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2010年3月31日 (水)

あす発表の日銀短観の予想やいかに?

明日4月1日の発表を前に、シンクタンクや金融機関などから3月調査の日銀短観予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、もっとも注目される大企業の業況判断DIを取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。詳細な情報にご興味ある方は左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
ヘッドライン
12月調査実績▲25 (旧▲24)
▲21 (旧▲22)
n.a.
日本総研▲14
▲18
輸出や生産の持ち直しを背景に、製造業を中心とした企業マインドの改善が持続
みずほ総研 *▲16
▲20
景気対策の効果や輸出回復の恩恵を受けた業種を中心に、マインドの改善が続く
ニッセイ基礎研▲13
▲18
輸出を起点に生産が堅調に推移し、国内景気も大企業、製造業を中心に回復を続けている姿が明確になる
三菱UFJ証券景気循環研究所▲10
▲14
業況判断DIの全般的かつ大幅な上昇が確認されよう
第一生命経済研▲12
▲17
二番底懸念が大きく後退し、輸出拡大が収益環境を好転させているのが改善の背景
三菱総研 *▲14
▲18
円高への懸念やデフレ圧力などが企業マインドにとってマイナス要素となる一方、海外需要の強まりや二番底懸念の後退などがプラス要素
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲17
▲18
中国向け需要を中心とした輸出の回復を受けて生産が堅調に増加していることが背景
新光総研▲12
▲16
輸出増の恩恵を直接的に享受しやすい製造業(特に大企業)に比べて、内需の回復が緩やかなものに留まっていることや販売価格のデフレが続いていることなどから、相対的にみると非製造業の改善ペースは緩やかなものに留まる
富士通総研▲16
▲17
輸出財産業が好調であるのに対し、消費財産業の回復は遅れており、非製造業の改善は製造業より小幅に留まる

まず、この3月調査で調査対象企業の定例見直しが実施されます。前回の12月調査では新旧の両方のベースの集計値が公表されています。でも、困ったことに、アスタリスクを付したみずほ総研と三菱総研はよく分かっていないのか、旧ベースの計数のような気がします。それはさて置き、第1に、12月調査以降の経済を見ていて分かるように、輸出や政策効果にけん引された生産の伸びが大きくなっており、製造業におけるマインドが大幅に改善する予想となっています。他方、内需に依存する割合の高い非製造業のマインドの改善はわずかに止まると見込まれています。各機関ともほぼ同様で、こういった見方をしていると私は受け止めています。
ただし、第2に、強気の嶋中所長率いる三菱UFJ証券景気循環研究所でも、3月調査時点では足元は言うに及ばず、先行きでも業況判断DIがプラスに転ずるとは予想しておらず、企業マインドがプラスに転ずると弾き出した機関はまだありません。2番底の懸念はほぼなくなったと考えられますが、年央から輸出や生産がやや鈍化する可能性が指摘されており、本格的な景気回復は2011年からという気の長いことになりそうな中、企業マインドの改善プロセスも長期にマイナスを続ける可能性があります。

いずれにせよ、3月の金融政策決定会合で日銀は追加緩和策を小出しにしましたから、この短観を受けて何かの政策議論が始まるとは私は考えていません。

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2010年3月30日 (火)

在庫調整が一段落し政策効果が一巡した生産と雇用統計

本日、経済産業省から鉱工業生産指数が、また、総務省統計局から失業率が、さらに、厚生労働省から有効求人倍率などの職業安定業務統計が、それぞれ発表されました。いずれも2月の統計です。まず、いつもの日経新聞のサイトから関係する記事を引用すると以下の通りです。

2月鉱工業生産0.9%下落 1年ぶりに低下、基調判断は据え置き
経済産業省が30日発表した2月の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)は前月より0.9%低い91.3と、1年ぶりに低下した。これまでけん引役だった自動車や液晶テレビなどの生産が減少した。低下率は民間調査機関の予測平均(0.5%低下)を上回ったが、1月の伸び率が高かったことの反動が出た要素もある。経産省は基調判断を「生産は持ち直しの動きで推移している」に据え置いた。
業種別では輸送機械工業が2カ月ぶりに2.5%低下した。トヨタのリコール問題などの影響で、国内や欧州向けの小型乗用車の生産が減った。情報通信機械工業は4.7%低下。4月にエコポイント対象商品が切り替わり、液晶テレビの一部が対象から外れることなどが響いた。
その一方で、中国や韓国など主にアジア向けの半導体製造装置やフラットパネル・ディスプレー製造装置などの生産が増え、一般機械工業は5.1%上昇した。出荷指数は0.2%低い92.7で、1年ぶりの低下。在庫指数は1.0%上昇し、95.5になった。
先行きの生産予測指数は3月に1.4%の上昇に転じるが、4月には再び0.1%の低下になる見込み。経産省は「足元の動きは比較的堅実だが、今後さらに注意深くみていく必要がある」と説明している。
予測通りであれば1-3月期は前期比で4.7%程度の伸びになり、昨年10-12月期の4.5%をやや上回る。ただリーマン・ショック以前の水準の88%程度にとどまっており、景気の本格回復にはまだ時間がかかりそうだ。
失業率横ばい、2月4.9% 求人倍率は0.01ポイント上昇
総務省が30日発表した2月の完全失業率(季節調整値)は4.9%と前月に比べて横ばいだった。厚生労働省がまとめた2月の有効求人倍率(同)は同0.01ポイント上昇の0.47倍となり、2カ月連続で改善した。厚労省は「持ち直しの動きがみられるものの、依然として厳しい状況にある」と慎重な見方を示している。
完全失業率は15歳以上の働く意欲のある人のうち、職に就いていない人の割合。男女別にみると、男性が5.2%、女性は4.4%だった。
2月の完全失業者は324万人。前年同月に比べて25万人増えた。就業者数は6185万人と80万人減った。製造業は54万人減の1049万人だったが、減少幅は1月(75万人減)よりもやや縮小した。政府が雇用の受け皿として期待する医療・福祉は42万人増の659万人と10カ月連続で増えた。
2月は有効求人数が前月に比べて1.5%増えた。製造業の新規求人数が前年同月比30.1%増えたことなどが寄与した。ただ全体の新規求人数は建設業などの低迷で前月比0.4%減少し、新規求人倍率も同0.01ポイント低い0.84倍と6カ月ぶりに悪化した。

次に、鉱工業生産指数のいつものグラフは以下の通りです。赤の折れ線が月次の季節調整済みの鉱工業生産指数で、影をつけた部分は景気後退期なんですが、直近の谷は昨年3月と仮置きしています。

鉱工業生産の推移

引用した記事にもある通り、生産は1年振りの減産なんですが、市場の事前コンセンサスであった▲0.5%減に対する実績の▲0.9%減ですから、大きなサプライズはありません。ただし、この先の製造工業予測指数は3月に+1.4%の上昇に転じた後、4月には再び▲0.1%の減産を見込んでいます。今年年初にほぼ在庫調整を終え、さらに、エコカー減税や家電エコポイントなどの政策効果に支えられた需要が一巡し、この先、年央から生産は一進一退の動きになりますが、輸出が好調な間は増産が続き、輸出次第で減産に入るという動きを示すものと私は受け止めています。2番底の懸念はほぼ解消されたと考えられます。それにしても、足元の1-3月期で考えれば、製造工業予測指数で引き延ばすと、10-12月期に続いて1-3月期も前期比で4%台半ばの増産となり、これだけでGDP前期比1%成長に相当します。生産は足元までは堅調です。しかし、年央以降は輸出の鈍化とともに生産もいままでの増産の勢いがなくなりますから、内需の動向が重要となります。その内需を支える雇用の動向をグラフで見ると以下の通りです。

雇用統計の推移

一番上のパネルは失業率、真ん中のパネルが有効求人倍率、一番下のパネルが新規求人数です。一見して分かる通り、雇用指標はいずれも底打ちを示しているものの、圧倒的に力強さに欠けるといえます。産業別の雇用者数の前年同月比増減を見たのが下のグラフですが、引用した記事にもある通り、順調に雇用を増加させているのは緑色の医療・福祉関係くらいだという気がします。生産から雇用・所得へ、さらに雇用・所得から景気拡大への好循環ルートが決定的に破壊されているのかもしれません。

産業別雇用者数の推移

少なくとも、私の接する学生の就活を見ている限り、この先、企業の採用姿勢が劇的に回復することは考え難いと受け止めています。

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2010年3月29日 (月)

悲しい発見 - 長崎にはデニーズがない

悲しい発見です。長崎にはファミレスが極端に少ないようです。もっとも、私の考えている長崎は宿舎から大学まで、あるいは、少々外れたとしても電車で行ける範囲の長崎なので、自動車なんかで郊外に行けばもっとあるのかもしれません。私の知る範囲では、ヤマダ電機の近くにガストが、長崎駅の駅ビルにロイヤルホストが、それぞれあったような気がしますし、リンガーハットはいくつか見かけるんですが、デニーズがありません。
というのは、実は先日、ある懸賞に応募したら、大学の卒業記念パーティーのビンゴでもスカばっかりでクジ運のない私に、何と、セブン・アンド・アイ系列で使える商品券が当選して、大学の研究室に届きました。早速、最寄りのセブン・イレブンで nanaco にチャージして、一応、念のため、長崎では「積増し」という言葉を使うんですが、私は標準語で「チャージ」と言っておきます。それはともかく、nanaco にチャージしてどこで使おうかと考え、私はファミレスのデニーズがセブン・アンド・アイ・ホールディングズの系列であることを記憶していましたので、ネットで店舗検索したんですが、何と、長崎、というか、九州にはデニーズがありません。知りませんでした。都道府県選択には北は福島県から西は兵庫県までしか選択肢がなく、九州はおろか、広島や岡山にもデニーズは展開していないようです。

仕方がないので、東京の春休み期間中に、我が家からもっとも近いデニーズ、すなわち、青山霊園から赤坂寄りに出たところというか、青山一丁目の交差点から六本木方面に向かい国立新美術館手前にあるデニーズででも、図書館帰りにヒマ潰しをしたいと思います。一応、「お出かけの日記」に分類しておきます。

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2010年3月28日 (日)

「週刊朝日」を買い求め大学入試における後輩の健闘をたたえる

週刊朝日表紙

この季節はついつい新聞社系の週刊誌を買い求めます。東大・京大などの合格者の高校別ランキングが掲載されているからです。私の出身高校はモロに関西系ですから、京大ランキングでは堂々のトップテン入りなんですが、今年は東大の方はトップテンから落ちたようです。私の記憶が正しければ、昨年は東大・京大ともにトップテンに入っているという稀有な高校でした。今はかなり定員も増えましたが、私が在籍していた当時は2クラス100人足らずの小さな高校で、合格者人数の多寡で決まるランキングでは大したところに入っていませんでしたが、卒業生に対する大学合格者の比率で考えれば、今でも、浪人生を含めて卒業生の1割が東大、3割が京大、1割が阪大という大雑把な傾向は変わっていないようです。卒業生がもっとも多く進学する先が京大なんですから、私のように平均的な生徒は何となく京大に進んでしまうわけです。でも、何らかの志のある場合、特に、たった100人足らずの私の同級生でも、北大には必ず1人か2人進んでいたような気がします。広大なキャンパスが魅力という人もいますが、残念ながら、私は行ったことがありません。
今年も京大のトップは洛南高校でした。少し前にも書いたかもしれませんが、私の役所に洛南高校から東大を出た後輩がいます。慎重な書き方をしますと、私が高校生だったころは、洛南高校とはそういうタイプの高校ではなかったと記憶しているので、後輩に質問したことがありますが、「時代は変わったんです」と言い放たれてしまいました。

私は上の写真にあるように「週刊朝日」を買い求めました。「サンデー毎日」の方も確かめ、私が見落としているだけかもしれませんが、長崎大学合格者の高校別ランキングは掲載されていませんでした。

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2010年3月27日 (土)

