.1%ポイント上昇しましたが、有効求人倍率などはわずかとはいえ改善しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価
総務省が25日発表した11月の全国消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動の大きい生鮮食品を除くベースで99.9となり、前年同月比で1.7%低下した。低下は9カ月連続。下落率は前の月より縮小したが、前年に急騰したガソリン価格の反動による面が大きい。衣服や食料など身近なモノの値段が下がっており、日本経済は依然としてデフレ状況にある。
石油価格の影響を除いた指数でも大幅な物価下落が続いた。食料とエネルギーの影響を除いた指数(欧米型コアCPI)は1.0%低下。生鮮食品を含む総合指数は前年同月に比べ1.9%低下した。
需要低迷を背景に、身近な商品の値下げ競争が続いている。生鮮食品を除いた食料価格は前年同月比1.2%低下した。食用油やチーズ、マヨネーズなどの値段が下がったほか、大手チェーンなどがキャンペーン値下げした影響で、外食の牛丼の価格が3.8%低下した。価格競争が激しい衣料品も、男子ズボンや婦人スラックスの値段が低下した。
労働統計
総務省が25日発表した11月の完全失業率は4カ月ぶりに悪化した。とりわけデフレの影響で卸売・小売業の就業者数が大幅に減少。製造業中心だった雇用調整の波は非製造業にも押し寄せている。
アジア向け輸出の持ち直しなどで、国内経済は4-6月期から2四半期連続でプラス成長。ただ「リーマン・ショック」による傷跡は深く、国内の需要不足は35兆円規模ときわめて大きい。労働力の過剰感は依然として強く、雇用情勢は簡単には改善しそうにない。
同日発表した11月の全国消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く)は9カ月連続でマイナスとなった。値下げによる消耗戦で流通業やサービス業の収益は厳しさを増している。卸売・小売業はこれまで製造業からの離職者の受け皿となってきたが、先行きはそうした余裕が失われかねない。

まず、消費者物価のいつものグラフは以下の通りです。折れ線グラフは青が全国のコアCPI、赤が同じく全国のコアコアCPI、グレーが東京都区部のコアCPIの、それぞれの前年同月比上昇率です。棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度について、食料品、エネルギー、その他に分けて表示したものです。

消費者物価の推移

物価については、引用した記事にもある通り、かなり深刻なデフレが続いています。11月に下落幅を縮小したのはほとんどすべてエネルギーの寄与によるものです。エネルギーの寄与度が10月の▲1.28%から11月には▲0.67%になったので、その分、全体の下落幅も前年同月比で見て10月の▲2.2%から11月に▲1.7%になったに過ぎません。上のグラフから明らかな通り、赤い折れ線のコアコアCPIも、水色の棒グラフのエネルギーと食料品を除くその他の寄与度も、ここ2-3か月は横ばいであり、0.5%も下落率を縮小させた要因ではありません。上に引用した記事の通り、需給ギャップが35兆円規模あるそうですから、基本的には、この需給ギャップに応じたデフレなんですが、フリードマン教授が喝破したように、インフレやデフレはかなりの部分が貨幣現象ですから、日銀の金融政策が強力に発動されるべきであると私は考えています。

労働統計の推移

次に、上から赤い折れ線の失業率、青の有効求人倍率、緑色の新規求人数です。いずれも季節調整済みの系列で、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近は今年3月を谷と仮置きしています。引用した記事にもある通り、確かに、11月の失業率は0.1%ポイント上昇しましたが、先行指標の新規求人数、一致指標の有効求人倍率とも改善を示しています。もっとも、改善のスピードはかなり遅いと言わざるをえません、報道でみる限り、政府経済見通しでは来年度の失業率も5%台だそうですし、有効求人倍率が1に達するのは何年先か分かったものではありません。また、下のグラフは季節調整していない原系列の非農業部門雇用者数の対前年同月差を産業別に見たものですが、卸売・小売業が確かに減少幅を大きくし、全体の雇用者数の減少に拍車がかかっているように見えます。引用した記事にもある通り、明らかにデフレの悪影響です。医療・福祉の増加も縮小しました。ただし、情報通信業がプラス幅を拡大しているのは明るい材料かもしれません。

産業別雇用者数の推移

年の瀬も押し詰まり、今日で主要な経済指標の発表は終りかと思っていたんですが、来週の月曜日に今年最後の鉱工業生産指数の発表があるみたいです。

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2009年12月24日 (木)

クリスマスイブのごちそう

今日は、クリスマスイブです。世間では愛と寛容の日とされているクリスマスの前夜です。あのスクルージでさえ改心する夜です。我が家では毎年のように、クリスマスイブのごちそうはケッタッキー・フライドチキンのパーティ・バレルです。今年の子供達へのプレゼントはやっぱりゲームで、おにいちゃんは PSP でガンダムのソフトを遊んでます。下の子には DS ソフトの「怪獣バスターズ」でした。

クリスマスイブのごちそうを前に子供達

何はともあれ、
Merry Christmas!

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2009年12月23日 (水)

子供達が出かける

昨日で今年最後の授業を終え、今日から大学の方は冬休みに入りました。東京での非常勤の研究所勤務は少し残っています。長崎から羽田に帰る便は名古屋を過ぎたあたりで雲が切れ、雪をいただいた富士山がきれいに見えました。
私が帰宅すると子供達は外出していました。下の写真の通り、下の子は天皇誕生日で皇居に奉仕活動、おにいちゃんは我が家からほど近いこどもの城で友人とバスケットなどをして遊んでいます。皇居の写真はボーイ隊の隊長さんにお願いして撮ってもらいました。大感謝です。

スカウトで皇居での奉仕活動を務める下の子
こどもの城で友達とバスケをして遊ぶおにいちゃん

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子供の名前を付ける時に留意すべき点とは?

今年も残すところ1週間余りとなり、先日の「今年の漢字」とか、昨日の経済見通しなど、1年を締めくくったり、来年を見通したりする季節となりました。ということで、一昨日、明治安田生命から名前ランキング2009が発表されました。先月の発表になるベネッセのたまひよ 名前ランキング2009年版とともに楽しみに見ています。取りあえず、前者の明治安田生命の名前ランキング2009から、男女別にトップテンを引用すると以下の通りです。


男の子
順位昨年順位漢字人数
第1位(第1位)大翔38人
第2位(第7位)22人
第3位(第13位)瑛太21人
第3位(第16位)大和21人
第5位(第9位)20人
第6位(第12位)悠真18人
第6位(第14位)陽斗18人
第8位(第2位)悠斗17人
第9位(第5位)颯太16人
第9位( - )颯真16人
女の子
順位昨年順位漢字人数
第1位(第1位)陽菜25人
第2位(第16位)美羽22人
第2位(第14位)美咲22人
第4位(第8位)美桜20人
第5位(第19位)結愛19人
第6位(第4位)さくら18人
第6位(第8位)結菜18人
第8位(第16位)彩乃17人
第9位(第24位)七海16人
第10位(第19位)ひなた15人
第10位(第24位)愛莉15人
第10位(第57位)杏奈15人
第10位(第5位)優奈15人

色調や雰囲気なんかを、なるべく、引用元の明治安田生命の名前ランキング2009に似せてテーブルを組んでありますが、さすがに、トップ100はムリなのでトップテンで抑えてあります。名前の漢字のランキングですから、読み方はいろいろとあるようです。難しい漢字が並んでいます。
我が家にも男の子が2人いますが、名前は私が付けました。その際に、考慮したポイントは以下の3点だけでした。

  1. 漢字2文字で、2番目の漢字は同じであること
  2. それぞれの漢字の画数は10画程度の比較的やさしい漢字であること
  3. ローマ字入力の際、キーボードで打ちやすいこと

最初のポイントはよくありますが、畏れながら皇室にならったわけではなく、京都の名門として有名な小川兄弟のマネだったりします。4兄弟の中でもっとも有名なのは、何といっても我が国で最初のノーベル賞を受賞した湯川秀樹教授ですが、小川芳樹教授、貝塚茂樹教授、小川環樹教授についても著名な学者で、長男の小川芳樹教授が東京大学教授である以外は、4兄弟の父親である小川琢治教授と同様、3人とも私の母校である京都大学の教授を務めています。アカデミックな世界では京都でももっとも著名な一家のひとつといえます。なお、我が家の子供達と小川4兄弟が違う点は、名前の漢字2字目を父親である私と同じにした点です。ですから、小川兄弟ほどは出来がよくない可能性が大いにあります。
第2のポイントは、当然ながら、小学校で自分の名前を漢字で書く機会があるわけですから、画数の多い難しい漢字を避けたという配慮です。私も親ですから、凝った難しい漢字を使いたがる傾向があるのは確かですが、成長の過程で自分の名前が嫌いになる大きな原因は難しい漢字にあると誰かから聞きましたので、この点は配慮しました。2字目が兄弟共通で同じですから、1字目はおにいちゃんは9画、下の子は10画です。
第3のポイントは、21世紀の現代ではもっと強調されて配慮されるべきであると私は考えています。ですから、特筆大書しました。名前をローマ字でキーボード入力する際に、QWERTY配置で割合と狭い範囲で打てるように気を使いました。我が家の場合、ジャカルタに在住していた折にパスポートの更新があり、英語の幼稚園に通わせていたこともあって、子供達に自分でサインさせました。自分の名前をローマ字表記する機会も決して少なくありません。もっとも、おにいちゃんは特に狭い範囲で打てるんですが、下の子になるとおにいちゃんほど狭い範囲では打てません。次男の不利な点なのかもしれません。

大学はそろそろ冬休みに入ります。サラリーマンよりも夏休みは言うに及ばず、季節ごとの休暇がやや長い点が大学教員のいい点かもしれません。

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2009年12月22日 (火)

日本経済の見通しやいかに?

Chile invited to become a member of the OECD

今夜の本題に入る前に、経済協力開発機構(OECD)のホームページを見ていると、南米のチリがメキシコに次いでラテンアメリカ2番目にして、OECD31番目の加盟国に招聘されたというニュースを知りました。上の写真はグリアOECD事務局長から招聘状を受け取るチリのベラスコ蔵相です。どうでもいいことですが、私がサンティアゴの在チリ大使館に勤務していた20年近く前、現在のベラスコ蔵相はエイルウィン政権下の財務省で予算局長をしていて、私も何回かお会いした記憶があります。俳優のジョン・トラボルタばりのラテンの雰囲気を漂わせたマッチョの美男子だったと覚えています。米国のことを "Yankee" と表現していたんですが、その後、ニューヨーク市立大学の教授になったと挨拶状をもらいました。

