貿易統計にみる輸出の拡大ペースは巡航速度に
昨日、国際通貨基金 (IMF) から「世界経済見通し」 World Economic Outlook 2010 April の見通し編、第1章と第2章が発表されました。何分、200ページを超える英文リポートですので、もう少し目を通してから、日を改めて取り上げたいと思います。
ということで、本日、財務省から3月の貿易統計が発表されました。コチラに注目したいと思います。ヘッドラインとなる輸出が6兆49億円、輸入が5兆560億円、差引きの貿易収支が9489億円の黒字でした。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
09年度貿易収支、2年ぶり黒字 中国、最大の輸出相手国に
財務省が22日発表した2009年度の貿易統計速報(通関ベース)によると、貿易収支は5兆2332億円の黒字と、2年ぶりに黒字になった。年度ベースでは輸出、輸入とも前年度を下回ったものの、足元では3月の輸出が前年同月比43.5%増と4カ月連続で増加するなど輸出の回復基調が続いている。また09年度の中国向けの輸出額は米国を上回り、日本にとって最大の輸出相手国になった。
09年度の輸出額は前年度比17.1%減の59兆円、輸入額は25.2%減の54兆円だった。米欧の金融危機の影響で年度前半は世界貿易が低迷し、輸出額は比較可能な1980年度以降で初めて2年連続2ケタ減となった。ただ年度後半は各国の景気対策やアジア経済のいち早い回復で持ち直している。
地域別に09年度の輸出をみると、米国向けは22.7%減と3年連続で減った。大型自動車や金属加工に使う工作機械が落ち込んだ。欧州連合(EU)向けは27.5%減と2年連続でマイナス。オランダやフランス向け自動車、ドイツ向け旋盤などが減った。アジア向けも8.3%減になったものの、欧米に比べると減少率は小さい。一方で、輸入は原油価格が前年度よりも下がったことなどで、中東からの輸入額が34.8%減った。
同日発表した10年3月の貿易収支は9489億円の黒字と、一昨年秋のリーマン・ショック後では最大になった。輸出では自動車が米国向けを中心に前年同月の2倍に増えた。半導体などの電子部品の輸出も前年同月比1.6倍。シンガポールや中国向けメモリーなどが好調だった。
どうしても報道では年度の統計が主になるんですが、年度の数字は過去のものだと考えていますので、私のこのブログでは月次の統計を中心に見たいと思います。ということで、いつものグラフは以下の通りです。上の2つのパネルは輸出入とその差額たる貿易収支の毎月の動向です。一番上のパネルが季節調整していない原系列の統計、真ん中が季節調整済みの系列です。一番下のパネルは金額ベースの輸出を価格と数量で寄与度分解したものです。
まず、指摘しておきたいのは、第1に、前年同月比では昨年の大幅な落ち込みの反動で輸出が大幅増に見えるんですが、上のグラフの真ん中のパネルに明らかなように、季節調整で見た前月比ベースの輸出の増勢は大きく鈍化しつつあることです。2月は春節と呼ばれる旧正月の影響もありましたし、私自身も4-5月くらいまでは輸出の回復が続くと考えていたんですが、ここに来て大きなブレーキがかかったと受け止めています。鈍化の中心は中国とアジア向けです。第2に、このところ、このブログでは OECD の先行指数を取り上げていないんですが、これに見られる景気動向にも少し変化が現れ始めており、先行きはさらに日本の輸出が鈍化する可能性が高まっていることです。そして、第3に、従って、1-3月期の GDP 統計で外需の寄与度が縮小する可能性が大きくなっています。10-12月期の外需寄与度は+0.5%だったんですが、1-3月期はもう少し小さくなる可能性があります。もちろん、外需として見ると輸入も含めて考える必要があり、3月の貿易黒字などからは大幅な縮小には至らないと受け止めていますが、少なくとも、10-12月期の+0.5%から拡大することはないと考えるべきです。第4に、輸出の鈍化は生産の鈍化に直結すると考えられます。家電エコポイントは12月まで延長されましたが、一部のテレビは3月いっぱいで打ち切られたりするため、この影響も含めて、4月以降の生産は鈍化が見込まれます。
最後に、輸出や生産の鈍化は景気回復の鈍化につながるわけですが、これは、景気の転換点から約1年を経て、急ピッチだった景気回復が巡航速度に移行すると受け止めるべきです。従って、私はそんなに悲観的になっていません。
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