京極夏彦『数えずの井戸』(中央公論新社) を読む
京極夏彦さんの『数えずの井戸』(中央公論新社) を読みました。作者は『後巷説百物語』で第130回直木賞を2004年に授賞されていますし、少し前に『嗤う伊右衛門』が映画化されたり、ミステリの『百鬼夜行シリーズ』などでも有名ですので前から読んでみたいと考えていたんですが、ようやくチャンスがありました。どうして、なかなか読まなかったのかというと、ズバリ、妖怪物だからです。でも、今年度上半期のNHK朝の連続テレビ小説は「ゲゲゲの女房」だったりしますし、オカルトがブームというわけでもないんでしょうが、よく流行っているので買いました。この『数えずの井戸』は『嗤う伊右衛門』、『覘き小平次』に続く「江戸怪談シリーズ」の第3弾です。この作者の特徴として長大なページ数を誇っています。以下、ネタバレがあるかもしれません。未読の方が読み進む場合はご注意ください。
上の人物相関図も中央公論新社の特設サイトから引用しているんですが、見れば明らかな通り、この作品は「番町皿屋敷」を基にしています。いろんなバリエーションはありますが、旗本家の10枚揃いの家宝の皿の1枚を割って手討ちにされ、屋敷の井戸に投げ込まれた女中の菊が、井戸の縁に夜な夜な化けて出て皿を数える怪談です。この作品はその事件が起こるまでを描いています。もっとも、この作品では菊は皿を割りません。上の人物相関図で皿を割ったとされる当人の菊をはじめ、主人公的な役割は旗本家当主の青山播磨やその側用人の柴田十太夫などです。上の図に出現しないんですが、青山家腰元の仙や、もちろん、遠山主膳と大久保吉羅も重要な役回りをします。事件が起こった後で、右端に現れる又市と徳次郎が解説をしてくれます。
一応、エコノミストは科学者ですので、エセ科学としてのオカルトは否定します。他方、経済学にもオカルトはあります。エセ科学たる経済学オカルトを否定する代表者の1人は一昨年のノーベル経済学賞を授与されたクルーグマン教授だと私は考えています。でも、文学作品でオカルトを扱うのは、決して好きではありませんが、決して嫌いでもありません。4ツ星くらいで、まずまずオススメの1冊です。
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