さて、本題に入って、来年の日本経済の見通しです。今年は政権交代があったので、私が公務員をしていたころの予算編成と方式が異なり、予算の財務省原案をすっ飛ばすようですから、政府経済見通しがどうなるのか不明ですが、取りあえず、私が取りまとめた範囲で、国際機関やシンクタンクなどの経済成長率見通しは以下の通りです。なお、アスタリスクを付した国際機関の見通しはカレンダーと同じ1-12月の暦年ですが、日本国内のシンクタンクなどは4月に始まる財政年度で算出されています。いつもの通り、ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。詳細な情報にご興味ある方は左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名200920102011ヘッドライン
経済開発協力機構*
(OECD)
▲5.3+1.8+2.0The Bank of Japan should fight deflation
国際通貨基金*
(IMF)
▲5.4+1.7n.a.In Japan, after a sharp first-quarter fall, activity is expected to contract by 5.4 percent in 2009 as a whole, although a sizable fiscal stimulus and a modest increase in exports will support growth in the second half of 2009 and will lead to a recovery of 1.7 percent in 2010.
日本総研▲2.8▲0.1n.a.2010年前半に再びマイナス成長へ
ニッセイ基礎研▲2.9+1.4+2.0海外経済の回復を背景とした輸出の下支えが続くため、景気腰折れは回避される
大和総研▲2.8+1.7n.a.鳩山政権が12 月8 日に閣議決定した「緊急経済対策(財政支出7.2 兆円)」の効果等もあり、「景気二番底」は回避される見通し
みずほ総研▲2.8+1.0n.a.輸出が増加基調を維持し、それが国内生産を下支えして「二番底」は回避される
三菱総研▲2.7+1.2n.a.既往の政策効果の漸減を背景に、10年度前半にかけて成長率は低めの伸びに止まる
野村證券金融経済研究所▲2.6+1.1+1.9日本経済は本格回復に向けた調整期間へ
第一生命経済研▲2.6+1.4+1.1先行き、再び景気が後退局面に舞い戻る可能性は低い
三菱UFJ証券景気循環研究所▲2.8+1.6+1.1海外経済の拡大、政策効果の継続で、景気回復は、10年末まで続く
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲2.6+1.3+0.9懸念は高まるも二番底は回避される
新光総研▲2.5+1.4n.a.10年前半にかけて一旦減速感が強まり、踊り場的な局面を迎える
富士通総研▲2.6+1.4n.a.新たな経済対策の効果(実質GDP押し上げ効果は0.3ポイント程度)もあり、景気は腰折れするには至らない
帝国データバンク▲2.9+1.0+1.72010年度、国内民需と外需がプラスに転じ3年ぶりのプラス成長となるものの、勢いは弱い

国際機関を除いても、来年度のマイナス成長を予測するのは日本総研だけで、ほぼ+1.0%か、これを上回る成長率を予測する向きが多いとの結果になっています。また、いわゆる2番底は回避されるとの見通しも決して少なくありません。また、もっとも低い見通しを出している日本総研については、11月の1次QE後の時点ですから、その後、少し上方修正されている可能性もあります。私も最近まで2番底の懸念を持っていたんですが、輸出の統計を見る限り、可能性はかなり低下したように受け止めています。

最後に、すべてのリポートを隅々まで熟読したわけではありませんが、帝国データバンクだけが2010年のワールドカップと2011年の地デジ移行による耐久消費財の売上げ増加に言及していました。さすがに、目の付けどころが違うと感心してしまいました。

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2009年12月21日 (月)

貿易統計に見る輸出は順調に景気をけん引

本日、財務省から11月の貿易統計が発表されました。輸出はほぼ前年水準に回復し、貿易収支も順調に黒字基調を取り戻しています。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

アジア向けを中心に輸出が持ち直してきた。財務省が21日発表した貿易統計速報(通関ベース)によれば、11月の輸出額は前年同月比6.2%減の4兆9917億円と14カ月連続で減少したものの、下落率は前の月(23.2%減)に比べ大幅に縮小した。アジア向け輸出は中国を中心に拡大し、昨年9月以来14カ月ぶりに増加に転じ、リーマン・ショック以前の水準を回復した。ただ、国内設備投資への波及は限定的で、景気の下振れ懸念は消えていない。
輸入額は前年同月比16.8%減の4兆6177億円になった。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は3739億円と10カ月連続の黒字になった。輸出額を品目別にみると、半導体が2008年7月以来の、プラスチック原材料などの有機化合物が同8月以来のプラスに転じた。
地域別では、アジア向けは前年同月比4.7%増と昨年9月以来の増加になった。特に中国向けは7.8%増と大幅に伸びた。スチレンなどの有機化合物や、ギアボックスといった自動車の部分品が伸びた。ただ、亜鉛めっきなどの鉄鋼は落ち込んだままだった。

続いて、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出入とその差額たる貿易収支、真ん中のパネルはその季節調整済み系列、一番下のパネルは輸出の原系列について金額を数量と価格で要因分解したものです。輸出額は引用した記事にもある通り、前年同月比で▲6.2%減まで回復しています。

貿易統計の推移

私は従来から来年前半の2番底を予想していたんですが、ここまで輸出が順調に回復すると、軽い踊り場で済む可能性が高まったと受け止めています。今後の輸出を占う上で、以下のグラフの米国製造業ISM指数がポイントになりますが、米国経済の順調な回復のおかげで、輸出は目先しばらくの間は増加を続けることが見込まれます。中国については統計データなどの情報を持ち合わせていないんですが、メディアの報道や国際機関の分析を見る限り、ほぼ景気は回復軌道に戻ったと判断してよさそうです。

日本の輸出数量と米国のISM指数

世界の景気や生産の順調な回復を背景に、日本の輸出は所得面から順調に回復する軌道にあるといえます。ということは、何度もこのブログで繰り返している通り、価格条件、すなわち、為替レートが問題になります。ドバイ・ショックからはかなり円レートも戻して、1ドル90円前後で推移しています。通貨の安定に向けた日銀の金融政策に大いに期待しています。

円ドル相場の推移

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2009年12月20日 (日)

ブログの表示を IE8 標準モードに変更する

最近、ブログの表示が少し乱れていることに気づいていたんですが、どうも、Internet Explorer が V8 になって、表示が少し違って来ているということを知りました。そこで、マイクロソフト株式会社 Internet Explorer サポートチームのブログを見て勉強しました。IE には以下の3つの表示モードがあるようです。

ドキュメント モード説明
IE8 標準モードIE8 で利用可能な機能を全て利用して表示
IE7 標準モードIE7 と同等な機能を利用して表示
Quirks モードIE5 と同等な機能を利用して表示

そして、ブラウザ側で表示を切り替えることも出来ますが、コンテンツ側で指定することも出来るようで、以下の3通りの方法が示されています。この順番で優先順位が高くなっています。

  1. META タグで指定する方法
  2. HTTP レスポンスヘッダで指定する方法
  3. DOCTYPE 宣言で指定する方法

もちろん、レンタル元で提供されているレディメイドのテンプレートを使っている分には問題なく表示されるようになっているんでしょうが、私のブログはフルカスタマイズを売り物にしているものですから、いろいろと自分自身で手を加える必要があります。逆に言えば、それだけのスキルも持っていると自負しています。私は最も優先される META タグを利用しており、html のヘッダ部分で <meta http-equiv="X-UA-Compatible" content="IE=8" /> と指定しています。ブラウザ側では IE7 互換表示には切り替えられず、強制的に IE8 標準表示になります。ひょっとしたら、IE7 しかないマシンでの表示が乱れている可能性はありますが、そこは、セキュリティの観点からも、アップデートして下さいというしかありません。
css についてはカスタマイズ出来るブログが多いんですが、html については変更できないブログも少なくなく、すべてのサービスで応用可能なわけではありませんが、私のブログについてはメインとミラーで可能な範囲で指定してみました。css については、基本的には、一部で margin と padding を入れ替えて元通りに見えるように工夫したつもりです。もちろん、IE だけでなく、Google Chrome の表示にも配慮しました。残念ながら、Opera や Safari や FireFox などのブラウザは利用していませんので、よく分かりません。悪しからず。

長崎で過ごす週末は今年最後なんですが、やっぱり、ヒマを持て余してしまいます。いろいろとブログの表示を変更して時間を潰しています。

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2009年12月19日 (土)

マイクル・クライトン『NEXT - ネクスト - 』(ハヤカワ文庫) を読む

マイクル・クライトン『NEXT - ネクスト - 』(ハヤカワ文庫)

マイクル・クライトンの『NEXT - ネクスト - 』(ハヤカワ文庫) を読みました。作者の生前最後に刊行された長編バイオ・スリラーです。昨年11月に亡くなりましたが、よく知られている通り、自宅の Mac に 『パイレーツ - 掠奪海域 - 』Parate Latitudes がほぼ完成した形で残されており、これが絶筆となりました。クライトンの作品は『ジュラシック・パーク』と『ディスクロージャー』しか私は読んだことがないんですが、この両方とも映画も見ました。それから、クライトンの名前の方は「マイケル」が正しい日本語表記のような気がするんですが、早川書房が必ず「マイクル」としていますので、版権所有会社に敬意を表しました。
ストーリーは、要するに、遺伝子操作に関する警鐘を鳴らすための作品で、transgenic で作り出されたエキゾチックな生物が登場したり、効果不明のレトロ遺伝子で事故が起きたり、非常にまれな細胞を持つ一家から細胞を採取する際のアクションが展開されたりで、遺伝子や DNA に関する作品です。しかし、視点は一貫して現在の遺伝子操作研究に大きな疑問を示すものとなっています。しかし、闇雲に遺伝子操作を否定しているわけではありません。科学の有用性を正しく認識しつつ、現時点における遺伝子操作に関する研究のあり方に疑問を投げかけ、文庫版のあとがきでは、以下の4点を強調しています。第4の点でも明らかですが、遺伝子操作の研究自体を否定しているわけではありません。作者が科学を否定する立場を取っているわけではないことを理解すべきです。

  1. 遺伝子特許の取得をやめさせよ
  2. ヒト組織の利用について、明確なガイドラインを定めよ
  3. 遺伝子診断のデータ公開を義務づける法案を通過させよ
  4. 研究の規制をやめよ

読んでいて、マクロ経済を専門とするエコノミストの立場から、ややマイクロな要因を重視し過ぎる印象を持ちました。もちろん、医学の分野は私の専門外もはなはだしいんですが、病気や健康を考える際にも、DNA に刻まれたマイクロな遺伝子情報も重要である一方で、戦争に従軍する兵士がケガをする確率が高いのは当たり前ですし、マクロの衛生や栄養と適度な運動といった条件も決して忘れるべきではありません。マイクロな遺伝子情報という個人版のアカシック・レコードに身体上のすべてが決められていて、そこから外れることはあり得ない世界、というわけでもないような気がします。

クライトン作品にしては、問題提起をするイントロダクションがなく、すぐにストーリーが始まって、しかも、そのストーリーがいくつも同時に流れて、やや取っ付きにくい印象もありますが、そこはさすがの筆の運びで、少し読み始めると私のような単純な人間はのめり込むような展開です。でも、いくつかのストーリーには結末がありません。やや厳しいかもしれませんが、少し割り引いて4ツ星くらいかなという気がします。

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2009年12月18日 (金)

マレーシアとチリの財政乗数のモンテカルロ・シミュレーションに関するペーパーを書き上げる

先月11月から今月12月にかけて、マレーシアとチリについケインズ的な財政乗数の不確実性に関するペーパーを書き上げました。GDPの支出項目と税収と利子率だけを推計して小型のIS-LMモデルを構築し、不確実性のない通常のシミュレーションと消費関数全体と消費関数のうちの可処分所得にかかる限界消費性向のパラメータの両方に不確実性を含んだモンテカルロ・シミュレーションをしてみました。
きっかけは、多くのエコノミストに注目された Romer, Christina and Jared Bernstein (2009) "The Job Impact of the American Recovery and Reinvestment Plan" という論文です。今年1月半ばに発表されています。著者のローマー教授は言うまでもなく米国大統領経済諮問委員会の委員長ですし、バーンスタイン教授はバイデン米国副大統領オフィスのチーフエコノミストです。バリバリの現政権内のエコノミストと考えて差し支えありません。でも、この論文が発表されたのは現在のオバマ米国大統領の就任直前です。p.12に財政支出増加の乗数は1.5-1.6の範囲、減税の乗数は1.0を少し下回るくらい、とそれぞれ算出されています。すなわち、世界に向けて財政拡大による景気下支えをアピールしたペーパーだと受け止められています。ささやかながら、この論文に反論を試みたのが私のペーパーだったりします。

