鉱工業生産をどう見るか?
本日、経済産業省から鉱工業生産指数が、また、厚生労働省から毎月勤労統計調査の結果が、それぞれ発表されました。いずれも7月の統計です。鉱工業生産指数の季節調整済み系列の前月比で見て、生産が+0.3%増加し、出荷が▲0.1%減少しましたので、当然の帰結として、在庫率が上昇しました。ただし、在庫率が上昇する一方で在庫は減少しています。このあたりは私には意味不明です。毎月勤労統計調査については世間一般では給与指数などが注目されているんでしょうが、私は景気循環に敏感な所定外労働時間指数、すなわち、残業時間を中心にフォローしています。季節調整済みの統計で製造業の残業時間は前月比で減少した一方で、非製造業も含めた全産業は増加しました。まず、鉱工業生産に関する日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
鉱工業生産、7月0.3%上昇 2カ月ぶりプラス
経済産業省が31日発表した7月の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)は95.3と、前月比0.3%上昇した。プラスは2カ月ぶり。アジアや米国向けの半導体製造装置や化学製品などの生産指数が上昇した。これまでけん引役だった自動車などの輸送機械工業は3カ月連続で低下し、全体の生産指数は小幅の上昇にとどまった。
経産省は企業生産は「持ち直しの動きで推移している」との基調判断を据え置いた。生産指数が低下した業種が半数以上だったことなどをふまえ、6月に続いて「足踏みの動きもみられる」とした。
業種別では一般機械工業の生産指数が4.3%上昇し、4カ月連続のプラスとなった。石油精製に使われる機器類や半導体製造装置のアジア向け輸出が好調だったためとみられる。化学工業も2.0%上昇した。
輸送機械工業はエコカー補助など政策効果が一巡した影響で1.5%の低下。国内の自動車向け鋼材の生産が落ち込み、鉄鋼業も5.1%の低下だった。携帯電話や液晶テレビ向け部品の生産が落ち込んだ影響で電子部品・デバイス工業は0.5%低下した。
出荷指数は96.5で、2カ月ぶりに0.1%低下した。在庫指数は0.5%低下の96.7となり、4カ月ぶりのマイナスだった。
製造工業生産予測指数は8月が前月比1.6%上昇、9月は同0.2%上昇となった。予測指数通りなら7-9月期の鉱工業生産指数は前期比0.7%上昇となり、4-6月期の1.5%上昇から、プラス幅が縮小する見通しだ。
次に、鉱工業生産指数のグラフは下の通りです。2005年を100とする季節調整済みの系列で、影を付けた部分は景気後退期です。7月生産に関する市場の事前コンセンサスはわずかながらマイナスの減産でしたので、ある意味で、予想外のプラスの増産ということになりますが、6月が確報でやや上方修正されたとはいえ、前月比▲1.1%の減産でしたから、その反動増の要因もあります。下のグラフを見る限り、今年に入ってから生産は踊り場に入ったように見えなくもないんですが、引用した記事にもある通り、製造工業予測指数は8月にドカンと+1.6%、9月も+0.2%の増産という結果になっていますので、予測指数通りでも四半期で徐々に増産幅が縮小するのは明らかであるものの、他方、実際の生産動向がどのようになるかを見極める必要もあります。
さらに、毎月勤労統計調査で私が最も重視している所定外労働時間指数のうち、5人以上事業所の季節調整済み指数のグラフは下の通りです。影を付けた部分は鉱工業生産指数と同じで景気後退期です。既述の通り、7月は製造業と全産業で逆の動きを示しました。製造業が踊り場に入って減速する一方で、非製造業も含めて景気拡大のすそ野が広がっているともいえますが、わずかな期間の動きですから何とも判断がつかない部分もあります。
最後に、政府・日銀の経済対策に関する今朝の全国紙各紙と東京新聞の社説のタイトル一覧です。朝日新聞はやや不明なんですが、世間一般がどう受け止めたかの雰囲気がよく出ていると思います。
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