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2010年9月30日 (木)

矢野捕手引退試合の今季甲子園最終戦を落としてペナントレースが終わる!

  HE
横  浜000100003 450
阪  神001110000 3110

今夜の今シーズン甲子園最終戦は矢野捕手の引退試合でした。出番はありませんでした。最後の最後にクローザーの藤川投手が打たれて横浜に負けました。中日が明後日のナゴヤドームでの東京ヤクルト戦に負けるとはとても思えませんから、今シーズンは終わりました。終戦です。

クライマックスシリーズでは、
がんばれタイガース!

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先行き弱含みの鉱工業生産指数から自動車産業を考える!

本日、経済産業省から8月の鉱工業生産指数が発表されました。市場の事前コンセンサスが季節調整済みの前月比で+1.1%増であったところ、▲0.3%減と大幅に下回りました。さらに、9月と10月の製造工業生産予測指数もマイナスと見込まれることから、経済産業省は基調判断を「持ち直しの動き」から「横ばい傾向で、先行きは弱含み」に下方修正しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産8月0.3%低下 「先行き弱含み」
3カ月連続マイナス 基調判断を下方修正

経済産業省が30日発表した8月の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)は94.5となり、前月比0.3%低下した。マイナスは3カ月連続。これまでけん引役だった半導体製造装置などの一般機械工業が5カ月ぶりに低下した。海外経済の減速やエコカー補助金の終了で先行きの生産減少が見込まれており、経産省は基調判断を「生産は持ち直し」から「生産は横ばい傾向で、先行きは弱含み」に下方修正した。
8月の鉱工業生産指数は事前の市場予測の中央値(前月比1.2%増)を下回った。生産指数が3カ月連続でマイナスになるのはリーマン・ショック直後の08年10月-09年2月の5カ月連続でマイナスを記録して以来。基調判断を引き下げるのは09年3月以来、1年5カ月ぶり。
業種別では一般機械工業が1.1%低下し、5カ月ぶりのマイナスになった。化学工業や石油精製などで使われる反応用機器が前月の生産増の反動で落ち込んだほか、これまで好調だった半導体製造装置のアジアや欧米向け輸出が伸び悩んだ。自動車で使われる工業用ゴム製品も2.9%のマイナスだった。9月にエコカー補助金が終了するのを見越して、生産調整が進んだとみられる。
一方、猛暑の影響でセパレート型エアコンの生産が増え、電気機械工業は2カ月ぶりに3.3%上昇した。住宅用の太陽光発電で使われる太陽電池モジュールやカーナビゲーションなど情報通信関連の生産は引き続き好調で、エコポイント制度の効果は続いているようだ。
出荷指数は前月比0.5%低下した。設備投資の動向を示す資本財出荷指数(除く輸送機器)も同1.4%のマイナスとなった。ともに2カ月連続のマイナスだった。在庫指数は0.7%上昇の97.4だった。
製造工業生産予測指数は9月が前月比0.1%低下、10月は同2.9%と大幅な低下となった。予測指数通りなら7-9月期の鉱工業生産指数は前期比1.1%の低下となり、金融危機の最中だった09年の1-3月期の20.0%低下以来のマイナスになる見通しだ。特に自動車などの輸送機械工業の落ち込みが大きく、経産省は「エコカー補助金の終了や円高など市場の先行きが不透明」と分析している。

いつものグラフは以下の通りです。赤い折れ線が季節調整済みの鉱工業生産指数で、影を付けた部分は景気後退期となっています。鉱工業生産指数は景気動向指数では一致指数として扱われているんですが、ホンの少し先行しているのかもしれません。

鉱工業生産指数の推移

引用した記事にもある通り、鉱工業生産は3か月連続の減産で、しかも、9-10月も低下、特に10月は大きな低下を続けると見込まれていますので、基調判断が下方修正されたのも当然です。私自身は消費をはじめとして景気全体は9月まで何とか回復基調を持ちこたえると見ているんですが、生産は直近は今年5月をピークに下がり始めています。2004年6月をピークに踊り場に入ったのと極めてよく似ていると受け止めています。
リーマンショック後の Great Recession の時と同じで自動車産業に日本経済が振り回されている気がします。エコカー補助金が9月上旬で終了したのが大きな減産の源なのでしょうか。私のようなシロートの目から見ても、かなり透明性高く設計され、諸外国の同種の自動車産業支援策よりもはるかに長い1年超の期間をかけて、諸外国よりもはるかに乏しい財政リソースをつぎ込んで、なおかつ、これだけのショックを日本経済に残すんでしょうか。かつては自動車産業のトップ企業であるトヨタは経団連会長も輩出していたわけですし、補助金漬けでなければ経営できないわけではないと私は考えます。もちろん、何のショックも生じることなくソフトランディング出来るとは思いませんが、少なくとも現在の市場経済の下での企業経営ではスムージング・オペレーションは不可能であると私の目には映りました。今回のエコカー補助金だけでなく、一般的に、何らかの支援措置の終了直前の駆込み需要と終了後の反動減は、少なくともならして見れば、ニュートラルであると、考えられなくもないんですが、マイナス要因が目立つのも事実です。おそらく、エコカー補助金の終了に起因するのであろう今回の日本経済の踊り場入りから、景気循環の平準化に対する市場経済の無力や限界を感じるのは私だけなのかもしれません。

電子部品・デバイスの在庫率の推移

自動車産業を離れて、大きな懸念のひとつは、電子部品・デバイスが在庫調整に入る可能性です。上のグラフは製造工業と電子部品・デバイスの季節調整済みの在庫率の推移です。在庫管理の進展などにより在庫循環がやや不分明になっている一方で、かなり「若い産業」である電子部品・デバイスではまだ古典的な在庫循環が明瞭に観察されます。その意味で、電子部品・デバイスが意図せざる在庫の積上りから調整局面に入る可能性があると私は受け止めています。

資本財出荷の推移

最後に、私が注目しておくべきと考えるのは、今後の設備投資との関係で、資本財出荷の動向です。上のグラフの通りです。生産ほどシャープに低下局面に入っているようには見られませんが、機械受注統計とともに、景気の主役が生産や輸出から設備投資や雇用に移行するかどうかを見極める上で注目しています。しかし、この資本財出荷も大きく鈍化しており、設備投資の盛り上がりも見られません。

最後に、当然ながら、生産が減産に入れば雇用の過剰感が強まります。明日発表の失業率や有効求人倍率などの雇用指標も大いに注目です。

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2010年9月29日 (水)

ジャイアンツにとどめを刺してマジック7!

  HE
読  売001000000 182
阪  神00300000x 370

マジック 7先発の能見投手から久保田投手と藤川投手をつないで、3回ウラの虎の子の3点を守り切り、ジャイアンツにとどめを刺してマジック7までこぎ着けました。スタメンからブラゼル一塁手を外して関本選手を起用し、6回ウラの能見投手の打順での代打起用は、私は大いに不安を覚えたんですが、久保田投手が7-8回の上位打線をほぼ完璧に抑え込みました。藤川投手もジャイアンツの下位打線を力でねじ伏せました。しかし、マジックは7も残っています。まだまだ先は長い優勝への道のりです。最後の最後まで気を緩めることなく勝ち進みましょう。

最後の優勝目指して、
がんばれタイガース!

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9月調査の日銀短観で金融緩和の材料は出そろったか?

本日、日銀から9月調査の短観が発表されました。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは6月調査の+1から7ポイント改善して+8となりました。6期連続の改善です。ただし、先行きは悪化する方向でほぼ一致しています。また、土地を含む大企業の設備投資計画は6月調査の+2.7%増から+2.4%増とやや下方修正されました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

日銀9月短観、景況感6期連続改善 先行きは悪化
日銀が29日発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス8と、6月の前回調査から7ポイント改善した。改善は6期連続。ただ改善幅は前回の15ポイントから縮小したほか、3カ月後の先行き見通しもマイナス1と、7期ぶりに悪化した。円高や政策効果の息切れなどによる景気の減速も見込まれ、企業は先行きへの不安を募らせつつある。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた値。業種別では、製造業16業種のうち、紙・パルプと食料品を除く14業種で足元のDIが改善した。大企業非製造業のDIも前回のマイナス5からプラス2へと6期連続で改善。中小企業の製造業、非製造業も5期連続で改善し、足元では緩やかながらも景況感が改善していることが確認された。
ただ、先行きに対する見方は厳しい。大企業製造業の3カ月後のDIは足元より9ポイント下回るマイナス1になると予測。エコカー補助金の終了の影響を受ける自動車のDIは、足元のプラス32からマイナス6へと、調査開始以来最も大きな落ち込み(38ポイント)となる見込みだ。電気機械などの輸出企業を中心に幅広い業種に不安感が広がっている。
大企業製造業の2010年度の想定為替レートは1ドル=89円66銭で、6月調査(90円18銭)よりもやや円高・ドル安方向に修正された。ただ、足元の円相場は政府・日銀の円売り介入にもかかわらず84円前後で推移している。今後の収益悪化要因になりかねない。
先行きへの不安は企業の設備投資計画にも影響を及ぼしている。大企業製造業による2010年度の設備投資額は09年度比4.0%増。6月調査と比べて0.6%の上方修正にとどまった。設備投資計画は年度半ばで上振れする傾向があり「市場予想よりも弱め」(調査統計局)となった。
デフレにも歯止めがかかっていない。大企業製造業の販売価格判断指数(上昇から下落を引いた値)はマイナス15と前回より1ポイント低下し、3期ぶりに悪化した。先行きも1ポイント悪化を見込んでおり、需要不足を背景にした価格競争の厳しさは依然として和らいでいない。
9月調査の回答基準日は7日で、それまでに7-8割の企業が回答したとみられる。日中関係の悪化などの材料は十分に反映されていない可能性があり、先行き懸念は一層強まっているとみられる。

まず、製造業・非製造業別、大企業・中堅企業・中小企業別の業況判断DIの最近の推移を表に取りまとめると以下の通りです。9月調査で一時的なピークを付け、12月の先行きは悪化するという結果を示しています。

業況判断DI2010/32010/62010/92010/12
(先行き)
全産業▲24▲15▲10▲17
大企業製造業▲14+1+8▲1
中堅企業製造業▲19▲6+4▲10
中小企業製造業▲30▲18▲14▲22
大企業非製造業▲14▲5+2▲2
中堅企業非製造業▲21▲13▲8▲15
中小企業非製造業▲31▲26▲21▲29

上の表のデータをもう少し長期にプロットしたのが以下のグラフです。

日銀短観業況判断DIの推移

従来からの景気認識と何ら変わるところはないんですが、足元9月までは景気動向は底堅く推移しているものの、サステイナビリティはまったくなく、10-12月期から景気は踊り場に入ることはほぼ確実で、今回の9月調査の日銀短観でもそれが確認されたと私は受け止めています。特に、先行き業況判断DIの落ち方が激しいのは自動車産業です。短観の調査期間中にエコカー補助金の申請受付けが終了しましたので当然でしょう。
それでも、9月までは何とかエコカー補助金が最初の1週間だけ残っていましたし、10月1日からのタバコ値上げの駆込み需要も9月末にはあります。お彼岸までの猛暑の名残りの需要も一部に見られました。しかし、10月からはこれらが一気になくなるだけでなく、自動車やタバコは明らかに反動減があるでしょうし、加えて、今年4月の月初には1ドル95円近くだった為替相場がほぼ一直線に円高が進んだ影響も2四半期を経過してジワジワと現れ始める可能性が高いと考えられます。

日銀短観設備投資計画の推移

従って、設備投資計画も下方修正されました。ただし、上のグラフは直近の9月調査からリース会計対応になっていて、2010年度のみリース会計対応の係数で、2009年度までとは連続性はありません。日銀のサイトに詳しい説明があります。2008年度と2010年度が重なって見にくいんですが、設備投資計画が9月調査で下方修正されるのは景気後退期のひとつの特徴です。

日銀短観設備・雇用判断DIの推移

設備と雇用の要素需要に対する過不足判断DIは上のグラフの通りです。設備は先行き過剰感が反転して強まるとの見通しになっている一方で、雇用についても過剰感の払拭に時間がかかっているものの、現時点では反転には至っていません。明後日に発表される労働力調査や有効求人倍率などの雇用統計を見ればより明確になるんでしょうが、雇用環境は極めて緩やかなペースながら改善が進む可能性が高いと私は受け止めています。

日銀短観資金繰り判断DIの推移

ついでながら、白川総裁が世界の中央銀行の中で「日銀が最も金融緩和している」根拠のひとつとして上げられた資金繰り判断DIは上の通りです。世界各国と比べる術はありませんが、かなり資金調達は緩和されていると見ることも出来ます。

最後に、大企業製造業の事業計画の前提となっている想定為替レートは2010年度下期で89.44円でした。足元で1ドル85円を割っている水準ですから、企業側の対応が遅れているとしか言いようがありません。この短観で先行き景気の踊り場入りがハッキリしたわけですから、来週の日銀金融政策決定会合で何らかの追加緩和策が決定されることと私は受け止めています。

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2010年9月28日 (火)

死に馬に蹴られてマジック停滞!

