機械受注と経常収支の動向、そして、景気ウォッチャーをどう見るか?
本日、内閣府から5月の機械受注統計と6月の景気ウォッチャー調査の結果が、また、財務省から5月の国際収支統計が、それぞれ発表されました。機械受注統計では、民間設備投資の先行指標となる船舶・電力を除く民需、いわゆるコア機械受注は季節調整済みの系列で前月比▲9.1%減の6929億円、さらに、先月から公表の始まった船舶・電力・携帯電話を除くコアコア機械受注は前月比▲13.3%減と、市場コンセンサスをかなり下回りました。経常黒字も貿易収支の黒字幅の減少から縮小しています。景気ウォッチャーだけは、2か月連続で現状判断DIが低下したものの、かなり高い水準を続けています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
機械受注、3カ月ぶりマイナス 5月9.1%減
基調判断は据え置き
内閣府が8日発表した5月の機械受注統計で、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)は前月に比べて9.1%減の6929億円と3カ月ぶりにマイナスとなった。製造業の落ち込みが大きく、企業の投資マインドの弱さを裏付けた。ただ、大幅なプラスだった3、4月の反動の側面もある。内閣府は基調判断について「持ち直しの動きがみられる」と据え置いた。
機械受注統計は工場の生産設備などの受注額をまとめたもので、3カ月ほど先の民間設備投資の動向を示す。5月の実績は日経グループのQUICKがまとめたエコノミストの見通し中央値(前月比3.0%減)を下回った。
変動の大きい携帯電話の受注額も除いたベースは前月比13.3%減の6293億円。会見で内閣府の津村啓介政務官は「回復のテンポが弱い」と述べ、景気持ち直しの動きが鈍っているとの認識を示した。内閣府の調査では4-6月期の受注見通しは船舶・電力を除くベースで前期比1.6%増だったが、達成には6月が5.5%増になる必要がある。仮に6月が前月比横ばいなら4-6月期は前期比0.2%減にとどまる。
製造業からの受注額は前月比13.5%減と2カ月連続マイナス。電気機械の企業から半導体製造装置や通信機の引き合いが落ち込んだほか、石油製品・石炭製品からは化学機械の受注が減った。非製造業の受注額は船舶・電力を含んだベースで9.5%減。運輸業から鉄道車両の受注が減った。
海外からの受注額は前月比2.7%増の7608億円と2カ月ぶりにプラスとなった。
経常黒字10カ月ぶり減 5月8.1%、原油高で
財務省が8日発表した5月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆2053億円の黒字だった。黒字は16カ月連続となったが、黒字幅は前年同月に比べ8.1%減少した。10カ月ぶりのマイナスとなる。アジア向けの自動車を中心に輸出が持ち直す一方で、輸入する原油価格の上昇で貿易黒字が縮小したことが響いた。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は3910億円の黒字で、前年同月比0.6%減少した。輸出額は33.8%増の5兆276億円。自動車のほか鉄鋼や半導体などの需要が旺盛だった。
輸入は4兆6366億円で37.8%増えた。原油価格(円換算)が前年同月比で54.6%と大幅上昇したことで、輸入額全体を大きく押し上げている。
投資による稼ぎを示す所得収支の減少も影響している。海外株式や債券への投資収益は増加したが、海外子会社から受け取る配当金などが大きく減り11カ月連続で減少した。
6月の街角景気、2カ月連続の悪化 W杯で外食不振
内閣府が8日発表した6月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数は前月比0.2ポイント低下の47.5と2カ月連続で悪化した。製造業で受注や出荷の伸びが鈍化したことや、販売価格の引き下げ圧力が強いことから企業分野の指数が低下した。景気判断は4カ月連続で「厳しいながらも、持ち直しの動きがみられる」とした。
エコカー減税による環境対応車の販売が好調だった一方、薄型テレビはエコポイント変更前の駆け込み需要の反動による鈍化が続いている。ワールドカップの開催で外食関連の客足も伸び悩んだ。
2-3カ月先の先行き判断指数も0.4ポイント低下の48.3と、2カ月連続で悪化。住宅の低価格志向の強まりを指摘する声があるほか、環境対応車の減税効果が薄まるなど家計動向を中心に先行きへの懸念が目立つ。
記者会見した内閣府の津村啓介政務官は「着実な持ち直しは続いているが、回復に向かうテンポが緩やかになってきた。踊り場になるのか慎重に見極めないといけない」と述べた。
調査は景気に敏感な小売業関係者など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価してもらい、指数化する。今回の調査期間は6月25日から月末まで。
続いて、機械受注統計のグラフは以下の通りです。上のパネルはコア機械受注とその後方6か月移動平均、及び、コアコア機械受注の推移、下のパネルは業種別で製造業、非製造業、外需に分けた機械受注の推移です。いずれも単位は兆円で、季節調整済みの系列です。影をつけた期間は景気後退期です。
基本的に、先月の6月9日付けのエントリーとまったく同じ印象です。特に変わりありません。機械受注が反転・底入れしたことは確実ですが、受注水準がまだまだ低く、特に、非製造業が受注を支えており、製造業からの引合いが弱くなっています。また、世界経済の減速ないし鈍化に伴って、先行指標である外需に勢いがなくなりつつあるのがグラフから読み取れます。ヘンな表現ですが、機械受注については底入れした直後に減速が始まった印象です。
機械受注に関して、長崎ローカルで注目されている船舶のグラフは上の通りです。ジグザグした動きを示しつつ、大雑把に私の想定したラインに沿って受注残高の調整が進んでいるように感じています。もちろん、受注残高の調整に伴って手持ち月数も減少しています。工期の長い産業ですので、調整にはかなりの時間を要します。
さらに、国際収支のうちの経常収支の推移は上のグラフの通りです。5月の経常黒字はかなり減少しました。上に引用した記事には原油価格の上昇がひとつの要因として上げられていますが、同時に、6月24日付けのエントリーで取り上げた世界景気の減速に伴う輸出の伸びの鈍化、あるいは、同じ原因ですが、投資収益収支の黒字幅の減少なども寄与しています。なお、引用した記事は季節調整していない原系列の経常収支を前年同月で比較しているように見受けますが、上のグラフは季節調整済みの系列を取っていますので、少し記述に異同があります。
最後に、上のグラフは景気ウォッチャー調査の現状判断DIと先行き判断DIです。この景気ウォッチャーだけ6月の統計です。2か月連続で悪化したというものの、まだまだ高い水準にあります。一昨日の景気動向指数でも触れましたが、この4月以降、政策効果の剥落や世界景気の減速により、ハードデータはかなり弱く出ているんですが、先日の日銀短観やこの景気ウォッチャーなどのソフトデータは相変わらず強気を維持している、というか、下げ渋っているという方が正確かもしれません。ほぼ支給が終わった夏のボーナスを含め、給与が順調に増加していることが背景にあると私は考えています。年内いっぱいくらい景気が踊り場に差しかかるとしても、雇用に支えられた消費と設備投資へと景気拡大の主役がバトンタッチされ、来年からは本格的な拡大局面を迎えるものと期待しています。
最後に、昨日、国際通貨基金 (IMF) から「世界経済見通し」 World Economic Outlook Update が公表されています。今年2010年の世界経済の成長率は4月の見通しよりも+0.4%ポイント上方修正され+4.6%成長と、また、日本は同じく2010年で+0.5%ポイント上方修正の+2.4%成長と見込んでいます。上の表の通りです。
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