来年度予算案をどう見るか?
昨夜、来年度政府予算案が臨時閣議で決定されました。広く報じられているところですが、「コンクリートから人へ」を掲げ、公共事業の削減率を▲18.3%減として過去最大となった一方、社会保障は手厚く配分したことから、一般会計総額は92.3兆円と過去最大に膨らみました。下の画像は朝日新聞のサイトから引用しています。
今回の政府予算案の特徴はアチコチで報じられているので、このブログで取り上げるまでもないんですが、私独特の見方も入れて以下の5点だと思っています。特に最後の「政治主導の破綻」はこのブログで早くから主張して来たところであり、特筆大書すべきであると受け止めています。さらに、今後の政権運営に影を落とす可能性も指摘しておきたいと思います。
- 政府支出、特に、公共事業から社会保障、特に、各種手当てに歳出を振り向けたことは、経済効果重視から国民の裁量権重視という意味での「小さな政府」への転換の第1歩と評価できる。
- いわゆる霞が関埋蔵金で10兆円の歳入を確保したものの、財政のサステイナビリティには不安が残る。
- 行政刷新会議の「事業仕分け」による削減額は約7千億円でパフォーマンス倒れの印象。
- マニフェストの政策の中で実行できなかったものがあることは無責任であり、野党の批判にも一理ある。
- 政治主導の予算編成は完全に破綻した。
最後に、政府予算案と同時に政府経済見通しも昨夜の閣議で了解されました。主要な計数を以下に取りまとめておきます。単位はパーセントで、水準を示す失業率以外は前年度からの増減率となっています。内需と外需の寄与度の合計が成長率に一致しないのは四捨五入のためです。
項目 | 2009年度 | 2010年度 |
実質成長率 | ▲2.6 | +1.4 |
内需寄与度 | ▲2.2 | +1.1 |
外需寄与度 | ▲0.5 | +0.4 |
失業率 | 5.4 | 5.3 |
消費者物価 | ▲1.6 | ▲0.8 |
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コメント
経済見通しの数値自体は、先日にご紹介をいただいた民間のものと大差もないと思いますが、今回の経済見通し、私のような非才には、些か解釈が難しいところがあるのですが、ご教示をいただければ幸いです。
粗い計算ですが、100万人の雇用の増が正しいとすれば、コブ・ダグラス(労働分配率0.7)を仮定した場合、成長会計からすると、就業者総数の伸び率は、100万/6000万(就業者総数)=60分の1、その0.7倍がGDP成長率への寄与、ということで、1%を超えるGDPの増が整合的な気がします。 対策タマには、TFP成長ダマもあると思われますし、資本の伸び(や稼働率の向上)は大したことないにせよ、全て併せた場合、その効果は1%を超えるかと思われます。 この場合、0.7%と100万人の組み合わせは、どのように解釈すべきなのでしょうか・・・?
また、鉱工業生産が8%伸びて、そのGDPでのウェイトを2割とすれば、その寄与はおよそ1.6%、21年度成長率が1.4%ということであれば、雇用の大部分を占めるそれ以外の分野(サービス産業)ではマイナスを見込んでいる、とインプリシットに言っているようなものです。 つまり、サービス産業がマイナス成長の中で、雇用の20万人増、というシナリオもどのように解釈すべきなのでしょうか・・・?
投稿: TOMOHIKO SENGE | 2009年12月26日 (土) 19時25分
お説の通り、整合性が取れているとはいいがたい面もあります。私も鉱工業生産指数+8%にはややたじろぎました。
投稿: 官庁エコノミスト | 2009年12月27日 (日) 15時42分
IIP については、同様の感触の方がいらして、安心しました。ありがとうございました。http://economist.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-a594.html
においてご指摘の好調な輸出に、IIPは引っ張られたのかもしれません。 本年も、大変にお世話になりました。 良いお年をお迎え下さい。
投稿: TOMOHIKO SENGE | 2009年12月28日 (月) 12時23分
よいお年をお迎え下さい。
投稿: 官庁エコノミスト | 2009年12月29日 (火) 15時06分