ケインズ的な財政乗数の大きさ

今夜のエントリーでお示しする画像はいずれもチリの結果ですが、上のグラフは不確実性のないシミュレーション結果で、各ケースは以下の前提となっています。ただし、税収についてはデータの関係で、マレーシアについてはGDPから推計していますが、チリについては税率をカリブレートしています。モデルはマレーシアについては大胆にもGMMで、チリについては二段階最小二乗法(TSLS)で、それぞれ推計しています。

  • Case 1: 税収、輸入とも外生
  • Case 2: 税収は内生、輸入は外生
  • Case 3: 税収、輸入とも内生

要するに、Case 1では財政拡大の効果は税収にも海外にも漏出しませんが、Case 2では税収増に漏出して可処分所得を減少させ、Case 3では税収に加えて輸入により海外にも漏出します。当然ながら、Case の番号が大きくなるに従ってケインズ的な財政乗数は小さくなります。3年目の財政乗数は1台半ばと Romer and Bernstein とほぼ同等の大きさです。

モンテカルロ・シミュレーションの結果

次に、上のグラフは消費関数に不確実性を含めたモンテカルロ・シミュレーション結果です。乱数はボックス・ミューラー法により一様乱数から正規乱数を発生させています。各ケースとも1000回のシミュレーション結果の平均です。不確実性のない乗数にモンテカルロ・シミュレーションから得られた標準偏差1単位を足したり引いたりしています。なお、各ケースの前提は以下の通りです。

  • Case A: 消費関数全体の誤差に不確実性を含む
  • Case B: 可処分所得のパラメータ、すなわち、限界消費性向に不確実性を含む
  • Case C: Case AとCase Bの両方の不確実性を含む

一見して理解できるのは次の2点です。第1に、年を経るに従って乗数の幅が大きくなっています。2年目以降は乗数がマイナスになることもあり得ます。第2に、消費関数全体の計測誤差による不確実性より、限界消費性向のパラメータの不確実性の方が乗数への影響が大きいことです。この結果は明らかにルーカス批判を思い起こさせます。すなわち、"Because the parameters of those models were not structural - that is, not policy-invariant - they would necessarily change whenever policy - the rules of the game - was changed. Policy conclusions based on those models would therefore potentially be misleading." ということです。

私のペーパーはエッセイを別にして推計結果がメインとなりますから、同じようなプログラムを別のデータに応用すれば、幾種類かのペーパーが書けてしまいます。やや反則に近いんですが、昨年末から今年年初にかけて、途上国の中でかなりの規模の財政出動を行った国の代表としてマレーシアとチリを取り上げました。また、マレーシアは従来から裁量的な財政政策を展開して来たのに対して、チリはここ10年ほどルールに基づいた非裁量的な財政政策を運用していました。どこかのジャーナルに掲載されるべく、がんばって英語で書いてみました。

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2009年12月17日 (木)

「銀行券ルール」とはいったい何なのか?

今日から明日まで、日銀の金融政策決定会合が開催されています。
この春先にごく一部で盛り上がった話題を今ごろ取り上げても仕方ないんですが、今年最後の金融政策決定会合に敬意を表して、「日銀券ルール」あるいは「銀行券ルール」について簡単に見ておきたいと思います。まず、日銀券の発行残高と日銀国債保有残高の推移のグラフは以下の通りです。毒にも薬にもなりません。

日銀券発行残高と日銀の保有国債の推移

ついでに、長期国債に限らず短期も含めた日銀の保有国債残高のグラフも入れてあります。上の緑のラインが日銀券発行残高ですから、これを超えない範囲で赤い棒グラフの長期国債を保有する、というカギカッコ付きの「ルール」です。どういう意味があるのかよく分かりませんが、例えば、最近見たペーパーで、白塚重典「わが国の量的緩和政策の経験: 中央銀行バランスシートの規模と構成を巡る再検証」ディスカッション・ペーパー・シリーズ2009-J-22、日本銀行金融研究所、というのがあって、タイトル通りに、今世紀初頭における我が国の量的緩和政策を検証しているペーパーで、このp.15に「このルールは、日本銀行に国債価格支持、あるいは政府債務のマネタイゼーションの意図がないことを明確にし、金融政策の信認を確保していくことにつながると考えられる。」という記述がありました。もちろん、ディスカッション・ペーパーですから日銀の公式見解でもなんでもありません。でも、何となくの含意は汲み取れます。当然ながら、肯定的に捉えています。
他方、否定的なのは私を含めて多くのリフレ派のエコノミストです。春先に「日銀券ルール」が話題になった折には、『Voice+』2009年5月号の若田部教授の「『日銀券ルール』の誤謬」がよく引合いに出されました。この記事で若田部教授は「経済学的な根拠はない」と明記しています。もっとも、先の白塚論文でも決して「経済学的な根拠がある」と書いているわけではありません。リフレ派エコノミストだけでなく、日銀エコノミストを含めて、ほぼすべてのエコノミストは「銀行券ルール」には「均衡財政ルール」とまったく同様に何らの経済学的な根拠はないことを理解していることと思います。そもそも、現在の白川総裁は大著『現代の金融政策』において、金融政策とはオペにより政策金利を操作することであると喝破していますので、長期国債を買い入れるかどうかもこのオペの範囲内で考えているんではないかと私は予想していましたが、最近の発言は必ずしもそうではないような気もしますから不思議です。

国債を日銀引受けでマネー・プリンティングにより発行すれば、当然に日銀券発行残高は日銀の国債保有高と同じペースで増加し、「銀行券ルール」は軽くクリアされるような気もするんですが、単純に私が何か誤解しているのかもしれません。

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2009年12月16日 (水)

地方経済は疲弊しているか?

指標発表と明日から始まる日銀金融政策決定会合に合間に、地方経済について考えます。といっても、久しく更新していないデータを年末につきアップデートしたので、グラフを並べるだけです。まず、景気動向の代表選手として鉱工業生産指数を見ます。すべて季節調整済の系列で、単位は2005年=100です。経済産業省の地方支局から発表されているものです。比較のために、赤い折れ線で東京の工業生産指数と水色の全国の鉱工業生産指数です。東京ではなぜか鉱工業生産指数は発表されていません。工業はいっぱい東京にあるんでしょうが、鉱業は無視し得る程度にボリュームが小さいんだろうと思います。各地方の鉱工業生産指数はやや太い黒で表してあります。以下の通りです。

各地方の鉱工業生産指数の推移

一見して明らかなんですが、この春からの景気回復局面でもっとももたついているのが、他ならぬ東京だということです。ホントはピークとトラフで比べるべきなんでしょうが、単純に2005年=100の指数で見て、明らかに谷が東京より深かったのは中部経済圏だけです。その中部も今ではすっかり東京を追い越しています。長崎を含む九州も谷は深かったんですが、直近では東京よりも全国よりも元気よくリバウンドしています。アジア新興国みたいです。

東京・大阪と長崎の1人当たり雇用者所得の推移

では、何が違うのかというと絶対的な所得水準です。上のグラフは最近数年間の東京・大阪と長崎の1人当たり雇用者所得をプロットしたグラフです。左軸の単位は千円です。東京と長崎では年間250万円ほどの所得格差が存在します。毎月20万円もの違いがあれば、私なら東京に引っ越します。総務省の『日本の統計2009』p.23の表2-16 都道府県別転出入者数(平成19年)によれば、長崎も全国で北海道と青森に次いで3番目に社会的人口流出が多くなっていますので、だんだんとそういった方向になるのかもしれません。人的資本の希少性に変化が生じるとすれば、雇用者所得は上昇する可能性があります。もっとも、人口減少がカタストロフィックな転換点に達する可能性も否定できません。その場合は雪だるま式に長崎の地域経済は縮小する可能性もあります。

散漫で取りとめのないエントリーでした。

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2009年12月15日 (火)

アジア開発銀行 (ADB) によるアジア新興国の経済見通し

本日、フィリピンのマニラに本部を置くアジア開発銀行からアジア新興国の経済見通し Asia Economic Monitor が発表されました。もちろん、pdf のフルリポートもアップロードされています。9月に発表された Asian Development Outlook 2009 Update では、ベースが異なるので単純な比較は出来ないものの、アジア域内で2009年+3.9%、2010年+6.4%とされていた成長率が、東アジア新興14カ国に限って改訂され、2009年+4.5%、2010年+6.6%と修正されました。リポートの p.39 から Table 12: Annual GDP Growth Rates を引用すると以下の通りです。縮小してあって見づらい向きは、上にリンクを張ってあるリポート本文をオススメします。どうでもいいことかもしれませんが、我が日本の成長率は見通しの対象ではなく作業前提なんですが、2009年▲5.8%、2010年+1.2%とされています。ご参考まで。

Annual GDP Growth Rates

少し詳しくリポートを見ると、まず、当然ですが、東アジア新興国では2009年第2四半期から力強く反転した rebounded strongly と強調されています。2008年夏まで猛烈な勢いだったインフレは抑えられていて muted 問題なく、対外収支は改善 improved され、資本流入と好調な経済に支えられて通貨は増価しています。現時点の先進国経済を考え合わせると、うらやましい限りの経済状態といえましょう。ただし、先行きのダウンサイド・リスクとしては p.42 に以下の4点が上げられています。

  1. a short-lived recovery in developed economies
  2. policy errors such as premature policy tightening
  3. a slower-than-expected pick up in private demand
  4. destabilizing capital flows

第1点で、特に in particular と国名を上げられているのは我が日本ではなく米国です。家計のバランスシート調整のために貯蓄が増加するリスクが指摘されています。さらに、第2点に関しては、IMF などと違って出口戦略は決して強調されず、むしろ、早すぎる引締め転換に注意を促しています。4番目の観点は先進国には希薄かもしれません。
最後に、私の趣味で、アジア開銀スタッフがHPフィルターで作成したGDPギャップのグラフです。これも縮小したので、はなはだ見づらい向きは p.50 の Figure B1.2: Output Gap をご覧ください。

Output Gap

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2009年12月14日 (月)

12月調査の日銀短観をどう見るか?

