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2010年7月21日 (水)

経済学のオカルトについてツラツラ考える

やや旧聞に属する話題ですが、海の日を含むこの3連休に私の奉職する大学でオープン・キャンパスのイベントがありました。オープン・キャンパスの主たるターゲットである高校生や保護者向けに Professors List と題するパンフレットを作成し、私のパートは「経済学の『オカルト』退治に出かけませんか?」と題されています。私が適当にしゃべった内容をプロのライターさんがまとめたんですが、常々、このブログでも「経済学にもオカルトは存在する」と私は主張しています。自然科学の分野だけでなく、社会科学にもその分野に対応したオカルトは存在します。
ツラツラと、この経済学のオカルトのよって来たる背景というか、原因めいたものを考えると、3つほど思い当たるフシがあります。もっと別にもありそうな気がしますが、取りあえず考えつくまま、第1に、マクロ経済に関する無理解です。私の感想に過ぎませんが、さすがに、キャプラン『選挙の経済学』にあるようなマイクロな市場に関する無理解は、経済学のオカルトの原因としては少ないように感じています。しかし、マクロ経済に関するちょっとした誤解はあります。典型的には、以前もこのブログで取り上げた失業と自己責任です。それ以外にも、例えば、両極端に位置する2つの考え方は、中央銀行を含む統合政府はマクロ経済を自由にコントロールできるという幻想と、逆に、何も実体的な影響を及ぼし得ないとするドグマです。前者からは赤字財政に傾きがちなバイアスを生じる可能性があり、経済合理性を超えた大きな政府論を指摘できますし、後者からは極端に市場原理主義的な小さな政府論が生まれます。第2に、外国や通商・交易の利益に対する無理解です。長崎でよく聞く「じげもん」や「地産地消」は決して意味がないわけではありませんが、交易の利益をやや軽視しているように私には見えます。あるいは、証券市場の国際化を国内市場における外国人トレーダーの取引ウェイトの増加と定義しても、彼らの本国における意志決定を無視して単なるノイズやかく乱項と捉えては、国際化の本質を見誤ります。第3に、前の点とやや関係しますが、分業の利益に関する無理解です。経済学が自然科学と圧倒的に異なるのは、個人、家計、企業、もちろん、グローバル化が進んだ現代では一国の国民経済でさえ分業に基づく協業体制の中にあり、言い方を変えれば、「他人と同じことをしても成功しない」ということです。一時流行した表現で「勝ち組」と「負け組」という言い方があり、私はこのブログでこれを可能な限り使わないように慎重に対処しているつもりですが、あえてカギカッコ付きで用いると、「勝ち組」のマネをしても「勝ち組」になれるとは限らないということです。私は効率的な分業の下では「勝ち組」と「負け組」はあり得ない、というか、表現として正確ではない、と認識していますが、この点については別の機会に日を改めて取り上げます。
特に、最後の第3点は、私のような東京から来た日本経済についてはともかく、地域経済の専門家でも何でもない「桃源郷の短期滞在客」から見れば、エコノミストとして専門的な教育を受けていない可能性のある長崎や九州の人たちの間では広範に観察され、かなりバイアスのかかった郷土愛が分業の利益を無視するように仕向けているようにすら見受けられるケースもあります。場合によっては、専門的な教育を受けたエコノミストの分析を曇らせる原因にもなりかねません。大雑把に、私がこのブログで長崎経済や九州経済を辛辣に論評した際の反論は、内容はともかく感情的な動機に基づいている可能性があるんではないかと思わせる意見がほとんどです。動機だけでなく内容的にも感情論で押し通す場合の特徴は、批判や論評を受け入れずにバカボンのパパよろしく「これでいいのだ」で終わっていることです。今いる長崎を別にすれば、私は日本国内では京都と首都圏しか住んだことはありませんから、この批判的な論評を受け入れにくくしているという意味の「歪んだ郷土愛」がその他の地域にも普遍的に存在するのか、九州だけなのかは分かりません。

批判や耳の痛い意見に接すると、私のような京都の人間は口先では前向きに受け止めたような振りをして、実は、自分でよく斟酌して受け入れたり、まったく無視したりしますが、九州的なダイレクトな対応は、ある意味では健全であり、別の意味では京都的なセンスはないと受け止めています。

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