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2010年7月13日 (火)

参議院で与野党逆転したねじれ国会は日本の信用力にマイナスか?

一昨日の参議院選挙の結果を受けて、昨日、米国格付会社の Standars & Poor's が「日本の財政再建に向け、政権運営の安定化が重要な課題に」と題するプレスリリースを出し、「日本の格付けを引き下げる可能性」について言及しています。少し長くなりますが、以下の通り全文を引用します。

日本の財政再建に向け、政権運営の安定化が重要な課題に
日本 (AA/ネガティブ/A-1+) が参議院選挙後、財政再建に向けて有意義で持続性のある改革を実施するうえで、政権運営の安定化が重要な課題になる。連立与党は参院で過半数議席を獲得できなかったため、いわゆる衆・参議院の「ねじれ現象」に直面する見通しである。日本が有意義で持続性のある財政改革を実行するには、強固で安定した政策基盤が必要であり、特に政策基盤の安定化は、「ダブルA」の格付けの維持にとって重要な要因になるとスタンダード&プアーズは考える。
昨日の参院選の結果、民主党が獲得した議席数は44と、改選前の54を下回った。非改選議席62を合わせた民主党の議席数は106、国民新党の非改選議席3を合わせても109と、連立与党の議席数は過半数を割った。
野党党首が連立政権への参加の可能性を否定していることから、「ねじれ国会」のもとで法案審議がこう着状態に陥る可能性が高い。参院で否決された法案を衆院での再議決によって成立させるには3分の2の議席が必要だが、連立与党の衆院議席数はこれに満たないため、難しい国会運営を迫られる。公共部門改革や公的年金制度改革をはじめとする構造改革や、消費税率の引き上げといった政策が進みにくくなると考えられることから、日本の格付けに対する潜在的なマイナス要因となろう。
また民主党は2010年9月に党代表選挙を予定しており、この結果が政策にも影響を及ぼしうる。菅直人首相は参院選後の続投を表明しているが、党内では参院選の結果を受け、執行部の交代を求める圧力が強まる可能性があり、このことが政府のみならず党執行部の体制を不安定にする可能性がある。
日本のソブリン格付けの観点では、財政再建の達成に向けて歳入増加と歳出削減のための効果的な政策を打ち出すことが、現在の格付けを維持するためのカギとなる。スタンダード&プアーズでは、日本の政党や政治家には総じて、財政再建に関する切迫感が欠如しているとみている。結果として、政府が2010年6月に発表した、今後10年間で基礎的財政収支 (プライマリーバランス) を均衡させるという目標が、日本の財政に対する市場の信認を維持し、日本がソブリン危機に陥るのを未然に防いでいくのに十分かどうかは依然不透明である。市場の信認は、国内・世界における経済情勢、金融市場、インフレ (あるいはデフレ) といった要因にも左右される。一般的にいえば、政府が財政再建に向けた断固たる措置をとるのが遅くなればなるほど、市場の信認を失うリスクは高まる。
日本の格付けは、高水準の対外純資産残高、比較的強固な金融システム、多様化された経済に支えられている。一方、こうした強みは、多額の財政赤字と債務残高、財政再建と構造改革をさらに遅らせる可能性のある政情によって弱められている。
仮に今後、日本政府の財政状態が一段と悪化する見通しが強まったり、財政再建に向けた具体的な施策が打ち出されない状態が長引く場合には、日本の格付けを引き下げる可能性がある。一方、政府が政権運営を安定化させ、財政再建に向けた具体的な施策を打ち出した場合には、アウトルックを「安定的」へ上方修正することを検討する。

S&P の Sovereign Rating And Country T&C Assessment Histories のサイトから、国内通貨建ての日本のソブリン格付の推移を引用すると以下の通りです。長らく AAA を続けて来たんですが、前世紀末から続いた2代の自民党政権である小渕内閣と森内閣、さらに、現在の民主党政権まで、今世紀に入ってからジリジリと格付を下げ、いまだに AAA には戻っていないのが読み取れると思います。

DateLT/Outlook/ST
Jan. 26, 2010AA/Negative/A-1+
April 23, 2007AA/Stable/A-1+
May 23, 2006AA-/Positive/A-1+
Nov. 1, 2005AA-/Stable/A-1+
March 23, 2004AA-/Stable/A-1+
April 15, 2002AA-/Negative/A-1+
Nov. 28, 2001AA/Negative/A-1+
Sept. 11, 2001AA+/Negative/A-1+
Feb. 22, 2001AA+/Stable/A-1+
July 27, 1992AAA/Stable/A-1+

当然ながら、国債残高を減少させるには4つの方法があります。第1に支出削減、第2に増税、第3にインフレ、第4に債務放棄、すなわち、デフォルトです。これについては、日を改めて考えます。

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