本日、12月調査の日銀短観が発表されました。ヘッドラインとなっている大企業製造業の業況判断DIは▲24と9月調査の▲33から9ポイント改善しました。しかし、水準はまだまだ低い上に、改善幅は前回調査の15ポイントより低くなり、かつ、改善はこの先鈍化すると予想されています。また、業種や規模のどのカテゴリーを見るかで少し印象に違いは生じるものの、全般的に設備投資計画はかなり落ち込んでいます。私がグラフでお示ししている大企業全産業の前年度比では9月調査の▲10.8%から▲13.8%となり、一段と設備投資は冷え込んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

日銀が14日発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でマイナス24となり、9月の前回調査(マイナス33)から9ポイント改善した。改善は3期連続だが、前回の改善幅(15ポイント)より縮小した。好調な新興国経済にけん引され、輸出や生産の回復が続いているものの、円高やデフレが企業収益の圧迫要因となりつつある。2009年度の設備投資計画は大企業製造業は前年度比28.2%減で、過去最大の減少幅となった。
業況判断DIは、景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。3カ月先の見通しは大企業製造業でマイナス18と6ポイントの改善を見込むが、企業の景況感は依然大幅な水面下での推移が続く見通しだ。
12月のDIを業種別でみると、製造業では28ポイントの大幅改善となった自動車をはじめ、鉄鋼、電気機械などで大きく回復した。輸出関連産業を中心に景況感の回復が進んでいる。エコポイントやエコカー減税などの景気対策の効果も続いた。

次に、いつもの産業別規模別の業況判断DIのグラフは以下の通りです。上のパネルが製造業、下のパネルが非製造業で、上下のパネルに共通して、赤の折れ線が大企業、青が中堅企業、緑が中小企業です。影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の景気の谷は今年1-3月期と仮置きしています。

日銀短観業況判断DIの推移

グラフの最終四半期は、12月調査時点での3か月先の先行き見通しなんですが、大企業を別にして中堅企業と中小企業は3か月先は業況感が悪化すると判断しています。今回の短観の大きな特徴だと私は受け止めています。まだまだ、先行きの不透明感が大きいと考えるべきです。場合によっては来年前半の2番底が念頭にある可能性も排除できません。
次に、設備と雇用の生産要素需要に関するグラフです。一番上のパネルは設備判断DI、真ん中のパネルは雇用人員判断DI、いずれもプラスは過剰感を示しています。一番下のパネルは大企業全産業の設備投資計画の前年度比です。どんどんマイナス幅が広がっています。

日銀短観設備・雇用判断DIと設備投資計画の推移

少し前まで、設備に比べて雇用の過剰感の解消が速いと私は感じていたんですが、基本的には変わりないものの、雇用の過剰感解消のペースがやや鈍化しつつあるようにも見えます。設備投資は今年度内は大きく減少することで間違いありません。来年半ばくらいからGDPベースの設備投資がプラスに転じるとしても、今しばらくは力強さに欠ける動きを示すと考えられます。また、為替の動向も気にかかるところですが、大企業製造業の想定為替レートは今年度下期でまだ91.16円/ドルと、9月調査の94.08円よりやや円高修正されたものの、現時点の90円を割るようなレートに比べると少し円安水準を想定していて、為替の動き次第ではさらに景況感が悪化し、設備投資や雇用に影響することも考えられます。
最後に、下のグラフは日銀長崎支店支店で取りまとめている長崎短観です。資源高に伴う造船需要から、全国よりも景況感はよかったんですが、そろそろ、この局面も終わりに近づいている気がします。なお、長崎においてはITバブル崩壊後の2001年景気後退が極めて軽微だったという景気循環上の特徴が見られたんですが、下のグラフの通り、今回の景気回復局面もかなり全国とは様相の異なる動向を示しているという気がします。

長崎短観業況判断DIの推移

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サムエルソン教授が死去

広く報じられているところですが、米国人として初めてノーベル経済学賞を授賞されたサムエルソン教授が死去されました。謹んでご冥福をお祈りします。経済学にとって20世紀が終わった象徴のような気がします。New York Times のサイトから記事の最初のパラだけ引用します。

Paul A. Samuelson, Economist, Dies at 94
Paul A. Samuelson, the first American Nobel laureate in economics and the foremost academic economist of the 20th century, died Sunday at his home in Belmont, Mass. He was 94.

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2009年12月13日 (日)

おにいちゃんの誕生日のお祝い

今夜は我が家のおにいちゃんの誕生日をお祝いします。実は、先週にやるつもりだったんですが、私が長崎を離れられませんでしたので、今夜になりました。中学校に上がって初めての誕生日です。一歩、一歩、着実に大人に向かっているようで頼もしく感じます。

おにいちゃんのお誕生日のお祝い
おにいちゃんのお誕生日のお祝い
おにいちゃんのお誕生日のお祝い

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日米外交関係に関する内外メディアの論調

私はエコノミストの大学教授という、まったく専門外ながら、一応、外交官として大使館勤務も経験していますので、今週から来週にかけて日米外交関係が、ある種の正念場を迎えるような気がしています。もうすぐ始まるサンプロでも激論が予想されます。サンプロなどの国内メディアの論調には接しやすいんですが、海外メディアのオピニオンについては目につきにくいこともあり、私自身のためのメモ代わりに内外メディア5社の論調をノートしておきます。また、海外メディアは国内論調と違って、必ず中国を引合いに出しますので、その面からも注目すべきであると考えています。日本でも、朝日新聞のサイト読売新聞のサイトで、中国の習近平副主席と天皇陛下との会談を1か月ルールを無視してゴリ押ししたとの話題がメディアを騒がせ、今も小沢民主党幹事長が訪中の真っ最中であることは分かり切っているハズなんですが、なぜか、日米同盟に中国を加えて考えることは意図的に避けているように見受けられます。

最初に Financial Times から。特に、ショッキングなのはマンガだったりします。日本は米国と中国の間で三角関係を形成しつつあるようです。

US-Japan: an easy marriage becomes a ménage à trois

US-Japan: an easy marriage becomes a ménage à trois
By Philip Stephens
Tokyo these days is full of Americans with furrowed brows. US pre-eminence in Asia is being challenged by the rise of China. Barack Obama's administration is searching for a grand strategy to safeguard its place as the region's pivotal power. Now, Japan is challenging the terms of its long-standing security alliance with Washington.
The proximate cause of the angst is an argument about the relocation of one of the US military bases on the island of Okinawa. Behind the spat, however, is an emerging divergence of perspective. Bluntly put, the new generation of politicians that has swept to power in Japan is unwilling to accept the subservient role allotted to them by Washington.
The election victory in September of Yukio Hatoyama's Democratic Party of Japan marked a revolution in Japanese politics after half-a-century of virtually uninterrupted rule by the Liberal Democratic Party. The US has struggled to grasp the significance of the transfer of power from its faithful allies in the LDP to a party of political insurgents.
The military base dispute has become a lightning rod for differences about how to respond to a changing geopolitical landscape. The strategic challenge shared by Washington and Tokyo is how to engage a rising China while balancing its regional ambitions. The difficult question is how.
The US-Japan relationship has thus far been defined by US occupation, the imperative of cold-war unity, and, until recently, by unchallenged US hegemony in Asia. But the world has moved on. China has entered the bedroom, turning a comfortable marriage into an awkward ménage à.
No one is talking about tearing up the 50-year-old security agreement between Washington and Tokyo. The US military presence and nuclear guarantee offer Japan security against the immediate threat from a nuclear-armed North Korea and reassurance against China's military modernisation. The alliance simultaneously provides reassurance to Beijing about Japanese intentions and the US with a big military "footprint" in East Asia.
The psychology of the bargain, though, belongs to the world before China's rise, a disjunction evident in the base dispute. Mr Hatoyama campaigned on a pledge to revisit an agreement to relocate the Futenma marine helicopter base. Much to Washington's dismay, he has so far kept his promise.
Many in Tokyo believe a compromise will be found. Japan's defence minister has broken ranks with his boss to calm US anxieties. One senior official in Tokyo told me that a deal may be struck when Mr Obama and Mr Hatoyama attend the Copenhagen climate change conference. Yet the US administration's maladroit diplomacy has exposed deeper discord. By demanding that the DPJ elevate the former government's promise to Washington above its own pledge to Japanese voters, the US has sounded an unabashed hegemon. The scolding tone of Robert Gates, the US defence secretary, has echoes of General Douglas MacArthur's postwar imperium.
Other US officials, including Kurt Campbell, the US state department official responsible for East Asia, have been more emollient. Mr Obama offered soothing language during his Tokyo visit. However, behind the scenes, the Americans have been playing hardball by suggesting the DPJ government is calling the alliance into question.
Mr Hatoyama has added to Washington's irritation by calling for a recalibration of the US-Japan relationship to give Tokyo a more "equal" say. For good measure, he has criticised US-style "market fundamentalism" as a trigger for the global crash and suggested that Europe offers better social and economic models. The controversy over Futenma meanwhile has stirred long-standing popular unease about the rights enjoyed by the US forces.
The DPJ government has also announced that it is ending its support for the Indian Ocean naval mission supplying US-led forces in Afghanistan - though it will offset this by expanding financial aid for Afghan reconstruction.
What really seems to have alarmed Washington, however, is Mr Hatoyama's intervention in a regional debate about the architecture of a new Asian multilateralism. The prime minister's proposal for a new East Asian Community centred on China and Japan seems to exclude the US. Washington has made it clear that it does not like being excluded.
The US-educated Mr Hatoyama is not anti-American. Nor is he a born radical - he hails from a wealthy establishment family. His great grandfather, grandfather and father all held high office. Japanese politics is still substantially hereditary.
Nor, as far as one can tell, is Mr Hatoyama proposing fundamentally to weaken Japan's alliance with Washington. Listening this week to an impressive line-up of experts, ministers and officials at a series of seminars organised by the Tokyo Foundation and the German Marshall Fund of the US, the impression I took away was of a politician voicing a set of impulses rather than offering detailed policies.
Mr Hatoyama has a reputation - even among some supporters - as a big-picture politician. He seems uninterested in detail and unperturbed by inconsistency. There are plenty of people in the Tokyo political establishment who predict that, while the DPJ is here to stay, Mr Hatoyama may prove a shooting star - his present brightness prefiguring a fleeting presence.
For all that, the prime minister has been articulating an inevitable strategic shift: China's rise is forcing Japan to become more of an Asian and less of a western nation. It fears China, but is also inclined to be less submissive towards Washington. Mr Hatoyama's vision of a re-engineered partnership with the US may be hazy, but his premise is surely right.
As of now, the Americans and Japanese have a different view of their roles in the ménage. The US wants to combine its alliance with Tokyo with a strategic relationship with Beijing, acting as the region's balancing power. Japan favours a different model, acting as conciliator between America and China. Real life, of course, is unlikely to allow such simple constructs, not least because the Sino-Japanese relationship has yet to escape the dark shadows of history. But things cannot be as they were. Those brows will be furrowed for some time.

続いて、Washington Post です。

Does Japan still matter?
By Fred Hiatt
U.S.-Japan relations are in "crisis," Japan's foreign minister told me Thursday -- but I would guess that few Americans have noticed, let alone felt alarm. As China rises, Japan's economy has stalled, and its population is dwindling. The island nation -- feared during the last century first as a military power, then as an economic conqueror -- barely registers in the American imagination.
But Japan still matters. And despite the "crisis" set in motion by the electoral defeat of the party that had ruled for half a century, the United States has more to fear from Japanese defeatism -- from its own uncertainty about whether it still matters -- than from the assertiveness of its new government.
At a seminar here this week organized by the German Marshall Fund and the Tokyo Foundation, and in separate interviews, one Japanese after another delivered variations on gloom, doom and pessimism. Polls confirm that this is no anomaly; in one taken by the Asahi Shimbun newspaper last spring, the three words offered most often to describe the current era were "unrest," "stagnation" and "bleak," as the paper's editor in chief, Yoichi Funabashi, noted recently in Foreign Affairs.
"Japan's presence in the international community is rapidly weakening and waning," one prominent businessman said this week. "We have to bring Japan back to high growth, but that possibility now is nil. . . . There are heaps of difficulties facing Japan . . . insurmountable . . . Japanese people are so anxious. . . . We don't need to remain a major country. . . . 'Small-nation Japan' is my thinking."
Japan's fiscal challenges are daunting, as is its declining birthrate. Yet the negativity seems overblown. Japan retains the world's second-largest national economy and will be third or fourth biggest for decades to come. It is the world's second-largest aid donor, the fifth-biggest military spender (despite a constitution that bars the waging of war) and a technological powerhouse. It is a crucial player, and frequently America's closest ally, in international organizations such as the World Bank and the International Monetary Fund. And as the longest-standing and most successful democracy in the non-Western world, it is a hugely important role model, and potentially a leader, in supporting freedom and the rule of law.
That potential was sharply enhanced by the landslide victory of the Democratic Party of Japan in August, ending what one speaker at the seminar called the Liberal Democratic "shogunate." The Democrats have promised to disrupt the cozy relationship among bureaucrats, the ruling party and industry, and to govern with more public input and accountability.
But they're also disrupting the U.S.-Japan relationship. An agreement to realign U.S. Marine bases in Okinawa has been put on hold, despite what U.S. officials took as a promise from Prime Minister Yukio Hatoyama ("Trust me," he privately told President Obama, according to Japanese officials) to implement the deal. The Democrats' coalition partners, as well as voters in Okinawa, loathe the pact.
"So we are in a situation where the U.S.-Japan alliance is being tested," Foreign Minister Katsuya Okada acknowledged.
Democratic Party officials have said they want to put the U.S.-Japan relationship on a more equal footing, and Hatoyama and others have at times gone further, suggesting a desire to improve relations with China while downgrading those with the United States. But Okada dismissed suggestions that the suspension of the base agreement reflects a deeper-seated resentment of America or a fundamental questioning of the alliance.
Citing North Korea's nuclear weapons and China's growing military, Okada said, "I don't think anyone would think that Japan on its own can face up to such risks. That is why we need the U.S.-Japan alliance. I don't think any decent politician would doubt that as a fact."
Frustrated by Hatoyama's amateurish handling of the issue, Obama administration officials are scrambling to come up with the right mix of tolerance for the coalition's inexperience and firmness on implementing an agreed-upon deal. They're right to insist on the importance of the military alliance, long a force for stability throughout the region.
But they shouldn't lose sight of the larger picture. For years now the United States has been trying to engage China's government in strategic dialogues and high-level commissions. It should do no less with Japan, its most important democratic ally in Asia, and the advent of an untested government still feeling its way provides both reason and opportunity to do so.
So far, Japan's new government has not defined policies that could restore economic growth and lift the country out of its funk. But America should be hoping that it can. And if it wants Japan to regain some confidence, it makes sense to treat Japan as though it matters. Because it does.

