世銀の経済見通し Global Economic Prospect Summer 2010
一昨日、6月9日に世銀から世界経済見通しの改定版 Global Economic Prospects Summer 2010 が発表されています。20ページ余りの全文リポートも pdf 形式で公表されています。このリポートについては、すでにこのブログの1月22日付けのエントリーで紹介しており、昨年まで年の半ばで改訂版が出されることはありませんでした。今年になって大きな変更があったとも思えませんが、やや上方修正されたことは事実でしょうし、1月時点では2011年までの見通しを2012年まで延長しました。いずれにせよ、出てしまったものはしょうがないので、国際機関の動向を取り上げるのは私のブログの特徴でもありますので、図表を中心として簡単に見ておきたいと思います。
まず、副題は Fiscal Headwinds and Recovery とされており、記者会見では、Developing Countries Lead Recovery, But High-Income Country Debt Clouds Outlook と強調されています。世界経済の回復は途上国・新興国がけん引し、先進国の政府債務が暗雲を投げかけている、といったところでしょうか。まず、気になる世界と日本の成長率見通しは以下の通りです。世界経済のPPPとは購買力平価ウェイトに基づくGDP成長率です。いずれも、カッコ付きで示した1月時点の成長率から上方改訂されています。
2010 | 2011 | 2012 | |
世界 | +3.3 (+2.7) | +3.3 (+3.2) | +3.5 (n.a.) |
世界 (PPP) | +4.2 (+3.5) | +4.0 (+4.0) | +4.3 (n.a.) |
日本 | +2.5 (+1.3) | +2.2 (+1.8) | +2.1 (n.a.) |
先進国の政府赤字と債務の深刻さのグラフは以下の通りです。特に赤字で示してある国がハイライトされています。我が日本が見当たらないんですが、横軸の政府債務残高のGDP比はフルスケールで140%ですから、約200%に達する日本は右端にはみ出てしまっています。全文リポートの p.6 Figure 4. Most developing countries are not beset by concerns about fiscal sustainability を引用しています。
途上国に目を向けている世銀のことですから、どうして先進国の政府赤字や債務が気にかかるのかと言えば、下のグラフの通り、Great Recession の少し前から途上国への開発援助が減少しているからだったりします。このあたりの視点は世銀らしいと感心してしまいました。全文リポートの p.7 Figure 5. Official assistance is declining as a share of recipient GDP を引用しています。
最後に、下のグラフの通り、世界の経済成長の半分は途上国の寄与に基づいていますので、先進国と途上国の資金フローの重要性を強調していたりします。全文リポートの p.9 Figure 8. Almost half of global growth is due to increased demand in developing countries を引用しています。
異例の時期の世界経済見通しに関する世銀リポート公表なんですが、日本のメディアの注目度も低いようですし、このブログで最初に取り上げた世界や我が国の成長率見通しなんかよりも、世銀的なロジックを楽しむべきリポートと言えるかもしれません。
| 固定リンク
コメント