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2010年5月14日 (金)

失業の原因は何か?

先週の講義では労働を取り上げました。その昔から、戦後日本の労働の特徴は以下の3点と言われています。

  • 長期雇用
  • 年功賃金
  • 企業内組合

しかし、繰返しになりますが、この3点は戦後日本の労働の特徴であり、大正期や昭和初期の我が国は現在の英米と同じような転職社会だったと言われていますし、そもそも、高度成長期において典型的な日本の労働の特徴が形成された時点でも、上の3点が適用されていたのは、いわゆるエリート層だけであり、せいぜい3割、さらに、現在では、上の3点が大きく転換しつつあることも確かです。でも、大なり小なり、日本の職場では上の3点に適合的な労働システムになっていることも事実です。ですから、日本的な労働の特徴として把握しておく必要があると私は考えています。
授業の最後に私が強調したことがあります。それは失業の原因で、現時点で就業していない学生諸君にとっては就活で内定がもらえない原因と受け止めても同じことです。失業の原因は構造的=ミクロ的な要因と循環的=マクロ的な要因に分けることが出来ます。その中で、ケインズ卿の喝破した通り、マクロ的な需要の不足が失業の大きな要因であり、キチンとした定量的な分析はしていませんが、私の直感では8割以上を占めます。構造的なミクロの要因はミスマッチとも呼ばれます。逆順ですが、簡単に箇条書きすると以下の通りです。

  • 循環的=マクロ的な要因
  • 構造的=ミクロ的な要因
    1. 賃金
    2. 地域
    3. 産業
    4. 職種
    5. 年齢

圧倒的に失業の原因となっているマクロ的な需要不足は個人のレベルではどうしようもありませんが、ある意味で、構造的な要因は個人的な努力でカバー出来る部分でもあります。上の5点の構造的なミスマッチ要因のうち、特に私に気がかりなのは地域への執着です。すなわち、本学の場合、九州域内で生まれ育って九州域内の大学に進学している学生が大部分ですから、特に地域的な執着が見受けられると私は受け止めています。しかも、私から見たらやや誤った認識も散見されます。すなわち、東京や大阪で就職するのに比べて、九州域内で就職する方がラクである、という考え方です。もちろん、東京の総合職と九州域内で転勤のない一般職では、前者の方によりスキルが必要とされると考えるべきですが、条件が同じであれば、九州域内で就職しようとする方が難しいと私は受け止めています。典型的に観察されるのは教職の採用試験です。文部科学省の「平成21年度公立学校教員採用選考試験の実施状況」のうちの第2表 各県市別受験者数、採用者数、競争率によれば、小中高校に養護学校などを合わせた公立学校の試験倍率で、首都圏が東京都4.2倍、千葉県4.4倍、神奈川県5.3倍、埼玉県5.4倍、また京阪神では京都府5.6倍、大阪府5.4倍、兵庫県5.8倍となっているのに対し、長崎県は九州7県の最高倍率15.1倍を記録し、福岡県でも12.8倍あります。要するに、倍率は圧倒的に首都圏や京阪神の方が九州域内よりも低くなっています。仕事の内容が同じであれば、九州域内で就職する方が東京や大阪に行くよりも難しいと私が考えるひとつの根拠です。
繰返しになりますが、大学生の就活を含めて、就業と失業の狭間は極めてマクロ要因の寄与が大きく、失業したり、あるいは、大学生が就職できなかったりするのは、圧倒的に個人の努力の範囲を超えていると私は考えています。ですから、失業者やフリータについて自己責任や個人の努力を強調する見方はほとんど間違いです。しかし、さはさりながら、個人で努力できる部分もゼロではありません。特に、九州域内では地域に執着するのは就活ではマイナスになることを覚悟しておくべきです。

おそらく、現在の大学3年生かあるいは2年生くらいが就職難のピークであろうと私は見ていますが、個人で出来る範囲として、地域に固執することなく、多くの学生諸君が ILO の言うところの decent な職を得ることを願っています。

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