海外メディアの最後に、New York Times です。

Obama's Japan Headache
By Roger Cohen
President Obama has a Japan problem. I know, it's not an issue that keeps him up at night. But when U.S. ties with its most important Asian ally get ugly over security rather than semiconductors, the world must be changing.
Certainly Japan is. Having voted out the shoguns of the Liberal Democratic Party who ruled for more than a half-century, and declared war on the bureaucracy that greased the pork-barrel deals of that long dominion, the Japanese are taking a new look at the power that wrote their Constitution and underwrote their assumptions: the United States.
As a result there are troubles. Reliable Japan is now restive Japan. It's talking about a more "equal partnership" - read less subservient. Acquiescence has given way to argument.
I find that normal in that Japan has just gone through a political change as dramatic in its way as any post-Cold-War demolition of a single-party dominated, American-backed status quo.
Still, the troubles between the world's two largest economies are proving unexpectedly sharp. Ministers here shake their heads and mutter "really bad." On the face of it, Obama and Prime Minister Yukio Hatoyama, who guided the upstart Democratic Party to victory last September, have much in common, including change. Bad blood was not inevitable.
Both leaders swept into office on the back of middle class malaise at falling incomes and job insecurity. The Japanese salaryman and the American working stiff have shared a lousy decade.
Both leaders hover in the center despite left-of-center inclinations and ideals. Both face the task of adjusting their countries' expectations to a world in which their relative power is eroding. True, Obama was the ultimate outsider whereas Hatoyama is the scion of a Kennedy-like political dynasty (and heir to the Bridgestone tire fortune). But shared concerns might have trumped differences of background.
Instead, trust has dissolved faster than wasabi in soy sauce. The spark has been the future of a Marine air station in the southern island of Okinawa, where local feelings run high over the noise, crime and pollution many associate with the U.S. military presence. The deeper issue is more complex: growing Japanese restiveness over postwar dependency on Washington of which the most visible symbol is the 37,000 American troops here.
Hatoyama has given voice to that chafing. He campaigned with a pledge of greater assertiveness, questioning a 2006 deal to relocate the Futenma air station to a pristine site in the north of the island (environmentalists in his party are incensed), suggesting the base should be moved off the island or even out of Japan. He has also talked about a revision of the Constitution whose Article 9 denies Japan a full-fledged military.
"We take the U.S.-Japan alliance very seriously, it's the heart of our foreign policy, although Hatoyama used to talk about an alliance without permanent bases and that may confuse our U.S. friends a bit," said Akihisa Nagashima, the vice minister of defense. "Now I believe Hatoyama does not think we should kick out U.S. troops - never, not at all."
But doubts have been sown on the American side. They've multiplied through misunderstanding. When the president was here last month, Hatoyama appealed for trust, Obama said sure, but they never cleared up what the mutual trust was about. To Hatoyama, it was the future of the alliance. To Obama it was the implementation of the $26 billion 2006 Okinawa accord.
That was a disastrous little ambiguity. Now everyone's unhappy. A high-level working group on the Marine base, announced by Obama, has fallen apart.
My conversations here suggest Hatoyama's not going to make a final decision for months, perhaps not before upper house elections next July that could liberate him of his left-wing junior coalition partners. Richard Armitage, a former deputy secretary of state who's been running around town, is only the most visible expression of U.S. impatience. Obama shares it.
"I can't change the political situation here," Nagashima said, referring to the Okinawan anger and coalition pressure on Hatoyama. "I really want our American friends to accept and work with us despite these difficulties."
That's sound advice. Having just taken 90-plus days over an Afghan decision, Obama can't dismiss Hatoyama as a ditherer. He's taken the reins after more than five decades of the L.D.P shogunate. He needs time - and the whiff of a campaign financing scandal is not helping him.
The deeper forces behind Hatoyama's victory and the Futenma imbroglio are these. Japan, like Germany before it, wants to move out from under American tutelage. Unlike Germany, however, it inhabits a part of the world where a Cold War vestige - nuclear-armed North Korea - endures and fast-rising China with its growing military is just across the water.
In short, the need for the Japan-U.S. alliance is real even if the Japanese urge for liberation from its more demeaning manifestations is growing. That says to me that everyone should take a deep breath. U.S. impatience should be curbed along with the pie-in-the-sky "world of fraternity" musings of elements in Hatoyama's party. Be flexible on Futenma but unyielding on the strategic imperative binding America and Japan.

注目すべきなのは、Financial Times を除いて、Washington Post と New York Times は東京特派員が解説していることです。中身については、私もこれに似た経験があるんですが、試験の前に質問に来た学生に対して、「こんなことも分からないのか、アホ、バカ、マヌケ」と叱り飛ばすわけにもいかず、それなりに親切丁寧に解説を加えるものの、「どうして、こんなことが理解できないんだろう」と極めて強い苛立ちを覚える心境が、行間によく表れています。きわめて辛抱強い文章の典型といえます。

次に、国内メディアに目を転じて朝日新聞です。

普天間問題―日米関係の危機にするな
米海兵隊の普天間飛行場の移設問題が一段とこじれてきた。
鳩山由紀夫首相が先週、移設問題の結論を来年に持ち越す方針を示したことが直接の発端だ。名護市辺野古への移設案に連立相手の社民党が強硬に反対したことに配慮したものだった。
だが、その結果、首相がオバマ米大統領との間で合意した、辺野古案を検証する閣僚級の日米作業部会は宙に浮いてしまった。首脳会談で確認した来年の安保条約改定50周年に向けた「同盟深化」の協議にも入れそうにない。
日本政府関係者によると、辺野古案以外に現実的な打開策はないとする米政府側の、先送りに対する反発が底流にある。こうした展開に、岡田克也外相でさえ「日米関係の現状に非常に強い危機感を持っている」と語る。
なぜこの事態なのか。日米関係の基盤は安保条約であり、日本が基地を提供するのは不可欠の要件である。移設問題はその重要な一環だ。この基本認識では日米に大きな違いはあるまい。
米側が既存の合意の実施を求めるのは、米国の立場としては当然だろう。同時に、政権交代を踏まえた鳩山政権が過去の経緯を検証し、沖縄の過重な負担を軽くするための方途を探ろうとすることも否定されるべきではない。
問題は、同盟国間の外交らしく、在日米軍の抑止力をどう維持するのか、日本としてそのコストをどう分担するのかという観点からの率直な意思疎通がうかがわれないことだ。
これで同盟そのものが壊れるかのような議論は短絡的に過ぎるが、コミュニケーションが不全なまま混迷が深まるのは不幸なことだ。
オバマ大統領は東京での演説で「この半世紀、日米同盟は安全保障と繁栄の基盤であり続けた」と述べた。今必要なのは、その「基盤」を保ち、管理していくための意思と知恵である。
いったんは年内決着を探りながら、連立への配慮を優先し、結論を先送りした鳩山政権に対する米国側のいらだちは理解できる。
一方で朝日新聞の世論調査では、日米合意を見直して再交渉すべきだという人が半数を超えた。沖縄県民だけでなく、こうした世論の動向も軽視されるべきではない。
防災や医療、教育などの分野で重層的な協力を広げていくという首相の「同盟深化」論は、地球温暖化対策や核不拡散の取り組みを重視するオバマ政権の方向性と一致するものだ。日本国民も、ともすれば軍事面のみが強調されがちだった従来の同盟像が刷新されることを歓迎するに違いない。
この流れを大事に育むためにも、普天間問題をめぐるあつれきをできるだけ抑え込むことが首相の責任である。まずはどのような「方針」なのか、それを早く出してもらいたい。

最後の最後に読売新聞です。

普天間協議中断 同盟の危機回避へ決断せよ
その場しのぎの優柔不断な対応を重ねた末、連立政権の維持を最優先するという鳩山首相の判断が、日米同盟の危機を招いている。
このまま放置すれば、安全保障だけでなく、政治、経済などの分野を含め、日米関係全体に重大な影響を与えかねない。
岡田外相が「日米同盟が若干揺らいでいる」との懸念を表明するほど、現在の日米関係は憂慮すべき状況にある。鳩山首相は、この事実をきちんと認識し、建設的な対処方針をまとめるべきだ。
沖縄県の米海兵隊普天間飛行場の移設問題を協議する日米の閣僚級の作業部会が中断されることになった。日本側が、与党の社民党の反対を理由に、年内の決着を先送りするよう伝えたためだ。
来年の日米安保条約改定50周年に向けて、同盟関係を深化させるための日米協議についても、米側が延期を通告してきた。
首脳会談で「迅速に結論を出す」と確認しながら、国内事情から年内決着を一方的に断念する。これでは、信頼関係を基盤とする日米の共同作業は成り立たない。
政府は、年内決着を先送りすることの重大な意味を真剣に考えねばなるまい。
年内決着が実現しなければ、現行計画は事実上頓挫する。新たな移設先を探す作業は極めて困難で、膨大な時間を要する。
その場合、市街地に隣接し、危険な普天間飛行場が現状のまま長期間存続し、固定化する恐れが大きい。海兵隊8000人のグアム移転と米軍6施設の返還も白紙に戻る可能性が高まる。
政府内では新たな対処方針として、普天間飛行場の危険除去など沖縄の負担軽減策を優先して米側に要請する案が浮上している。だが、日本側にだけ都合のいい案に米側が同意する可能性は低い。
現行計画を容認しないまま、移設費用を来年度予算に計上しても米側の理解を得るのは難しい。やはり、日本政府として、現行計画を推進する立場を早期に明確にすることが欠かせない。
普天間問題や予算編成などをめぐり、民主党が少数与党の社民党や国民新党に振り回される事態が目立つ。首相の指導力の欠如と相まって、連立政権の政策実行能力に大きな疑義を生んでいる。
社民党は「重大な決意」に言及して連立離脱をちらつかせ、現行計画に反対した。鳩山首相こそ、連立解消も辞さない「重大な決意」で普天間問題の早期解決に取り組むべき時である。

