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2010年6月 9日 (水)

底入れした機械受注をどう見るか?

本日、内閣府から4月の機械受注統計が発表されました。ヘッドラインとなる船舶と電力を除く民需のコア機械受注は市場の事前コンセンサスを大きく上回って、季節調整済みの前月比で+4.0%増を記録しました。内閣府では基調判断を「下げ止まっている」から「持ち直しの動きが見られる」と上方修正しています。また、今月の発表から変動が激しいとして除かれる項目に船舶と電力だけでなく、携帯電話も除いたコアコア機械受注とも言うべき指標が2005年4月にさかのぼって発表されるようになりました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、基調判断を上方修正 4月4%増
「持ち直しの動き」に 製造業はマイナス転落

内閣府が9日発表した4月の機械受注統計は、民間企業の設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)が前月比4.0%増の7619億円となった。2カ月連続で前月を上回った。内閣府は基調判断を3月の「下げ止まっている」から「持ち直しの動きが見られる」と上方修正した。上方修正も2カ月連続。
機械受注は工場の生産設備などの受注額を集計するもので、3カ月ほど先の民間設備投資の動向を示す。船舶・電力と変動が大きい携帯電話を除いても6.5%増と、2カ月続けて増加した。
非製造業(船舶・電力を除く)が前月を5.3%上回り、2カ月連続のプラス。大型案件があった運輸業や情報サービス業などが2ケタ増え、非製造業の設備投資は徐々に底堅さを増している。
一方、製造業は5.5%減と5カ月ぶりに減少に転じた。鉄鋼業や化学工業など素材型の業種がマイナスとなった。内閣府は「輸出が頭打ちになり、設備投資を控える動きが出ている」とみている。海外からの受注は3.7%減で、こちらも5カ月ぶりに減った。
今年1-3月期の法人企業統計で設備投資が前期比2.6%減(季節調整値)となり、企業の投資意欲には慎重な見方も出ていた。機械受注は比較的振れの大きい統計だが、先行きの設備投資は持ち直しの動きが続く見込みだ。
内閣府の当初調査では、4-6月期の機械受注の見通しは前期比1.6%増。4月のプラスにより5、6月がいずれも前月比4.4%減でも見通しを達成できる。6月まで横ばいが続くと4-6月期は前期比6.2%増になる。

次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除いた民需、さらにその6か月移動平均と船舶と電力に加え携帯電話も除いた民需です。下のパネルは需要者別機械受注の推移です。非製造業は変動の大きい船舶と電力をのぞいてあります。いずれも季節調整済みの系列で、左軸の単位は兆円です。影をつけた部分は景気後退期です。

コア機械受注の推移

今回の機械受注統計の結果から、設備投資の先行指標となるコア機械受注がようやく底を打って反転したことは確実ですが、やや注意を要するのは以下の2点です。第1に、受注水準が極めて低いままだということです。2001年景気後退と比較しても受注の水準として1000億円超下回っていますし、景気後退直前のピークからは5000億円超も低い水準ですから、前のピーク達するのはいつのことやらという実感です。第2に、少なくとも4月の統計では製造業が減少に転じており、非製造業が支える受注増の形になっていることです。製造業が為替や外需の動向などから早くも後景に退いた形となっています。もっとも、製造業に受注されるのが望ましく、非製造業からの受注増は望ましくないとは、私はまったく考えていません。要するに、製造業が早くも息切れしていることが懸念されるだけです。第3に、下のパネルを見れば明らかですが、先行きの先行指標である外需が早くも失速気味だということです。もちろん、欧州の財政危機などが不透明要因としてあることは誰の目にも明らかですが、この先、どこまで順調な増加を続けるのか続けないのか、楽観できる材料は多くないと受け止めています。

船舶の受注残高と手持ち月数の推移

長崎ローカルで注目されている船舶の受注残高と手持ち月数は上のグラフの通りです。何度も同じことを書きますが、工期の長い業界ですので調整のスピードはかなり緩やかです。でも、私の実証分析の結果に従えば、長崎の景気は明らかに船舶の受注残高に追随しますので、長崎経済も苦しい時期が続く可能性が高いと考えるべきです。

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