哀しくも休日出勤をして大学内でお花見

今日と明日は長崎ではいいお天気のようです。東京のように真冬の寒さではありませんし、お花見には絶好の週末なのかもしれません。さすがに南国九州です。もちろん、大学も学校ですからサクラの木がいっぱいあり、ほぼ満開か、場所によっては、少し散り始めたくらいです。しかしながら、家族と伴に過ごす来週からの春休みに備えて、私は大学の研究室で哀しくも休日出勤で溜まった仕事を片付けます。他にすることがないこともあります。ついでに、お花見も済ませます。同僚の准教授も家族連れで大学構内のサクラ見物をしていました。ちょうど、我が家がジャカルタに赴任する前、10年余り昔、幼稚園に上がる直前の年まわりのお子さんを遊ばせていました。物怖じせず元気いっぱいの男の子2人で、とっても微笑ましかったです。

長崎大学のサクラサク

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2010年3月26日 (金)

相変わらずデフレの続く消費者物価

本日、総務省統計局から2月の全国と3月の東京都区部の消費者物価が発表されました。もっとも注目される2月の全国の生鮮食品を除くコア CPI の前年同月比は▲1.2%と引き続き大幅なデフレが続いています。3月の東京都区部のコア CPI も▲1.8%と、一向にプラスに向かいそうにありません。やや長くなりますが、まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の消費者物価、前年同月比1.2%低下 6年5カ月ぶり
総務省が26日発表した2月の全国消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動の大きい生鮮食品を除くベースで99.2となり、前年同月比で1.2%低下した。マイナスは12カ月連続。1年間以上継続して物価が下がり続けるのは03年9月以来6年5カ月ぶりとなる。1月に比べ低下率は小さくなったが、家電から衣料品まで幅広いモノの値段が下がっており、物価の下落が続く「デフレ」が長期化しつつある。
菅直人副総理・財務相は同日午前の閣議後の記者会見で、物価が12カ月連続でマイナスとなったことについて「デフレ脱却へさらなる努力が必要だ」と強調した。
食料とエネルギーを除いた指数(欧米型コアCPI)は前年同月比1.1%低下した。前の月に比べ落ち込み幅はやや縮小したが、過去最低に近い水準でのマイナスが続いている。生鮮食品を含む総合指数は1.1%低下した。
生鮮食品を除くCPIは1999年10月から03年9月まで48カ月連続でマイナス圏に陥っていた。その後は資源価格の上昇や景気回復による需給ギャップの改善を背景に一進一退が続き、08年に入ると急激な原油高を受けて大幅に上昇していた。しかし、09年からは景気低迷で再びマイナス圏に戻っている。
2月のCPIについて個別品目をみると、薄型テレビやルームエアコンなど家電類の価格下落が続いている。日用品ではティッシュペーパーやトイレットペーパーの値段が下がっている。生鮮食品を除く食料の価格も前年に比べて1.4%低下した。ただ、価格の動きを単純に前月と比べると横ばいで推移しており、「下落が続いた前年に比べると変わってきた」と総務省ではみている。
物価の先行指標である東京都区部の3月のCPI(中旬速報値)は生鮮食品を除いたベースで1.8%低下。09年度全体では1.6%の低下となり、4年度ぶりにマイナスに転じた。比較可能な71年度以降で最大の落ち込みを記録した。

次に、いつものグラフは以下の通りです。折れ線グラフは青が全国のコアCPI、赤が食料とエネルギーを除く欧米型の全国のコアコアCPI、灰色が東京都区部のコアCPIです。いずれも、左軸の単位は前年同月比パーセントです。棒グラフは全国のコアCPIに対する寄与度表示となっていて、緑色が食料、黄色がエネルギー、水色が食料とエネルギー以外のその他です。

消費者物価の推移

グラフを見れば明らかなんですが、2008年年央までの大幅な原油高などのエネルギー価格がリーマン・ショック後に大きく落ち込んだ影響はほぼ剥落しました。2月の全国のエネルギー寄与度はわずかに▲0.02%です。食料が▲0.34%、食料とエネルギー以外のその他が▲0.83%の寄与を示し、合わせて▲1.2%の下落となっています。従って、エネルギーの分だけ乖離していたコアCPIとコアコアCPIがほぼ同じ下落率になったのが見て取れると思います。エネルギーの影響が一巡したことが第1の特徴です。そして、これまた、グラフから明らかに見て取れるのは、第2の特徴は食料とエネルギー以外の部分が大きく下落幅を拡大していることです。上で引用した記事は、事細かにいろいろと品目別の情報を提供していくれていますが、昨年2008年1-3月期を谷として、着実にGDPギャップは縮小を続けていますから、この春先あたりから物価の基調も変化していいような気がするんですが、少なくとも、3月の東京都区部の統計を見ている限りでは、変化の兆しは私には読み取れません。上の記事にある菅直人副総理・財務大臣の発言も極めてごもっともといえます。また、私はやや無視気味なんですが、4月から高校無償化でさらに物価が下がることを指摘するエコノミストもいます。当然ながら、学校の授業料を物価政策に割り当てるのは何の意味もありませんから、私は特に気にしていません。

もちろん、物価政策に割り当てられるべきは金融政策です。ということで、本日付けで、神戸大学の宮尾教授が日銀審議委員に就任しています。別の日経新聞の記事では、就任会見において「景気が持ち直す局面で金利を低下させたり低い金利を維持したりすることは、実体経済により刺激的な効果を持ちうる」との認識を示したと報じられています。まだ、日銀のホームページに記者会見要旨がアップされていませんから発言の意図などの詳細は不明ですが、今まで放置する基本姿勢を崩さなかった日銀が、何とか、本腰を入れてデフレに取り組むようになることを強く願っています。

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2010年3月25日 (木)

大学の卒業記念パーティーに出席する

長崎大学ロゴ

今日は大学の卒業式がありました。午前中に大学全体の卒業式、午後からは学部によって違いがあるかもしれないんですが、経済学部では卒業証書・学位証の授与式、夜は卒業記念パーティーです。学内も盛装した卒業生であふれていました。私のような管理職手当ももらっていないヒラ教授は式典の方は関係なく、夜の卒業記念パーティーにだけ出席しました。
改めて、長崎大学が県内のガリバー大学であることを痛感しました。おそらく、九州各県では福岡県を除いて県名を冠した国立大学が同じようにガリバー的な存在なんだろうと思います。もっとも、私は九州の大学事情はよく知りません。京都の土着の家系に生まれ、京都大学に入学でき得る学力を持ち、実際に京都大学に入学し卒業したんですから、それ以上、ヨソの大学に関する情報は必要としないわけで、九州の大学についての知識は皆目持ち合わせません。

それにしても、卒業生よりも同窓会員のOBやOGの方が多いのではないかと思えるようなパーティーでした。ビンゴの景品が Wii だったりしたので私も目の色を変えたんですが、確率論的な勝負の行方に個人の努力はまったく影響なく、クジ運これなく何も手に出来ませんでした。

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2010年3月24日 (水)

輸出は順調に拡大、しかし先行きは不透明

本日、財務省から2月の貿易統計が発表されました。輸出は前年同月比で+45.3%増の5兆1287億円とほぼ市場の事前コンセンサスにミートしました。まず、電子版に新装なった日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の貿易統計、輸出額45%増 米向け自動車も好調
財務省が24日発表した2月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額は前年同月比45.3%増の5兆1287億円だった。3カ月連続で輸出額が前年を上回った。米欧、アジア向けともに増えたほか、中東欧・ロシア向けなども増加に転じた。北米でトヨタ自動車のリコール(回収・無償修理)問題が深刻化したが、対米輸出は好調で海外需要の順調な回復が続いている。
輸出額の前年同月比での伸び率は過去3番目の大きさになった。ただ金融危機の影響で前年に急落した反動が大きい。輸出額の水準自体はリーマン・ショック前の年平均と比べると、7割程度にとどまっている。
季節調整値で前月と比べると、2月は1.7%減と、1年ぶりのマイナスだった。大幅に伸びた1月の反動のほか、中国の春節(旧正月)の影響もあるとみられる。
一方、輸入額は前年同月比29.5%増の4兆4777億円と、2カ月連続で増えた。差し引きの貿易収支は6510億円と、11カ月連続で黒字になった。前年同月比では9倍に膨らんだ。
輸出額を地域別にみると、米国向けが前年同月比50.4%増と、2カ月連続で増えた。なかでも自動車輸出は2.3倍に急増した。自動車輸出は前月と単純に比べても金額ベースで19.9%増、台数でも18.6%増と好調で、トヨタのリコールによる日本車への悪影響は出ていない。
欧州連合(EU)向けは前年同月比19.7%増と、3カ月連続で増加。英国向け自動車やオランダ向け自動車部品が伸びた。アジア向けは55.7%増で、このうち中国は自動車や自動車部品、半導体などが好調で47.7%増になった。

次に、いつもの貿易統計の推移に関するグラフは以下の通りです。どちらも金額ベースで、上のパネルは季節調整をしていない原系列、下のパネルは季節調整済みの系列です。水色の折れ線が輸出、赤が輸入、緑色の棒グラフはその差額たる貿易収支です。左軸の単位はいずれも兆円です。

貿易統計の推移

下のパネルの季節調整済みの系列で見て、水色の折れ線の2月の輸出が前月比でマイナスを記録していますが、引用した日経新聞の記事にもあるように、1月の反動減や春節が2月であった影響と考えられます。特に、地域別の輸出数量指数をみると、アジア向けで最も大きなマイナスとなっていますから、後者の影響の方が強かったのかもしれません。いずれにせよ2月単月の動きですし、私は特に気にしていません。輸出は順調に拡大していると受け止めています。

輸出指数の推移

そうすると、問題はこの輸出拡大の持続性なんですが、私は年央近くまでは楽観しています。上のグラフは、上の方のパネルが金額ベースの輸出の前年同月比を数量と価格で寄与度分解したもの、下のパネルはいずれも前年同月比で輸出数量指数とOECD加盟国の先行指標です。後者は3か月ずらしてあります。おそらく、年央近くまで、先進国とアジアを中心とする新興国では順調な景気拡大が続くと見込まれ、我が国の輸出もこれに応じて増加を続けるのは明らかだと私は考えています。問題はそれ以降のお話で、私は年央以降の輸出動向は楽観できません。米国経済が減速するであろうことは、多くのエコノミストの間でコンセンサスがあるものと考えていますが、ここに来て、必ずしもギリシア問題だけが原因ではないんでしょうが、ユーロ圏諸国の減速も目立ちますし、中国やインドといったアジアを中心とする新興国では先進国とは逆にオーバーヒートによるインフレ懸念が出ています。
特に、中国については為替のペッグに多大なるコストを生じているように私には見えます。通貨切上げの防止については、我が国もブレトン・ウッズ体制末期の1970年前後に経験し、結局、石油ショックも相まって狂乱物価を招いた記憶がありますが、中国が約40年遅れで我が国の後を追いかけていることは明白であり、どのような経済政策をもって臨むのか、私は極めて大きな興味を持って注視しています。

もちろん、貿易動向には為替も大いに影響を及ぼします。昨年9月の民主党政権成立に際して、不用意かつ無責任な閣僚の発言から無用の円高を招き、その後、11月にはドバイ・ショックもありました。1年から1年半のラグを伴って、これらの為替動向が今年後半の輸出に影響を及ぼし始める可能性も否定できません。

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2010年3月23日 (火)

ジョン W. モファット『重力の再発見』(早川書房) を読む

ジョン W. モファット『重力の再発見』(早川書房)