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2009年12月12日 (土)

伊坂幸太郎『SOSの猿』(中央公論新社) を読む

伊坂幸太郎『SOSの猿』(中央公論新社)

伊坂幸太郎さんの新作『SOSの猿』(中央公論新社)を読みました。まず、ネタバレをする前に、出版社のホームページにあるあらすじを引用すると以下の通りです。

家電量販店の店員・遠藤二郎は、イタリアで修行した「エクソシスト」というもう一つの顔を持つ。遠藤は他人の発する「SOS」を見過ごせない性格だった。ある日、知り合いの「辺見のお姉さん」にひきこもりの息子・眞人の悪魔祓いを依頼され、辺見家に赴く。
一方、桑原システムの社員・五十嵐真は、20分間で300億円の損失を出した菩薩証券の株誤発注事故の調査を命じられる。 菩薩証券は、ミスの原因をシステムのせいにしたがっているという。聞き取り調査を始めた五十嵐は、なぜか奇怪な幻想に翻弄されていく。
眞人の部屋で「西遊記」を発見する遠藤。そして五十嵐の前には異形の猿が......。これは現実か妄想か。二つの物語のゆくえはいかに。

まず、この作品が伊坂作品であることは間違いないんですが、漫画家の五十嵐大介さんとと共同で構想した世界を、それぞれ独自に小説とコミックの二つの表現方法で競作した、という意味で、めずらしい試みであるといえます。来年早々には五十嵐さんのマンガの方も小学館から出版されるようですから、コチラも読んでみたい気がします。読売新聞夕刊に連載されていた小説を大幅に加筆修正して出版したと記されています。なお、以下にはネタバレを含む可能性があります。未読の方が読み進む場合にはご注意ください。
物語の場所は伊坂作品の中心をなす仙台ではなく、東京であるようです。山手線が出て来ます。遠藤次郎が1人称で進める「私の話」と、3人称で語られる五十嵐真の「猿の話」と交互に物語は進みます。「猿の話」の方は孫行者、すなわち、一般には孫悟空の名で知られている妖怪が語り手のようです。ですから、「猿の話」の方には『西遊記』よろしく、登場人物が牛魔王をはじめとする妖怪に擬されます。三蔵法師は五十嵐真自身です。なぜか、孫悟空から五十嵐真が「お師匠様」と呼びかけられたりしますが、他の人には孫悟空は見えないとの設定です。また、引用にもある通り、遠藤二郎は悪魔祓いの資格をイタリアで取得していたりします。物語が 2/3 くらい進んだところで長い「五十嵐真の話」が現れて、作品の結論を迎えます。
宗教的な観念の中で、善悪や真偽とは何かを考えさせられる作品ですが、そんなに重く受け止めるべき作品でもないような気もします。そもそも、仏教とは真理の体系であると私は考えています。しかし、キリスト教やイスラム教的な全知全能の神といった形で、絶対的な真理や善というものが仏教には存在しないのも事実です。我が家が信仰する一向宗、すなわち、浄土真宗でも阿弥陀仏は一神教の神に近いですが、全知全能というよりも真理の体現者です。また、村上作品のようなエンタテインメント性もないわけではないんですが、従来の伊坂作品を好きな人には「重い」と感じられ、やや不発度が高いような気がしないでもありません。株の誤発注や児童虐待も取り入れられており、このあたりの社会性は新聞連載であることも関係しているのかもしれません。

読み終えた『SOSの猿』は私が愛用している尾道帆布のレンガ色のブックカバーとともにおにいちゃんの手元に渡って行きました。親子で競い合うように伊坂作品を読んでいる我が家ですが、おにいちゃんには期末試験が終わってから読み始めるように言い渡してあります。でも、早くおにいちゃんの感想を聞いてみたい気がします。

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今年の漢字は「新」に決まる

昨日、漢字能力検定協会から今年の漢字は「新」と発表されました。2位は「薬」、3位は「政」だったそうです。2位の「薬」は新型インフルエンザもさることながら、ノリピーなんかの芸能界薬物汚染も含まれるんでしょうか。漢検もいろいろとありましたが、無事に清水寺で昨日の発表があったので、何となく安心している人も多いのかもしれません。以下は、出典は漢検ホームページから引用しています。

漢字理由
2009さまざまな「新しいこと」に期待し、恐怖を感じ、希望を抱いた1年。世の中が新たな一歩を踏み出した今、新しい時代に期待したい。
2008日米の政界に起こった変化や世界的な金融情勢の変動、食の安全性に対する意識の変化、物価の上昇による生活の変化、世界的規模の気候異変などさまざまな変化を感じた年。
2007身近な食品から政界、スポーツ選手にまで、次々と「偽」が 発覚して、何を信じたら良いのか、わからなくなった一年。
2006悠仁様のご誕生に日本中が祝福ムードに包まれた一方、いじめによる子どもの自殺、虐待、飲酒運転事故など、痛ましい事件が多発。ひとつしかない命の重み、大切さを痛感した年。
2005紀宮様のご成婚、「愛・地球博」の開催、各界で「アイちゃん」の愛称の女性が大活躍。残忍な少年犯罪など愛の足りない事件が多発したこと。「愛」の必要性と「愛」欠乏を実感した年。
2004台風、地震、豪雨、猛暑などの相次ぐ天災。イラクでの人質殺害や子供の殺人事件、美浜原発の蒸気噴出事故、自動車のリコール隠しなど、目を覆うような人災が多発。
「災い転じて福となす」との思いも込めて。
2003阪神タイガースの18年ぶりのリーグ優勝、衆議院選挙へのマニフェスト初導入で政治家たちが声高に吠えたこと、「虎の尾をふむ」ようなイラク派遣問題など。
2002北朝鮮に拉致された方の帰国、日本経済がバブル以前の水準に戻ったこと、昔の歌や童謡のリバイバル大ヒットなど「原点回帰」の年。
2001米国同時多発テロ事件で世界情勢が一変して、対テロ戦争、炭そ菌との戦い、世界的な不況との戦いなど。
2000シドニーオリンピックでの金メダル。南北朝鮮統一に向けた“金・金”首脳会談の実現。新500円硬貨、2000円札の登場など。
1999世紀末、1000年代の末。東海村の臨界事故や警察の不祥事など信じられない事件が続出して、「世も末」と実感。来年には「末広がり」を期待。
1998和歌山のカレー毒物混入事件や、ダイオキシンや環境ホルモンなどが社会問題に。
1997山一證券など大型倒産の続出や、サッカー日本代表が並いる強豪を倒してワールドカップ初出場決定。
1996O-157 食中毒事件や狂牛病の発生、税金と福祉を「食いもの」にした汚職事件の多発。
1995阪神・淡路大震災や、オウム真理教事件、金融機関などの崩壊などに“震えた”年。

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2009年12月11日 (金)

来週発表の日銀短観は小幅改善に止まるか?

日銀による今週12月14日の発表を前に、各シンクタンクや金融機関などから12月調査の日銀短観の予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、もっとも注目される大企業の業況判断DIを取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。詳細な情報にご興味ある方は左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
ヘッドライン
9月調査実績▲33
▲24
n.a.
日本総研▲27
▲21
企業マインドの改善ペースは鈍化傾向
みずほ総研▲20
▲19
業況感は製造業・非製造業ともに改善
ニッセイ基礎研▲27
▲22
企業の景況感に足踏み感
三菱UFJ証券景気循環研究所▲24
▲22
製造業を中心に景況感の改善が続く
第一生命経済研▲35
▲25
製造業の景況感は足踏み
三菱総研▲31
▲23
業況判断DIの改善にはブレーキがかかる
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲25
▲22
改善幅は前回調査よりも小幅
富士通総研▲28
▲22
製造業、非製造業とも小幅な改善に留まる
新光総研▲27
▲22
業況判断の改善続くも、そのペースは鈍化

この表を見ても明らかなんですが、第一生命経済研究所を除いて幾分なりとも9月調査の短観よりも改善を示すとのコンセンサスがほぼ存在するように私は受け止めています。しかし、改善幅はかなり小幅で、依然として業況判断DIがマイナス領域にあることは明らかです。ドバイ・ショックと呼ばれた急激な円高は11月25日過ぎに発生し、日銀短観の調査時期は不勉強にして私は知らないんですが、時期的な兼ね合いも重要な要素になる可能性があります。なお、上の表には取り入れてありませんが、9機関すべてで12月調査における先行きも予想していて、12月調査で悪化すると予想した第一生命経済研究所も含めて先行きは改善するとの予想を立てています。それでも、さすがにマイナスのままでプラスに入ると予想する機関はありません。

いつもながら、諸般の事情で、設備投資計画や設備と労働の要素需要に関する予測は割愛していますが、コチラも気にかかるところです。

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2009年12月10日 (木)

機械受注はいよいよ下げ止まりへ!

本日、内閣府から10月の機械受注統計が発表されました。設備投資の先行指標となる船舶と電力を除く民需の季節調整値、いわゆるコア機械受注は前月比▲4.5%減の7045億円となりました。市場の事前コンセンサスが▲4.4%減でしたから、ジャストミートしたといえます。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

内閣府が10日発表した10月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)は前月比4.5%減の7045億円だった。通信業などからの受注減少が響き、3カ月ぶりにマイナスとなった。内閣府は「下げ止まりに向けた動きが見られる」との基調判断を据え置いているが、企業の設備投資意欲は盛り上がりに欠ける状態が続いている。
内閣府の津村啓介政務官(経済財政担当)は同日の記者会見で「外需主導の景気回復が設備投資を通じて国内に波及しているかどうか、引き続き慎重に見極める必要がある」との認識を示した。

昨日少しトンチンカンな発言をした津村政務官が今日も記者発表しているようです。いくつか経験をしながら、しっかりお勉強していただきたいものです。次に、いつものコア機械受注のグラフは以下の通りです。青い折れ線は毎月の統計、赤が6か月後方移動平均です。

コア機械受注の推移

上の赤い折れ線グラフから大雑把な感じはつかめると思いますが、私も含めて、大方のエコノミストは、設備投資の先行指標としてのコア機械受注は下げ止まったと考えています。かなり慎重に見ても、機械受注は底割れに至っておらず、設備投資がものすごい勢いで縮小する局面は終わったと考えるべきです。もちろん、過去の月当たり1兆円の水準にはるかに及ばない7000億円そこそこの受注ですが、設備投資の先行指標として見れば、来年年央からGDPベースの設備投資が回復に向かう可能性を強く示唆していると私は受け止めています。もちろん、楽観的に見える一方で、先日の景気ウォッチャー調査に見られるようにマインドはまたしても下降を始めており、設備投資も将来に対するマインドが強く反映されることから、今しばらく低下を続ける可能性も十分あり、不透明感が完全に払拭されたわけではありません。

機械受注のうち船舶の推移

最後に全国レベルでは何の注目もされないながら、長崎ローカルで関心の高い船舶関連の受注については、まだまだ水準としては高いものの、いよいよ低落局面に入ったことがハッキリしました。受注が減少して手持ち月数も大きく低下しています。私の最近の研究でも造船業の受注残高は明らかに長崎経済のけん引役ですから、ここが沈むと長崎経済全体が低迷する可能性があります。さらに、全国景気が来年前半に2番底に入ったりすると、長崎経済の先行きはますます暗くなる可能性があったりします。

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2009年12月 9日 (水)

GDP成長率の下方修正は「統計の信頼性」に起因するわけではない!