  HE
読  売302100100 7100
阪  神100003100 571

マジック 8死に体のジャイアンツに負けました。今日は久保投手、明日は能見投手と、信頼感の高い投手から順につぎ込んで、この2人は中4日でこの6連戦に2度登場すると考えていたんですが、スタンリッジ投手の先発で、ヨーイドンで3点取られては勝つのは難しいかもしれません。後続のリリーフ陣もポロポロと失点し、ムダな点をやり過ぎました。打線もあと一歩が届きませんでした。後ろを振り返っても仕方ありません。6連戦の初っ端にいきなり負けたのはバカバカしい気がしますが、状況は変わっていません。後は全部勝つだけです。

後は全部勝つべく、
がんばれタイガース!

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アジア開発銀行の Asian Development Outlook 2010 update

さて、本日、アジア開発銀行から「アジア開発見通し 2010 改定」 Asian Development Outlook 2010 Update: The Future of Growth in Asia が発表されました。明日は日銀短観が発表されますし、明後日は鉱工業生産指数ですから、昨夜のエントリーのように、最後に簡単に図表だけ引用しようかとも考えましたが、引用する図表が多いので別記事にしました。ごく簡単に図表のみをかいつまんで紹介すると以下の通りです。

Growth rate of GDP

まず、リポートの p.8 から Table 1 Growth rate of GDP です。世界的に注目の高い中国には変更なく、インドもわずかに上方修正されただけなんですが、東南アジアが大きく上方修正されているのが見て取れます。

World GDP growth and Growth rates for developing Asia

次に、リポートの p.13 World GDP growth と p.23 Growth rates for developing Asia です。アジア途上国が世界の地域の中でも高い成長率を続けていることが理解できると思います。

Average annual growth rates

最後に、リポートの p.41 Average annual growth rates です。以下の Lee and Hong (2010) からの引用で、2030年までの超長期ベースライン見通しを示しています。中国の成長率に大きなブレーキがかかる可能性を読み取るべきです。

  • Lee, Jong-Wha and Kiseok Hong (2010) "Economic Growth in Asia: Determinants and Prospects," ADB Economics Working Paper Series No.224, Asian Development Bank, 2010

なお、本日までのところ、上の Lee and Hong (2010) の pdf ファイルはアジア開発銀行のサイトにはまだアップされていないようで、私もこのペーパーの内容については承知していません。

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大幅値上げを前にタバコの経済学を考える (その2)

今週の金曜日10月1日からかなり大幅にタバコが値上げされることから、9月17日に(その1)の「タバコの経済学」を取り上げましたが、これを機会に禁煙をしようと考えている愛煙家諸氏も多いのではないかと勝手に推測し、その決意をサポートするため、第2段の「タバコの経済学」についてエコノミストの立場からいくつかのペーパーやリポートを紹介したいと思います。なお、あくまで「エコノミストの立場から」であって、医学的あるいは健康の見地からは私はほとんど見識を有していませんが、取りあえず、愛煙家を含めて多くの方がタバコは健康に有害であるとの常識を共有しているとの前提で進めます。このような前提は「タバコの経済学」に何ら必要ではないんですが、一応、この前提が気に入らない向きには、私は反論する見識を持たないことを白状しておきます。

まず、「タバコの経済学」といえば、世銀のリポート Economics of Tobacco Control が有名です。日本に住んでいると見逃しがちですが、途上国では広範にタバコの喫煙が観察されます。世銀のサイトにはホンの2-3歳に見え、日本でいえば幼稚園に行くか行かないかくらいの子供が喫煙している写真があり、ショックを受ける人も多いんではないでしょうか。

先進国に目を転じると、タバコの喫煙率はいわゆる経済社会的な「望ましくない指標」と正の相関を持っていることを認識すべきです。「望ましくない指標」とは所得の低さとか、学歴の低さとかで、口の悪い人は「下流指標」と呼んでいるものです。もちろん、学歴の低い人が全員喫煙し、学歴の高い人がすべて非喫煙である、というわけではなく、例えば、学歴が低いほど、あるいは、所得が低いほど喫煙率が高まる、ということを指しています。よく引き合いに出される文献からグラフと出典を以下の通り上げておきます。ヘルシンキの調査をもとにした研究成果ですが、学歴、職種、所得、持家・借家別、経済的困難、経済的満足度の各指標に対して、喫煙率が優位に異なることが統計的に確かめられています。

Prevalence of smoking by socioeconomic indicators

外国の調査結果に基づく研究成果ではなく、日本経済に及ぼす影響についても試算結果があります。タバコの税収が、読売新聞の昨年2009年11月の記事「基礎からわかる『たばこ税』 税収2兆、6割は地方財源」によれば2兆円強である一方で、医療経済研究機構による「たばこ税増税の効果・影響等に関する調査研究」から、喫煙者が社会に負担させているコストは1999年で7兆円を超えます。国民経済に対する喫煙の負の経済効果はネットで5兆円ほどになります。詳しくは以下の引用の通りです。

「たばこ税増税の効果・影響等に関する調査研究」
1999年度の喫煙による超過医療費は13,086億円となった。また、喫煙による労働力損失は58,454億円となった。これらを合わせると、喫煙者が一消費者として負担しきれずに、喫煙者が属している共同体に負担させているコストは、71,540億円となる。

ただし、国民経済ではなく、財政に対する効果に限ればプラスという調査結果もあります。例えば、Philip Morris 社が Arthur D. Little International, Inc. なる企業に依頼して調査したところ、1999年時点でチェコの国家財政に対してネットで 5,815 mil. CZK、米ドルに換算すれば $147.1 million のプラスと試算されています。この為替レートは私の目から見て少し怪しいんですが、それはともかく、この総額 5,815 mil. CZK のうち、Health care cost savings due to early mortality が 968 mil. CZK に上るという結果も併せて報告されています。すなわち、ネットで国家財政にプラスになるうちの 1/6 くらいは、喫煙により国民が早死にするので医療費が少なくて済むことに起因するというわけです。この結果をどう受け止めるべきかは諸説あるかもしれませんが、少なくとも事実として、Philip Morris 社はこの結果をすぐに回収したと私は聞き及んでいます。なお、この調査結果は以下の web サイトで見ることが出来ます。詳細に興味ある向きはどうぞ。

最後に、今回のような値上げによる間接的な禁煙の奨励について考えます。というのは、今回の値上げはかなり大幅であると考える向きも少なくないと私が聞き及んでいるからです。しかし、日本においてはタバコが諸外国と比較してかなり安価で手に入るという研究成果があります。下の表は各国の主要都市でマールボロ、あるいは、国産ブランドの代替タバコを買うのに必要な労働時間を計測したものです。極端な例を考えて、2-3倍になったとしても、労働時間で計った東京でのタバコ価格は標準的な水準に止まることが理解できます。すなわち、豊かな日本人の労働時間で考えると、まだまだ値上げの余地があるといえます。表と出典は以下の通りです。

Minutes of labour required to buy a pack of cigarettes

最後に、私自身が喫煙や禁煙について、どのような考え方をしているかは、9月17日付けのエントリーの最後のパラにまとめましたので繰返しませんが、歴史的に興味ある点が1つだけあります。すなわち、タバコの有害性が十分に浸透した現時点では、最初に引用した表にある通り、喫煙率といわゆる「下流指標」に正の相関があるんですが、新大陸の発見に伴って米州新大陸から欧州にタバコがもたらされて以降、近代のある時期までは喫煙率と「上流指標」に正の相関があったことが可能性として、あくまで可能性として考えられます。ひょっとしたら、そのような研究成果がすでにあるのかもしれませんが、エコノミストではなく、ヒストリアンとして興味あるところです。

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2010年9月27日 (月)

貿易統計の輸出は明確な鈍化を示す、ほか

本日、財務省から8月の貿易統計が発表されました。ヘッドラインとなる貿易黒字は1032億円と前年同月比▲37.5%減少しました。基本的には、貿易黒字の縮小の原因は輸出であると受け止めています。輸出は季節調整していない原系列で見て前年同月比伸び率を大きく鈍化させ、季節調整済みの亀裂の前月比で見て減少を続けています。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

貿易黒字が15カ月ぶり減少 8月、輸出の伸び縮小
財務省が27日発表した8月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支の黒字幅が1032億円と前年同月比37.5%減少した。前年同月を下回るのは2009年5月以来1年3カ月ぶり。輸出の伸び率が15.8%と7月(23.5%)から縮小したのが主因だ。円高や海外経済の減速を背景に、米国向けなどで輸出の鈍化が目立ってきた。
8月の貿易黒字額は季節要因から貿易が停滞する1月を除くと09年4月(490億円)以来の低水準となる。ただ17カ月連続の黒字は維持した。輸出額は5兆2241億円で9カ月連続で増加。輸入額は5兆1209億円と前年同月から17.9%増えた。
8月の輸出を地域別にみると、米国向けが前年同月比8.8%増の7761億円だった。伸び率は7月の25.9%から大幅に鈍化した。灯油などの鉱物性燃料、建機類は増えたが、円高の影響もあって自動車の輸出額は前年同月に比べ8.3%減った。
アジア向けも前年同月比18.6%増と、7月の伸び率(23.8%)を下回った。増加に寄与したのは韓国向け鉄鋼やタイ向け金属加工機械、シンガポール向け半導体など。うち中国向けは18.5%増。金属加工に使うマシニングセンターや半導体、自動車などが増えた。
欧州連合(EU)向け輸出額は前年同月比13.7%増と前月とほぼ同水準の伸びとなった。ユーロ安の影響で景気回復が進むドイツ向けの自動車部品が増えたほか、英国向け船舶なども全体を押し上げた。
輸出額はリーマン・ショック後の反動もあり、昨年末から2ケタの伸びを続けてきた。しかし諸外国で打ち出された景気対策の効果が一巡する一方、個人消費や設備投資の本格的な回復が遅れていることから、足元で伸びが鈍っている。
直近の動向を示す季節調整済み輸出額(財務省試算値)をみると、8月は前月比2.3%減となり、4カ月連続で減少した。8月の為替レートは平均で1ドル=86円37銭と前年同月に比べ9.1%の円高・ドル安で推移した。
一方、輸入はマレーシアからの液化天然ガスが増えたほか、オーストラリアからの鉄鉱石も全体を押し上げた。猛暑でエネルギー需要が増えた可能性がある。

次に、貿易統計の推移を示したいつものグラフは以下の通りです。いずれも輸出入とその差額である貿易収支なんですが、上のパネルは季節調整していない原系列の計数、下のパネルは季節調整済みの系列です。

貿易統計の推移

青い折れ線グラフが輸出、赤が輸入、緑の棒グラフがその差額である貿易収支なんですが、下のパネルの季節調整済みの系列で見て、4月をピークにジワジワと輸出が減少を続けているのが見て取れます。季節調整していない原系列の輸出ではまだ前年同月比でプラスをつづけているんですが、そのプラス幅は大きく縮小し、季節調整済みの系列ではすでに前月比でマイナスに入っている、というのが貿易統計における輸出の真の姿であろうと受け止めています。

輸出数量の動向

その輸出をもう少し詳しく見たのが上のグラフです。一番上のパネルは金額ベースの輸出の前年同月比伸び率を数量と価格の貿易指数で寄与度分解したものです。真ん中のパネルは輸出数量指数の前年同月比伸び率を3か月リードを取った OECD の先行指数 (OECD/CLI) の前年同月比と対比してプロットしています。一番下は同じく輸出数量指数の前年同月比と鉱工業生産の前年同月比を対比してプロットしています。前年同月比のグラフを並べて何が分かるかというと、ここ数か月の金額ベースの輸出の伸びの鈍化は価格ではなく数量に起因し、その輸出数量の鈍化は世界経済の減速に起因し、最後に、輸出数量の鈍化は生産の減速に帰結する、ということです。付け加えるのであれば、7-9月期のGDP統計の外需はマイナスになる可能性があります。猛暑やエコカー減税に支えられた消費がGDPを引っ張るでしょうから、目立ちはしませんし、シロート目には内需がプラスで外需がマイナスという、一見して、カギカッコ付きの「望ましい姿」に見えなくもありませんが、内需の盛り上がりはサステイナブルではありませんから、決して楽観すべきではありません。ついでに、明後日に発表される鉱工業生産指数は予測指数の+1.6%増は下回りそうです。
もちろん、我が国の輸出数量の鈍化については、世界経済の減速だけでなく、円高要因もあります。為替相場については、昨年8月の1ドル94.97円から今年の8月は86.37円と9.1%もの大幅な円高になりました。1年間の円高の影響がラグを伴って表れていることも事実です。為替のラグは直観的に2-4四半期でしょうから、為替介入で注目された8月下旬からの円高の輸出への悪影響はこの現状にさらにオンされるものであると考えるべきです。