モファット教授の『重力の再発見』を読みました。副題は「アインシュタインの相対論を超えて」となっています。誰が見ても明らかだと思うんですが、物理学に関する本であって私の専門分野である経済学ではありません。どうして読んだのかというと、2月14日付けの朝日新聞の書評を見て買い求めました。
物理の本なんですが、前半は古典的なアインシュタインまでの物理学を重力論を中心に紹介するとともに、後半では主として、これらの古典的な重力論、ひいては宇宙論に対して、調整パラメータや暗黒物質(ダークマター)などが不要になるような修正重力論(MOG)を展開しています。これで理解できた人は頭がいいんでしょうが、私もこれ以上の説明能力はありません。経済学を専門としていますので、当然ながら、物理学に関する理解力ははなはだ低いんですが、私が従来から気になっているのはダークマターやダークエネルギーではなく、古典的な重力論・宇宙論における特異点の存在です。かなり数多くの特異点が存在するのかもしれませんが、私が知っている有名な特異点は2つあり、宇宙の始まりの際のビッグバンといわゆるブラックホールです。特に、ブラックホールでは時間と空間が入れ替わるとされており、私には不可解でなりません。著者の主張する修正重力論(MOG)ではこれらの特異点は仮定する必要もなく、もちろん、ダークマターなども不要です。しかし、私の直感だけなんですが、やっぱり調整パラメータは依然として恣意的な気がします。悪名高きアインシュタインの宇宙定数と本質的には同じなんではないかという気がしないでもありません。もっとも、修正重力論では古典的な重力論の仮定をいくつか修正します。その最大のものは光速を可変とすることです。宇宙が発生したばかりの超初期段階では光速は今よりもずっと速かったと仮定しています。まあ、ユークリッド幾何学で前提されている平行線の仮定を緩めてリーマン幾何学が誕生したようなもので、何らかの前提を緩めたり否定したりすれば、新たなパラダイムが生じる可能性があります。
経済学と物理学は似通った方法論を有していると私は受け止めています。いずれも、分析対象に何らかのモデルを設定して、多くは数学的に記述し、数学的に解くというプロセスです。ただし、私の認識が正しいかどうか自信がありませんが、物理学がアナリティカルに数学を解いて行くのではないかと想像しているのに対して、経済学は多くの場合リカーシブに解きます。ジオメトリックに解く場合もあります。おそらく、モデルの設定の複雑性なんかにも差があるんだろうと思います。統計的な処理の仕方も、いわゆる数理統計と社会統計で微妙に違う場合もあります。もちろん、最も違うのは分析対象です。宇宙を含む自然を対象とするか、生産と交換を営んでいる社会を対象とするか、大きな違いだという気がします。方法論が似ているせいだけではないと思うんですが、官庁エコノミストの中にも経済学部出身だけでなく、いろんな他学部出身者がいます。すでに役所はお辞めになりましたが、東京大学理学部物理学科ご出身の方も知っています。もっとも、物理学を応用した製品を売っている営業担当はいっぱいいそうな気がしますが、経済学部出身で物理学分野でご活躍の方は知りません。

私ごとき理解力では半分も分からなかったような気がします。一般的な中学生や高校生ではかなり難しそうです。決して万人にオススメできる本ではありませんが、東京でも長崎でも図書館には収録されているようですから、何かの機会に手に取ってみることも一興かもしれません。

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2010年3月22日 (月)

このブログは UNICEF TAP Project に協力しています

UNICEF TAP Project 2010 logo

このブログは UNICEF TAP Project 2010 に協力しています。以下は TAP Project 2010 のサイトからの受け売りです。

UNICEF TAP Project 2010 logo

TAP PROJECT 2010がはじまります。
TAP PROJECT 2010がはじまります。
この地球で生まれた5歳に満たない子どもたちの中で、5人に1人は、汚れた水しか飲むことができない環境で育っています。
今日も世界のどこかで、汚れた水と衛生環境が原因となって、3,800人もの子どもの未来が奪われています。下痢から脱水症状に陥り、命を落としている現実があるのです。
日本では蛇口をひねれば、当たり前のように出てくる清潔で安全な水、わたしたちが毎日飲んでいるコップ一杯の水で、世界の子どもたちを一人でも多く守れたら。
TAP PROJECTは世界中の子どもたちが「清潔で安全な水」を使えるよう、ユニセフの活動を支援するプロジェクトです。
2007年にニューヨークで始まり、世界各地で展開しています。
具体的には、国連が「世界水の日」と定める3月22日から3月28日までの一週間、このプロジェクトに参加するレストランにおいて提供された水に対して100円もしくはそれ以上の募金をお願いする活動を実施します。
例えば、100円あれば、一人の子どもが40日間、きれいな水を飲むことができます。
清潔で安全な水が手に入らない世界の子どもたちのために、日本でのTAP PROJECT 2010は、東京から名古屋、関西(大阪・京都・神戸)にエリアを拡大して展開します。

募金方法はとても簡単です。参加レストランに行き、サーブされたお水に対して100円以上を寄付すればいいのです。引用にもある通り、100円あれば1人の子供が40日間、きれいな水を飲むことが出来ます。もっとも、私が見た範囲では参加店はやや高級レストランに偏りがある気がすることは確かです。さらに、地域的な偏りも大きいです。青山の我が家から歩いて行ける範囲で軽く10店以上ありそうな気がしますが、九州一円でも3店しかありません。もちろん、長崎では1店も参加していません。私は今日の午後に図書館に行った帰り道に、Cafe 246 に立ち寄って募金して来ました。もっとも、このお店は 246号線には面していません。

Cafe 246

少し前から、このブログの時計を取り替えました。UNICEF TAP Project に参加するとか協力するとか言えば、極めて大げさに、タキシードを着てリムジンで乗り付けて、100万円単位の寄付をせねばならないというわけではありません。目の前で自分に出来ることから始めましょう。レストランに入って100円を寄付する、ブログの時計を取り替えて、クリックすれば UNICEF のサイトにリンクするようにして広報に協力する、などなど、いろいろと出来ることがあるはずです。

私は私に出来ることをし、TAP Project に寄付するとともに、
4月4日の UNICEF ラブウォーク 中央大会に参加します!

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2010年3月21日 (日)

女房の誕生祝いでマンハッタン・ラウンジに行く

マンハッタン・ラウンジ今日の昼食は女房の誕生日のお祝いで、溜池にあるANAインターコンチネンタルに出かけます。36階のマンハッタン・ラウンジでブッフェ・ランチです。ここ2-3年、女房の誕生日には食べ放題ランチに行くことになっていて、今年は前回私が東京に戻った2月の最終週末を予定しないでもなかったんですが、子供達の小学校行事が重なり、その後も何やかやで3週間遅れになってしまいました。まあ、いい年齢なんですから3週間くらいは誤差範囲です。ということで、今年はANAインターコンチネンタルに行きます。というのは、私が長崎と東京を往復して、それなりにマイルが貯まって来たので、一気に使おうと考えていたんですが、やや手続きに瑕疵があって手元にクーポンが到着するのが遅れ、結局、またしてもマイルが貯まることになってしまいました。昨年は赤坂プリンスのブルー・ガーデニアに行ったんですが、お料理の方もお店の雰囲気も、今年のマンハッタン・ラウンジは少し劣るように感じました。ギャルソンの写真の腕前までイマイチで、今日の写真は小さく表示しています。飛び切りおいしいというわけでもない料理で、しかも種類が少なく、切れても補充がなかなか出て来ません。飲み物とカットステーキはテーブルにサーブされるんですが、時間がかかります。お値段的にはややお安いと感じないでもありませんし、今回は失敗しましたが、マイレージのクーポンを使えばタダなのかもしれませんが、そんなにお得感はありません。そもそも、牛肉料理が置いていなかったような気がします。まずまず評価できるのはデザートかもしれません。なお、料理に関する記述は、我が家のグルメ評論家の下の子の意見に従っています。

大学の卒業式直前の3連休を東京に戻って、家族とのんびり過ごしています。やや体調を崩しながらも、先週前半までに一通りの仕事を済ませておいた甲斐があるというものです。

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2010年3月20日 (土)

おにいちゃんの十三参りで浅草寺に行く

おにいちゃんの十三参りで浅草寺に行く

今日は、朝からまずまずいいお天気で、気温も上がりました。陽気に誘われたわけでもないんですが、おにいちゃんを連れて出かけます。浅草寺に十三参りです。十三参りは、本来、旧暦の3月13日に干支が一回りした数えの13歳を連れて行くものなんでしょうが、今どきは、七五三も満年齢ですので、我が家のおにいちゃんも満年齢で十三参りに連れて行きます。旧暦の3月13日は今のグレゴリオ歴では4月中旬なのかもしれませんが、これも折衷で春休みや3連休を利用するようになっている気がします。まあ、冠婚葬祭や通過儀礼の一種と受け止めています。言うまでもありませんが、弘法大師空海が飛躍的に記憶力を増大させたと言われる故事にならい、虚空蔵菩薩にお参りします。私は京都の人間ですから、十三参りのお参り先としてダントツに有名な嵯峨野の法輪寺に父親に連れて行ってもらった記憶がありますが、東京では虚空蔵菩薩を本尊としているお寺は少なく、知り合いから浅草寺か増上寺らしいと聞いたものですから、我が家のおにいちゃんは浅草寺に連れて行きました。なお、京都では法輪寺に十三参りした後、渡月橋を渡るまで後ろを振り返ってはいけないと言われているので、私からおにいちゃんに仲見世を終えるくらいまでは後ろを振り返らないように注意しておきます。実は、私は渡月橋に差しかかったあたりで半分ほど後ろを振り返ってしまい、父親から「知恵を返した」と叱られたことがあります。でも、そんなのは前もって知らせておくべきですから、今日は、おにいちゃんに後ろを振り返らないことと、仲見世の人混みでは特にスリに気をつけるように申し渡しておきました。

小さいころの七五三から、一気に飛んで、成人式とか、冠婚葬祭ではないかもしれませんが、通過儀礼としての高校卒業や大学入学などの中間に十三参りは位置して、実に適当な年齢でのお参りだという気がします。仏教徒にふさわしく、弘法大師に由来する日本独特の儀式かもしれません。

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2010年3月19日 (金)

The Economist の Big Mac Index から人民元レートを考える

Big Mac Index

連夜でマクドナルドを取り上げる、というつもりでもないんですが、上の画像は、The Economist の Big Mac Index を引用しています。3月16日付けの為替レートで算出されています。発端が何だったかすっかり忘れましたが、米中の2国間で為替のミスアロケーションが話題になり、いつもの通り、米国は為替レートは市場に委ねるべきであり、現在の人民元レートは過小評価されている、と主張する一方で、中国は適正であると反論しています。論戦は米国における秋の中間選挙をにらんでヒートアップしています。上の Big Mac Index だけを考えると、人民元は約半分に過小評価されており、現在の1ドル6.83-84元の相場は3元台半ばでもおかしくないということになります。また、Big Mac Index はクロスセクションのデータですが、2000年以降の人民元の対ドル相場をプロットした時系列データは以下の通りです。ものの見事に為替相場が操作されているように見えるのは、私の視力の問題なんでしょうか。

人民元対ドル相場の推移

Big Mac Index の表で過小評価されている下5カ国に軒並みアジアが入っているのはやや意図的に見えなくはないにしても、別に、モノの分かったエコノミストでなくても、誰がどう見ても、中国が人民元相場を操作しているのは明らかな気がするんですが、いかがなもんでしょうか。

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2010年3月18日 (木)

マクドナルドにカリフォルニアバーガーを食べに行く

カリフォルニアバーガー

マクドナルドの Big America シリーズ最終第4弾のカリフォルニアバーガーが先週金曜日から期間限定で始まっています。上の写真の通りなんですが、一番のポイントはカリフォルニア産赤ワインを使用した特製ソースだそうです。でも、私にはカリフォルニア発祥といわれるモントレージャック・チーズの方が印象的でした。Big America シリーズに共通のベーコンと通常の2.5倍のクォーターパウンドのビーフパティはボリュームたっぷりです。これらを粉チーズをトッピングした香ばしい特製バンズではさんでいます。なお、前にもあったのかもしれないんですが、通常のポテトとコーラのセットではなく、先日、さらにナゲットも加えたディナー・セットを頼んでみました。

