中国の人民元相場弾力化の影響やいかに?
週末の6月19日(土)に中国の中央銀行である人民銀行が、人民元の為替相場について「弾力性を高める」ことを明らかにしました。当然ながら、ほぼ2年間ドルにペッグされていた人民元相場を、中国通貨当局が徐々に元高に誘導するものと受け止められています。しかしながら、それまでは弾力性が低かったのは誰の目にも明らかですから、どの程度の弾力性の高まりなのかが気にかかるところです。本日の取引ではやや元高に振れたものの、目立った動きはなかったと報じられています。なお、下のグラフは2008年1月1日から先週金曜日までの中国人民元の対米ドル、対ユーロ、対円に対する相場です。グラフの上の方ほど人民元安、下ほど元高となっています。
私のこのブログでは、すでに、今年の3月19日付けのエントリーで The Economist の BigMac Index を取り上げた際にも人民元相場についてグラフを掲げましたし、アジア開発銀行の経済見通しを取り上げた4月14日付けのエントリーでは「人民元の切上げは時間の問題」と論じ、国際通貨基金 (IMF) の世界経済見通しの分析編を概観した4月19日付けのエントリーでも「中国の人民元の切上げを強く意識した分析」と評価しましたので、私でもこれくらい考えたイベントなので、人民元切上げは市場にはかなりの程度織り込まれていると想定していますが、人民元の動向については依然として不透明です。
元高の日本経済への影響について、多くのエコノミストの見方は、人民元の切上げとともに円が連れて高くなる現象も含めて、日本経済にはネガティブとする意見です。中国経済が元高に起因して輸出にマイナスの影響を受け、それが日本の対中国輸出にもマイナスとなる、というルートです。もちろん、円が元に連れて高くなれば、この影響はさらにネガティブである度合いを大きくします。実際に計量モデルで分析した結果をちょうだいしたシンクタンクもありました。しかし、そのネガティブな影響は大きくないというのが大方のエコノミストの一致した見方だと私は受け止めています。
今回の発表は6月26日(土)のG20金融サミットを控えて、中国が先手を打ったものであり、大幅な元高にはしないし、ならないという前提なんですが、たとえ元高の幅が小さくとも、私は場合によっては中国経済がオーバーキルされる可能性を考慮すべきだと考えています。中国ではすでに今年2010年1月に約1年半振りに預金準備率を引き上げた後、すでに合計3回も引上げを実施しています。今年後半には元相場の切上げとともに金利引上げも予想されており、場合によっては、物価安定やバブル予防のためにかつて日本が実施したような総量規制も検討が進められて実施される可能性もあります。すなわち、中国の政策当局は引締めに向かっていると多くのエコノミストは受け止めています。
上のグラフは OECD の先行指標なんですが、中国経済はすでに年初来ピークを越えて減速局面に入っている可能性があり、この局面で元高誘導を含めて引締め効果がある政策を実施すると、かなり procycle な政策になってしまう可能性があります。我が国の1990年以降くらいのバブル潰しの政策が思い起こされます。中国の政策当局は対応できるんでしょうか?
もしも、中国経済がバブルなのであれば、いつかはバブルが弾けます。映画の「バブルへ go!!」のラストのようにはなりません。しかし、いつ、どのようにバブルに対応するかは意見が分かれますし、政策対応の難しさも尋常ではない気がします。
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