さて、貿易統計を離れて、タイトルの「ほか」の部分ですが、本日の日経新聞の「経済教室」における一橋大学の渡辺教授の議論を簡単に取り上げておきたいと思います。渡辺教授の結論は、為替介入資金の非不胎化は市場の期待を通じた将来の金融緩和効果により、不胎化介入よりも円安効果が大きいというものです。日銀ご出身らしく、量的緩和の効果にはやや否定的ないし限定的な見方を示し、量的緩和期には貨幣は飽和しているので非不胎化介入はさらなる量的緩和の効果はなく、非不胎化資金が将来の非ゼロ金利下で金融緩和効果を有する可能性があることから、この市場の金融緩和期待が為替の円安効果をさらに高める、という考え方です。ですから、量的緩和レジームではなく、いまだに金利レジーム下にある現時点で、非不胎化した為替介入は量的緩和も含めて、もっと効果があるということなんでしょうか。直接には「フィナンシャル・レビュー」第99巻のペーパーを引いていますが、ワーキングペーパーでは以下のものがあります。ご参考まで。

昨日、神戸大学で開催された金融学会における講演に続く質疑応答で、日銀の白川総裁は企業金融の資金調達のしやすさをもって、日銀が先進各国中央銀行に比較してもっとも金融緩和していると主張したようですが、日銀エコノミストの間では中央銀行のバランスシートなどは金融政策とは何の関係もないと考えられていたりするんでしょうか?

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2010年9月26日 (日)

そろそろ衣替えのシーズン

今週の金曜日から10月が始まります。そろそろ衣替えのシーズンです。
別の機会に書いたような記憶がありますが、長崎で大学教授だったころには服装などの見てくれは気にもしませんでしたが、東京に戻って役所の課長になってからは身だしなみに気を使っています。少し前まで、週に1-2回しかヒゲを当たりませんでしたが、今では平日は毎日剃っています。大学では入試の面接の際などの限られた特殊なケースでしかネクタイを着用しませんでしたが、少なくとも、来週あたりからは毎日のようにネクタイを結ぶんだろうと思います。役所の課長はそれも含めてクオリティなんだろうと考えています。いろいろと形を整えることも必要です。

猛暑・酷暑もいよいよ終わりに近づいて、2-3日前から気温はかなり下がりました。確かに、いくつか地球温暖化の影響に端を発する異常気象のような現象もありましたが、的確に季節は進んでいるような気がします。

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2010年9月25日 (土)

メッセンジャー投手まさかの好投を打線が盛り立てて広島に快勝!

  HE
広  島100000002 351
阪  神30000320x 8111

マジック 9先発オーダーを見た瞬間、私には大きな疑問点が2点ありました。もちろん、メッセンジャー投手の先発と7番金本選手です。先発は秋山投手の方がグンと安定感があると感じるのは私だけではないと思います。私が神宮球場に応援に行った折に初勝利を上げて、私がひいきにしている秋山投手でしたので、特にその思いが強かったんですが、メッセンジャー投手もまさかの好投でした。さすがに、間近で見ているコーチや監督しか得られない情報を適切に活用して、本日の調子を見切っていたようで、1回こそ先取点を許しましたが、6回途中まで1失点と立派に試合を作ってくれました。外野で見ているだけの私は完全に脱帽です。よくよく考えると、金本選手のスタメンにしても、試合を決するような場面で使ったり、出し方を間違ってヘンな守備体制になってしまうよりも、スタメンで使って2-3打席でサッサと引っ込める方がうまい使い方かもしれません。もちろん、あくまで連続試合出場をお続けいただくという前提であって、連続試合出場を切ってでも優勝を目指すべきというのが私の意見です。
なお、スコアボードの下にマジック9を掲げました。正しくは、というか、世間的には、巨人が負けると阪神にマジックが出るんでしょうが、ここは気合で残り9試合全勝するという意気込みで、やや無理やりにマジックを出してみました。決して間違えているわけではありませんので、ご容赦ください。

残り9試合も、
がんばれタイガース!

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国連ミレニアム開発目標 (MDGs) は達成できるか?

昨年1月18日付けのエントリーで国連ミレニアム開発目標 (Millennium Development Goals, MDGs) を取り上げて、英語表記の Target や Indicator の表をお示ししました。やや旧聞に属する話題ですが、菅総理大臣も出席した今回の第65回国連総会の主たる議題のひとつはこの MDGs です、というか、これまた菅総理大臣がスピーチした MDGs 首脳会議の開催とその結果の議論、といった方が正確かもしれません。もっとも、我が国のメディアでは MDGs もさることながら、菅総理大臣とオバマ米国大統領との会談とか、日中首脳会談見送りなどの報道が目立っていたことも事実ですし、菅総理大臣は国連総会でのスピーチ核廃絶にも触れていました。
まず、日本語に翻訳された MDGs は以下の通りです。なお、外務省のサイトには MGDs の和訳がありますが、ナンバリングが少し違っています。

目標とターゲット指標
ゴール 1: 極度の貧困と飢餓の撲滅
ターゲット 1
2015年までに1日1ドル未満で生活する人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる。
1.1日1ドル未満で生活する人口の割合
2.貧困格差の比率 (貧困度別の発生頻度)
3.国内消費全体のうち、最も貧しい5分の1の人口が占める割合
ターゲット 2
2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる。
4.平均体重を下回る5歳未満の子どもの割合
5.カロリー消費が必要最低限のレベル未満の人口の割合
ゴール2: 初等教育の完全普及の達成
ターゲット 3
2015年までに、全ての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする。
6.初等教育における純就学率
7.第1学年に就学した生徒が第5学年まで到達する割合
8.15-24歳の識字率
ゴール3: ジェンダー平等推進と女性の地位向上
ターゲット 4
可能な限り2005年までに、初等・中等教育における男女格差を解消し、2015年までに全ての教育レベルにおける男女格差を解消する。
 9.初等・中等・高等教育における男子生徒に対する女子生徒の比率
10.15-24歳の男性識字率に対する女性識字率
11.非農業部門における女性賃金労働者の割合
12.国会における女性議員の割合
ゴール4: 乳幼児死亡率の削減
ターゲット 5
2015年までに5歳児未満の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する。
13.5歳児未満の死亡率
14.乳児死亡率
15.はしかの予防接種を受けた1歳児の割合
ゴール5: 妊産婦の健康の改善
ターゲット 6
2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1に削減する。
16.妊産婦死亡率
17.医師・助産婦の立ち会いによる出産の割合
ゴール6: HIV / エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止
ターゲット 7
HIV / エイズの蔓延を2015年までに食い止め、その後減少させる。
18.15-24歳の妊婦のHIV感染率
19.避妊具普及率におけるコンドーム使用率
20.10-14歳の、エイズ孤児ではない子どもの就学率に対するエイズ孤児の就学率
ターゲット 8
マラリア及びその他の主要な疾病の発生を2015年までに食い止め、その後発生率を減少させる。
21.マラリア有病率及びマラリアによる死亡率
22.マラリアに感染しやすい地域において、有効なマラリア予防及び治療処置を受けている人口の割合
23.結核の有病率及び結核による死亡率
24.DOTS (短期科学療法を用いた直接監視下治療) の下で発見され、治療された結核患者の割合
ゴール7: 環境の持続可能性確保
ターゲット9
持続可能な開発の原則を国家政策及びプログラムに反映させ、環境資源の損失を減少させる。
25.森林面積の割合
26.地表面積に対する、生物多様性の維持のための保護区域の面積の割合
27.GDP1,000ドル当たりのエネルギー消費量
28.1人当たりの二酸化炭素排出量及びオゾン層を減少させるフロンの消費量
29.固体燃料を使用する人口の割合
ターゲット10
2015年までに、安全な飲料水及び衛生施設を継続的に利用できない人々の割合を半減する。
30.浄化された水源を継続して利用できる人口の割合(都市部及び農村部)
31.適切な衛生施設を利用できる人口の割合
ターゲット11
2020年までに、少なくとも1億人のスラム居住者の生活を大幅に改善する。
32.土地及び住居への安定したアクセスを有する世帯の割合
ゴール8: 開発のためのグローバルなパートナーシップの推進
ターゲット12
さらに開放的で、ルールに基づく、予測可能でかつ差別的でない貿易及び金融システムを構築する。
(良い統治、開発及び貧困削減を国内的及び国際的に公約することを含む。)

ターゲット13
後発開発途上国の特別なニーズに取り組む。
(1) 後発開発途上国からの輸入品に対する無税・無枠
(2) 重債務貧困国 (HIPC) に対する債務救済及び二国間債務の帳消しのための拡大プログラム
(3) 貧困削減にコミットしている国に対するより寛大なODAの供与を含む。

ターゲット14
内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国の特別なニーズに取り組む。 (バルバドス・プログラム及び第22回国連総会特別会合の規定に基づき)

ターゲット15
債務を長期的に持続可能なものとするために、国内及び国際的措置を通じて開発途上国の債務問題に包括的に取り組む。
以下に挙げられた指標のいくつかについては、後発開発途上国、アフリカ、内陸開発途上国、小島嶼開発途上国に関してそれぞれ個別にモニターされる。

政府開発援助 (ODA)
33.OECD開発援助委員会(DAC)ドナー諸国の国民総所得(GNI)に対するODA支出純額の割合
(注: 2015年までにODAの0.7%目標、2010年までに後発開発途上国向け0.15~0.20%目標)
34.基礎的社会サービスに対するODAの割合 (基礎教育、基礎医療、栄養、安全な水及び衛生)
35.DACドナー諸国のアンタイド化された二国間ODAの割合
36.内陸開発途上国のGNIに対するODA受取額
37.小島嶼開発途上国のGNIに対するODA受取額

市場アクセス
38.先進国における、開発途上国及び後発開発途上国からの輸入品の無税での輸入割合 (価格ベース。武器を除く。)
39.先進国における、開発途上国からの農産品及び繊維・衣料輸入品に対する平均関税率
40.OECD諸国における国内農業補助金の国民総生産(GDP)比
41.貿易キャパシティ育成支援のためのODAの割合

債務持続可能性
42.HIPCイニシアティブの決定時点及び完了時点に到達した国の数
43.HIPCイニシアティブの下でコミットされた債務救済額
44.商品及びサービスの輸出額に対する債務返済額の割合
ターゲット16
開発途上国と協力し、適切で生産的な仕事を若者に提供するための戦略を策定・実施する。
45.15-24歳の男女別及び全体の失業率
ターゲット17
製薬会社と協力して、開発途上国において人々が安価で必要不可欠な医薬品を入手できるようにする。
46.安価で必要不可欠な医薬品を継続的に入手できる人口の割合
ターゲット18
民間部門と協力して、特に情報・通信における新技術による利益が得られるようにする。
47.人口100人当たりの電話回線及び携帯電話加入者数
48.人口100人当たりの使用パソコン台数及びインターネット利用者数

MDGs の達成目標は2015年とされています。毎年出されている国連のThe Millennium Development Goals Report 2010 にも詳しく報告されていますが、大雑把な地域別進捗状況の一覧は Millennium Development Goals: 2010 Progress Chart においてビジュアルに明らかにされています。この仮訳を外務省のサイトから引用すると以下の通りです。

MDGs プログレスチャート2010 (仮訳)

一番下の注にある通り、色分けは2015年の目標達成に向けた進展度合いを示しており、緑色が「達成済み、または、達成間近」の目標なのに対して、赤は「進展なし、または、悪化」、オレンジが「現状のままでは2015年には目標達成不可能」となっています。一見しても、まだまだ赤やオレンジが多く、2015年までの目標達成は決して容易ではない、と考えるべきです。地域別ではサブサハラ・アフリカ、西アジア、オセアニアに赤やオレンジが目立っています。

9月22日夕刻にニューヨークの国連本部で開催された首脳会議において、菅総理大臣から保健や教育を重点として5年間で総額85億ドルを拠出する「菅コミットメント」が明らかにされています。「疾病」を「しつびょう」と読んでいる動画が YouTube サイトにアップされていますが、オバマ米国大統領のスピーチが終わった後で席を立った関係者も多く、当然ながら、そこまで日本語を理解する出席者がいっぱいいたとはとても考えられませんから、ほとんど何の影響もありません。それよりも、途上国の貧困削減などをはじめとする MDGs 目標達成のために、援助はもちろん、貿易や投資など、さまざまな努力が必要とされていることを、豊かな日本からも十分に認識すべきと私は考えています。

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2010年9月24日 (金)

来週発表の日銀短観の予想やいかに?

