2010年4-6月期GDP2次QEから年内景気を考える
本日、内閣府から今年2010年4-6月期GDP速報の改定値、エコノミストの業界で2次QEと呼ばれる経済指標が公表されました。季節調整済みGDPの前期比成長率が+0.4%、年率で+1.5%と、市場の事前コンセンサスに見事にミートしました。需要項目ごとの1次QEからの改定方向についても、ほぼ月曜日のエントリーで注目した通りでした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
4-6月の実質GDP、年率1.5%成長に上方修正
内閣府が10日発表した4-6月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.4%増となった。年率換算では1.5%増。速報段階の年率0.4%増から大幅に上方修正された。設備投資の増加幅が拡大したほか、民間企業の在庫投資などもマイナス幅が縮んだ。大幅な上昇修正ではあるが、GDPの伸びは1-3月期の5.0%から縮小。円高進行や輸出減速、政策効果のはく落などで先行き不透明感も根強い。
消費者の生活実感に近い名目GDPは前期比0.6%減(速報値0.9%減)、年率換算で2.5%減(同3.7%減)だった。
項目別にみると、設備投資は実質で前期比1.5%増(速報値0.5%増)と、1.0ポイントの上方修正となった。産業機械や掘削機械が伸びた。リーマン・ショック後、設備投資の回復は遅れていたが、ようやく底打ちの動きがでてきた。
成長率に対する在庫投資の寄与度はマイナス0.1ポイントと、速報段階のマイナス0.2ポイントから上方修正された。公共投資も2.7%減と、速報値(3.4%減)から上向きに見直された。
改定値と速報値で大きな差が出ないよう、内閣府は4-6月期GDPから、速報段階での設備投資の推計方法を見直している。内閣府の津村啓介政務官は「従来の方法に比べ、設備投資の修正幅が0.2ポイント程度縮小した」としている。
次に、いつものGDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者所得を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数が必要な向きは、このブログから引用するのではなく、自己責任で最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。
需要項目 | 2009/ 4-6 | 2009/ 7-9 | 2009/ 10-12 | 2010/ 1-3 | 2010/4-6 | |
1次QE | 2次QE | |||||
国内総生産(GDP) | +2.3 | ▲0.1 | +0.9 | +1.2 | +0.1 | +0.4 |
民間消費 | +1.3 | +0.6 | +0.7 | +0.5 | +0.0 | +0.0 |
民間住宅 | ▲9.6 | ▲7.2 | ▲2.9 | +0.3 | ▲1.3 | ▲1.3 |
民間設備 | ▲5.2 | ▲1.7 | +1.7 | +0.8 | +0.5 | +1.5 |
民間在庫 * | +0.1 | ▲0.2 | ▲0.4 | +0.1 | ▲0.2 | ▲0.1 |
公的需要 | +1.7 | ▲0.2 | +0.4 | +0.4 | ▲0.5 | ▲0.3 |
内需寄与度 * | +0.3 | ▲0.3 | +0.2 | +0.7 | ▲0.2 | +0.0 |
外需寄与度 * | +2.1 | +0.2 | +0.6 | +0.6 | +0.3 | +0.3 |
輸出 | +10.4 | +8.5 | +5.7 | +7.0 | +5.9 | +5.9 |
輸入 | ▲4.9 | +6.3 | +1.5 | +3.0 | +4.3 | +4.1 |
国内総所得(GDI) | +2.0 | ▲0.5 | +0.7 | +0.8 | ▲0.4 | ▲0.2 |
名目GDP | +0.4 | ▲0.5 | +0.2 | +1.6 | ▲0.9 | ▲0.6 |
雇用者報酬 | ▲0.9 | +0.8 | ▲0.0 | +2.0 | +0.3 | +0.6 |
GDPデフレータ | ▲0.6 | ▲0.7 | ▲2.8 | ▲2.8 | ▲1.8 | ▲1.7 |
内需デフレータ | ▲2.7 | ▲2.9 | ▲2.7 | ▲1.6 | ▲0.8 | ▲0.7 |
さらに、グラフは下の通りです。いずれも前期比成長率・伸び率で、青い折れ線グラフは実質成長率、棒グラフは実質GDP成長率を需要コンポーネント別に季節調整済み系列の前期比伸び率で寄与度表示したもので、すべて左軸の単位はパーセントです。棒グラフの需要項目への対応は凡例に示した通りです。
1次QEからの改定については、個人消費、住宅投資、輸出がほぼ変わらずで、その他の設備投資、在庫投資、公的需要、輸入がすべて成長率押上げの方向に改定されました。ただし、控除項目である輸入は減少して成長率を押し上げています。市場の事前コンセンサスにミートしたのでサプライズはありませんでした。ということで、先行きに注目が集まっています。このブログでは今週になってから同じことを何度か書いたような気がしますが、しつこく繰り返すと以下の通りです。すなわち、7-9月期まではそこそこの成長が続きます。少なくともプラス成長と私は考えています。個人消費については、昨年より増加したボーナスでサポートされつつ、猛暑・酷暑の効果があり、エコカー減税・補助金の駆込み需要があり、規模は小さいながら、タバコ値上げ直前の買いだめ需要も考えられます。他方、設備投資や輸出にはまだ円高のダメージはほとんど現れません。当然ながら、猛暑・酷暑の消費増加効果と政策変更に伴う駆込み需要はまったくサステイナブルではなく、その後、天候要因や政策効果の剥落に加えて、設備投資や輸出に円高のダメージが徐々に出始めますから、10-12月期に入ると成長率は大きく鈍化すると考えられます。プラス成長でもゼロ近傍、マイナス成長の可能性も十分あり得ます。その意味で、本格的に踊り場に入るのは10-12月期からであると私は予想しています。たぶん、多くのエコノミストもそうなんだろうと想像しています。
そして、忘れてならなのは世界経済がゆっくりと減速に向かう可能性が高いことです。上のグラフは、昨日、経済協力開発機構 (OECD) が発表した最新の経済見通しである Interim Economic Assessment から引用しています。凡例にある通り、赤いドットが今年5月時点での各国の成長率見通しで、青い棒グラフが今回の見通しです。今年後半は大きく下方修正されており、特に、米国が時を追って成長率を低下させる見通しになっているのが見て取れます。
他方、本日、政府は「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」を決定しています。規模的には国費9,150億円程度を投入し、、事業規模9.8兆円程度とされており、実質GDP押上げ効果は0.3%程度、雇用創出・下支え効果は20万人程度(うち新卒者に対する効果は約5万人)と見込んでいます。私は頭が悪いのか、国費と事業規模の間の10倍を超える開きや、事業規模がGDPの2%近いにもかかわらず成長率の押上げ効果が0.3%にとどまるといったあたりが理解しにくいんですが、副題が「円高、デフレへの緊急対応」となっており、私は大いに期待が持てると考えています。
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