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2009年12月 1日 (火)

事業仕分けをどう見るか?

事業仕分けの集計結果

鳴り物入りで実施されていた事業仕分けが先週で終了し、昨日の第4回行政刷新会議で鳩山総理大臣にも報告されてほぼオーソライズされました。上の取りまとめ表は朝日新聞のサイトから引用しています。今夜のエントリーはこの事業仕分けについて、私なりにエコノミストの観点から少し論評してみたいと思います。
第1に、この事業仕分けは政権交代の象徴的なイベントであったということです。少し前の私の授業でも、新政権になってからもっとも印象的な出来事は何かと質問したところ、元気よく手が上がって「予算組替え」との答えが返って来ました。キーワードを押さえていないのが本学経済学部生の弱点かもしれませんが、ココロは理解できます。広く報道されたこともあり、この事業仕分けが現内閣の支持率を押し上げている可能性も高いと私は受け止めています。
第2に、10月17日付けのエントリーでも指摘しましたが、少なくとも各省レベルにおける概算要求策定作業では政治主導が失敗したことです。私は驚いたんですが、概算要求を省内で認めた政務三役が仕分け側に立って議論しているのは、極めて異常なことだと思います。でも、これに着目したメディアは存在しませんでした。各省内で政務三役は何をしているんでしょうか。これでは、政府内にいくら政治家ポストを増やしてもムダな気がしないでもありません。今後も、少なくとも省内では政治主導は失敗し続ける可能性が十分あると考えるべきです。
第3に、概算要求策定段階における政治主導の失敗を事業仕分けによって、どこまで失地挽回したかの判断は、やや難しいと感じています。私は必ずしも支持するものではありませんが、メディア的に政治家と官僚が対立する構図で考えると、痛み分けと受け止めています。すなわち、「パフォーマンス」と揶揄されようとも、世間の注目を集めて支持率を維持した、あるいは、高めた点については政治家のポイントと言えますし、ハッキリ言って、削減額がこの程度では官僚は実を取ったとも言えます。でも、後者については、政権側ではやや無理に理解を曲げて、「大きな成果」と言い出すんではないかと私は予想しています。
第4に、国会の権威の喪失です。確かに、従来から、予算案については内閣しか国会提出権がなく、政府案がそのまま国会で可決されるという歴史はありますし、日本は議院内閣制を取っていますから、政府と国会の関係で政府が大きな役割を果たして来たことは事実ですが、政権与党がすべてを決めて国会での議決が単なるセレモニーになるような気がします。私は3年前の2006年9月20日付けのエントリーで「国民が決めることと専門家が決めること」と題して、代議制の間接民主主義下において、国会で国民の民意を反映して決めるべきことと、専門家が判断すべきことを論じましたが、財政政策の大きな手段たる予算と金融政策については、現政権は後者に分類する強い傾向があることを実感しました。
第5に、最後に、今に始まったことではありませんが、私のような原理主義的なエコノミストの目から見ると、経済政策がますます理論から遠ざかっているように見えることです。もちろん、この最大のものは自由貿易であり、エコノミストは何らの留保条件なしに理論的には自由貿易を支持しますが、現実の政策で自由貿易が採用されることはありません。同じように、マスグレイブ的な財政学に従えば、公共財は非競合性あるいは集合消費性と排除不可能性からフリーライダーの問題が生じ、費用と便益を国民が正しく理解している限りにおいて過小供給に陥る、というのが常識なんですが、まったくそうなっていません。私の専門分野から大きく外れるんですが、ゲーム論なんかが必要になるような気がします。

この事業仕分け全体の私の評価は第3のポイントに加えて、五分五分よりもややポジティブではなかろうかという気がしています。また、事業仕分けが「財務省ペース」と批判されることもありますが、私はこの点については問題ないと考えています。むしろ、第4のポイントで指摘したデュープロセスの方を私は重視しています。

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