来週9月29日の発表を前に、各シンクタンクや金融機関などから9月調査の日銀短観予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。今回は可能な範囲で先行きに関する見方を取ったつもりですが、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
6月調査実績+1
▲5
<+4.4>
n.a.
日本総研+8
0
<+5.0>
先行き見通しDIは、大企業製造業で今回調査対比▲6ポイントと、5四半期ぶりの悪化に転じる見通し
みずほ総研+8
▲2
<+>
先行きについては、エコカー補助金の終了を受けて自動車のDIが大きく低下する可能性
ニッセイ基礎研+9
▲2
<+4.0>
製造業を中心に先行きに対してかなり悲観的な見方が強まる
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所+8
▲1
<+>
先行きについては、世界経済の弱含みへの警戒感が根強いほか、企業の想定以上の円高進行もあり、慎重な見方
第一生命経済研+3
▲3
<+4.1>
今回の短観は、円高の影響を相対的に評価し、景気回復を確認する有力な材料
三菱総研+8
▲2
<+4.1>
海外での需要の伸びが鈍化していることに加え、円高による収益圧迫も相まって、製造業を中心に企業の経営環境の先行きには不透明感
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+6
▲2
<+4.9>
先行きの業況判断DIは2ポイント低下と、慎重姿勢がかなり強まる
みずほ証券リサーチ&コンサルティング+7
▲2
<+4.5>
円高圧力の強まりや海外経済の不透明感、エコカー補助金の終了といった政策効果の一巡後の動向などから、先行きについては慎重な姿勢が強まる
富士通総研+7
▲1
<+5.1>
秋以降は、世界経済の回復ペースの鈍化に加え、エコカー補助金の打ち切りに伴う自動車の生産調整などに直面し、日本経済は軽い踊り場に入る
伊藤忠商事+2
▲3
<+>
円高懸念や世界的な先行きに対する不透明感、エコポイント及びエコカー補助金終了後に対する警戒感などを反映して、先行きDIは輸出比率の高い加工組立製造業を中心に全ての規模・業種で大幅な悪化

見れば分かると思いますが、大企業の製造業及び非製造業の業況判断DIと大企業全産業の2010年度設備投資計画の前年度比です。後者について、発表機関により微妙にベースが異なるものについては数字を上げずに方向性だけをプラスかマイナスかで示してあります。なお、表には先行きの業況判断DIが含まれていませんが、すべての機関について、ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査をピークにして、12月の先行きは低下する方向であると予想しています。ただし、大企業非製造業については横ばいないし若干の改善と見込む機関が2-3ありました。製造業では、エコカー減税の終了や円高と世界経済の減速に伴う輸出の伸びの鈍化をマイナス要因と見込んでいます。また、大企業全産業の設備投資計画は微妙なところだろうという気がします。例えば、上の表に収録した10機関のうち、上方修正が7機関、下方修正が3機関となっています。

円ドル相場

最後に、企業のマインドに影響を与える為替相場なんですが、今日の午後一番に9月15日に続いて市場介入があったんではないかとウワサされています。上のグラフは日経新聞のサイトから引用している今日の円ドル相場なんですが、午後1時過ぎにポンと跳ねているのが見て取れます。ただし、その後は急速に介入があったと推測される前の水準に回帰し、7時過ぎには逆に円高に振れてしまっています。

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2010年9月23日 (木)

中日との直接対決を勝利で終えて、後はすべて勝つのみ!

  HE
阪  神301000111 6100
中  日000001000 151

中日との直接対決最終戦を白星で制し、後はすべて勝つだけです。
個人成績も視野に入れつつ、ペナントは続きます。マートン外野手の200安打おめでとうございます。出来れば、1-2番のうちのどちらかに首位打者を取って欲しい気がします。ここ何試合かで突然打てなくなりましたが、残り試合数から考えると、ブラゼル内野手のホームラン王は確実なところでしょう。金本選手の連続試合出場はチームの勝利よりも優先されているように見受けられます。

残り試合も全力尽くして、
がんばれタイガース!

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Financial Times の菅総理大臣特集記事

9月22日付けの Financial Times菅総理大臣のインタビューを含む特集記事が掲載されています。基本的には、国連総会に向けて出発する際を捉えてのインタビューのように見受けるんですが、参議院選挙結果、民主党代表選挙結果、また、政治経済の課題として為替市場介入や経済成長戦略、あるいは、社会保障の財源のための消費税増税など、幅広くインタビューし、かつ、論評を加えています。まず、Financial Times のサイトから特集記事のねらいなどを記した最初のパラを引用すると以下の通りです。なお、このサイトは何らかの無料の登録が必要かもしれません。

Japan: Inventive intervener
In just three months as Japan's prime minister, Naoto Kan has seen his government suffer devastating defeat in an upper house election, fought off a leadership bid by a heavyweight rival from his own party and grappled with global currency markets. Now comes the hard part.

どうでもいいことですが、引用中の "a heavyweight rival" とは、別のところでは「闇将軍」 "shadow shogun" と表現されていて、民主党代表選挙を戦った小沢元幹事長を指すことは言うまでもありません。
最初に書きましたが、経済面では為替の市場介入、成長戦略、社会保障と消費税増税などをトピックとして取り上げており、経済以外では菅総理大臣のプロファイルや外交などを取り上げています。社会保障については、福祉のための消費税率引上げか米国スタイルの自助中心かで "major choice" がある一方で、2020年までのプライマリー・バランス均衡のための消費税増税は "a political landmine" を残すとも表現しています。その他の部分も含めて、とっても興味深い記事です。

In search of a growth spurt

上のグラフも同じ Financial Times のサイトから引用しています。経済成長が様々な課題の克服に有効であることを示唆している、と受け取るのは私だけでしょうか?

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2010年9月22日 (水)

中日にサヨナラ負けでペナントレースはほぼ絶望!

  HE
阪  神000000000 051
中  日000000001x 160

中日にサヨナラ負けで、ほぼペナントレースは絶望になりました。9回ウラに打たれた久保田投手やエラーをしたブラゼル内野手を責めるのは酷ではないでしょうか。金本選手が平凡なセンターフライを打ち上げた瞬間に私はお風呂に入りました。お風呂から上がると、阪神はサヨナラ負けしてペナントレースはほぼ終わっていました。

クライマックス・シリーズでは、
がんばれタイガース!

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今年のノーベル経済学賞は清滝教授に授賞されるか?

Nobel Medal

昨年、ウィリアムソン教授とオストロム教授に授賞されたノーベル経済学賞ですが、昨日、トムソン・ロイターから "Thomson Reuters Predicts Nobel Laureates" と出して、今年の科学分野のノーベル賞受賞者予想が公表されています。科学分野ですから、経済学賞を含んでおり、文学賞と平和賞は除かれています。ノーベル経済学賞についてのみ引用すると以下の通りです。

  1. Albert Alesina
    Nathaniel Ropes Professor of Political Economics, Department of Economics, Harvard University, Cambridge, Mass., USA
    For theoretical and empirical studies on the relationship between politics and macroeconomics, and specifically for research on politico-economic cycles.
  2. Nobuhiro Kiyotaki
    Professor of Economics, Department of Economics, Princeton University, Princeton N.J., USA
    -and-
    John H. Moore
    George Watson's and Daniel Stewart's Professor of Political Economics, University of Edinburgh, Edinburgh, Scotland, and Professor of Economics, Department of Economics, London School of Economics, London, England
    For formulation of the Kiyotaki-Moore model, which describes how small shocks to an economy may lead to a cycle of lower output resulting from a decline in collateral values that create a restrictive credit environment.
  3. Kevin M. Murphy
    George J. Stigler Distinguished Service Professor of Economics, University of Chicago Booth School of Business, Chicago, Il., USA, and Senior Fellow, Hoover Institution, Stanford, Calif., USA
    For pioneering empirical research in social economics, including wage inequality and labor demand, unemployment, addiction, and the economic return on investment in medical research among other topics.

最初にアレジーナ教授が上げられていて、この分野の共同研究も多いペロッティ教授の名がないのはやや不思議な気がするんですが、それはともかく、トムソン・ロイターの英語のサイト "Thomson Reuters Predicts Nobel Laureates"では、たぶん、上の順の通りにならんでいる一方で、一見して分かるようにプリンストン大学の清滝教授が入っていますので、同社の日本語のサイト「21名の新たなノーベル賞有力候補者を発表」では、清滝教授とムーア教授が最初に来ています。
日本人エコノミストとして世間的な注目を集めるんではないかと思いますので、このブログでも清滝教授の業績についてごく簡単に見ておきたいと思います。まず、あえてカテゴリー分けすると清滝教授はニュー・ケインジアンであり、マクロ経済学のミクロ的な基礎付けの研究で大きな成果を上げたと私は認識しています。初期には、ブランシャール教授とともに独占的競争が集合的需要にもたらす効果に関するペーパーもあります。リファレンスは以下の通りですが、リンクはありません。

  • Blanchard, Olivier Jean and Nobuhiro Kiyotaki (1987) "Monopolistic Competition and the Effects of Aggregate Demand," American Economic Review 77(4), September 1987, pp.647-66

何年か前から清滝教授が日本人の中でノーベル経済学賞候補として注目を集めたのは、私の記憶が正しければ、ライト教授との共著になるペーパーで、いわゆる清滝・ライトの貨幣需要関数がきっかけでした。リファレンスは以下の通りです。

ただし、トムソン・ロイターが業績として上げたのは、この清滝・ライトの貨幣需要関数ではなく、先に引用した通り、small shock がどのように生産性下落の cycle を引き起こすかを示す清滝・ムーア・モデルの構築ということになっていたりします。こちらのリファレンスは以下の通りです。

ノーベル経済学賞候補として、私自身が注目するエコノミストとしては、昨年と同じですが、時系列分析に関する貢献で、シムズ教授、ストック教授、ワトソン教授あたり、成長論でバロー教授やジョルゲンソン教授あたり、私の専門である景気循環論の貢献によりハミルトン教授あたり、ではないかと考えています。日本人としては引き続き消費関数理論に関する貢献により、林文夫教授が考えられるんではないかと受け止めています。要するに、自分の専門以外はよく知らなかったりするわけです。なお、ノーベル賞のホームページから、各賞発表のスケジュールは以下の通りです。ストックホルム時間ではないかと思います。今夜のエントリーで注目した経済学賞は10月11日の体育の日です。

  • The Nobel Prize in Physiology or Medicine
    Monday, October 4 11:30 a.m. at the earliest
  • The Nobel Prize in Physics
    Tuesday, October 5 11:45 a.m. at the earliest
  • The Nobel Prize in Chemistry
    Wednesday, October 6 11:45 a.m. at the earliest
  • The Nobel Peace Prize
    Friday, October 8 11:00 a.m.
  • The Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel
    Monday, October 11 1:00 p.m. at the earliest

上の日程は6月4日の記者発表なんですが、伝統に従い、その時点でまだ文学賞の発表予定は明らかにされていませんでした。日本人受賞者の最有力候補は、清滝教授には申し訳ないながら、私は今年も村上春樹さんのノーベル文学賞であると考えています。

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2010年9月21日 (火)

ダイナマイト打線が沈黙し優勝戦線から後退か?

  HE
阪  神000000000 051
中  日00010101x 3101

中日のチェン投手にダイナマイト打線が沈黙し、優勝争いの大事な3連戦の初戦を落としました。もっとも、私は昨日の虎ブロに「3つとも勝たねばなりません」と書きましたが、その後のナイトゲームで中日が東京ヤクルトに勝つ前提だったところ、昨夜は東京ヤクルトががんばって中日に勝ちましたので、2勝1敗でいいことになりました。しかし、その東京ヤクルトのがんばりを無にするようなダイナマイト打線の沈黙でした。
ここまで来れば、チームとしての総合力です。今夜のゲームは決して采配で負けたわけではありません。明日と明後日はまだ勝てる可能性が十分残っています。逆に、明日と明後日のどちらかを負けると大いに苦しくなります。ピッチャーもさることながら、打線の奮起を大いに期待します。

明日と明後日は何としてでも、
がんばれタイガース!

