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2010年5月11日 (火)

日本政府の借金の状況やいかに?

昨日の午後、財務省から前年度末すなわち2010年3月31日時点での国債及び借入金並びに政府保証債務現在高が発表されました。約47兆円の政府保証債務現在高を別にして、国債及び借入金の現在高は883兆円に上ります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

国の借金、最大の883兆円 3月末、国民1人693万円 1年で36兆円増える
財務省は10日、国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」の総額が2010年3月末時点で 882兆9235億円と過去最大になったと発表した。昨年3月末から36兆4265億円増加した。補正予算の財源確保のために国債を増発したことが借金増加の主因。10年4月1日時点の推計人口(概算値)1億2739万人で計算すると1人あたりの借金は約693万円で、過去最大だった。
国の借金残高は財務省が四半期おきに公表している。
国の借金の内訳をみると国債は前年同期比40兆408億円増の 720兆4890億円。一方、政府短期証券は2兆4545億円減の106兆281億円だった。

国債及び借入金現在高と政府保証債務現在高に分けて公表されていますが、私は後者の政府保証債務の方は余り興味がないので、前者の国債および借入金の残高を見ると以下の表の通りです。なお、単位は億円ですが、単位未満四捨五入のため合計において合致しない場合があります。また、財務省のサイトからコピペで計数を取っていますので間違いはないと思いますが、完全性は保証しません。正確な計数をお求めの向きは引用元の財務省のサイトをご覧ください。

区分金額前年度末比増減
内国債7,204,890+400,408
 普通国債5,939,717+480,360
 長期国債 (10年以上)3,731,545+189,166
中期国債 (2年から5年)1,771,932+161,749
短期国債 (1年以下)436,240+129,446
財政投融資特別会計国債1,222,253▲88,248
 長期国債 (10年以上)1,002,743+55,371
中期国債 (2年から5年)219,510▲143,619
交付国債4,496▲770
出資・拠出国債17,671▲4,434
株式会社日本政策投資銀行危機対応業務国債13,500+13,500
日本高速道路保有・債務返済機構債券承継国債7,254-
借入金564,063▲11,598
 長期 (1年超)210,921▲11,598
短期 (1年以下)353,142-
政府短期証券1,060,281▲24,545
合計8,829,235+364,265

上の表は2010年3月末現在の計数ですが、最後の債務残高合計と名目GDPを対比して、政府負債務残高のGDP比をプロットしたのが下のグラフです。青い棒グラフは期末における債務残高で左軸の単位は兆円、これを期中の名目GDPで除した比率が赤い折れ線グラフで右軸の単位はパーセントです。当然のことながら、債務残高とGDP比は同じような動きを示していますが、GDP比については、2006-07年の景気拡大終盤でやや低下する局面があった後、Great Recession で財政による景気浮揚策が取られたこともあり、大幅に上昇しているのが見て取れます。なお、お断りしておきますが、今年1-3月期のGDP統計は今月5月20日に発表される予定ですので、直近の政府債務残高のGDP比はまだ計算されていません。

政府債務残高とGDP比の推移

さらに、財務省のサイトから財政収支と国債残高に関する国際比較のグラフを引用すると以下の通りです。上のパネルがフローの財政収支、下がストックの国債残高のそれぞれGDP比となっています。2つのグラフを見れば明らかなんですが、現在の累増したストックの国債残高の多くは1990年代後半から2000年代初頭にかけてのフローの財政赤字に起因しています。

財政収支と債務残高の国際比較 (対GDP比)

このブログでは昨年も全く同じ2009年5月11日付けのエントリーで、まったく同じ話題を取り上げ、「政府債務残高の最適水準に関するエコノミストの合意はまったく形成されていない」とか、「マクロ経済や金融市場の安定が損なわれていない」として、私らしく財政赤字に能天気なところを示していましたが、少なくともこの2点に関しては事情の変更は何らないものの、さすがに、ギリシアの財政危機から世界経済が大きな影響を受けた現時点では、そこまで能天気にもなれません。ギリシアでこうなんですから、日本が財政危機に陥れば世界経済は大混乱どころの騒ぎではないと考えるべきです。

当然、我が国政府も大きな問題意識を持って取り組んでいるところであり、国家戦略室では今年に入ってから中期的な財政運営に関する検討会を数次に渡って開催しており、4月6日の会議では論点整理のポイントなどが公表されています。私は財政危機に対しては sudden death ではなく、市場から何らかの警告期間があるんではないかと考えているんですが、その期間の長さは予断を許しません。市場の信認を失うことのないよう、財政規律の維持に関する国民のコンセンサスを形成することが重要です。

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