最近の新聞折り込みチラシでは、テキサスバーガーがもう一度リバイバルして期間限定で提供されるらしいです。でも、私は Big America シリーズの中ではハワイアンバーガーが一番のお気に入りでした。

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2010年3月17日 (水)

日銀金融政策決定会合の感想は特になし

昨日から開催されていた日銀金融政策決定会合が本日追加金融緩和策を決定して終了しました。追加緩和策は固定金利方式・共通担保資金供給オペレーション、いわゆる新型オペとか、特オペと呼ばれているものを10兆円から20兆円に増額し、3か月延長するという内容です。長期国債買取り枠は増額されず、政策金利は据え置かれました。いつもの日経新聞のサイトから関係する記事を引用すると以下の通りです。

日銀追加緩和、政府・市場が背中押す デフレ脱却効果には限界
日銀は17日の金融政策決定会合で、追加の金融緩和に踏み切った。デフレ脱却に向け日銀に一段の対応を迫る政府や、円高がじわじわと進む為替市場を意識した判断だが、国債買い取り増額など奥の手は封印した“小出し”緩和策ともいえ、さらなる対応を期待する声も出てきそうだ。
きょう、日銀が決めた追加緩和策は、国債などを担保に年0.1%という超低金利で資金を金融機関に供給する「新型オペ」の拡充。昨年12月の制度導入時に決めた10兆円という資金供給の目標額を20兆円程度に引き上げる内容だ。
日銀、新型オペを20兆円に増額 追加金融緩和を決定
日銀は17日の金融政策決定会合で、追加的な金融緩和策を決めた。期間3カ月の資金を年0.1%の固定金利で金融機関に貸し出す「新型オペ」の供給枠について、現在の10兆円程度から20兆円程度に拡大する。金融市場に出回る資金の量を増やし、やや長めの金利を押し下げる効果を狙う。景気は持ち直しているものの、消費者物価の下落が続いており、デフレの克服に強い姿勢を示すべきだと判断した。
須田美矢子、野田忠男の両審議委員が反対し、賛成多数で追加緩和策を決めた。政策金利は現行の年0.1%に全員一致で据え置いた。

下のグラフは、3月5日付けのエントリーでお示しした日銀当座預金残高の推移を少しアップデートしたものです。変わり映えのないグラフです。

日銀当座預金残高の推移

ここまで私の予想が大当たりすると、何の感想もありません。日経新聞が日銀の追加緩和策を抜いた3月5日の段階で、すでに、私のブログのレビューを終えていますので簡単に済ませると、昨年12月1日の新型オペ導入の際に「政府の顔色や市場の動向に応じて追加的な金融緩和策を次々と打ち出さざるを得ない状況」を見通し、1月26日のエントリーでは「日銀が追加的な緩和措置を講じる可能性が十分ある」と言い切ったんですから、大当たりといえましょう。3月5日には「オペの延長は候補にならない」と表明したところ、私のブログを読んでいただいたのか、余りにも当然のことだからなのか、額を倍増したようですが、デフレ脱却に向けた力強い緩和策とはほど遠いと感じています。20兆円のうち半分近くがロールオーバーで消えるものと受け止めています。

メディアも分かり切っているのか、NHKの夜7時のニュースでは、ルノー・日産とダイムラーの提携、春闘の賃上げに続いて日銀の追加緩和策は3番目のニュースでしかありませんでした。確かに、それくらいのインパクトの小さい追加緩和策でした。今後、政府と市場がどれだけ日銀の尻を叩くのかに注目しています。

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2010年3月16日 (火)

立処真『流転の舞』(日本文学館) を読む

立処真『流転の舞』(日本文学館)

立処真さんの『流転の舞』(日本文学館) を読みました。どうして読んだかというと、作者本人からメールで「読んで感想を聞かせてくれ」という連絡が届いたからです。私が在チリ大使館で外交官をしていた時に、同じコルフ・クラブの会員として、何度かゴルフをごいっしょさせていただいたこともあります。私はよく知らなかったんですが、どうも、臨済宗の信者のような気がします。というのは、ペンネームの由来は「立処皆真」ではないかと想像しているからです。臨済義玄禅師の言葉で、「随処に主となれば、立処皆真なり」というのがあります。周囲の人や物事の動きに振り回されないで、逆に、それらを意のままに駆使する主体性があれば、真に生き甲斐のある人生を送ることが出来る、という意味です。これを理解してペンネームにしているのであれば、それなりに教養ある臨済宗の信徒ということになります。どうでもいいことですが、私は浄土真宗=一向門徒ですから、時折、「横超」という号を使うことがあります。「南無阿弥陀仏」の念仏を唱えれば、すべてを横ざまに飛び越えて極楽浄土に成仏するという含意です。
前置きはこれくらいにして、なかなか面白くてスラスラと読める娯楽作品だったと思います。スラスラ読める一因は文字が大きいことです。ストーリーは太平洋戦争末期のフィリピン戦線を生き残った玉置という男の一代記です。作品の時代背景などを含めて考えれば、若い人にはオススメしませんが、これだけ高齢化が進んで、それなりに市場を拡大しているわけですから、時間に余裕ある高齢者向けの大衆娯楽作品のジャンルはもっと重視されていいと私は考えています。こういったジャンルには「時代小説」と呼ばれるものが現時点では主流なんですが、江戸時代の武士を主として描いた小説ばかりではなく、『流転の舞』などのように戦争や戦後直後の日本を舞台にする小説も大いに活躍する時代となりつつあります。そういう意味で、まさに、高齢読者にピッタリの作品といえます。
知り合いの作品ですので欠点をあげつらうことは控えて、今後の改善点としていくつか考えます。第1に、タイトルをもう少し考えるべきです。『流転の舞』とするのであれば、日本の舞かせめてフィリピンのダンスがどこかに入っていて欲しかった気がします。第2に、登場人物のキャラをもう少し工夫すれば、さらに作品の印象が強くなります。「水戸黄門」でも、悪代官がいるからこそ善玉の黄門さまが光るわけですし、脇に控える助さん格さんも魅力あるキャラといえますが、この作品は玉置1人がすべてを背負っています。悪役キャラや補助キャラがいれば、より魅力的な作品になりそうな気がしてなりません。第3に、エピソードが細切れでつながりがない気がします。つながりがなくても読めてしまうところは流石なんですが、特に、後になるに従ってストーリーが雑になるような気がしてなりません。全体としてまとまりのない読後感を持ってしまいます。

最後に、繰返しになるかもしれませんが、私が日々接している大学生のような若い世代ではなく、比較的ご高齢で時間的な余裕のある方に大いに読んでいただきたい作品です。

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2010年3月15日 (月)

ストック・ワトソン指数を推計する

昨年までの景気後退局面の谷を判断するための一助として、ストック・ワトソン指数を推計したペーパー "Identifying Trough of Recent Recession in Japan: An Application of Stochastic Business Indicator" を書き上げました。サイドにある研究室のサイトに pdf ファイルでアップしてあります。下のグラフは推計結果を視覚化したものです。上のパネルが推計したストック・ワトソン指数 (SWI) を内閣府で算出している景気動向指数の一致指数 (CI) に対比してプロットしており、左軸の単位はいずれも 2005年=100 の指数です。下のパネルは SWI と CI のそれぞれに HP フィルターをかけてトレンド部分とサイクル部分に分割 (decompose) し、サイクル部分をトレンド部分で除した比率を GAP と定義して、パーセント表示しプロットしています。

ストック・ワトソン指数の推計結果

推計結果はオリジナリティに富むんですが、方法論としては私らしくありきたりです。ストック・ワトソン指数の原著論文やこれを日本に適用した同志社大学の大日教授の方法をそのままに、何のヒネリもなく推計しています。すなわち、生産、労働、所得、消費の代理変数に、鉱工業生産指数、所定外労働時間指数、実質賃金指数、商業動態統計の小売業の売上げを消費者物価でデフレートして実質化したデータ、をそれぞれ採用し、状態空間表現したモデルをカルマン・フィルターで解いています。
結果は上のグラフの通りで、それなりに良好な推計結果を得ています。上のパネルの指数水準を見ると、1980年代で景気局面が不明瞭な印象を受けるんですが、HP フィルターでサイクル部分を抽出すると、それなりのパフォーマンスを示しています。景気の山と谷をこの推計結果から判断すると、直近の景気の谷は昨年3月だったと考えられます。この点について SWI と CI は一致しています。

今年半ばには内閣府の景気動向指数研究会が開催され、昨年3月を景気の谷と暫定的に認定するものと私は考えています。

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2010年3月14日 (日)

花粉症とオーバーワークでひと休み

オーバーワークに花粉症の悪化が重なって、今日はダウンです。布団から起き出して人間らしい二足歩行を始めると、とめどなく鼻水が流れ出します。たかが花粉症ですから生命の危険は感じませんが、されど花粉症で体内の水分がすべて鼻から流れ出すように感じてしまいます。普段は朝夕2錠の抗アレルギー剤を昨日は4錠も服用してしまいました。
2月最後の土日を東京で過ごして、ホンダのウェルカムプラザ青山に行ったり、近くの小学校で下の子が出ている劇を見たりと、割合とのんびり過ごしていたんですが、その後、休日出勤の嵐で昨日まで2週間近く出勤を続けています。特に、先週は気候が激変した上に、1週間に2回も入試があり、抱えている論文も4本あって、青息吐息になってしまいまいした。もっとも、論文については私独特の方法で、いったん書き上げてから10日から2週間くらい寝かせておく、というか、温める期間を置くんですが、4本のうち2本はすでに熟成期間に入っています。でも、2本のうち1本は今週早々にも書き上げる必要があります。教育の方はすでに春休みに入っていて、コチラはかなりラクです。時折、就活に臨んでいる3年生のゼミ生のエントリーシートの相談にのったりしています。

1年半を超えた単身赴任生活も私の健康に影を落としている可能性があるんですが、単身赴任の功罪については日を改めて考えたいと思います。今日はひたすら休みます。

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2010年3月13日 (土)

毎日コミュニケーションズ「大学生就職企業人気ランキング」

いつも私が気にしている大学生の就職関係の話題なんですが、一昨日3月12日に厚生労働省から「平成21年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査(平成22年2月1日現在)について」と題する記者発表が行われ、大学の就職内定率は80.0%で、前年同期を6.3ポイント下回り、男女別にみると、男子は80.1%(前年同期を6.4ポイント下回る)、女子は79.9%(前年同期を6.3ポイント下回る)との結果が公表されました。

また、今日のエントリーのタイトルですが、さらにその前の3月10日に就職・転職情報サービスの毎日コミュニケーションズが来年3月の大学卒業予定者を対象にした「大学生就職企業人気ランキング」の調査結果を発表しています。このマイコミの調査の詳細は pdf ファイルのリポートでも提供されています。調査結果は下の表の通りです。上の段は文系総合ランキングの上位10社、下は理系総合ランキングの上位10社となっています。

大学生就職企業人気ランキング

この調査の特徴は多くの学生から結果を得ていることで、男女と文系理系をすべて合わせて24000人余りから回答を得ています。統計的には2万人を超えれば、ほぼ無限に近い母集団を代表することが出来ると私は考えています。要するに、かなり信頼性が高いということです。
文系男女では昨年と比べてかなり安定した結果なんですが、文系・理系とも明治製菓がトップテン入りしているのに見られるように、来年卒の学生は食品メーカーへの志向が高まっているようです。理系はどうしても文系よりも専門分野の偏りがあり、いわゆる「潰しが利く」文系より変動が激しく、昨年からトップテンを維持した企業は4社しかありません。理系で昨年1位のソニーが5位に後退し、トヨタがトップテン落ちしていることに象徴されるように、輸出に依存する電機や自動車などのメーカーを敬遠し、食品、鉄道、住宅などの人気が上がっているとリポートされています。

「就職氷河期の再来」ともいわれる厳しい就職戦線の中、
がんばれ就活!