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米国の景気の谷は2009年6月と決定され景気後退期間は戦後最長!

我が国のメディアでも報じられていますが、昨日9月20日、NBER の景気日付委員会からステートメントが発表され、2007年12月を山とする米国の景気後退の谷は昨年6月と決定されました。発表は昨日ですが、決定は一昨日です。すなわち、景気日付委員会が19日に電話会議にて開催され、そこでの決定を20日に発表したわけです。ややこしい日付の関係です。それはともかく、まず、NBER のサイトからステートメントの最初のパラを引用すると以下の通りです。

Business Cycle Dating Committee, National Bureau of Economic Research
The Business Cycle Dating Committee of the National Bureau of Economic Research met yesterday by conference call. At its meeting, the committee determined that a trough in business activity occurred in the U.S. economy in June 2009. The trough marks the end of the recession that began in December 2007 and the beginning of an expansion. The recession lasted 18 months, which makes it the longest of any recession since World War II. Previously the longest postwar recessions were those of 1973-75 and 1981-82, both of which lasted 16 months.

上のステートメントにもある通り、18か月の景気後退期間は第2次世界大戦後で最長です。1970年代半ばと1980年代初のそれぞれ16か月を抜いた形になりました。国際通貨基金 (IMF) が Great Recession と命名したのも当然かもしれません。なお、NBER のステートメントからいくつかの月次指標の谷を引用すると以下の通りです。

  • Macroeconomic Advisers' monthly GDP (June)
  • The Stock-Watson index of monthly GDP (June)
  • Their index of monthly GDI (July)
  • An average of their two indexes of monthly GDP and GDI (June)
  • Real manufacturing and trade sales (June)
  • Index of Industrial Production (June)
  • Real personal income less transfers (October)
  • Aggregate hours of work in the total economy (October)
  • Payroll survey employment (December)
  • Household survey employment (December)

戦後最長の18か月の景気後退期ではありましたが、私の含めて、多くのエコノミストの実感と一致した結果であると受け止めています。以下のグラフはストック・ワトソン方式で推計された月次の米国実質GDPです。影を付けた部分が景気後退期となっており、データの最新月は今年6月です。

Monthly Stock-Watson Real GDP

昨年6月を谷とする景気後退の終了後、米国で順調な景気回復が続いているかというと決してそうではなく、例えば、日経新聞の記事では、すでに減速感が強まっていたり、今後の景気回復の継続性が問題となっている旨の指摘が見られます。しかし、私は米国では雇用こそが大問題と受け止めています。というのは、大雑把にいって、日本では、雇用は景気の遅行指標で、時系列的な因果関係は景気から雇用に向かうんですが、米国では反対です。雇用が、そして、家計が景気を引っ張ります。そして、下のグラフを引用した New York Times の記事に示されている通り、米国では最近3回の景気後退後の景気回復局面において、雇用がほとんど増加しない jobless recovery となっています。

Change in jobs since the end of each recession

今後の米国景気を考える上で、雇用の動向にも十分な注意が払われるべきです。

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2010年9月20日 (月)

巨人をねじ伏せて中日との決戦へ!

  HE
読  売101000000 291
阪  神00120001x 490

恐るべき高卒ルーキー秋山投手がよくないながらも6回2失点で試合を作って、その後は久保田投手がピシャッと抑え、林外野手の逆転ツーランの虎の子を守り切りました。8回ウラには城島捕手のダメ押しソロが出て、最終回は藤川投手が抑えました。秋山投手の安定感とともに、久保田投手の力でねじ伏せるピッチングが光りました。特に、ジャイアンツの4番ラミレス外野手を三振に打ち取った高めのくそボールは、最近では見られない剛速球でした。全盛期の江夏投手を思い出しました。特記すべきポイントは2点あり、打力に主眼を置いた攻撃的なオーダーで林外野手を起用したのがズバリと当たったこと、勝ちパターンの投手リレーで久保田投手が力投したこと、でしょう。しかし、私は見逃してはならない点として、守備固めで藤川俊外野手をセンターに、浅井外野手をライトに配した布陣を上げたいと思います。この2人は逆に配される場合が多くて、常々、私は不思議に感じていたことでした。
いよいよ明日からはナゴヤドームで首位決戦、中日との3連戦です。先発投手は、スタンリッジ投手、久保投手、能見投手ということになります。いずれも信頼性高い投手なんですが、まさかの場合にはダイナマイト打線がどこまで投手陣をフォローできるかもひとつのカギになります。ヒーローインタビューで林外野手が「勝ち越せるよう」などと、ヌルいことを言っていましたが、3つとも勝たねばなりません

名古屋でも、
がんばれタイガース!

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渋谷区立中央図書館の発見!

この3連休はさすがの猛暑も少し影をひそめ、秋晴れのいいお天気が続いています。
ということで、今日も朝から少し外出します。図書館に行きます。私は港区民ですから、当然ながら、港区立図書館を利用していますが、ネットで検索したところ、私の読みたい本は第3巻まで出ているところ、なぜか、港区立図書館では全館を上げて第2巻と第3巻しか所蔵していません。仕方がないので、渋谷区立図書館を検索すると、ちゃんと中央図書館が第1巻を所蔵して、しかも、貸出しが可能な状態になっています。今日の朝から出かけて借りて来ました。我が家からもっとも近い図書館は港区立赤坂図書館であろうと思いますが、「中央図書館」としては渋谷区立中央図書館が最も近そうな気がします。原宿から明治通りを少し代々木・新宿方面に歩いたところにあります。我が家から何とか徒歩圏内ですので、利用させていただきたいと思います。

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2010年9月19日 (日)

巨人に負けて段々と終わりが近づく!

  HE
読  売510000000 6130
阪  神001001011 4111

今日は先発が先発ですから、私の勘定では、ダイナマイト打線が爆発して勝つべき日でした。投手陣が平均的に5-6点取られたんですから、それ以上の点を取れ得るかどうかが勝負の分かれ目だったような気がします。結局、ダイナマイト打線が抑え込まれて負けたわけですから仕方ありません。段々と終わりが近づいているのかもしれません。今夜、中日が勝ったら、その感覚が強くなりそうな気がします。

何とか優勝戦線に踏みとどまるべく、
がんばれタイガース!

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中学校の文化祭に行く

今日も昨日に続いて穏やかな秋晴れのいいお天気でした。気温はさらに上がったような気がします。ということで、今日は我が家のおにいちゃんが通っている中学校の文化祭に出かけました。我が家のおにいちゃんが通っているのは中学校なんですが、中高6年間一貫制の学校ですから高校生もいて、それなりにレベルの高い文化祭でした。男子単学なんですが、文化祭ですから他校の女子もいっぱい来ていました。6年間を通して見れば、我が家のおにいちゃんはまだ学年が低いので、クラスで縁日を出していました。クラスを離れたクラブ活動の展示では3体ほどガンプラを出品していました。夫婦で出かけて、女房はPTAのコーナーに行き、私は午前中いっぱいアチコチ歩きまわって楽しみました。
おにいちゃんの作品の写真は以下の通りです。1枚目の向こう側に見えるのはシャア専用ザクなんですが、片手片膝をついて凝ったポーズを決めていました。

ガンプラの作品

ガンプラの作品

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2010年9月18日 (土)

巨人との投手戦を能見+久保田+藤川で完封リレー!

  HE
読  売000000000 081
阪  神00000010x 180

気温はまだかなり高いとは言うものの、穏やかな秋晴れの3連休ですから、午前午後とアチコチに外出し、4時半ころに帰宅して8回表の久保田投手のピッチングあたりから野球をフォローします。久保田投手はほぼ完璧な内容でジャイアンツの上位打線を力でねじ伏せます。8回ウラの攻撃は新井三塁手があえなく三振、ブラゼル一塁手も凡退して追加点が入りませんでした。9回は藤川投手がノーアウトから阿部捕手と矢野外野手にヒットを許しながら、二遊間の堅い守りで併殺に切り抜けゼロで締めました。私が見逃したラッキーセブン7回ウラの虎の子の1点を守って巨人に完封リレーの勝利でした。
当たり前ですが、能見投手の復帰は大きいですね。これで、久保投手とともにローテーションに柱が2本出来ました。ダイナマイト打線は引き続きサッパリ当たりを取り戻せないようですから、投手が抑える必要があります。終盤のリリーフ陣も、勝ちパターンでは8回久保田投手、9回藤川投手が固まったような気がします。7回まで誰に投げさせるのか、ここがポイントになります。それにしても、ダイナマイト打線はどうしてこんな急に打てなくなったんでしょうか?

ジャイアンツに引導を渡すべく、
がんばれタイガース!

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小学校の学校公開に行く

今日は穏やかな秋晴れのいいお天気で、下の子が通っている小学校の学校公開に行って来ました。今週後半の木金土の3日間の学校公開となっています。土曜日にも公開するということは、一般論として、父親をターゲットにしているように思わなくもありませんでしたので、私も小学校の意図の賛同して、というわけでもないんですが、参加しました。でも、何せ土曜日ですから、体育館での全校行事が行われていて、授業は余りないようだったので、早々に帰宅してしまいました。
授業の邪魔にならないように、教室の外で撮った写真は以下の通りです。上は「詩を味わおう」と題して子供達が詩を書き写したもののうち、ウチの子の作品です。私は不勉強にして静美木子さんという詩人さんは知りません。下の写真は別室に集めて展示してあった夏休みの宿題などの作品です。ウチの子の夏休みの宿題は、教室の外に並べてありました。

詩を味わおう

夏休みの作品

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2010年9月17日 (金)

ファイザーによる「日本全国のニコチン依存度チェック2010」に見るタバコの経済学 (その1)

今日は一気に組閣が進みました。報道を見ている限り、ほぼ内閣の顔ぶれが決まったようです。私は国家公務員ながら、幹部職員からはほど遠いので何のお役目もありませんでした。役所の幹部は官邸に詰めかけたりしていたんでしょうか、それとも、政治主導の時代なので公務員が組閣で忙しくなるのは過去の話になったんでしょうか?

組閣の話題は別にして本題に入ると、来月10月1日からのタバコ値上げに対応して、役所の1階にあるコンビニでもタバコのカートンが積み上げられていたりしたんですが、昨日、製薬会社のファイザーから「日本全国のニコチン依存度チェック2010」というリポートが発表されました。ファイザーは、舘ひろしさんを起用してテレビなどで禁煙治療啓発キャンペーンを繰り広げていることはよく知られた通りです。なお、もう少し値上げが近づく9月末ころに、改めてより学術的な「タバコの経済学」に焦点を当てたいと考えていますが、今日のところは簡単に、このファイザーの調査結果のリポートから、「ニコチン依存度」なる指標を取り上げます。
まず、タバコの喫煙といわゆる「好ましくない指標」、口の悪い人には「下流指標」と呼ばれているものの間には、幅広く統計的に有意な正の相関が観察されます。例えば、所得とか学歴の低さと喫煙率は相関します。もちろん、学歴の低い集団がすべて喫煙者で、学歴が高い人がまったく喫煙しない、というわけではなく、学歴が低いほど、あるいは、所得が低いほど、喫煙率が高いという意味です。そこで、2007年度の1人当たり県民所得と今回のファイザー調査によるニコチン依存度の相関を見ました。以下のグラフの通りです。縦軸が100万円単位の1人当たり県民所得、横軸がパーセント表示のニコチン依存度となっています。

1人当たり県民所得とニコチン依存度の相関

高校までの数学における関数の一般形を思い出せば明らかなんですが、y=f(x) ですから、横軸の x、すなわち、ニコチン依存度が縦軸の y、すなわち、1人当たり県民所得を決定するという定式化にしています。異論あるかもしれませんが、いずれにせよ、線形近似の傾きはマイナス、すなわち、ニコチン依存度と1人当たりの県民所得には負の相関が観察されます。決定係数がやや低いので信頼性は余り高くないんですが、ファイザーの計算によるニコチン依存度が高い県ほど所得が低い、ということです。
全体の相関関係の他、いくつか、興味ある都府県を吹出しで示してあります。1人当たり所得がもっとも高いのが東京都で、ニコチン依存度は神奈川県と宮城県に次いで全国3番目に低くなっています。他方、1人当たり所得がもっとも低いのは沖縄県で、ニコチン依存度も全国で最高となっています。典型的な大都市圏をかかえる大阪府と愛知県が、東京都と沖縄県を結ぶ直線上に近く位置していますが、愛知県は大阪府に比較して、ニコチン依存度が低くて1人当たり所得が高くなっています。もちろん、プロットした県民所得は第14循環の景気のほぼピークだった2007年度のデータであり、その後、愛知県はトヨタとともにやや沈んで行くんですが、このグラフで大阪府と愛知県を比較すれば、大阪府の地盤沈下が明らかになります。非常に興味深い観察結果ではないでしょうか。

最後に、当然ながら私は幅広く禁煙をオススメする立場から今夜のエントリーを書いているんですが、決して、いわゆるカギカッコ付きの「禁煙ファシズム」のような立場はとりません。喫煙するかどうかは自律的な判断が出来る成人による自己責任に基づく選択の結果であると考えています。もちろん、受動喫煙などによる非喫煙者への健康被害はあり得ますが、他方、自動車によって年間数千人の直接的な交通事故の死者が出ているにもかかわらず「自動車禁止論」はそれほど出ていませんし、何といっても、約100年前の米国における「禁酒法」の経験は世界各国で活かされるべきだと考えています。

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2010年9月16日 (木)

中日が負けて、首の皮1枚で阪神が優勝戦線に残ったか?

