« 今夜は久保投手が打たなくても序盤の大量点で東京ヤクルトに完勝! | トップページ | 8回にセットアッパーが2発浴びて逆転負け! »

2010年6月26日 (土)

株式会社の農業参入と情報の非対称性

少し前の授業で農業を取り上げました。どうして取り上げたかというと、テキストの農業の章に達したからです。私の記憶が正しければ、2005年に解禁されるまで、株式会社は特区などの例外を除いて農業に参入できませんでした。これは、戦前の不在地主制に対抗して制定された農地法により、自作農を作り出した農地改革の成果を維持することを目的にしているからです。
では、反対に考えて、株式会社が参入を認められていない業界、あるいは、国家資格で参入を制限している職業にはどういったものがあるか、と学生諸君に質問すると、さすがに優秀な学生から「医療」と返事が返って来ました。そうです。株式会社などの営利企業の参入が認められないのは医療、学校などで、資格を持って参入制限されているのは医師、弁護士などです。では、こういった業種・職種の参入がどうして制限されているのかといえば、情報の非対称性が著しいからです。市場経済は完全情報を前提しますから、市場で相対峙する取引者間で情報が非対称であれば、効率的な市場取引、あるいは場合によっては、市場取引そのものが成り立ちません。例えば、医者と患者の間には大きな情報の非対称性が存在しますし、学生と大学教授の間に情報の非対称性が存在しなければ、教育の意味はありません。情報の多い者から情報の少ない者に情報を伝達するのが、ある意味で、教育の本質のひとつであるからです。
逆の方向から見て、例えば病院経営を株式会社に任せるとどうなるでしょうか。もしも、株式会社が合理的であり、行動原理として利潤極大化を前提するのであれば、患者は必要性のはっきりしない検査や手術や投薬をそのまま受け入れるか、実際にそういった事件は年に何件か起っていますし、あるいは、受け入れるのを拒否するのであれば診察を受けないか、どちらかになります。前者では市場の効率性が損なわれていますし、後者では市場取引が成り立ちません。しかし、特に後者の場合は国民の健康管理から考えて好ましくないことは明らかですから、適正な医療行為を逸脱すると、個人レベルでは医師免許をはく奪するとか、組織レベルでは病院経営を認めないとかのペナルティをもって、政府の専門家が情報の非対称性を埋め、医療行為の取引を監視する必要が生じます。しかし、株式会社の農業参入が認められて来なかったのはこの情報の非対称性ではなく、先に書いた通り、戦後直後の農地改革の精神に基づく理由からです。逆に、農業経営の大規模化が追及されるようになると、意味のない規制と成り果ててしまいました。
マイクロな経済学で市場の効率性が成り立たない場合として、情報の非対称性のほか、5月26日付けのエントリーで取り上げた公共財、コースの定理が成り立たない場合の経済の外部性、などを考慮します。私はマイクロな経済学は専門ではないんですが、このあたりは基礎的な部分ですので、授業でも出来るだけ取り上げるようにしています。

最後に、情報の非対称性を中古車市場のレモンとピーチに例えて解き明かし、情報の非対称性の経済学に関する業績により2001年にスペンス教授やスティグリッツ教授とともにノーベル賞を授賞されたカリフォルニア大学バークレイ校のアカロフ教授の論文が、なぜか、ネット上にアップされていますのでリンクを示しておきます。

|

« 今夜は久保投手が打たなくても序盤の大量点で東京ヤクルトに完勝! | トップページ | 8回にセットアッパーが2発浴びて逆転負け! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/207184/35502838

この記事へのトラックバック一覧です: 株式会社の農業参入と情報の非対称性:

« 今夜は久保投手が打たなくても序盤の大量点で東京ヤクルトに完勝! | トップページ | 8回にセットアッパーが2発浴びて逆転負け! »