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2010年5月20日 (木)

1-3月期GDP1次速報は4四半期連続のプラス成長!

本日、内閣府から1-3月期GDP統計1次速報、エコノミストの業界で1次QEと呼ばれている指標が発表されました。ヘッドラインとなる季節調整済み実質系列の前期比は+1.2%成長、前期比年率では+4.9%成長と4四半期連続のプラス成長を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

GDP、実質4.9%成長
1-3月、4期連続プラス
住宅投資5期ぶり増、消費が堅調

内閣府が20日発表した2010年1-3月期の国内総生産(GDP)の速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比1.2%増、年率換算では4.9%増となった。プラス成長は4四半期連続。輸出、設備投資、個人消費が堅調で、住宅投資も5四半期ぶりに増えた。物価動向を示すGDPデフレーターの上昇率は前期比で0.01%で、5半期ぶりのプラスに転じた。日本経済の着実な回復を裏付けた格好だが、ギリシャ危機を発端とする市場の混乱といった下振れリスクは残る。
前期比年率でみた10年1-3月期の実質成長率は、日経グループのQUICKがまとめた民間予測の中央値(5.5%)をやや下回った。生活実感に近い名目GDPの成長率は実質ベースと同じで、2期連続のプラスとなった。より細かくみると名目が前期比1.214%、実質が1.209%で、名目が実質を下回る「名実逆転」が5期ぶりに解消した。
前年同期と比べた実質GDPは4.6%増となり、8期ぶりに拡大した。ただピーク時の08年1-3月期より4.7%少なく、金融危機の後遺症がなお残っている。
GDPデフレーターの上昇は野菜や資源の値上がりの影響が大きい。前年同期比では3.0%下落。4期連続で低下し、過去最大のマイナス幅となった。
前期比でみた実質成長率1.2%のうち、内需は0.6ポイント、外需は0.7ポイントの押し上げ要因となった。国内の政策効果とアジア向け輸出の拡大が寄与した。
住宅投資は前期比0.3%増。住宅ローン減税の拡充が効いたとみられる。設備投資は1.0%増と2期連続で伸びた。輸出や生産の拡大が投資に波及してきた形だ。
個人消費は0.3%増で4期連続のプラスとなった。エコポイント制度の見直しで、薄型テレビの駆け込み需要が発生した。公共投資は1.7%減と3連続で落ちた。
輸出は6.9%増と4四半期連続の拡大。アジア向けや欧州向けが伸びた。輸入は2.3%増となった。
働く人の手取り総額を示す名目雇用者報酬は前年同期比0.3%減り、6期連続で落ち込んだ。前期比では1.6%増え、8期ぶりに拡大した。

次に、いつものGDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者所得を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と外需は前期比伸び率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は保証しません。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2009/
1-3
2009/
4-6
2009/
7-9
2009/
10-12
2010/
1-3
国内総生産GDP▲4.2+1.8+0.1+1.0+1.2
民間消費▲1.2+1.0+0.6+0.7+0.3
民間住宅▲7.1▲9.8▲7.3▲2.7+0.3
民間設備▲9.9▲3.7▲2.0+1.3+1.0
民間在庫 *▲1.4▲0.1▲0.1▲0.2+0.2
公的需要+1.2+1.5▲0.1+0.4+0.1
外需 *▲0.7+1.8+0.4+0.6+0.7
輸出▲24.8+10.1+8.6+5.8+6.9
輸入▲18.0▲3.7+5.6+1.5+2.3
国内総所得GDI▲2.9+1.6▲0.4+1.0+0.7
名目GDP▲4.4+0.2▲0.3+0.3+1.2
雇用者報酬▲0.9▲0.9+0.5▲0.0+1.9
GDPデフレータ+0.3▲0.6▲0.7▲2.7▲3.0
内需デフレータ▲1.3▲2.7▲2.9▲2.6▲1.9

さらに、グラフは下の通りです。いずれも前期比成長率・伸び率で、折れ線グラフは実質成長率、棒グラフは実質GDP成長率を需要コンポーネント別に季節調整済み系列の前期比伸び率で寄与度表示したもので、すべて左軸の単位はパーセントです。

GDP統計の推移

引用した記事にもある通り、家電エコポイントの制度変更による駆込み需要がどれくらいあったのかは気にかかるところですが、順調な成長経路を示していると私は受け止めています。もちろん、市場コンセンサスに届かなかったので、少し期待外れの感はあります。でも、上の表で見る通り、デフレータを除いて、名目成長率まで含めてプラスが並ぶのは極めて久し振りです。私のような単純なエコノミストはそれだけでうれしくなってしまいます。
まず、メディアでは2009年度のマイナス成長に少し注目していますが、上の表を見ても明らかな通り、四半期ベースでは2009年度中にはマイナス成長は1度もなかった、すなわち、いわゆるゲタによって年度のマイナス成長がもたらされたことは明らかです。2009年1-3月期を景気の転換点と見なせるわけで、私を含む多くのエコノミストの実感と一致します。先行きを考えると、第1に、消費については家電エコポイントの制度変更などにより不透明感がある一方で、第2に、設備投資については機械受注などから見ても、年内に本格回復の兆しがあります。第3に、外需は欧州の財政危機の広がりや、また、米国景気の動向にも依存して、やや弱含むタイミングが迫ってると私は考えています。

ひとつだけ気がかりなのは、エコカー減税や家電エコポイントなどにより消費が増加する一方で、ようやく持ち直しつつあるとはいえ、設備投資の構成比が落ちていることです。人口が減少に向かう中で資本ストックの伸び率が鈍化すれば、長期的な潜在成長率への影響が懸念されます。

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