  HE
阪  神000000020 270
横  浜000000100 162

ようやく横浜にオーソドックスな投手リレーで勝ちました。特に、私が評価したいのは勝負どころとは関係ない場面で金本選手を代打に出したあたりです。中日が負けてくれたので、何とか阪神も首の皮1枚だけ優勝戦線に残っている印象です。ヒーローインタビューの久保投手の言うように、6連勝すれば可能性が出て来そうな気がします。
昨夜のブログを書いていた段階では、ペナントレースを諦めて、クライマックスシリーズに的を絞るのも一案と考えないでもなかったんですが、やっぱり、たとえクライマックスシリーズで負けてもペナントレースで優勝する方が私はうれしいと考えなおしました。もしも、クライマックスシリーズで勝ち上がるのとレギュラーシーズンの優勝のどちらかを選べるとしたら、私は優勝を取ります。

巨人戦は3タテを目指して、
がんばれタイガース!

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為替介入にプラスアルファの政策が必要!

いろいろと私も忙しいので、昨日から実施されている為替介入について、ごく手短にコメントしておきたいと思います。
まず、時期と規模は適正だったと私は考えています。いくら何でも、民主党の代表選挙の前に為替介入を実施することは「政治利用」の誹りを免れませんから、ギリギリのタイミングを見極めたと評価できます。規模としては、日本で2兆円プラス欧州なども含めてもう少し、という感じだと思いますが、私の知り合いの市場関係者によれば、年内20兆円、年度内30兆円規模であれば、為券による資金調達はマーケット的には問題ない、という意見でした。私もそんなもんだろうという気がします。次に、市場介入の結果については非不胎化と報じられています。ひょっとしたら、私は為替介入による直接的な円ドル相場の動向よりも、この金融緩和的な効果の方が大きいんではないかとすら考えています。
2003-04年の大規模な為替介入を経て、経済学的・理論的な因果関係は別にして、日本経済はいったんは2005年夏から力強い回復を示したことは記憶に新しいところです。為替介入から少し離れて、この時は郵政民営化という我が国の資金の流れを大きく変えるんではないかという期待を持たせる政策的なインパクトがありました。郵政民営化のその後の評価は別にして、為替介入を実施するだけでなく、それなりのインパクトを有するんではないかと市場に受け止められるような何らかの政策を打ち出せるかどうかも景気や株価の動向に大いに影響することを考慮すべきです。今はメディアも為替にばかり注目が集まっていますが、為替とは別のところで景気をフォローする政策が必要です。
下のグラフは、長い期間で見た円ドル相場と為替介入額の推移です。ご参考まで。

円ドル相場と為替介入額の推移

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2010年9月15日 (水)

不合理な采配と自らのレガシーコストで真弓阪神は首位戦線から脱落!

  HE
阪  神010000400 581
横  浜23000000x 760

とうとう横浜に連敗して3位に転落し、我が阪神はほぼ優勝戦線から脱落しました。もちろん、次の甲子園3連戦で巨人を3タテした上で、来週のナゴヤドームでの中日3連戦で3連勝でもすれば話は別ですが、現在の戦力や調子からすれば、そんな離れ業は出来そうもないです。
今日はようやく金本選手がスタメンから外れました。しかし、先発は下柳投手でした。プロ野球の先発として通用するかどうか、ここ1-2か月の成績を見て判断できないんでしょうか。どうせ負けるとすれば、下柳投手が今夜のようにボロクソに打ち込まれて負けるよりも、若手投手を登板させた方が先々楽しみな気がします。でも、真弓監督は実力や調子といった作戦を考える際に参照すべき合理的な指標ではなく、何か、得体の知れない思い込みや不合理な圧力か何かによって選手起用や采配を行っていたように私には見受けられました。これでは勝てません。優勝できません。
投手起用については、余りにも短絡的で視野が狭くて短い起用に終始しました。しかも、私が観察するところ、東京ヤクルトの高田監督の休養や更迭が話題になったころから、この不合理な投手起用が目立ち始めたような気がします。この5月くらいからシーズン終盤かと思わせるような投手起用が、結局、8月ころからレガシーコストとなって真弓監督自身を苦しめ始めたような気がします。
ほぼ優勝の可能性はなくなりましたから、阪神はクライマックスシリーズを目指すべきです。これ以上ムリをして、ペナントに執着すべきではありません。諦めのいい関西人はサッサと次を考えるべきです。そうでないと、来年までレガシーコストを残すことになりかねません。

クライマックスシリーズ目指して、
がんばれタイガース!

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6年半振りの為替介入はどこまで効果があるか?

昨日の民主党代表選挙の結果を受けて、「菅代表なら円高」との事前の予想通り、でもないんでしょうが、対ドルの名目為替レートが82円台に突入しました。このため、本日午前中から政府は円売りドル買いの為替介入に踏み切りました。もちろん、実行したのは日銀です。日本時間の夕刻になって、欧州市場でも断続的に介入を続けているように報じられています。まず、日経新聞のサイトから第1報を報じる記事を引用すると以下の通りです。

政府・日銀が円売り介入実施 6年半ぶり
財務省・日銀は15日の東京外国為替市場で円売り・ドル買い介入を実施した。市場介入は2004年3月16日以来およそ6年半ぶり。米国の金融緩和観測を背景にドルの先安観が強まり、円は10時30分前に1ドル=82円87銭近辺と、1995年5月31日以来、約15年3カ月ぶりの高値を付けていた。一段の円高を阻止する目的で介入に踏み切ったとみられる。
野田佳彦財務相は10時50分から記者会見し、円売り介入を実施したことを認めた。
円売り介入は10時35分に82円台後半から実施されたもよう。介入を受けて円は下げに転じ、一時84円18銭前後と、14日の17時時点と比べて97銭の円安・ドル高水準を付けた。
円高の進行は輸出企業の業績悪化につながりやすく、景気のマイナス要因になるほか、輸入物価の下落を通じてデフレの一因とされる。このため政府・日銀には早急な円高対策が求められていた。

繰返しになりますが、民主党代表選挙の事前のウワサでは、極めて大雑把に比較対照すると、円高や景気への対策に積極的な小沢氏に対して、菅総理・民主党代表はすでに9月10日に「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」を決定・発表した直後でもあることから、追加的な対策にはやや慎重であり、むしろ、財政再建路線に相対的に近い、と見られていただけに、株安・円高・債券高の流れが市場の底流にあり、ジワジワと円が買われたという見方も出来ます。もっとも、私は現時点でマーケットの詳しい情報を知りませんので、何とも言えません。10時半過ぎの為替介入により円ドル相場はすぐに84円に乗り、その後85円も越えて、株価は東証の日経平均が前場の引け直前に9400円を突破し、終り値では9500円を超えました。下のグラフは日経新聞のサイトから今日の日経平均株価と円ドルレートのグラフを引用しています。誠に申し訳ありませんが、横軸の時間がズレています。

日経平均株価と円ドル相場

今さら言うまでもありませんが、為替相場の均衡点に歪みをもたらすために市場に介入するのは、かなり直接的かつ激烈な政策手段であり、少なくとも短期には効果が大きいものの、サステイナビリティはありません。メディアは判で押したように「効果は一時的」とか、「円高反転には力不足」と報じていましたが、当たり前です。もしも、為替相場がランダム・ウォークに従うのであれば、理論的にはショックは永続的ですが、プラクティカルに、為替介入が永続的な効果を示すとは誰も考えていません。基本的には、スムージング・オペレーションの一種であり、大幅な円安に誘導するものではない、と考えるべきです。
為替介入という直接的に市場の需給に手を突っ込む政策を含めて、短期的には通貨の需給で為替は決まります。したがって、円高の進行とは、外貨に比較して相対的に円の供給、すなわち、我が国のマネーサプライが過小であると考えるべきです。特に、少し前まで当座預金残高と為替には一定の相関が見られた時期があります。今年年央からこの関係は崩れましたが、注目すべきは日銀が臨時のの政策委員会・金融政策決定会合を開催した8月30日の少し前から、急激に当座預金残高が減少を見せていることです。この当座預金残高の減少ともに、円ドル為替がジワジワと円高に進んでいるのが見て取れます。

当座預金残高と為替レート

いずれにせよ、無限に為替介入を続けるわけには行きませんが、為替に対する政府の姿勢を市場に明らかに示すことが出来たことは確かです。この先、為替介入結果を不胎化するのか、それとも、2003-04年時の為替介入のように非不胎化するのか、がひとつの論点になる可能性を指摘しておきたいと思います。

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2010年9月14日 (火)

ダイナマイト打線がスカ続きの取りこぼしで優勝戦線から脱落か?

  HE
阪  神021000000 3130
横  浜02210100x 681

いよいよ残り20試合を割って、最後のラストスパートにかかって来ましたが、あれだけチャンスがありながらダイナマイト打線がエンストを起こし、東京ヤクルト戦に続いて横浜戦でも取りこぼしです。何度も繰り返している通り、投手陣はコンスタントに5-6点取られるんですから、それ以上に点を取らなければ負けるのは当然です。その意味で、阪神にとってペナントレースはもはやギャンブルになっているんですが、なかなかいい目が出ないようです。
東京ヤクルトや横浜にポロポロと負けていては、ライバルの中日や巨人が下位球団を相手に着実に勝ち星を上げているんですから、優勝戦線から脱落する一歩手前まで来ました。ナゴヤドームで中日に3連勝して、なおかつ、甲子園で巨人に3タテを食らわすとかしなければ、かなり苦しくなったと言わざるを得ません。

明日は、
がんばれタイガース!