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2010年3月12日 (金)

片岡剛士『日本の「失われた20年」 デフレを超える経済政策に向けて』(藤原書店)を読み経済政策について考える

片岡剛士『日本の「失われた20年」 デフレを超える経済政策に向けて』(藤原書店)片岡剛士さんの『日本の「失われた20年」 デフレを超える経済政策に向けて』(藤原書店)を読みました。どうして読んだかというと、著者の片岡さんからご著書を大学までお送りいただいたからです。こういう場合は何らかのレスポンスをしておくと、引き続き、別のエコノミストからも本の寄贈を受けられると経験則で知っていますので、極めてマイナーは媒体ながら、私のブログで取り上げておきたいと思います。なお、左の画像は藤原書店のサイトから引用しています。まず、この著書は藤原書店主催の第4回河上肇賞を受賞した論文を大幅に加筆修正したものとなっています。河上肇賞受賞、誠におめでとうございます。恥ずかしながら、私はこの賞について知らなかったんですが、河上肇教授はいうまでもなく、我が母校の京都大学経済学部で真っ先に指を屈すべき大先生であり、少なくとも私が在学していた時は学部祭として「河上祭」が毎年開催されていました。私の在学当時には河上肇生誕100年の記念行事もあったりしました。「言うべくんば真実を語るべし。言うを得ざれば黙するにしかず」という河上教授の言葉は私の大好きな名言のひとつで、このブログでも2006年6月8日のエントリーで取り上げていたりします。なお、著者の片岡さんは三菱UFJリサーチ&コンサルティングにお勤めで、リフレ派エコノミストのエースの1人です。リフレ派のエコノミストは多士済々なんでしょうが、私が補欠としてベンチにも入れてもらえずに観客席から応援しているだけなのに対して、片岡さんは堂々のマウンドさばきでリフレ派エコノミストのレギュラーメンバーといえます。
まずは、何より重厚かつオーソドックスな論理の展開です。私も最近は本を読み飛ばすことが多いんですが、久し振りにノートを取りながら読みました。それだけの価値ある本だという気がします。目次の構成は藤原書店のサイトに譲るとして、第1章では世界金融危機について概観し、動学的不均衡を援用して、世代重複(OLG)モデルから導かれるティロルの "Asset Bubbles and Overlapping Generations" に沿ったバブルの定義を示しつつ、岩田規久男『金融危機の経済学』(東洋経済新報社)に基づいている印象があります。ただし、やや冗長です。第2章では、バブル崩壊後の1990年代からの日本経済の停滞が需要面と供給面から半々としつつ、「我が国が経験したバブル崩壊と長期停滞は、過大に評価されたストック価格の急激な調整に対してフロー価格の調整が緩慢に進むことで長期停滞をもたらすという、まさに貨幣的現象に基づく経済変動を再現したものである。」(p.160)との結論に達しています。第3章では、『経済分析』第177号における飯田・小林の議論を紹介し、いずれの見方からも、マネタリーベースの増加により信用乗数は上昇することを明らかにし、量的緩和の効果は(1)ポートフォリオ・リバランス効果、(2)時間軸効果、(3)金融システム安定化効果の3点と整理しています。第4章では、ラグを含めて財政・金融政策当局の誤認を明らかにし、金利を操作するという金融政策はデフレ脱却には有効でなかったこと、及び、政府における構造改革と成長やマクロ経済安定化政策は別物であると結論しています。第5章では、財政政策について将来増税とのセットで財政拡大の効果を減殺したこと、また、金融政策ではリスク資産へのシフトという意味で質的にも、当然ながら、量的にも日銀金融政策は不十分であるとし、現政権に対して「野党根性」も「円高容認、金利正常化」も捨て、昭和初期の高橋財政の再現を提唱しています。当然、柱となるのはインフレーション・ターゲティングです。終章では、拡張エッジワース・ボックスのコーナー解の回避としてのマクロ経済政策について詳細な議論が展開されています。
さて、私がこの本を読んで経済政策について考えたことが2点あります。まず第1に、経済政策の第1次の目標とすべきは何か、ということです。我が国経済政策論の泰斗である熊谷教授のエッセイにもある通り、社会的に推移律が成り立たない以上、「経済政策の問題を社会的厚生関数の極大化といったような形で考えることは、やめたほうがよい」(p.7)わけですから、何をもって経済政策の第1次的アプローチとすべきかはある程度重要です。この点において、本書には少し混乱が見られます。すなわち、景気変動の平準化か、GDPギャップの許容できる水準への縮小か、です。私は雇用を重視しますので後者の立場なんですが、本書ではラグの計測に景気転換点からの遅れの月数でカウントしていて、少し違和感を覚えます。おそらく、GDPギャップをひとつの経済政策の目標としつつ、しかも、一定の閾値があるのではないかと私は考えています。もっとも、ものぐさな私のことですから深く追求はせず直感的な議論で済ませますが、私の上げた2つの経済政策の第1次接近目標は、何らかの仮定を置けば同値であろうという気はします。
第2に、現在では経済政策が理念上のものではなく、ゲーム論的な様相を帯びるに至ったという実感です。昔からの議論として、関税においては理念上の自由貿易は一向に実現されず、多国間または2国間などでの交渉事になっていることは誰の目にも明らかです。おそらく、今年メキシコで開催されるCOP16における地球温暖化防止のためのCO2削減交渉も関税交渉と同じレベルになりそうな気がします。本書でも指摘されているように、トリフィンのトリレンマから先進各国では固定為替制度が放棄されているわけですが、リーマン・ショック後の先進各国の金融政策運営を見ていても、この為替から実体経済へのトランスミッションをいくぶんなりとも念頭に置いたゲームが展開されていた気配を私は感じています。しかも、ここ数か月間の日銀の動向を見ていると、国民経済の利得を目指した先進国間のゲームと併せて、中央銀行と政府の間で別のゲインを目指したゲームがプレーされているような印象すらあります。経済政策を学問的に考えるに当たって、実務面での経済政策策定・遂行について、まったく別の見方を要するようになった気がしないでもありません。あくまで、直感的な私の印象ですので、もう少し考えたいと思います。

拡張エッジワース・ボックスのコーナー解の回避としてマクロ経済政策を論じているオーソドックスな本書の読書感想として、ゲーム論的な経済政策の分析の視点を主張する私のような初学者は、リフレ派エコノミストのベンチに入るまでもう少し時間を要するのかもしれません。

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2010年3月11日 (木)

昨年10-12月期GDP統計2次QEから金融政策を考える

本日、内閣府から昨年10-12月期のGDP統計2次QEが発表されました。季節調整済み前期比成長率は1次QEの+1.1%から+0.9%に少し下方修正されました。市場の事前コンセンサスが+1.0%でしたので、やや下回ったんですが、私が注目した設備投資は+0.9%増と1次QEの+1.0%増から極めて小幅の下方改定に止まりました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10-12月期の実質GDP改定値、年率3.8%増に下方修正
内閣府が11日発表した2009年10-12月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.9%増(年率3.8%増)だった。速報値の1.1%増(同4.6%増)に比べて下方修正となった。在庫調整が想定より進んだことが、成長率の押し下げ要因になった。設備投資は前期比0.9%増と小幅な下方修正にとどまり、7四半期ぶりのプラスを確保した。
改定値は速報値の公表後にまとまる財務省の法人企業統計などのデータをもとにGDPを推計し直したもの。日経グループのQUICKがまとめた民間調査機関の事前予測の中央値(前期比年率4.1%増)とほぼ同じだった。会見で津村啓介政務官は「景気が再び悪化する二番底懸念が若干薄らいだ。今後の自律回復に期待したい」と述べた。実感に近い名目成長率は前期比年率0.5%増と速報値(0.9%増)より下方改定になった。
改定値に大きく影響したのが民間在庫。原材料や仕掛かり品の在庫について新たなデータを加えて推計し直した結果、速報値より取り崩し幅が膨らんだ。特に製粉や鉄鋼などの在庫が減った。

次に、いつものGDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者所得を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と外需はGDPの前期比成長率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2008/
10-12
2009/
1-3
2009/
4-6
2009/
7-9
2009/
10-12
1次QE2次QE
国内総生産(GDP)▲2.7▲3.6+1.5▲0.1+1.1+0.9
民間消費▲0.8▲1.3+1.1+0.6+0.7+0.7
民間住宅+2.4▲6.6▲9.4▲7.8▲3.4▲3.3
民間設備▲7.3▲8.7▲4.2▲2.6+1.0+0.9
民間在庫 *+1.3▲0.9▲0.4▲0.2+0.1▲0.1
公的需要+1.1+1.2+1.4▲0.3+0.4+0.3
外需 *▲2.7▲0.6+1.8+0.3+0.5+0.5
輸出▲2.0▲13.9▲21.3+6.5+6.4+6.5
輸入+0.1▲17.6▲3.9+5.4+1.3+1.3
国内総所得(GDI)▲0.8▲2.2+1.3▲0.6+1.1+0.8
名目GDP▲1.3▲3.7▲0.1▲0.6+0.2+0.1
雇用者所得+0.4▲0.7▲1.2+0.9▲0.4▲0.4
GDPデフレータ+0.4+0.3▲0.6▲0.6▲3.0▲2.8
内需デフレータ+0.2▲1.3▲2.6▲2.8▲2.9▲2.8

さらに、これまたいつものGDP成長率と需要項目別の寄与度のグラフは以下の通りです。折れ線グラフは季節調整済みの系列で見た前期比成長率、棒グラフはこれを需要コンポーネント別に寄与度表示したもので、いずれも左軸の単位はパーセントです

GDP前期比成長率と需要項目別寄与度

極めて順調な景気回復過程と私は受け止めています。全体のGDP成長率の修正は設備投資とともに小幅の下方修正で済みましたし、4-6月期のように外需寄与度が突出しているわけでもありません。在庫はマイナスに改定され調整が進んでいることが見て取れますが、逆に、本格的な在庫積増しの局面には入っていないともいえます。▲0.2%ポイントのこの在庫投資の寄与度のスイングで、全体のGDP成長率の下方修正がほぼ説明できます。足下の1-3月期を含めて今後の経済を大雑把に見通すと、2番底の可能性はかなり遠のき、今年年央くらいまで、すなわち、4-6月期か7-9月期くらいまで前期比年率で2-3%のやや潜在成長率を上回る成長が続き、その後、やはり2-3四半期くらいの景気の踊り場でゼロ近傍の成長率を記録した後、2011年度から本格的な景気回復局面に入ると私は想定しています。もっとも、米国経済の見通しに大きく依存していますので、極めて大雑把な見込みであることは繰り返して強調しておきます。
この2次QEを見て金融政策について考えると、来週の日銀金融政策決定会合で決まるであろう追加的な緩和策は小手先で終わる可能性が高まったと私は受け止めています。昨年12月の新型オペの導入の際のように、長期国債の買取り額の増額はなく、年度末の資金需要の高まりを見据えた、何らかのオペを実施することになりそうな気がします。そして、政府から拍手喝采を、市場からブーイングを、それぞれ受けるんではないかと感じています。昨年12月1日付けのエントリーでお示しした私の感想が繰り返されそうな予感があります。日銀は別にして、政府サイドでインフレーション・ターゲティングの議論が高まるかどうかに私は注目しています。

景気は回復軌道に乗っていますが、GDPギャップはまだまだ巨額に上っており、私が最も重視する雇用の確保には需要不足です。景気回復の方向性ではなく、現時点でも、量としてのギャップを埋めて完全雇用に近づけるような政策対応が必要な局面にあると私は考えています。

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2010年3月10日 (水)

