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2010年4月26日 (月)

ギリシアの財政危機に関する新しいペーパーを書き上げる

ギリシアの財政危機に関する新しいペーパー「ギリシアにおける財政危機に関するノート: 日本への教訓」を書き上げました。6月に刊行される『長崎大学経済学部研究年報』に研究ノートとして掲載される予定です。
実証研究を含まない研究ノートのいつもの例に漏れず、かなり大量の図表や参考文献で補強して、私の考えていることを、ギリシアの財政危機から始めて、一般論としてバブルを取り上げつつ、最後は日本財政に対する含意まで、やや根拠薄弱に書き連ねています。でも、一応、学術論文ですから、事実関係についてはさまざまなソースを当たって確認する作業がそれなりにタイヘンでした。従って、私が書いた本文よりも脚注や参考文献の方がそれなりに価値ある資料集となっているんではないかと自負しています。結論として、細かく分けて以下の12点を指摘しています。

  1. ギリシアの財政危機の背景にはユーロ導入によるバブルの発生と崩壊がある。
  2. 従って、ギリシアだけでなくポルトガルやスペインといった南欧諸国に財政危機が伝染する素地が存在する。
  3. ギリシア、あるいは南欧諸国の財政危機の経済的帰結はユーロの通貨危機である。
  4. 従って、ギリシア以外のユーロ圏諸国はギリシアの財政危機を救済するインセンティブを有する。
  5. しかし、ユーロ圏諸国を主体とする救済は経済規模から見てギリシアとポルトガルまでであり、スペインに財政危機が伝染すれば IMF を主体とする救済に依存せざるを得ない。
  6. ギリシアがユーロ圏諸国に救済を要請したのは IMF の厳しいコンディショナリティを回避したわけではなく、「最後の貸し手」の役割を域内諸国に求めたものである。これは従来にない新しいスキームである。
  7. バブルとは非合理的であったり、情報の非対称性に基づくばかりではなく、合理的なバブルもある。
  8. 財政危機とは流動性の不足であり、政府の支払い能力の低下であることから、財政調整政策で重視されるべき第1次接近目標はストックの国債残高ではなく、フローの財政赤字、特に、プライマリー・バランスである。
  9. フローの財政赤字を国内で調達できなければ海外に頼ることになり、その意味で、経常収支の動向も重要な指標となる。
  10. 日本はフローでもストックでも大幅な財政赤字を抱えているが、経常収支は黒字を続けており、これは民間貯蓄による財政赤字ファイナンスが可能であることを意味することから、ただちに深刻な財政危機に陥る可能性は低い。
  11. しかし、高齢化に伴う国内貯蓄率の低下がすでに始まっており、さらに、経済規模から見て日本の財政は国際機関でも救済されない可能性もあることから、何らかの財政健全化策が必要である。
  12. ギリシアの例を見ると、財政危機は国債の sudden deth ではなく、市場から一定の警告期間が示される可能性もあるが、この期間の長さについては予断を持つべきではない。

いつかブログで書いた記憶がありますが、通常、私はペーパーを書き終えてから1-2週間ほど寝かせる習慣があります。しかし、このギリシアの財政危機については、3月から先週まで毎日のように目まぐるしくイベントが次々に発生したため、とうとう、先週末の4月23日にギリシアが金融支援を要請した段階で書き進むのをストップしました。毎日のように書き直しましたので、論旨が飛んだりうねったりしています。少しまとまりの悪いペーパーになってしまって反省しています。

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