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子ども手当のマイクロシミュレーション分析と子育ての外部性

昨日、内閣府の経済社会総合研究所から一橋大学の高山教授と三菱総研の白石研究員の共著になる子ども手当に関するマイクロシミュレーション結果を取り上げたディスカッションペーパーが発表され、全国紙各紙で注目されています。一例として、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

子ども手当満額なら 所得増世帯38%、負担増は19%
内閣府が試算

内閣府の経済社会総合研究所は13日、子ども手当や高校無償化が家計に与える影響について試算結果を発表した。昨夏の衆院選で民主党が掲げたマニフェスト(政権公約)通りに1人当たり月額2万6千円の手当を満額支給し、所得税の扶養控除などを廃止するとの前提では、日本の5千万強の世帯のうち38%で所得が増える半面、負担が純増する世帯も19%にのぼるという。
一橋大の高山憲之教授と三菱総合研究所の白石浩介主席研究員が、厚生労働省の「国民生活基礎調査」の各世帯ごとのデータをもとに計算した。
子ども手当や高校無償化の対象となる高校卒業前の子どもがいる世帯は、ほぼ例外なく所得が純増になる。ただ各種控除の廃止でも必要財源はまかなえず、子ども手当を満額支給するなら年間で約4兆円の財源不足が生じるという。
民主党マニフェストでは所得税の扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除の3つを廃止する方針。これらを考慮しても、子どもが1人いる世帯は平均で年18万円、2人いる世帯は年41万円、3人以上なら65万円、所得が純増する。一方で、所得が純減する世帯は子どもがいない世帯を中心に19%で、所得が変化しない世帯は43%という。
仮に児童手当のような所得制限を設けると、不足財源は7800億円圧縮できるという。

実は、高山教授らのマイクロシミュレーション結果はかなり前から出ていて、私も長崎大学の紀要に書いたペーパーでも引用したことがあります。引用した表は、オリジナルをかなり要約して、マニフェストの半額の子ども手当に、高校実質無償化を含めて、いくつかの他の施策を前提として、以下のような表になります。一番左の列の世帯区分は世帯主の年齢により分けています。

世帯
区分
(年齢)
世帯
構成
(%)
所得の純増減
世帯割合 (%)純増減
(平均年額、千円)
合計 - 0 + 合計 - +
-245.210039442▲2063
25-3413.510019542719▲2587
35-4415.510018295366▲37136
45-5416.410024364053▲50165
55-6420.910049419▲13▲47104
65-28.61008415123▲2449

高山教授らのマイクロシミュレーションの主たる前提は以下の5点です。

  1. 子ども手当は1人月額1万3000円が中学卒業まで所得制限なしで支給される。
  2. 高校の授業料は実質無料化される。
  3. 児童手当は廃止される。
  4. 所得税における扶養控除・配偶者控除・配偶者特別控除の3控除も廃止される。
  5. 老年者控除(50万円)を復活させ、公的年金等控除の最低額も20万円引き上げる。

この子ども手当半額のシミュレーション結果は以下のペーパーで共通です。

最後の内閣府のディスカションペーパーでは上の表の子ども手当半額ケースだけでなく、全額ケースと所得制限ケース、さらに、消費税1%引き上げケースの4ケースのマイクロシミュレーション結果が示されています。なお、引用した日経新聞の記事にもある通り、厚生労働省の「国民生活基礎調査」の2007年調査の個票をもとにしたモデルによるシミュレーション結果です。これらのペーパーにおける高山教授らの結論は一貫して同じであり、子ども手当とは、子供のいる世帯から子供のいない世帯に対して、子育てに要するコストの一部を転嫁するという負担調整の性格が強い、というものです。明示的には、上の3種のペーパーのうち、例えば、内閣府のディスカッションペーパーでは p.10 に見られます。
私が長崎大学の紀要に書いた子ども手当に関するペーパーの結論は、子育てに対する補助金の必要性を強調しています。すなわち、私的・公的な何らかのコストをかけて子供を育てた結果、その子供が就労する段階になると、徴収される税や社会保障負担は、引退世代が子育てをしたかどうかにかかわりなく便益が及ぶ、という意味で子育てには外部性が認められます。別の言い方をすれば、勤労期に子育てをしたか、しないかに関わりなく、引退期になれば誰かが子育てをしてくれた恩恵が広く及ぶわけです。この外部性を内部化するためには、引退世代の人々が子育てしたかどうかで年金額に差をつけることが一案です。もうひとつは子育てに対して補助金を出すことです。もっとも、コースの定理が成り立たないことが前提ですが、取引すべき当事者がやや不明なので、取引費用はゼロではなくてかなり大きく、しかも、資産効果がありそうですので、コースの定理は成り立たないと考えるのが自然です。なお、子育ての外部性に着目し、解析的に補助金の結論を導いている論文には、私の知る限りで以下のものがあります。

子育ての外部性を評価する一方で、もしも年金額で差別することが困難なのであれば、子育てに対して何らかの補助金を提供することは経済合理性があります。特に、現在の我が国のように引退世代に社会保障給付が大きく偏っている現状では、潜在的に子供を持つ可能性があるという意味での勤労世代、さらに直接的には、子供のいる勤労世代に対する何らかの所得移転は、世代間格差の是正も含めて、経済学的に大いに合理的であると私は考えています。子ども手当はこの一環をなすものであると受け止めています。

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お誕生日おめでとう!

おはようございます。
本日9月14日は私の誕生日です。ですから、8月末生まれの下の子とともに、私はおとめ座だったりします。
とってもめでたいので、いつものことながら、くす玉のフラッシュを置いておきます。もしも、めでたいとお考えでしたら、くす玉をクリックして割って下さい。めでたさが大いに実感できることと思います。しかしながら、私くらいの年齢に達すると、必ずしも誕生日がめでたいというわけでもなく、一休宗純和尚の『狂雲集』に収められた狂歌の心境が分からなくもありません。そういった向きは、くす玉を割らずにそっとしておいて下さい。

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2010年9月13日 (月)

経済協力開発機構 (OECD) の「経済見通し中間見直し」を概観する

簡単なグラフだけ先週金曜日のブログで引用しましたが、先週、経済協力開発機構 (OECD) が「経済見通し中間見直し」を発表し、今年後半からの先進国の成長率を軒並み引き下げています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

OECD、主要国の成長率を下方修正
経済協力開発機構(OECD)は9日、主要国の暫定的な経済見通しを発表した。日本の実質国内総生産(GDP)成長率については、7-9月期が前期比年率0.6%、10-12月期が0.7%と予測。5月時点の見通しをそれぞれ1.1ポイント、1.2ポイント引き下げた。世界経済の回復ペースが鈍り、輸出主導の持ち直しを続ける日本経済の成長率も低下するとみている。
春と秋に発表する経済見通しの中間に実施する暫定評価の数字を発表した。「世界経済の回復ペースは鈍っている」と指摘する一方で、先行きの不確実性は極めて高いとの認識を示した。
世界経済の回復が一時的な鈍化にとどまる場合には、財政の健全化を進めながら、金融政策の「出口戦略」を数カ月遅らせるべきだと強調。景気の低迷が長期化する場合には、追加金融緩和の実施や財政再建の延期が必要になるかもしれないとの見方を示した。
米国の実質成長率は7-9月期が2.0%、10-12月期が1.2%で、それぞれ0.8ポイント、1.5ポイント下方修正した。過剰な債務を抱えた家計部門の調整が続くとみている。ドイツは7-9月期が0.7%、10-12月期が1.1%で、それぞれ1.3ポイント、1.1ポイント下方修正した。欧州では信用不安が深刻化する可能性があるとの見方を示した。

国際機関の情報を詳しく取り上げるのはこのブログのひとつの特徴とはいうものの、やや旧聞に属する話題ですので、簡単に、記者発表資料から図表だけを引用する手抜きのエントリーにしておきたいと思います。まず、G7諸国のGDP成長率見通しは以下の通りです。引用した記事にもある通り、今年後半の成長率はほぼ軒並み下方改定となっており、特に、日本については2010年7-9月期も10-12月期も年率で1%ポイント以上の改定となっています。記者発表資料の p.4 GDP growth in the G7 economies から引用しています。なお、日本の4-6月期の成長率は1次QEの値となっています。

 09Q309Q410Q110Q210Q310Q4
United States1.65.03.71.62.0 (+/-1.7)1.2 (+/-1.5)
Japan-1.04.14.40.40.6 (+/-2.5)0.7 (+/-2.7)
Euro 32.11.11.55.10.4 (+/-1.5)0.6 (+/-1.6)
Germany3.01.21.99.00.7 (+/-1.9)1.1 (+/-1.8)
France1.12.30.72.50.7 (+/-1.0)0.3 (+/-1.2)
Italy1.7-0.31.61.5-0.3 (+/-1.5)0.1 (+/-1.6)
UK-1.01.71.34.92.7 (+/-1.2)1.5 (+/-1.3)
Canada0.94.95.82.02.2 (+/-2.2)2.3 (+/-2.3)
G71.13.63.22.51.4 (+/-1.7)1.0 (+/-1.8)

特に、雇用については最悪期を脱したものの、回復が遅れていると指摘しています。下のグラフは記者発表資料の p.11 Unemployment rates appear to have peaked, albeit at high levels から引用しています。

Unemployment rates appear to have peaked, albeit at high levels

今夜の手抜きのエントリーの最後のグラフは政策動向です。金融政策と財政政策に関して、3枚グラフを引用します。一番上のパネルが中央銀行のバランスシート、真ん中のパネルが2007年と2009年の政府バランス、一番下のパネルがこれも2007年と2009年の政府債務残高です。なお、一番上のパネルは2007年中を省略し、財政に関する真ん中と一番下のパネルはG5諸国のみを取っています。それぞれ、記者発表資料の p.22 Central bank balance sheets remain enlarged と p.23. Public finances weakened significantly during the recession から引用しています。

Central bank balance sheets remain enlarged, etc.

手抜きエントリーの最後に、上の3枚のグラフを見れば、日本では中央銀行が金融政策で対応してくれないので、財政政策で対応した結果、政府債務が積み上がっている、と読み取れなくもないものの、自分で言うのもナンですが、この見方は真実からかなり遠くて、ややリフレ派に偏った受止めのような気がしないでもありません。

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2010年9月12日 (日)

秋山投手の投打の活躍で投手交代なしの試合をものにする!

  HE
ヤクルト000000000 041
阪  神20000021x 5121

いや、お見事でした!
高卒ルーキー秋山投手の投打にわたる活躍で東京ヤクルトに快勝です。2週間前に私が神宮球場の参戦した時に初勝利を上げた秋山投手のおかげで、優勝争いに踏みとどまることが出来た1勝でした。私にも、いい日曜日になりました。ベンチにも、投手交代をしなくてよかったので一安心ではないでしょうか。次の機会からは投手交代を間違えないように、私のようなシロートから妙な批判を受けないようにお願いしたいもんです。

横浜でも、
がんばれタイガース!

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ル=グウィン女史の『空飛び猫』(講談社) シリーズ他を読む

ル=グウィン『空飛び猫』(講談社)

何となく、アーシュラ K. ル=グウィン女史の本を何冊か読みました。上の画像の『空飛び猫』シリーズ4冊と『風の十二方位』(早川書房) に収められた短編「オメラスから歩み去る人々」です。『空飛び猫』シリーズの翻訳者は村上春樹さんです。それから、「オメラスから歩み去る人々」はヒューゴー賞受賞作品であり、功利主義を批判するために、昨日の読書感想文で取り上げたサンデル教授の『これからの「正義」の話をしよう』でも引用されています。まず、『空飛び猫』シリーズの4話は以下の通りです。リンクは講談社のサイトに張ってあります。

第1話の表紙から分かるように、4匹の猫セルマ、ジェームズ、ロジャー、ハリエットには何とがあります。この4匹の兄妹の母親ジェーンにはありません。ジェーンの解釈では翼のある4匹は生まれ育った都会から遠くに行くためのものです。この言葉に従って、4匹の空飛び猫は田舎の農場にたどり着きます。ジェーンおかあさんから「もしもお前が良い『手』をみつけたら、もう自分で餌を探す必要はなくなるんだよ。でもそれがいけない『手』だったら、それは犬よりもたちが悪い」と教えられていたんですが、ハンクとスーザンのブラウン兄妹に飼われることになり、農場の納屋での生活が始まります。ここまでが第1話です。でも、第2話では、4匹の兄妹のうちジェームズとハリエットがおかあさんを訪ねて生まれ育った都会に戻ります。帰巣本能が大いに役立ちます。ジェームズとハリエットはスラムが解体される際、廃墟の中に翼をもった黒い子猫を見つけます。ジェーンおかあさんを見つけ出して、この黒い子猫が自分達の妹であることを知り、ジェームズとハリエットは背中に乗せてセルマとロジャー、そしてブラウン兄妹が世話してくれる農場に戻ります。黒い子猫はおかあさんと同じジェーンという名前です。第3話では、飼い猫のアレクサンダーが冒険に出かけ、木から下りられなくなったところをジェーンに助けられます。アレクサンダーは純真無垢で素晴らしい子猫です。翼はありませんが、ジェーンと仲良くなり、しゃべれなかったジェーンの心を開かせてしゃべれるようにします。アレクサンダーは納屋で暮らす翼のある4匹の兄妹猫と違って、母屋で飼われることになります。第4話ではジェーンが都会のおかあさんの元に戻ろうとします。でも、ポッパに飼われるようになり、テレビに出たりして自由のない暮らしに不満を持ち逃げ出します。結局、逃げ出した黒猫のジェーンはジェーンおかあさんといっしょにサラ・ウルフおばあさんに飼われることになり、丘の上牧場の4匹とジェーンがお互いを訪ね合う暮らしに落ち着きます。
「オメラスから歩み去る人々」のあらすじは以下の通りです。オメラスではあらゆる人々が幸福に暮らしていますが、それはたった1人の子供の犠牲によって成り立っています。そういう契約なのです。オメラスの子供達は8-12歳の適当な時期が来るとその事実を伝えられます。多くの子供はそれを受け入れますが、オメラスから歩み去る子供や大人が後を絶ちません。

単にル=グウィン女史の作品というだけで、いっしょに取り上げるべきかどうかは疑問が残りますし、感想文でも何でもなく、あらすじを書き連ねただけなんですが、週末のひと時を図書館借りた借りた本を読んで、これまた図書館で借りたCDを聞きながら、のんびりと過ごしています。もうすぐ試合の始まる阪神が勝てば最高なんですが、今日の試合はどうなりますことやら。先発投手の顔ぶれからすると、阪神が不利かもしれませんが、ダイナマイト打線に期待します。

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2010年9月11日 (土)

勝ちパターンの継投を潰し切り、打ち勝つしかなくなったタイガース!