機械受注統計は底入れを確認

本日、内閣府から1月の機械受注統計が発表されました。季節調整済みコア機械受注の前月比で▲3.7%減の7238億円となり、市場の事前コンセンサスであった▲3.5%減にほぼミートしました。底入れが確認されたと私は受け止めています。ですから、以下の引用記事にもある通り、内閣府の基調判断も「下げ止まりつつある」に上方修正されています。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の機械受注、前月比3.7%減 基調判断は上方修正
内閣府が10日発表した1月の機械受注統計によると、民間企業設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)は前月比3.7%減となり、2カ月ぶりにマイナスとなった。ただ落ち込みが小幅にとどまったことや、変動の大きい携帯電話の影響を除けば2.2%増になることから、基調判断を「下げ止まりつつある」に上方修正した。企業の投資行動は最悪期を脱しつつある。
機械受注は工場の生産設備などの受注額をメーカーなどから聞いて作成する。数カ月から半年ほど先の民間設備投資の動向を示す。民間調査機関の予測中央値(QUICK調べ)は前月比3.5%減とほぼ同じだった。

次に、いつものグラフは以下の通りです。一番上のパネルは船舶と電力を除いたコア機械受注とその6か月後方移動平均の推移、真ん中のパネルは需要者別の推移、一番下は長崎ローカルで注目されている船舶の受注残高とそれを販売額で除した手持ち月数です。なお、真ん中のパネルの製造業と非製造業からは船舶・電力は除かれています。いずれも季節調整済みの系列です。影をつけた部分は景気後退期なんですが、直近の谷は昨年2009年3月と仮置きしています。

コア機械受注の推移

繰返しになりますが、コア機械受注については底入れが確認されたと私は受け止めています。ただし、今後の動向にもよりますが、GDPベースの設備投資は今年いっぱいくらい緩やかな伸びとなることは覚悟すべきです。注目すべきは上のグラフの真ん中のパネルで、船舶と電力を除くベースで見て、製造業はかなり早くから底入れしているんですが、非製造業は一進一退が続いています。鉱工業生産指数にも見られる製造業ほどには非製造業が回復していないひとつの証拠といえます。コア機械受注からは外れますが、1月は全体と同じで少し減少したものの、外需も順調に回復しています。要するに、内需に基盤を置くセクターの回復が遅れているわけです。なお、一番下のパネルで示した通り、長崎ローカルで注目されている船舶については逆の動きで、確実に受注残高が減少しています。先月、2月10日付けのエントリーでも主張したように、資源高や原油高が始まった2003年以前の受注残高2-3兆円、手持ち月数20-30か月の水準まで落ちると仮定すれば、調整に3-4年程度の期間を要する可能性があると考えられます。

企業物価の推移

最後に、日銀から発表された2月の企業物価の推移は上のグラフの通りです。前年までの反動による輸入物価の大幅下落局面を終えても、まだ国内物価は14か月連続で前年比マイナスを続けるデフレに陥ったままです。

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2010年3月 9日 (火)

景気動向指数は順調に上昇

本日、内閣府から1月の景気動向指数が発表されました。CI 先行指数は前月と比較して2.4ポイント上昇し、11か月連続の上昇、一致指数も前月と比較して2.5ポイント上昇し、10か月連続の上昇となりました。1月の一致指数は99.9まで回復し、これは以下の引用にもある通りリーマン・ショック直前の2008年夏ころの水準にほぼ匹敵します。DI の一致指数も100、すなわち、全系列が景気拡大を示しています。もちろん、景気動向指数 CI の水準は付加価値生産水準を示す鉱工業生産指数とは違い、マクロの経済活動の水準を示すものではありませんが、今年2010年1月時点まで景気の回復はかなり順調といえます。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の景気一致指数、10カ月連続上昇 リーマン・ショック前の水準に
内閣府が9日発表した1月の景気動向指数(CI、2005年=100、速報)によると、景気の現状を示す一致指数は前月比2.5ポイント上昇の99.9だった。上昇は10カ月連続。一致指数は米リーマン・ショック前の08年7月以来の水準まで回復した。有効求人倍率(除学卒)など雇用関係の指数が改善したほか、商業販売額(卸売業)など消費関連項目が好転したことが寄与した。内閣府は基調判断を従来の「改善を示している」に4カ月連続で据え置いた。
数カ月後の景気の先行きを示す先行指数は2.4ポイント上昇の97.1となった。消費者態度指数や日経商品指数の上昇が寄与した。記者会見した津村啓介内閣府政務官は「このところ安定した上方トレンドを示している。今後の景気判断の中でも重要な判断材料として注目していきたい」との認識を示した。

次に、下のグラフは景気動向指数の先行指数と一致指数をプロットしたものです。赤い折れ線が一致指数、水色が先行指数です。影をつけた部分は景気後退期なんですが、直近の谷は昨年2009年3月と仮置きしています。

景気動向指数の推移

昨日、発表された景気ウォッチャー調査でも消費者マインドは着実に向上しており、この先、米国経済など外需の影響を受けて少し中だるみ的な景気の踊り場を迎えるとしても、今年末からは設備投資も含めて本格的な景気拡大局面に入ると私は考えています。しかし、ここで考えておかねばならないのは、どうして私のような考え方が少数派で、世間一般では景気が悪いと受け止めているかです。ひとつの理由は経済政策で考えるべきは景気の方向に竿差す countercyclycal な方向性ではなく、産出ギャップに応じたものであるべき、との考え方が浮上します。なら、ミッチェリアンな景気転換よりもシュンペタリアンな産出ギャップを政策目標とする方が適しているように感じられます。また、もうひとつの理由は2000年代前半と同じでデフレだということです。政府のデフレ宣言と同じで対応策を何も考えていないんですが、私の従来からの主張は賃金上昇がデフレ脱却の十分条件である、というものです。

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2010年3月 8日 (月)

いろいろと発表された経済指標

本日、いろいろと経済指標が発表されました。まず、財務省から1月の経常収支などの国際収支、日銀から銀行貸出しなどの2月のマネーストック統計、内閣府からは2月の景気ウォッチャー調査が、それぞれ発表されました。まず、いつもの日経新聞から関連する記事を引用すると以下の通りです。

1月の経常黒字8998億円 アジア向け輸出持ち直す
財務省が8日発表した1月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支は8998億円の黒字となった。前年同月の赤字から黒字に転じた。アジア向けや米国向けの輸出が持ち直し、貿易収支が黒字となったのが主因だ。
経常収支の黒字は12カ月連続。モノとサービスの取引状況を示す貿易・サービス収支も、前年同月の赤字から373億円の黒字に転じた。
このうち輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1972億円の黒字だった。輸出額は前年同月比40.6%増となり、米国向けの自動車やアジア向けの半導体などが持ち直した。輸入は7.1%増で、原油などの増加で15カ月ぶりのプラスに転じた。サービス収支は1599億円の赤字。貿易量の回復で輸送関連の収支が改善し、赤字幅が前年同月比24.7%縮小した。
2月の銀行貸出残高1.6%減 3カ月連続で減少
日銀が8日発表した2月の貸出・資金吸収動向によると、全国銀行の貸出残高(月中平均)は前年同月比1.6%減の400兆1664億円となった。減少は3カ月連続。金融危機の影響で銀行融資が大きく伸びた昨年2月の反動が出た。企業の資金需要が弱含んでいるのも響いた。
貸出残高の内訳をみると、都銀が3.3%減の206兆2903億円となり、4カ月連続で減った。地方銀行と第二地方銀行の合計は0.3%増の193兆8761億円で、59カ月連続の増加となった。2月末のコマーシャルペーパー(CP)引受残高は前年同月末比29.1%減の10兆4200億円。17カ月連続のマイナスとなった。
実質預金残高(手形や小切手を除き、譲渡性預金を含む。月中平均)は前年同月比2.9%増の532兆2843億円だった。調達した資金を法人預金に振り向ける企業が多く、高い伸びが続いている。
2月の街角景気、3カ月連続上昇 基調判断を上方修正
内閣府が8日発表した2月の景気ウオッチャー調査によると、景気の実感を示す「街角景気」の現状判断指数は前月に比べて3.3ポイント高い42.1となり、3カ月連続で上昇した。家電・自動車の売り上げが持ち直し、外国人観光客が増えたとの指摘も目立った。内閣府は基調判断を2カ月ぶりに上方修正したが、調査では今後の景気を見通すうえでトヨタ自動車のリコール(回収・無償修理)問題の行方を注視したいとの声も多かった。
調査は2月末に実施した。小売店主やメーカーの経営者ら約2千人が景況感を5段階で評価した。内閣府は基調判断を「厳しいながらも、下げ止まっている」とし、前月の「下げ止まっていたものの、引き続き弱い動き」から上向きに引き上げた。
現状判断指数は2009年10月の水準まで回復した。津村啓介・内閣府政務官は記者会見で「昨年末に広がった景気の二番底懸念が薄らぎつつある」との認識を示した。先行き判断指数も前月に比べ2.9ポイント高い44.8と3カ月連続で上昇した。

まず、経常収支の推移は下のグラフの通りです。青い折れ線で経常収支を、そのコンポーネントである貿易収支、サービス収支、所得収支、移転収支を棒グラフで、それぞれプロットしてあります。いずれも季節調整済みの系列で、左軸の単位は兆円です。先の景気拡大末期の2007年には及びませんが、経常収支は貿易収支とともに順調に回復を示しています。

経常収支の推移

次に、マネーストック統計のうち、貸出し先向けの銀行貸出しの推移が下のグラフに示されています。いずれも私が書いているので、上とよく似たグラフですが、前年同月比で貸出し残高の増減を折れ線でプロットし、棒グラフが法人向け、地方自治体向け、個人向け、主として海外のその他向け、中央政府向けに寄与度で分解してあります。グラフにはありませんが、昨年10-12月期以降、マネーストックの指標となっているM2やM3の伸び率が前年同月比で見てかなり低下して来ており、銀行貸出しも大きく減少し、引用した記事にもある通り、3か月連続の減少を記録しました。来週の日銀金融政策決定会合では、追加的な金融緩和策として新たなオペが検討されているとのウワサを聞きましたが、年度末に向けての資金供給で終わるのか、本格的な金融緩和を進めるのかに着目したいと私は考えています。

銀行貸出しの推移

最後に。景気ウォッチャー調査の結果は下のグラフの通りです。引き続き、エコカー減税・補助金や家電エコポイントなどに引っ張られて上昇を示しています。特に、2月は旧正月に伴うアジアからの観光客の増加が寄与したようです。基調判断が上方修正されたのは引用した記事の通りです。引き続き、消費者マインドの改善が続けば、2番底の可能性はかなり遠のき、踊り場的な景気の軟化も軽微で済む可能性が出て来ました。

景気ウォッチャー調査の推移

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2010年3月 7日 (日)

3月11日に発表される10-12月期GDP統計2次QEは小幅の下方修正か?