本日、内閣府から7-9月期のGDP統計、エコノミストの業界でいうところの2次QEが発表されました。ヘッドラインの実質成長率は前期比で+0.3%、前期比年率で+1.3%となりました。いずれも季節調整済の系列です。先月発表された1次QEが前期比+1.2%、年率換算で+4.8%でしたから、すでに一昨日のうちに予測しておいた通り、大幅な下方修正でした。設備投資、在庫投資、公的需要は大きく下方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

内閣府が9日発表した7-9月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.3%増(速報値1.2%増)、年率換算で1.3%増(同4.8%増)となり、11月公表の速報値に比べ、年率で3.5ポイントの下方修正となった。速報段階で前期比1.6%増だった設備投資が改定値で2.8%減と大きく下方修正したことが響いた。
改定値は速報値の公表後にまとまる法人企業統計などのデータを基にGDPを推計し直したもの。成長率の見直し幅は現在の速報値の仕組みを導入した02年4-6月期以降で最大となった。日経グループのQUICKがまとめた民間調査機関の事前予測の中心値(年率換算で2.7%増)を大きく下回った。
会見で津村啓介政務官は「景気回復が各方面に波及しつつあるとみていたが、今回の数字を踏まえるとより慎重にみる必要がある」と述べ、設備投資がマイナスに転じたことに警戒感を示した。GDPが改定値で大きく変わることについて「統計の信頼性にかかわる」と述べ、原因を細かく分析したいとの考えも示した。

それから、いつもの表は以下の通りです。正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、完全性は保証しません。統計については最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2008/
7-9
2008/
10-12
2009/
1-3
2009/
4-6
2009/
7-9
1次QE2次QE
国内総生産(GDP)▲1.0▲2.7▲3.1+0.7+1.2+0.3
民間消費▲0.1▲0.9▲1.2+1.2+0.7+0.9
民間住宅+3.9+2.5▲6.4▲9.4▲7.7▲7.9
民間設備▲4.4▲6.7▲8.4▲4.6+1.6▲2.8
民間在庫 *+0.2+0.9▲0.4▲0.7+0.4+0.1
公的需要▲0.1+1.1+1.1+1.3+0.1▲0.4
外需 *▲0.5▲2.3▲0.7+1.4+0.4+0.4
輸出▲2.0▲13.9▲21.3+6.5+6.4+6.5
輸入+0.7▲1.6▲15.0▲3.3+3.4+3.3
国内総所得(GDI)▲1.9▲0.5▲1.5+0.4▲0.0▲0.7
名目GDP▲2.2▲0.8▲3.0▲0.7▲0.1▲0.9
雇用者所得▲1.4+0.4▲0.7▲0.9+0.7+0.7
GDPデフレータ▲1.2+0.4+0.3▲0.5+0.2▲0.5
内需デフレータ+1.5+0.2▲1.2▲2.6▲2.6▲2.8

次にいつもの寄与度表示したGDP前期比のグラフは以下の通りです。

GDP成長率の推移

今日の午後は5時間以上も会議で費やし、今夜のエントリーがかなり遅くなったので、需要項目ごとの細かい点は、先週の法人企業統計を取り上げたエントリーや一昨日にすでにお示ししてあると思いますから、1点だけ指摘すると、引用した日経新聞の記事にある津村政務官の「統計の信頼性」に関する議論は間違っているということです。GDP統計は国連からマニュアルが示された統計ですし、2次統計とはいえ推計方法は確立しています。1次QEから2次QEで大きく下方修正されたのは、「統計の信頼性」が低いからではなく、新たに発表された指標を入れて推計し直すと成長率が低下したという事実です。すなわち、1次QE推計後に公表された指標が軒並み低成長を示していると受け止めるべきです。内閣府のことですから、分かっているエコノミストは大勢いるんでしょうが、先日の確報のミスもありましたし、官僚バッシングの皮肉を込めて政務レベルで曲解したのだろうという気はするものの、そもそも、速報性と正確性はトレードオフの関係にあるわけですから、「原因を細かく分析」するよりも、もっと重要な仕事があるような気がします。

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2009年12月 8日 (火)

景気動向指数はいよいよ「改善」へ!

本日、いくつかの経済指標が発表されました。私が重要と考える順に従って、内閣府から10月の景気動向指数、同じく内閣府から11月の景気ウォッチャー調査、財務省から10月の国際収支統計です。

景気動向指数の推移

まず、景気動向指数の推移は上のグラフの通りです。上のパネルが CI で、下は DI です。10月の CI で見て、一致指数が94.3、先行指数も89.7となり、内閣府は基調判断を「改善」と上方修正しました。DI も10月は100に達しました。採用されているすべての指標が景気拡大を示しているということです。10月までは順調に景気が回復しています。先月、「下げ止まり」から「上方への局面変化」と上方修正されて、今月はさらに「回復」への上方修正です。11月6日付けのエントリーの繰返しですが、私の予想では来年の春ころには景気動向指数研究会を開催し、今年3月を景気の谷と認定するんではないかと考えています。もっとも、その前に2番底に陥っていれば、認定は出しにくいかもしれません。

景気ウォッチャー調査の推移

しかし、冴えない動きを示している上のグラフは景気ウォッチャー調査です。11月の現状判断DIは、前月比▲7.0ポイント低下の33.9となり、2か月連続で低下しています。今月の下げ幅は特に大きいです。少し前まで強気だった反動が表れていることは確かなんですが、エコカーやグリーン家電のエコポイントに歓喜された需要が一巡したところに、厳しい雇用情勢や年末ボーナスの減額見込みを反映して家計は苦しく、産業界も低価格競争にあえいでいます。デフレの悪影響が本格化した感があります。

経常収支の推移

最後に、国際収支統計のうちの経常収支統計が上のグラフです。先月までは季節調整していない原数値でグラフを書いていたんですが、今月からは季節調整値を使っています。貿易収支と経常収支が新興国への輸出の増加を反映して、景気拡大期の水準にリバウンドの過程にあると見ています。

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2009年12月 7日 (月)

明後日に発表される7-9月期GDP2次速報は大幅な下方改定か?

内閣府による今週12月9日の発表を前に、法人企業統計調査など2次QEに必要な経済指標がほぼ先週に出尽くし、各シンクタンクや金融機関などから今年7-9月期の2次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。詳細な情報にご興味ある方は左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+1.2%
(+4.8%)
n.a.
日本総研+0.9%
(+3.6%)
設備投資と在庫投資が下方修正
みずほ総研+0.7%
(+2.7%)
輸出が若干上方修正される一方、設備投資や在庫投資、公共投資が下方修正
ニッセイ基礎研+0.7%
(+2.8%)
1次速報(前期比1.2%、年率4.8%)から大幅に下方修正
第一生命経済研+0.6%
(+2.5%)
設備投資下振れで、1次速報から大幅に下方修正
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.5%
(+1.9%)
1次速報値から大きく下方修正
三菱総研+0.8%
(+3.1%)
民間企業設備投資と民間在庫品増加は、それぞれ下方修正
先週12月3日付けのエントリーで取り上げた法人企業統計調査の結果から、デフレータ次第ながら、設備投資は大きく下方修正されることは確実です。さらに、在庫も下方改定されると私は見ています。従って、これら需要項目の和である全体のGDPも下方修正されます。上方修正される可能性のあるのか輸出くらいなものではないかと私は受け止めています。しかし、最終的なGDP全体の仕上がりとして、上の表にもある通り、実質年率成長率で2%程度かこれを上回る可能性が高いのも確かです。

でも、発表された途端に2次QEは過ぎ去った7-9月期の過去の数字と見なされる可能性があります。その先、来年前半に2番底 double dip が待っている可能性があるからです。

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2009年12月 6日 (日)

長崎大学のランキングはいかほどか?

少し前の12月1日付けのエントリーで「事業仕分けをどう見るか?」と題して、現内閣の目玉を取り上げ、その後、各方面からいろいろと異論が出ています。その中でもメディアなどに取り上げられた強い異論は科学分野とスポーツ界からのものが私の印象に残っています。ということで、科学分野からはノーベル賞受賞者とともに、いくつかの大学が反論しているんですが、日本の大学のランキングで、我が奉職する長崎大学がどのあたりに位置しているのかについて、休日のヒマを利用して少し考えてみます。まず、読売新聞の科学面から2つの記事を引用します。

最初の記事の9大学とは旧制帝国大学7大学プラス早慶です。当然ながら我が長崎大学は含まれていません。次の記事では旧制帝国大学7大学と東京工業大学を除く国立53大学に長崎大学が含まれています。もっとも、2番目の記事は国立大学だけで、私立大学や公立大学にも工学系の学部はありますから、トップ53というわけではありません。
大学のランキングで有名なのは『大学ランキング 2010』(週刊朝日)とか『大学図鑑! 2010』(ダイヤモンド) といえます。でも、私はどちらも見たことはありません。同業者の大学教員は熱心に見ているのかもしれません。分野を限れば、Financial Times の MBA rankings なんてのもあります。我が長崎大学にも MBA コースはありますが、そもそも、日本のビジネス・スクールは上位100校に出現しません。
また、経済週刊誌にも毎年の恒例記事で大学ランキングが掲載されています。下の画像は11月上旬の記事だったと思うんですが、私が見た中で、「本当に強い大学ランキング【2009年版】」(東洋経済) から引用しています。誠に残念ながら、我が長崎大学はトップ100に入っていません。さらに、我が母校の京都大学が4位に甘んじていますし、筑波大学が出現しませんから、引用しておきながら無責任ですが、かなり疑問に感じます。

「本当に強い大学ランキング【2009年版】」(東洋経済)

さらについでに就職で考えて、人事院が発表している平成20年度のキャリア公務員採用試験のうち、法律・経済・行政区分における合格者の出身大学に長崎大学出身者が1名います。女性となっています。この一覧には69大学が入っています。
再び東洋経済の「本当に強い大学ランキング【2009年版】」には失礼ながら、私自身の実感で言うと、トップ3大学は東大、京大、阪大の順で明らかです。過去50年間そうだったでしょうし、この先、50年くらいは動かないような気もします。トップ10となれば、旧制帝国大学7大学に早慶を加え、法律・経済系であれば一橋大学、理工学系であれば東京工業大学なんだろうという気がします。トップ12ならこのトップ10に筑波大学と神戸大学が加わります。いずれにせよ、長崎大学は1桁ではあり得ません。しかしながら、日本に700余りある大学の中で、何とかトップ100か、せめて上位20パーセントには入っているような気がしないでもありません。

私が海外生活を送ったチリとインドネシアでは国名を冠したチリ大学とインドネシア大学がダントツのトップ大学でした。従って、「日本では日本大学が一番」と勝手な類推をする場合があったことを思い出します。

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2009年12月 5日 (土)

米国雇用統計のグラフィックス

日本時間の昨夜、米国労働省から今年11月の米国雇用統計が発表されました。かなり驚くべきことに、失業率は10.0%と前月より0.2%ポイント低下し、非農業部門雇用者数も前月比で▲11千人減まで減少幅が縮小しました。日本はもちろんのこと、米国でも景気後退局面がすでに終わっていることはほぼ確実です。いつものグラフは以下の通りです。上のパネルが非農業部門雇用者数の前月差で、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済の系列です。影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の米国景気の谷は今年6月と仮置きしています。

米国雇用統計の推移


ついでながら、いつもの通り、New York Times のサイトから直リンしているフラッシュは以下の通りです。

さらに、今夜は別の米国の最新経済指標のフラッシュも New York Times から直リンします。残念ながら、雇用統計はまだ更新されていないもようです。

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2009年12月 4日 (金)

