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2010年7月16日 (金)

第143回芥川賞は赤染晶子さんの「乙女の密告」に授賞

「小説新潮」2010年6月号

昨夜、第143回芥川賞の選考委員会が開かれ、芥川賞を赤染晶子さんの「乙女の密告」に授賞することを決めました。誠におめでとうございます。「小説新潮」2010年6月号の掲載です。芥川賞は前回の第142回が該当なしでしたので、たった1回ながら、ずいぶんと間が空いたような印象を受けます。
実は、私は「小説新潮」6月号ですでに「乙女の密告」を読んでいます。「小説新潮」には「110枚」と銘打たれていたように記憶しています。大学の本部キャンパスに所蔵している軽雑誌コーナーで1時間足らずで読みました。いつもは、「文藝春秋」で選評とともに読むんですが、今回は機会があって先に読んでしまいました。最近の「小説新潮」には今野敏さんの隠蔽捜査シリーズ4「転迷」の連載が始まっているんですが、なぜか、この号だけはなかったのを覚えています。まあ、私くらいの中年のオッサンの好きそうな小説かもしれません。
話を赤染晶子さんの「乙女の密告」に戻すと、京都の外国語大学のドイツ語専攻の女子大生を主人公に、「アンネの日記」をバックグラウンドに流し、川上未映子さんの作品のような軽快な京都言葉を駆使した会話でユーモアを醸し出しています。でも、関西弁の会話に頼った作品ではありません。一言で表現すると、ドイツ語のスピーチのために、かなり風変りな外国人教授が学生である乙女に対して行うスパルタ教育を描いています。私も大学教授になって、経済学部生にスパルタ教育を施そうと考えないでもなかったんですが、長崎大学では諦めました。少なくとも、私はお人形にモーツァルトを聞かせたりはしません。それはともかく、「乙女」というところがポイントです。しばしば、乙女には真実よりも噂の方が重要という指摘が見られるんですが、このあたりは私には理解が及ばなかったりします。しっかりした文体とよく考えられた構成、ペダンティックな雰囲気も併せ持ち、芥川賞にふさわしい出来栄えの作品といえます。「乙女」に関係のない人も含めて、多くの読書人にオススメします。

なお、いつも、芥川賞のついでの扱いで申し訳ありませんが、直木賞は中島京子さんの『小さいおうち』(文藝春秋) に授賞です。以前から感じていることですが、直木賞に限っては文藝春秋社刊の本が圧倒的に多いような気がします。実は、今回ノミネートされた中に、本屋大賞を受賞した冲方丁さんの『天地明察』(角川書店) があったので、私は密かに期待していたんですが、選に漏れたようです。誠に残念。『天地明察』はそのうちに読みたいと考えています。

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