日曜日ながら、来週は月曜日の国際収支・経常収支と景気ウォッチャーに始まって、火曜日に景気動向指数、水曜日に機械受注の発表があり、木曜日の10-12月期GDP統計2次QEの発表まで取り上げる機会がないかもしれませんので、今日のうちに2次QEの予想について概観しておきます。すなわち、内閣府による3月11日の発表を前に、先週の法人企業統計など2次QEに必要な経済指標がほぼ出尽くし、各シンクタンクや金融機関などから昨年2009年10-12月期の2次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。今回は、設備投資や先行きを示唆するものがあれば、それを優先的に拾ったつもりです。詳細な情報にご興味ある方は左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+1.1%
(+4.6%)
n.a.
日本総研+0.9%
(+3.8%)
設備投資と在庫投資が下方修正
みずほ総研+1.0%
(+4.0%)
1-3月期以降について、輸出が増加基調を維持して生産を下支えするものとみられるが、エコポイントなどの耐久財購入支援策の限界効果が次第に薄まってくる中で民需は牽引役を失うだろう
ニッセイ基礎研+1.1%
(+4.3%)
10-12月期・GDP2次速報は小幅下方修正を予測
三菱UFJ証券+1.1%
(+4.5%)
景気回復はすぐには途切れず、10年いっぱい続くことになろう
第一生命経済研+1.1%
(+4.5%)
1次速報から小幅下方修正ではあるが、前期比プラスは確保できる見込みであり、設備投資の下げ止まりが改めて確認される
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+1.0%
(+4.2%)
民間企業設備投資は、需要サイドの統計である10-12月期の法人企業統計の結果を受けて、1次速報値の前期比+1.0%から同-0.3%に下方修正
三菱総研+0.9%
(+3.5%)
法人企業統計調査の結果を受け、民間企業設備投資と民間在庫品増加は下方修正を予想

大幅な改定が予想されていない中で、私がもっとも注目したのは設備投資だったんですが、表に取り上げた7機関のうち、私の直感と同じで、1次QEの+1.0%よりも下方修正されるものの、プラスを維持するとしたのが、みずほ総研、三菱UFJ証券、第一生命経済研の3機関、マイナスに転じるとしたのが、日本総研、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、三菱総研の同じく3機関、そして、上方修正されると予測するのが、ニッセイ基礎研の1機関ときれいに分かれました。興味がますます募ります。もうひとつの注目点は在庫の動向なんですが、下方修正を見込む機関が多いようです。

いずれにせよ、昨年末までの順調な景気回復が裏付けられる内容となると私は受け止めていますが、上の表で引用したヘッドラインの中にあるように、今年年央くらいにかけて景気の踊り場的な成長率の低下を予想する向きもあることは事実です。私も同感です。

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2010年3月 6日 (土)

米国雇用統計のグラフィックス

昨日、米国労働省から2月の米国雇用統計が発表されました。ヘッドラインとなっている非農業部門雇用者数は季節調整済みの系列で見て、前月から▲36千人の減少となりましたが、失業率は同じく季節調整済みの系列で前月と同じ9.7%でした。市場の事前コンセンサスは雇用者数が6万人を上回る減少で、失業率は9.8%に上昇すると見ていましたので、これよりはいい数字でしたが、引き続き米国においても雇用の回復ペースは緩慢と受け止めるべきです。また、今回の雇用統計の話題として、米国東部や中西部をはじめとする2月の厳しい天候の影響があり、米国労働省の発表文書でも、特に、Effect of Severe Winter Storms on Employment Estimates と題するコラムを設けていて、"Major winter storms affected parts of the country during the February reference periods for the establishment and household surveys." であることは確かなんでしょうが、"While some persons may have been off payrolls during the survey reference period, some industries, such as those dealing with cleanup and repair activities, may have added workers." との結論で、要するに、当然ながら「天候の影響はあるんだろうが、よく分からない」ということのようです。まず、New York Times のサイトから記事を最初の3パラだけ引用すると以下の通りです。

Jobless Rate Holds Steady, Raising Hopes of Recovery
The American economy lost fewer jobs than expected last month and the unemployment rate remained steady at 9.7 percent, the Labor Department reported Friday, bolstering hopes that a still-tenuous recovery may be gaining momentum.
The government's monthly snapshot of the job market found that another 36,000 jobs disappeared in February - hardly cause for a celebration.
Yet compared to the monthly losses of more than 650,000 jobs a year ago, and against a backdrop of recent news that increased the possibility of a slide back into recession, most economists construed the report as an improvement.

すなわち、いずこも同じで、雇用なき景気回復が景気回復そのものを阻害するおそれがあるということのようです。ということで、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者の前月差増減、下は失業率です。いずれも季節調整済みの系列です。影をつけてある期間は景気後退期なんですが、米国における直近の景気の谷は昨年2009年6月と仮置きしています。

米国雇用統計の推移

米国労働省の統計では2月の非農業部門雇用者の減少幅は1月より大きいんですが、民間の給与計算アウトソーシング会社である ADP (Automatic Data Processing) の統計では、2月は1月より減少幅が小さくなって改善を続けていることになっています。下のグラフの通りです。私を含めて、米国労働省より ADP の統計の方が実感に合うというエコノミストも何人かいます。

米国雇用統計の比較

最後に、いつもの通り、上で記事を引用したのと同じ New York Times のサイトにあるフラッシュに直リンしておきます。

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2010年3月 5日 (金)

日銀の追加緩和策に関する日経新聞の報道

今日、某メディアの在京記者の方から取材を受けました。というのは、本日付けの日経新聞で日銀の追加緩和策についての報道があるということで、私も日経新聞を見ましたが、残念ながら九州版では当該記事が見当たりませんでしたので、ネットで探すと確かにありました。関連する記事を2本引用すると以下の通りです。

日銀、4月にかけ追加緩和を検討 短期金利、一段の低下促す
日銀は追加の金融緩和策の検討に入った。4月にかけて本格的に協議する。期間1年以下の短期金利の一段の低下を促すことを軸に、資金供給手段の拡充などを議論する方向だ。消費者物価が下げ止まらないなかで企業や家計の行動が慎重になるリスクがあると判断。デフレ進行で再び景気が悪化する事態を防ぐために、機動的に動く態勢を整える。
日銀は3月16-17日の金融政策決定会合で追加金融緩和の本格議論を始める見通し。景気の回復ペースそのものは堅調とみているため、緩和策決定には政策委員の間に慎重な意見も残る。このため3月の決定は見送り、決定会合が2回予定されている4月に具体策を詰める可能性もある。
日銀の緩和検討、財務相が評価
菅直人副総理・財務相は5日午前の閣議後の記者会見で、日銀が追加の金融緩和策の検討に入ったのに対して「デフレ脱却の努力をすることは好ましい」と述べた。同相は「政府はデフレ脱却に向けてさらなる努力をするので、日銀も同じ目標に向かってさらなる努力をお願いしたいと常に言っている」と指摘。「そういうこともあり、日銀の方で(追加緩和を)検討しているのかもしれない」と語った。
財政政策を巡っては「今の日本経済はすぐに出口戦略に移れる状況にきていない」と語り、当面は積極的な財政出動を続ける考えを示唆した。円相場については「(財政危機の)ギリシャ問題がユーロ安、結果としての円高に影響している」との認識を示した。

緩やかながら景気が回復する中でコアコアCPIが依然としてマイナスを続けるデフレの中で、総選挙を終えたばかりの政府首脳から追加緩和策を求められているんですから、いかなる観点からも日銀は追加緩和策を実施する必要に迫られていると受け止めるべきです。私がこのブログで何度も繰り返して来た、余りにも当然のことがようやく実現するようですから喜ばしい限りです。ちなみに、リフレ派のエコノミストとして、日銀の追加的な緩和策について、あたかも「オオカミ少年」のように、何度も繰り返して取り上げているんですが、最近12月以降は以下の通りです。

  • 2009年12月1日: 今日午後の日銀臨時金融政策決定会合の結果をどう見るか?
    何はともあれ、「政府からの独立」を盾に、頬かむりを決め込んでいた日銀もようやく重い腰を上げました。「ルビコン川を渡った」とまでは思いませんが、政府の顔色や市場の動向に応じて追加的な金融緩和策を次々と打ち出さざるを得ない状況に近くなったことは確かです。
  • 2010年1月26日: 来年度予算政府案に見る我が国の財政事情と日銀の追加緩和策の予想
    私は来月かさ来月には日銀が追加的な緩和措置を講じる可能性が十分あると見ています。大胆かつやや無責任、さらに何ら根拠を示さない予想を披露しておきます。
  • 2010年1月29日: 各種経済統計が発表される
    緩やかながら景気拡大が続いている中で、需給ギャップも緩やかながら縮小していると考えるべきですから、このマイナス幅を拡大し続けるコアコア CPI は循環的なものではなく、何らかの構造的な要因を反映していると受け止めるべきです。このことが理解されているのであれば、私が今週火曜日1月26日付けのエントリーで根拠なく宣言したように、日銀が何らかの追加的な緩和策を取るべきタイミングが近付いていると考えるべきです。
  • 2010年2月18日: ものすごい偶然か?
    日銀は今日までの金融政策決定会合で、追加的な金融緩和策を見送りました。取りあえず、私が1月26日付けのエントリーで示した大胆な予想は今月については外れました。しかし、1次QEを取り上げた方の月曜日のエントリーでチラリと触れたように、特段の政策対応の準備なしに「デフレ宣言」してしまった政府から日銀への圧力が強くなるのは目に見えています。来月には何らかの追加緩和策が決定されると重ねて予想しておきます。
  • 2010年2月26日: 鉱工業生産と消費者物価の動向を占う
    物価上昇率をさらに引き上げたいのであれば、物価に責任を持つべき政策当局、すなわち、中央銀行が何らかの政策を発動することが必要です。再び、三たび、大胆な予想ですが、来月16-17日に開催される金融政策決定会合において、私は何らかの追加的な金融緩和策が決定されると考えています。
  • 2010年3月2日: 景気は完全雇用に向かっているか?
    マイナスのGDPギャップ解消とデフレ脱却のため、菅副総理・財務大臣をはじめとして政府から日銀に対する圧力が強まっています。何度かこのブログに書いて来たことですが、今月中旬の日銀金融政策決定会合において、私は何らかの追加的な緩和策が決定されるものと予想しています。

追加的な金融緩和の候補としてはいくつか考えられるんですが、昨年2009年12月に導入された新型オペ、すなわち、国債などの適格担保を基にした3か月間0.1%の金利で毎週8,000億円、総額10兆円の資金供給のオペの延長は、私は候補にならないと考えています。というのは、貸出し期間が3か月ですから、単にロール・オーバーされるだけで日銀当座預金を増加させる効果がまったくないからです。下のグラフの通り、特に、3月に入って当座預金は急速に減少を示し、当座預金のうち非準預先残高は2兆円ほどになっています。

当座預金残高の推移

何と言っても、日銀の白川総裁は『現代の金融政策』で金融政策とはオペにより短期金利を操作することがその本質、と喝破した方ですから、政策金利を0.1%にしておくことで金融緩和策としては十分と考えているフシがあるんですが、まさか、すべての日銀エコノミストがそのレベルだとは私は思いたくありません。でも、政府向けに実効のない追加緩和策でお茶を濁すくらいのセンスはあるかもしれません。

取材に対して、「そんなことも知らなかったのか」とかなり尊大な受け答えになってしまって反省しています。でも、私なんかから見れば、追加的な金融緩和は客観的な情勢から導き出される論理的かつ明白な帰結だと思います。さらに付け加えれば、メディアで取り上げられてしまった限り、日経新聞の最初に引用した記事の最後にあるような「3月の決定は見送り、…4月に具体策を詰める可能性」はあり得ません。今日の市場はこの観測記事を囃した面もあるわけですから、メディアも日銀も市場の期待というものを無視しています。最後に、意識してか意識せずか、観測気球を上げたか上げさせられたか、昨日、滋賀県金融経済懇談会で講演をした野田審議委員はお気の毒に思います。

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2010年3月 4日 (木)

法人企業統計に見る企業業績の回復と緩慢な設備投資動向

本日、財務省から昨年10-12月期の法人企業統計調査が発表されました。経常利益は10兆円を超え、10四半期振りの増益となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

企業の経常利益、2倍に10-12月期、10四半期ぶり増
財務省が4日発表した2009年10-12月期の法人企業統計によると、企業の経常利益はリーマン・ショック直後で急激に落ち込んだ08年10-12月期に比べ2倍の10兆3763億円になった。10四半期ぶりの増益だった。売上高は減ったものの、コスト削減で売上原価を圧縮させた。一方で設備投資は17.3%減と11期連続で前年同期を下回り、投資にはなお慎重な姿勢を崩していないことを示した。
売上高は同3.1%減の335兆円と8期連続の減収となった。電気機械や建機などの売り上げが振るわなかった。企業は先行き不透明感から投資を手控え、人件費などのコストを抑えることで利益を確保している。財務省は今回の結果について「企業は依然として厳しい状況」との判断を示した。
足元の景気動向をみるために設備投資の季節調整値をみると、10-12月期は前期比0.9%減と依然マイナスだった。8.2%減だった7-9月期に比べ下落率は縮小したものの、投資活動に回復の兆しは乏しい。

