企業マインドは完全に底入れし順調に回復、でも先行きは?
本日、3月調査の日銀短観が発表されました。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは▲14と、市場の事前コンセンサスにピッタリ一致しました。4四半期連続での改善です。また、2010年度の設備投資計画も大企業全企業で前年度比▲0.4%減から始まりましたので、決して悪くないと私は受け止めています。まず、いつもの日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。
日銀短観 大企業製造業の景況感、4期連続改善
3月のDI、マイナス14 前期から11ポイント改善
日銀が1日発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でマイナス14となり、新基準で算出した前回(マイナス25)から11ポイント改善した。4期連続の改善で、改善幅は昨年9月以来となる半年ぶりの大きさ。水準はリーマン・ショック時の2008年9月(マイナス3)以来の高さになった。新興国経済の拡大を受けた輸出と生産の増加を反映した。ただ3カ月先の見通しは改善だが、改善幅は縮小となった。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を差し引いた値。大企業製造業の業況判断DIは3カ月先の見通しがマイナス8で、今回に比べ6ポイント改善した。
大企業製造業の業種別でみると、ほぼすべてがマイナスで、金融危機による景気低迷から脱していない。しかし新興国の景気拡大や円相場が昨秋の高騰から下落していることを背景に、自動車が前回比19ポイント改善のマイナス2となった。生産用機械はマイナス40と低水準だが20ポイントの改善をみせ、景況感の底入れを示した。
大企業非製造業の業況判断DIは前回比7ポイント改善のマイナス14となった。4期連続の改善で、1年3カ月ぶりの高水準。改善幅は1999年3月以来、11年ぶりの大きさだった。業種別では対個人サービス、宿泊・飲食サービス、小売などが改善した。
企業収益は改善する見通し。10年度の大企業製造業の計画は、売上高が前年度比3.9%増加、経常利益は当初計画として過去最大の同49.3%増となった。金融危機後のコスト削減効果や海外景気の拡大で大幅増益を見込んでいる。10年度の想定為替レートは1ドル=91円ちょうどで、足元の相場より円高を予想している。
大企業製造業の10年度の設備投資計画は前年度比0.9%減。09年度より減少幅は縮小するが3年連続のマイナススタートとなった。設備が「過剰」との回答から「不足」を引いた設備判断DIは25となり、4期連続で低下。08年12月以来の低水準となったが、なお設備の過剰感は残る。
雇用の過剰感は縮小。「過剰」から「不足」を引いた雇用人員判断DIは大企業製造業で17となり、4期連続で低下。08年12月以来の低水準となった。
次に、日銀短観の業況判断DIのグラフと表は以下の通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業です。いずれも、赤い折れ線が大企業、青が中堅企業、緑が中小企業です。影を付けた期間は景気後退期なんですが、直近の景気の谷は昨年2009年1-3月期と仮置きしています。
業況判断DI | 2009/9 | 2009/12 | 2010/3 | 2010/6 (先行き) |
---|---|---|---|---|
全産業 | ▲38 | ▲31 | ▲24 | ▲26 |
大企業製造業 | ▲33 | ▲24 | ▲14 | ▲8 |
中堅企業製造業 | ▲40 | ▲30 | ▲19 | ▲20 |
中小企業製造業 | ▲52 | ▲40 | ▲30 | ▲32 |
大企業非製造業 | ▲24 | ▲22 | ▲14 | ▲10 |
中堅企業非製造業 | ▲30 | ▲29 | ▲21 | ▲21 |
中小企業非製造業 | ▲39 | ▲35 | ▲31 | ▲37 |
統計から明らかな通り、企業マインドは完全に底入れし、足元まで順調に改善を示しています。しかし、問題は先行きです。どの指標を見ても私が主張しているのは同じなんですが、今年年央くらいまでは順調な景気拡大が続き、2番底は回避される可能性が高まったものの、今年後半くらいから少し巡航速度を下回る踊り場的な経済状況になる可能性を指摘し続けています。企業マインドについてもご同様で、製造業・非製造業とも、大企業は引き続きマインドガ改善を続けますが、中堅・中小企業は3カ月先のマインドは落ちると見通しています。企業規模が小さくなるほど悲観的であることが読み取れます。ただし、ポジティブなサプライズだったのは非製造業のマインドの改善幅が大きかったことです。外需にけん引された製造業でマインドの改善幅が大きく、内需に依存する非製造業はもっと改善幅が小さいと私は予想していたんですが、大企業製造業だけでなく、かなり景気拡大のすそ野が広がっていることが読み取れます。ただし、気になるのは為替の動向です。2010年度は大企業製造業の事業計画の前提になっている為替レートは91円ちょうどとなっています。現時点ではこれよりも円安に振れていますが、金融政策の運営いかんでは円高になる可能性も否定できません。
業況判断DIに続いて、設備と雇用の要素需要に関するグラフは上の通りです。一番上のパネルは設備判断DI、真ん中が雇用判断DIで、いずれもプラスは過剰感、マイナスは不足感を示しています。一番下のパネルは各年度の設備投資計画です。設備と雇用の過剰感は緩やかながら解消に向かう動きを見せていますが、これも、中小企業の雇用過剰感が先行き上昇する見通しとなっていて、規模の小さな企業で厳しい経営状況が見られます。なお、2010年度の設備投資計画はこんなもんだという気がしますが、2009年度の反動も含まれていますし、為替動向も影響しますから、今後の動向を注視したいと思います。
最後に長崎短観です。先行き業況判断DIは全国レベルでも規模の小さい企業を中心に低下すると見通されているんですが、特に、長崎では機械受注統計の際に触れているように造船業が資源高の効果が剥落し、この先の見通しが楽観できません。先行き企業マインドは全国と比べても大きく低下する結果となっています。ひょっとしたら、長崎経済はこのまま長期停滞に陥る可能性があるのかもしれません。
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