2010年1-3月期2次QEはなぜか上方修正に
本日、内閣府から今年2010年1-3月期の実質GDP統計、エコノミストの業界で2次QEと呼ばれている指標が発表されました。ヘッドラインとなる季節調整済みの実質成長率は前期比+1.2%、前期比年率+5.0%と市場の事前コンセンサスに反して上方修正されました。設備投資の下方修正が小幅にとどまった一方で、消費と住宅と公共投資は上方改訂されました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
GDP実質5.0%増に上方修正 1-3月改定値次に、いつものGDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者所得を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と外需は前期比伸び率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。
内閣府が10日に発表した1-3月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質で前期比1.2%増になった。年率換算すると5.0%増で、速報値の4.9%から小幅ながら上方修正した。個人消費を上方修正したほか、公共投資の減少幅が縮小した。設備投資は下方修正になったが、前期比プラスを維持した。
内閣府の津村啓介政務官は記者会見で、景気について「回復局面に入りつつある」と述べ、これまでの「持ち直し」から認識を前進させた。個人消費が堅調だったことや設備投資がプラスを維持したことを評価した。正式な景気判断については月例経済報告で示す。
改定値は速報値の公表後に出される法人企業統計などのデータを使ってGDPを推計し直した数値。日経グループのQUICKがまとめた民間調査機関の事前予想は年率換算で4.1%増と下方修正だったが、見通しを大きく上回った。生活実感に近い名目GDPは前期比1.3%増(速報値1.2%増)、年率換算で5.4%増(同4.9%増)だった。
項目別にみると、設備投資は実質で0.6%増と速報値(1.0%増)から下方修正した。ただ前期比でプラスを維持しており、企業の投資意欲が引き続き回復しつつあることを裏付けた。
個人消費は0.4%増と速報値(0.3%増)から上向いた。自動車や宿泊サービスを上方修正した。公共投資は0.5%減(1.7%減)とマイナス幅が縮んだ。
改定値を踏まえた2009年度の実質経済成長率は前年度比2.0%減と速報値から0.1ポイント下方修正した。2年連続のマイナスで、過去2番目の落ち込みだった。10年度の成長率に対する1-3月期GDPの押し上げ効果(成長率のゲタ)は1.5ポイントになった。
需要項目 | 2009/ 1-3 | 2009/ 4-6 | 2009/ 7-9 | 2009/ 10-12 | 2010/ 1-3 | |
1次QE | 2次QE | |||||
国内総生産(GDP) | ▲4.2 | +1.7 | +0.1 | +1.1 | +1.2 | +1.2 |
民間消費 | ▲1.2 | +1.0 | +0.6 | +0.7 | +0.3 | +0.4 |
民間住宅 | ▲7.1 | ▲9.8 | ▲7.3 | ▲2.6 | +0.3 | +0.4 |
民間設備 | ▲9.7 | ▲3.8 | ▲2.1 | +1.1 | +1.0 | +0.6 |
民間在庫 * | ▲1.3 | ▲0.2 | ▲0.1 | ▲0.2 | +0.2 | +0.1 |
公的需要 | +1.2 | +1.4 | ▲0.1 | +0.4 | +0.1 | +0.3 |
外需 * | ▲0.7 | +1.8 | +0.3 | +0.7 | +0.7 | +0.7 |
輸出 | ▲24.8 | +10.1 | +8.6 | +5.8 | +6.9 | +6.9 |
輸入 | ▲18.0 | ▲3.5 | +5.7 | +1.0 | +2.3 | +2.3 |
国内総所得(GDI) | ▲2.8 | +1.5 | ▲0.4 | +1.0 | +0.7 | +0.8 |
名目GDP | ▲4.4 | +0.2 | ▲0.3 | +0.3 | +1.2 | +1.3 |
雇用者所得 | ▲0.9 | ▲0.9 | +0.5 | +0.0 | +1.9 | +1.9 |
GDPデフレータ | +0.3 | ▲0.6 | ▲0.7 | ▲2.8 | ▲3.0 | ▲2.8 |
内需デフレータ | ▲1.3 | ▲2.7 | ▲2.9 | ▲2.7 | ▲1.9 | ▲1.7 |
さらに、グラフは下の通りです。いずれも前期比成長率・伸び率で、折れ線グラフは実質成長率、棒グラフは実質GDP成長率を需要コンポーネント別に季節調整済み系列の前期比伸び率で寄与度表示したもので、すべて左軸の単位はパーセントです。
昨年2009年の1-3月期の景気の谷を超えた後、4四半期連続でプラス成長を記録し、さらに、2009年7-9月期を除いて前期比で1%を超える成長となっています。景気はどの角度から見ても回復過程にあります。もっとも、政府の「月例経済報告」の文学とは違う定義かもしれません。
では、先行きを考えると、第1に、景気の谷を超えてから1年を経過し、この年末に向けて緩やかに景気は減速することが考えられます。3月末の家電エコポイント制度の変更による仮需の反動に加えて、潜在成長率水準に回帰するためです。潜在成長率を超えるここ1年程の成長が長期にサステイナブルであると誤解すべきではありません。同様の見通しは「ESPフォーキャスト調査」2010年6月においても見られ、4-6月期以降は大きく成長率が下がると見込まれています。第2に、景気は減速するものの、雇用の設備投資の増加が本格化する可能性は十分あります。景気をけん引する主役が政府の政策に起因するものから、民需を中心とする自律的なものに移行する可能性が高いと考えるべきです。第3に、さはさりながら、海外要因を中心に先行きリスクは下振れ方向のものが中心と考えるべきです。世界の株式市場を低迷させている欧州のソブリン・リスク、中国経済のオーバーヒートや場合によってはバブル崩壊、世界景気の回復に伴う原油などの商品価格の上昇、などが下振れ要因として考えられます。
表やグラフから明らかですが、2009年度中の各四半期はすべてプラス成長を記録していたことになり、2009年度を通じたマイナス成長は2008年度からのゲタによるものであることが明らかです。逆に、引用した記事に従えば、現在の2010年度は1.5%あります。2010年度中の各四半期の成長率がゼロでも2010年度は+1.5%成長を記録するという意味です。ですから、せっかく四半期や月で出されているデータを年や年度にまとめるのが意味のない作業だということを理解すべきです。
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