次に、季節調整済み系列のグラフは以下の通りです。上のパネルが売上高と経常利益、単位はいずれも兆円ですが、売上高は左軸、経常利益は右軸に対応しています。下のパネルはソフトウェアを除く設備投資額で、左軸の単位は同じく兆円です。

法人企業統計の推移

引用した記事にもある通り、売上高や利益の観点から企業業績は順調に回復していると見られますが、設備投資にはまだ慎重な姿勢が残っており、完全な底入れはもう少し先、すなわち、今年年央くらいになると私は考えています。他方、労働分配率は着実に低下を示しており、最近の雇用統計を裏付けるものとなっています。下のグラフの通りです。なお、下のグラフは季節調整をしていない原系列を基に、労働分配率=人件費/(経常利益+減価償却費+人件費)で算出しています。

労働分配率の推移

最後に、この法人企業統計を基に考えると、10-12月期GDP統計2次QEの設備投資は7-9月期ほどではないでしょうし、1次QEの+1.0%増がマイナスに突っ込む可能性も小さいでしょうが、少し下方修正されると私は受け止めています。

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2010年3月 3日 (水)

将棋の名人戦挑戦者が三浦八段に決まる

昨日、第68期将棋名人戦・A級順位戦の最終9回戦が、青山の我が家からほど近い千駄ケ谷の将棋会館で一斉に指され、リーグ成績を7勝2敗とした三浦弘行八段が名人戦への初挑戦を決めました。まず、名人戦主催新聞社のひとつである朝日新聞のサイトから最初のパラだけ記事を引用すると以下の通りです。

将棋名人戦、三浦弘行八段が挑戦権 順位戦7勝2敗
羽生善治名人(39)=棋聖、王座、王将=への挑戦権を争う第68期将棋名人戦・A級順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)の最終9回戦は2日、東京・千駄ケ谷の将棋会館で一斉に指され、三浦弘行八段が郷田真隆九段に142手で勝ってリーグ成績を7勝2敗とし、初挑戦を決めた。名人戦七番勝負は4月8、9日に東京都文京区の椿山荘で行われる第1局で開幕する。

私は将棋は決して上手くもありませし、ましてや段位や級すら持っていませんが、このブログでも名人戦だけは注目しており、一昨年の第66期名人戦、当時の森内名人に現在の羽生名人が挑戦した時から、昨年の羽生名人に挑戦した郷田九段の戦い振りなどを取り上げて来ましたが、今年は三浦八段が挑戦です。チャイルド・ブランドとか、羽生世代と呼ばれる羽生名人、郷田九段、森内九段、あるいは、『聖の青春』で取り上げた故村山九段などから、三浦八段は少しだけ若い挑戦者です。当時七冠を独占していた羽生名人から、1996年に棋聖位を奪ったことでも知られています。もっとも、翌年には棋聖位を失っていますから、タイトルはこれだけのような気がします。いまだに、出身地である群馬県のご実家から通勤しているらしいです。

A級順位戦が終わりましたから、降級者と昇級者も決まりました。佐藤九段は昨日の最終戦前に降級が決まっており、昨日の結果を受けて井上八段も降級となりました。逆に、昇級は渡辺竜王と久保棋王がすでに決定しています。深浦王位の昇級はなりませんでした。気の早い話かもしれませんが、渡辺竜王が名人位に挑戦する可能性が出て来ました。今年の挑戦者である三浦八段には誠に申し訳ないんですが、それまで羽生名人が在位することを1人の将棋ファンとして願っています。

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2010年3月 2日 (火)

景気は完全雇用に向かっているか?

本日、総務省統計局から失業率などの労働力調査家計調査の結果が、また、厚生労働省から有効求人倍率などの職業安定業務統計が、それぞれ発表されました。いずれも今年1月の統計です。労働力調査統計と職業安定業務統計を合わせて雇用統計として考えると、失業率の低下や有効求人倍率の上昇など、雇用は完全に反転して改善を示しています。しかし、完全雇用にはほど遠いと私は受け止めています。まず、日経新聞のサイトから雇用に関する記事を引用すると以下の通りです。

1月の完全失業率4.9%、有効求人倍率も0.03ポイント改善
総務省が2日発表した1月の完全失業率(季節調整値)は4.9%と前月から0.3ポイント低下し、10カ月ぶりに5%を下回った。厚生労働省が同日発表した1月の有効求人倍率(同)も0.46倍と前月から0.03ポイント改善した。景気の持ち直しを映して最悪期を脱しつつあるものの、企業の採用姿勢は依然低水準にとどまる。本格的に改善に向かうまでには、なお時間がかかりそうだ。
完全失業率は15歳以上で働く意欲がある人のうち、職に就いていない人の割合を指す。男女別では男性が5.2%、女性が4.6%だった。
失業率が改善したのは就業者数(季節調整値)が6303万人と、前月比で54万人増えた影響が大きい。政府が新たな雇用の受け皿として期待する医療・福祉は前年同月比26万人増。卸売・小売業は7万人減だったが、マイナス幅は2009年12月の23万人減から大幅に縮小した。

次に雇用に関するいつものグラフは以下の通りです。1番上のパネルは失業率、2番目が有効求人倍率、3番目は新規求人数です。景気に対して、遅行系列、一致系列、先行系列の順で並べてあります。1番下の最後のパネルは主要な産業別雇用者数の前年同月差の増減数で単位は万人です。上の3つのパネルは季節調整済みの系列、最後のパネルは季節調整していない原系列の前年同月差です。上の3つのパネルで影をつけてある期間は景気後退期なんですが、直近の景気の谷は昨年2009年3月と仮置きしてあります。

雇用統計の推移

失業率が4.9%、有効求人倍率は0.46倍と、雇用は少し前までの最悪期を脱して、就業者数や雇用者数は季節調整済みの前月比で増加しているんですが、まだまだ完全雇用にはほど遠いと受け止めるべきです。最後の4番目のパネルの雇用者数についても、季節調整していない原系列の前年比で増加を記録するには至らず、特に、製造業は前年同月差で見て大幅なマイナスを続けていますし、目につく増員セクターは医療・福祉くらいのものです。輸出や生産は堅調に回復しているんですが、方向は上向きとはいうものの、まだまだ水準が低いため労働や設備のような要素需要につながっていないことに加えて、昨年度の「財政経済白書」の分析にあったように、雇用保蔵が解消されていなかったり、あるいは、先行き業績に慎重な見方が残っていたりで、現時点ではマクロの経済全体で見て雇用が本格的に増加するに至っていません。かなり長い時間がかかりそうです。

家計調査の推移

続いて家計調査の結果は上のグラフの通りです。名目・実質とも季節調整済みの系列です。年末賞与が激減した影響からか、1月の消費支出は大きく減少しました。少し先ですが、エコカー減税・補助金は9月まで、家電などのエコポイントも12月までですから、少しずつ政策効果による消費下支えは剥落して行くものと考えられます。ですから、1-3月期のGDPベースの消費はマイナスに転じる可能性もあります。また、我が国経済を支える主要セクターであり、政策効果を顕著に受けた自動車と家電については、この先の見通しがやや分かれると私は考えています。家電については来年7月の地デジ完全移行まで、今しばらくの間は需要が期待できます。実は、我が家も右上に「アナログ」と表示の出るテレビをいまだに見ていたりします。しかし、自動車についてはエコカー減税・補助金がエコポイントより早く打ち切られる予定であることに加え、何度も言うようですが、訳の分からないトヨタのリコール問題の不透明さが依然として残っています。誠に小さいサンプルですが、我が家も地デジ移行までにはテレビを買い替えるつもりですが、自動車を購入する予定はありません。

GDPギャップの推移

ということで、最後に、昨日、内閣府の「今週の指標」で公表されたGDPギャップのグラフは上の通りです。図6から引用しています。日経新聞の記事などによれば、2009年1-3月期におけるGDPギャップは▲7.9%で約40兆円の需要不足と過去最悪だったのに比べると10-12月期は▲6.1%で約30兆円となり、3四半期で10兆円程度改善しています。しかし、こちらも雇用統計と同じで方向は改善を示しているものの、水準としてギャップの解消には至っていません。

私が最も重視する完全雇用実現に向けて、マイナスのGDPギャップ解消とデフレ脱却のため、菅副総理・財務大臣をはじめとして政府から日銀に対する圧力が強まっています。何度かこのブログに書いて来たことですが、今月中旬の日銀金融政策決定会合において、私は何らかの追加的な緩和策が決定されるものと予想しています。

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2010年3月 1日 (月)

伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』(新潮文庫)を読む

伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』(新潮文庫)

伊坂幸太郎さんの『フィッシュストーリー』 (新潮文庫) を読みました。知っている人は知っていると思いますが、短編として収められている表題作の「フィッシュストーリー」は、映画「アヒルと鴨のコインロッカー」を手がけた中村義洋監督により昨年2009年に同名の映画「フィッシュストーリー」として公開されています。英語の "Fish Story" とは、釣り上げた魚はその後も生きていて成長を続けるとも言われ、日本語で言えば「与太話」のたぐいになるのかもしれませんが、ここでも小さな原因から大きく地球の破滅を回避するまで発展させています。作者については売れっ子中の売れっ子作家ですから私なんかが追加で説明する必要もないと思います。私のこのブログでも、順不同で思いつくままに、『ゴールデンスランバー』、『重力ピエロ』、『死神の精度』、『終末のフール』、『あるキング』、『SOSの猿』などを取り上げています。何か抜けているかもしれません。ただし、映画化された作品もいっぱいあるんですが、映画は見たことがありません。
この作者にしてはめずらしく、『フィッシュストーリー』は一貫していない中編4編を収めています。私が今までに伊坂作品の短中編集を読んだのは、順不同で『死神の精度』、『終末のフール』、『チルドレン』なんですが、『死神の精度』は死神である千葉を主人公にしていますし、『終末のフール』は「8年後に小惑星が地球に衝突して人類が滅ぶ」ことが発表されてから5年後、すなわち、3年後に地球が終末を迎えるという設定で仙台郊外のマンションに住む住民を主人公にしています。『チルドレン』は陣内を軸にした物語です。でも、この『フィッシュストーリー』に収められた短中編4編は以下の通りなんですが、「一貫した何か」は少なくとも表面的にはないように見受けられます。悪く言えば寄集めとも言えますが、そこは売れっ子作家のことですから上手にまとめてあります。

  • 動物園のエンジン
  • サクリファイス
  • フィッシュストーリー
  • ポテチ

一貫していないものの、やや中途半端ながら、「サクリファイス」と「ポテチ」には泥棒兼探偵の黒澤が登場します。伊坂作品ではおなじみのキャラだと思います。表題作で映画化もされた「フィッシュストーリー」は、基本的には、正義の味方として育てられた瀬川の物語なんですが、日本の売れないパンクバンドが解散前の最後のレコーディングで演奏したという曲の1分ほどの空白が時空を超えて奇跡を起こし地球を救うというものです。「ポテチ」は『重力ピエロ』や先日取り上げた東野圭吾さんの『カッコウの卵は誰ものの』のように、血のつながりや親子関係を描いた作品です。「動物園のエンジン」も何とも言えないストーリー展開となっています。ミステリとは認めない人がいるかもしれませんが、私には立派な謎解きでした。

一貫した何かがないという意味で、独立したように見える4編の中編から成る作品ですから、適当に時間が空いているときに読む向きにも適していますし、伊坂作品のいつものキャラである黒澤をはじめ、『重力ピエロ』の兄弟にチラリと触れる部分もあり、いつもの通り、伊坂作品として何らかのリンクが保たれています。多くの人にオススメします。

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今日は女房の誕生日!

今日は女房の誕生日です。心からめでたいという年齢は過ぎたかもしれませんが、それでも、誕生日がめでたいことに変わりありません。ここ2-3年はどこかのホテルでブッフェ・ランチに行くことになっていて、昨日あたりが候補日だったんでしょうが、子供達が2人とも小学校行事に行ってしまいましたので、今年は仕切り直しです。

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