新しいペーパー「相対的貧困率に関する考察: 第14循環における動向」を書き上げる

厚生労働省が唐突に相対的貧困率を計算して発表したのが10月20日だったと記憶しています。その夜のエントリーで数式のいっぱい並んだ貧困指標に関するエッセイを大学の紀要に書くつもりと予告しましたが、かなり方向がズレてしまい、結局、相対的貧困率そのものに関するエッセイを書き上げてしまいました。3月号の大学の紀要に掲載される予定です。
このエッセイでは第14循環の景気拡大局面において、その前半で経済理論通りに相対的貧困率が下がって格差縮小が見られたのに対して、後半では格差が広がって相対的貧困率が上昇したパズルを取り上げています。このパズルに対して、企業と労働者の雇用行動に起因する可能性があることを指摘しています。厚生労働省の毎月勤労統計によれば、この景気拡大前半期には、というより、1998年からフルタイムの削減とパートタイムの増加が同時に進行していて、この動きは2004年まで続いています。要するに、雇用者がフルタイムからパートタイムにシフトして、所得中位線より左側の相対的貧困層に裨益する景気拡大だったと結論しています。2004年までの景気拡大前半の所得分布線の変化は下のグラフの通りです。

景気拡大前半の所得分配ラインの変化

相対的貧困率に関係しない中位線から右側については無視しているんですが、左側の相対的貧困層については、パートタイムの労働機会が増加したことにより、左側の所得分布線がやや持ち上がるため、確実に相対的貧困率の減少に寄与したと私は考えています。それを概念的に表現したのが上のグラフです。それに対して、2005年からはパートタイムだけでなく、フルタイム労働者も増加し始めます。結局、所得分布線は元に戻ったような傾きで上方シフトします。そうすると、我が国では大竹教授の『日本の不平等』で指摘されているように、高齢化の進展により所得格差も拡大しますから、元の木阿弥以上に相対的貧困率が上昇する結果となります。それを概念的に表したのが下のグラフです。

景気拡大後半の所得分配ラインの変化

所得分布や分配についてはかなりマイクロな要因が大きく、私のペーパーのようにマクロの観点から捉えるのは少し無理があることは承知の上で、やや牽強付会ながら、興味あるトピックだったので紀要の研究ノートに掲載するべくエッセイを書いてみました。もともと書くつもりだった貧困指標については別途考えます。

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2009年12月 3日 (木)

法人企業統計調査から2次QEを考える

本日、財務省から今年7-9月期の法人企業統計調査が発表されました。全産業ベースの季節調整済みの系列で見て、売上高は前期比▲1.0%減のマイナスとなり、鉱工業生産や輸出が伸びているにもかかわらず、円高やデフレのために企業収入が伸びなくなっている実態が明らかになりました。それでも経常利益がプラスになっているのは人件費を含むコストダウンに各企業が努めていることの表れであると受け止めています。そして、このコストダウンに設備投資の抑制も含まれています。下のグラフは全産業ベースの季節調整済み系列で、上のパネルは売上高と経常利益の推移、下のパネルはソフトウェアを除く設備投資の動向です。いずれも影を付けた部分は景気後退期ですが、直近の景気の谷は今年1-3月期と仮置きしています。

法人企業統計の推移

今日発表された法人企業統計は総じてネガティブな内容だったんですが、特に、設備投資が下振れしました。上のグラフの下のパネルは季節調整済みの系列ですが、季節調整する前の原系列では前年同期比で▲25.7%減、季節調整済みの系列でも上のグラフに見る通り前期比▲8.8%減と、6期連続でマイナスを続けています。設備投資は20年以上も前のバブル前の水準にほぼ戻ってしまった感があります。この結果、来週12月9日に内閣府から発表される7-9月期の2次QEは大幅に下方修正されると私は考えています。

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2009年12月 2日 (水)

流行語大賞に見る今年の世相

昨日、自由国民社主催、ユーキャン新語・流行語大賞が発表されました。今年の大賞は「政権交代」です。確かによく見かけました。以下はユーキャン新語・流行語大賞のサイトからの引用です。

2009年流行語大賞

少し例年と違うのは、お笑い系の芸人さんが流行らせた流行語がトップテンに見受けられないことです。もっとも、ノミネートされた60ワードにはいくつかあり、「あると思います」とか「トゥース」も入っています。ひとつだけ、トップテンに入ったので私から異議を申し立てると、「歴女」は決して歴史一般ではなく、もともとがゲーム由来ですから、戦国時代に限られるような気がします。もっとも、私の周囲にそんなに「歴女」がいっぱいいるわけではありませんから、極めて限られたサンプルから判断しています。
昨年は2008年12月2日付けのエントリーで取り上げていますが、この流行語大賞で私の目に留まったのは、審査員特別賞を授賞された上野投手の「上野の413球」でした。しかし、さすがに今年は政治経済の流行語が目白押しです。北京オリンピックのあった昨年に比べてスポーツ系が激減っし、逆に、政治経済系の流行語が多かった印象があり、お笑い系の流行語も政治経済系に押されてノミネートが少なかったのかもしれません。このあたりはユーキャン新語・流行語大賞ノミネート60ワードのサイトを見ると明らかです。無理やりに学校の教科でいうと、昨年は体育の年で、今年は「歴女」も含めて社会科の年かもしれません。

師走に入って今年を振り返る機会が多くなりました。私はすでに web 投票を済ませましたが、漢検による来週土曜日の「今年の漢字」の発表も楽しみです。

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2009年12月 1日 (火)

今日午後の日銀臨時金融政策決定会合の結果をどう見るか?

事業仕分けに対する私なりの見方に続いて、論評するのも気が引けるんですが、今日午後に開催された日銀の臨時金融政策決定会合の結果についても短くコメントしておきたいと思います。一言ではないんですが短く表現して、大きな失望とチョッピリの希望と評価しておきます。まず、事実関係から、会合で決定された金融政策は以下の通りです。

  • 政策金利は0.1%で据え置く。
  • 長期国債の買切りオペは月額1.8兆円で据え置く。
  • 国債、社債、CP などを担保として3か月間10兆円程度の資金供給を行う。

失望の方について、大学教員のエコノミストらしい例え話をすれば、ひどい結果の成績表(デフレ宣言)を突き付けられて、明日にも親(内閣)と相談することになった学生(日銀)が、その直前に急に1年遅れで宿題(金融緩和)に取り組もうとして、机に向かった(臨時金融政策決定会合を開催した)のはいいんですが、結局、ノートに落書き(不十分な内容)で終わってしまいます。学生(日銀)がノートの落書き(「広い意味の量的緩和」?)をもって宿題(ホントの金融緩和)をやったんだと称したので、なぜか、親(内閣)は高く評価するものの、教師(市場)からは落第(円高の進行)の結果をもらってしまいました。
この程度の金緩和策では、たとえ広い意味でも「量的緩和」と呼ぶのはどうかと思いますし、多くのエコノミストはデフレ脱却や円高反転どころか、デフレ圧力や円高進行の緩和さえも難しいと受け止めているんではないでしょうか。少なくとも私はそうです。明日の東証は失望売りになる可能性が高いような気もします。もっとも、たとえ短期でも株式市場の予測が難しいのは確かです。また、エコノミストや市場関係者だけでなく、いつもは政府に厳しく日銀に甘いメディアからも、典型的には、朝日新聞のサイトに見られるような論調が目立ちます。以下に引用します。

東京外国為替市場の円相場は、日本銀行が1日午後に新たな金融緩和策を発表後、再び1ドル=86円台に値上がりした。臨時の政策決定会合の開催を受け金融緩和が進むとの見方から一時、1ドル=87円53銭近辺まで円安が進んでいた。

チョッピリの希望の方は、何はともあれ、「政府からの独立」を盾に、頬かむりを決め込んでいた日銀もようやく重い腰を上げました。「ルビコン川を渡った」とまでは思いませんが、政府の顔色や市場の動向に応じて追加的な金融緩和策を次々と打ち出さざるを得ない状況に近くなったことは確かです。やや情けない状況の変化ではありますが、チョッピリの希望としておきます。

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事業仕分けをどう見るか?

事業仕分けの集計結果

鳴り物入りで実施されていた事業仕分けが先週で終了し、昨日の第4回行政刷新会議で鳩山総理大臣にも報告されてほぼオーソライズされました。上の取りまとめ表は朝日新聞のサイトから引用しています。今夜のエントリーはこの事業仕分けについて、私なりにエコノミストの観点から少し論評してみたいと思います。
第1に、この事業仕分けは政権交代の象徴的なイベントであったということです。少し前の私の授業でも、新政権になってからもっとも印象的な出来事は何かと質問したところ、元気よく手が上がって「予算組替え」との答えが返って来ました。キーワードを押さえていないのが本学経済学部生の弱点かもしれませんが、ココロは理解できます。広く報道されたこともあり、この事業仕分けが現内閣の支持率を押し上げている可能性も高いと私は受け止めています。
第2に、10月17日付けのエントリーでも指摘しましたが、少なくとも各省レベルにおける概算要求策定作業では政治主導が失敗したことです。私は驚いたんですが、概算要求を省内で認めた政務三役が仕分け側に立って議論しているのは、極めて異常なことだと思います。でも、これに着目したメディアは存在しませんでした。各省内で政務三役は何をしているんでしょうか。これでは、政府内にいくら政治家ポストを増やしてもムダな気がしないでもありません。今後も、少なくとも省内では政治主導は失敗し続ける可能性が十分あると考えるべきです。
第3に、概算要求策定段階における政治主導の失敗を事業仕分けによって、どこまで失地挽回したかの判断は、やや難しいと感じています。私は必ずしも支持するものではありませんが、メディア的に政治家と官僚が対立する構図で考えると、痛み分けと受け止めています。すなわち、「パフォーマンス」と揶揄されようとも、世間の注目を集めて支持率を維持した、あるいは、高めた点については政治家のポイントと言えますし、ハッキリ言って、削減額がこの程度では官僚は実を取ったとも言えます。でも、後者については、政権側ではやや無理に理解を曲げて、「大きな成果」と言い出すんではないかと私は予想しています。
第4に、国会の権威の喪失です。確かに、従来から、予算案については内閣しか国会提出権がなく、政府案がそのまま国会で可決されるという歴史はありますし、日本は議院内閣制を取っていますから、政府と国会の関係で政府が大きな役割を果たして来たことは事実ですが、政権与党がすべてを決めて国会での議決が単なるセレモニーになるような気がします。私は3年前の2006年9月20日付けのエントリーで「国民が決めることと専門家が決めること」と題して、代議制の間接民主主義下において、国会で国民の民意を反映して決めるべきことと、専門家が判断すべきことを論じましたが、財政政策の大きな手段たる予算と金融政策については、現政権は後者に分類する強い傾向があることを実感しました。
第5に、最後に、今に始まったことではありませんが、私のような原理主義的なエコノミストの目から見ると、経済政策がますます理論から遠ざかっているように見えることです。もちろん、この最大のものは自由貿易であり、エコノミストは何らの留保条件なしに理論的には自由貿易を支持しますが、現実の政策で自由貿易が採用されることはありません。同じように、マスグレイブ的な財政学に従えば、公共財は非競合性あるいは集合消費性と排除不可能性からフリーライダーの問題が生じ、費用と便益を国民が正しく理解している限りにおいて過小供給に陥る、というのが常識なんですが、まったくそうなっていません。私の専門分野から大きく外れるんですが、ゲーム論なんかが必要になるような気がします。

この事業仕分け全体の私の評価は第3のポイントに加えて、五分五分よりもややポジティブではなかろうかという気がしています。また、事業仕分けが「財務省ペース」と批判されることもありますが、私はこの点については問題ないと考えています。むしろ、第4のポイントで指摘したデュープロセスの方を私は重視しています。

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