国債金利はどこまで下がるのか?
本日、瞬間風速ながら、新発10年物国債のいわゆる長期金利の指標金利が1%を割り込みました。まず、日経新聞のサイトから前場の動きを中心に報じた記事を引用すると以下の通りです。
長期金利1%割れ 米金融緩和観測で拍車
4日の債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが1%の大台を約7年ぶりに下回った。一時、0.995%まで低下(価格は上昇)し、2003年8月以来の水準をつけた。米景気の減速懸念が強まるなかで、米追加金融緩和の観測も出て3日の米長期金利が低下。国内景気の先行き不透明感につながり、銀行などが安全資産とされる国債買いに動いた。
一方、4日の東京外国為替市場で円相場は続伸した。一時は約8カ月ぶりの円高水準となる1ドル=85円台前半まで上昇した。米金利の低下による日米金利差の縮小が意識され、海外ファンドなどが円買い・ドル売りを進めた。
長期金利は午前9時30分過ぎに0.995%を付けた後、反動から再び1.0%台に上昇する場面もあった。
国内景気は緩やかな回復にとどまり、企業は設備投資や雇用の拡大になお慎重な姿勢を続けている。このため資金需要は増えず、貸し出しが伸びない国内銀行は手元資金を国債投資に振り向けている。「米金利より国内金利の低下速度が速く、銀行などの国債買いが勢いを増している」(日興コーディアル証券)
5月のユーロ急落を招いた欧州財政不安を背景に日本や米国、ドイツなどの国債にマネーが集まってきたことも、国内長期金利の低下傾向に拍車をかけている。
前回、1%割れとなった03年当時は米国でイラク戦争による経済への悪影響が強く意識されていたほか、国内でもデフレの長期化が懸念されていた。投資家心理は悲観に傾き、同年6月に長期金利は過去最低水準となる0.430%まで低下した。
日本相互証券のサイトから新発10年物指標国債金利の推移のグラフを引用すると以下の通りです。上のパネルの黄色の折れ線グラフが最近10年間、真ん中のパネルが3年間、一番下のパネルが直近31営業日のグラフです。引用した記事にある2003年6月に0.43%まで低下したのは瞬間風速で、一番上のグラフは月次データに基づいていますので、そこまで下がっているようには見えません。
長期金利の均衡水準などは世の中にあろうハズもなく、せいでさえあればどの水準でも可なんでしょうが、1%というのは一定の心理的な壁になる、あるいは、なっていた可能性もあります。ですから、瞬間風速とはいえ1%を割り込んだんですから、さらに下がる可能性があると受け止めるべきです。実際に、2003年年央には瞬間風速で0.5%を下回る水準に達した「実績」もあります。
どうしてここまで低金利になったかというと、引用した記事にもある通り、米国の景気減速懸念、欧州のソヴリン・リスクなどによる資金の流入が上げられます。円資産購入の結果として円高が進行しています。しかし、忘れるべきでないのは、デフレによりフィッシャー方程式の物価上昇率がマイナスになっているという事実です。他方、先進国の中では国債に関する財政的な裏付けが最も乏しく、すなわち、フローでもストックでも財政は真赤っかですが、それでも我が国の公債に対する信用は抜群であり、キチンと計算したわけではないものの、リスク・プレミアムはかなり小さいと考えられます。もちろん、単純に見れば、景気に対するマイナスの見方が財政に関する懸念を上回っているんですが、これはパズルかもしれません。
長期金利が低下したとしても、国民経済全体としては決してマイナスではないと私は考えていますが、そこは貿易自由化と同じで不利益をこうむるグループが一部にあるかもしれません。誇張された主張に惑わされないことも必要です。
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