「世界経済見通し 2010」 Global Economic Prospects 2010 を読む
昨日、タイの首都バンコクにて世銀から「世界経済見通し 2010」 Global Economic Prospects 2010 が発表されました。副題は Crisis, Finance, and Growth となっています。もちろん、pdf のフルリポートも明らかにされています。ただし、このフルリポートは Pre-Publication Draft であって、Subject to Further Change である旨が明記されています。まず、世銀のサイトから和文の記者発表文の最初の4パラだけ引用すると以下の通りです。
現在回復基調にある世界経済は、一年後に各国の財政刺激策の効果が薄れるため、回復ペースが落ちる見通し。金融市場はなおも不安定で、失業率は高く、民間セクターの需要も低迷する、と世界銀行の最新の報告書は指摘。
本日発表された「世界経済見通し 2010」は、金融危機の最悪期は脱しても世界的な回復は脆弱であると警告し、危機の後遺症により今後10年間の金融と成長の状況は従来と異なるものとなると予測している。
世界のGDPは2009年に-2.2%と収縮したが、今年は2.7%、2011年には3.2%と、それぞれ成長する見込みである。途上国は、2009年の1.2%から今年は5.2%、2011年には5.8%と比較的力強く回復するであろう。2009年に富裕国のGDPは-3.3%と収縮した後、途上国ほど急速には回復せず、2010年は1.8%、2011年には2.3%となるだろう。世界の貿易量は、2009年に-14.4%と大きく落ち込んだ後、今年は4.3%、2011年には6.2%の拡大が予想されている。
以上は最も可能性の高いシナリオだが、不確定要因も多く、今後の見通しはなおも不透明だ。そのため、2011年の成長率は、今後の数四半期に消費者と経営者の心理がどの程度回復するか、さらに財政・金融刺激策の停止のタイミングによっては、最低2.5%から最高3.4%の幅が想定される。
上の引用のように、世銀見通しは「金融危機の最悪期は脱しても世界的な回復は脆弱」であり、今後10年くらいは成長が緩やかになると警告しています。詳細な経済見通しの表は pdf のフルリポートの p.17 Table 1.1 The global outlook in summary にあります。これを地域別にさらに要約したものが p.40 Table 1.2 Prospects remain uncertain ですので以下に引用します。なお、気になる日本の成長率見通しは Table 1.1 にあり、2009年▲5.4%の後、2010年+1.3%、2011年+1.8%と見込まれています。下の表の高所得国の中でも低い方に位置しています。
成長率見通しでほぼ終わりなんでしょうが、前文150ページを超える英文リポートをすべて読んだわけではないものの、いくつか、pdf のフルリポートから私の興味を引いたグラフを引用すると、まず、今回の景気後退局面の深さを象徴するものとして、p.48 Box figure 2.1.1 GDP growth and output gaps in global crises since 1970 があります。以下の通りなんですが、日本だけでなく世界を見渡しても、今回の景気後退局面の深さは従来に比べて大きいものであったことがうかがわれます。
最後に、3枚目のグラフとして、付録の Regional Economic Prospects から東アジア地域の成長率見通しを示したのが以下のグラフです。p.122 Figure A7 East Asia will enjoy a moderate rebound in 2010-11 を引用しています。日本としては、「輸出主導」といわれようと、これらの東アジア諸国の成長力を取り込むような成長戦略が必要とされているような気がします。
今日の新聞では、今年中にもGDP規模で中国が日本を追い抜くとの話題が報じられていますが、上のグラフを見ると、勢いの差が大いに感じられます。
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