  HE
ヤクルト000000030 342
阪  神000020000 250

今日の継投も失敗でした。昨日の失敗の反動で、今日のメッセンジャー投手の代え時が遅れるんではないかと私は心配していたんですが、私の心配以上にメッセンジャー投手の快投が上回り、7回まで無失点で7回ウラに代打が送られて8回から交代という理想的な先発の役割を果たしてくれました。しかし、ここで真弓監督の選択は藤川投手の2イニング登板でした。NHKのアナウンサーに指摘されるまでもなく、今週3回目の2イニング登板です。もともとサステイナビリティのないスクランブル登板だったものを首脳陣がカン違いした投手起用を続けてしまい、真弓監督が自ら勝ちパターンを潰してしまったと私は考えています。
この先の投手リレーは各選手の調子を見極めるとともに、相手との相性なども考慮し、細かく刻んだリレーを臨機応変に考えるしかありません。中日だって岩瀬投手の投入を遅らせるように細かく刻んでいるにもかかわらず、阪神だけがバッティングもピッチングも大雑把に適当な選手起用をしているんですから、こんなことを続けていては優勝戦線から脱落しかねません。
結局、投手陣は先発も中継ぎも抑えも、すべてに信頼を置けなくなったわけですから、阪神が勝つパターンはダイナマイト打線で大量点を取るしかありません。今日のように、5安打で相手エラーによる2得点では勝てるハズもありません。当たるも当たらないもダイナマイト打線次第です。阪神にとってペナントレースはギャンブルになりました。

明日は、
がんばれタイガース!

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サンデル教授の『これからの「正義」の話をしよう』(早川書房)を読む

『これからの「正義」の話をしよう』(早川書房)

とっても遅ればせながら、ハーバード大学サンデル教授の『これからの「正義」の話をしよう』(早川書房)を読みました。4月から6月にかけてNHK教育テレビで放送された「ハーバード白熱教室 in Japan」も有名になりました。まず、ハヤカワ・オンラインのサイトからあらすじを引用すると以下の通りです。なお、ミステリや何やの小説と違ってネタバレをまったく気にせずに書いています。未読の方は自己責任でご注意ください。

『これからの「正義」の話をしよう』(早川書房)
1人を殺せば5人が助かる状況があったとしたら、あなたはその1人を殺すべきか? 金持ちに高い税金を課し、貧しい人びとに再分配するのは公正なことだろうか? 前の世代が犯した過ちについて、私たちに償いの義務はあるのだろうか――。
つまるところこれらは、「正義」をめぐる哲学の問題なのだ。社会に生きるうえで私たちが直面する、正解のない、にもかかわらず決断をせまられる問題である。
哲学は、机上の空論では断じてない。金融危機、経済格差、テロ、戦後補償といった、現代世界を覆う無数の困難の奥には、つねにこうした哲学・倫理の問題が潜んでいる。この問題に向き合うことなしには、よい社会をつくり、そこで生きることはできない。
アリストテレス、ロック、カント、ベンサム、ミル、ロールズ、そしてノージックといった古今の哲学者たちは、これらにどう取り組んだのだろう。彼らの考えを吟味することで、見えてくるものがきっとあるはずだ。
ハーバード大学史上最多の履修者数を記録しつづける、超人気講義「Justice (正義)」をもとにした全米ベストセラー、待望の邦訳。

一言でいって、ものすごく面白いです。面白いのは、実例が豊富に取り入れられていることと、サンデル教授の結論があいまいでなく明確に提示されていることに起因していると私は受け止めています。決して、難しい哲学的な概念がオンパレードで並び、しかも、結論がハッキリしないという内容ではありません。ただし、読み進むには一定の知的レベルに達していることが要求されそうな気がします。本書に出て来る哲学に関する古典的な名著で私が読んだことのある本は J.S.ミルの『自由論』だけでした。もう少し哲学に関する教養が私にあれば、もっと面白かった可能性があります。
タイトル通り、「正義」 Justice にアプローチする本です。そのアプローチは3通りあり、第1に幸福、すなわち、ベンサム流の功利主義が取り上げられ、第2に自由、すなわち、リバタリアニズムやカントあるいはロールズの哲学にスポットライトが当てられます。第3に美徳、すなわち、アリストテレスの政治哲学が対象となります。サンデル教授は最終の第10章で、第1と第2のアプローチを退け第3のアプローチを取り、「公正な社会は、ただ効用を最大化したり選択の自由を保証したりするだけでは、達成できない。公正な社会を達成するためには、善良な生活の意味をわれわれがともに考え、避けられない不一致を受け入れられる公共の文化をつくりださなくてはいけない。」(p.335) と結論します。
自分自身の考えを展開すると、多くのエコノミストと同様に、私も経済を考える場合は正義よりは功利主義的な効用 utility を重視します。これは本書でいう第1のアプローチそのものです。サンデル教授が効用の最大化と選択の自由の両方を明確に否定していることは、前のパラで示した結論の通りです。ただし、私は自由を考える場合、本書でいうところのコミュニティとの連帯を重視することも確かです。例えば、リバタリアンは自分を完全に所有していると考えがちですが、私は自分自身についても private と public な部分に、言葉はおかしいかもしれませんが、「分割可能」 decomposable だと考えています。もちろん、private な部分は自分が所有しますが、public な部分は自分のアイデンティティが帰属するコミュニティが管理します。場合によっては、地域共同体や国家かもしれませんし、家族かもしれませんし、階級や年代かもしれません。日本のサラリーマンの場合は勤務する職場であることもあり得ます。ですから、自分自身を全的に所有していると考え、その観点からのカギカッコ付きの「自由」を主張するリバタリアンには違和感を覚えます。もちろん、public な部分が余りに大きい全体主義も同様です。public な部分とは、人口に膾炙した表現では「公共の福祉」に親和性を持った表現であり、J.S.ミル『自由論』の第4章でいう「社会が管理する領域」というのと似通った考え方だと受け止めています。その上で、最初のエコノミスト的な功利主義に立ち帰ると、あくまで効用の最大化が経済を考える際の基本になりますが、最大の困難は、我が国経済政策論の泰斗である熊谷教授のエッセイでも示されている通り、社会的な効用関数は定義されず、推移率がループするということです。単に何らかの規範 norm を数学的に導入するだけでなく、サンデル教授的な「公共の文化」を含める必要性が示唆されている可能性は否定できません。現時点では残念ながら、広範なエコノミストの間で「美徳」や「善」に関する合意は形成されていません。しかし、バブルの発生と崩壊を通じて、何らかの進むべき方向が少しずつ見えて来つつあるような気がしないでもありません。でも、私くらいの知的レベルではよく分からないことも確かです。

繰返しになりますが、とっても面白い本でした。そして、読む側の知的レベルが高いほど面白さが増すタイプの本であると見受けました。ハーバード大学で多くの学生を集めたのも理解できる気がします。文句なしの5ツ星です。知的レベルの高さに自信がある向きだけでなく、多くの方が手に取って読むようオススメします。

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2010年9月10日 (金)

7回表の意味不明の投手交代で勝ち試合を逃す!

  HE
ヤクルト001000321 7140
阪  神110000011 4111

7回表の投手交代がよく理解出来ませんでした。どうして、中6日で休養十分の先発の久保投手から福原投手にスイッチしたんでしょうか。確かに、ここ何試合か福原投手の球には威力があり、勝ちパターンの試合で投げさせてみるのは、それ自体としては結構と思わないでもなかったんですが、ホントに相手との相性とかピッチャーの調子の見極めが出来ていたんでしょうか。唯一考え得る理由は、久保投手をまたしても中4日くらいで間隔を詰めて使いたいという理由なんですが、来週半ばは横浜戦ですし、そこまで久保投手に無理をさせる必要もないと私は受け止めていました。まったくです。
でも、従来からの私の主張の通り、誰がどう投げても、誰をどうつないでも、阪神投手陣は平均的に1試合5-6点は取られます。得点が4点にとどまったことが敗因です。今さら、緻密な野球をしっかりやろうとしてもムリです。いい加減で大味な試合しか出来ないことは昨夜の西村投手の外野守備で実証済みです。ですから、ドカンドカンとダイナマイト打線で打ち勝つしかありません。得点が入らなければ負け、単にそれだけです。それに加えて、疑問の残る投手交代で首位を中日に明け渡した試合でした。

明日こそ、
がんばれタイガース!

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2010年4-6月期GDP2次QEから年内景気を考える

本日、内閣府から今年2010年4-6月期GDP速報の改定値、エコノミストの業界で2次QEと呼ばれる経済指標が公表されました。季節調整済みGDPの前期比成長率が+0.4%、年率で+1.5%と、市場の事前コンセンサスに見事にミートしました。需要項目ごとの1次QEからの改定方向についても、ほぼ月曜日のエントリーで注目した通りでした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4-6月の実質GDP、年率1.5%成長に上方修正
内閣府が10日発表した4-6月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.4%増となった。年率換算では1.5%増。速報段階の年率0.4%増から大幅に上方修正された。設備投資の増加幅が拡大したほか、民間企業の在庫投資などもマイナス幅が縮んだ。大幅な上昇修正ではあるが、GDPの伸びは1-3月期の5.0%から縮小。円高進行や輸出減速、政策効果のはく落などで先行き不透明感も根強い。
消費者の生活実感に近い名目GDPは前期比0.6%減(速報値0.9%減)、年率換算で2.5%減(同3.7%減)だった。
項目別にみると、設備投資は実質で前期比1.5%増(速報値0.5%増)と、1.0ポイントの上方修正となった。産業機械や掘削機械が伸びた。リーマン・ショック後、設備投資の回復は遅れていたが、ようやく底打ちの動きがでてきた。
成長率に対する在庫投資の寄与度はマイナス0.1ポイントと、速報段階のマイナス0.2ポイントから上方修正された。公共投資も2.7%減と、速報値(3.4%減)から上向きに見直された。
改定値と速報値で大きな差が出ないよう、内閣府は4-6月期GDPから、速報段階での設備投資の推計方法を見直している。内閣府の津村啓介政務官は「従来の方法に比べ、設備投資の修正幅が0.2ポイント程度縮小した」としている。

次に、いつものGDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者所得を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数が必要な向きは、このブログから引用するのではなく、自己責任で最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2009/
4-6
2009/
7-9
2009/
10-12
2010/
1-3
2010/4-6
1次QE2次QE
国内総生産(GDP)+2.3▲0.1+0.9+1.2+0.1+0.4
民間消費+1.3+0.6+0.7+0.5+0.0+0.0
民間住宅▲9.6▲7.2▲2.9+0.3▲1.3▲1.3
民間設備▲5.2▲1.7+1.7+0.8+0.5+1.5
民間在庫 *+0.1▲0.2▲0.4+0.1▲0.2▲0.1
公的需要+1.7▲0.2+0.4+0.4▲0.5▲0.3
内需寄与度 *+0.3▲0.3+0.2+0.7▲0.2+0.0
外需寄与度 *+2.1+0.2+0.6+0.6+0.3+0.3
輸出+10.4+8.5+5.7+7.0+5.9+5.9
輸入▲4.9+6.3+1.5+3.0+4.3+4.1
国内総所得(GDI)+2.0▲0.5+0.7+0.8▲0.4▲0.2
名目GDP+0.4▲0.5+0.2+1.6▲0.9▲0.6
雇用者報酬▲0.9+0.8▲0.0+2.0+0.3+0.6
GDPデフレータ▲0.6▲0.7▲2.8▲2.8▲1.8▲1.7
内需デフレータ▲2.7▲2.9▲2.7▲1.6▲0.8▲0.7

さらに、グラフは下の通りです。いずれも前期比成長率・伸び率で、青い折れ線グラフは実質成長率、棒グラフは実質GDP成長率を需要コンポーネント別に季節調整済み系列の前期比伸び率で寄与度表示したもので、すべて左軸の単位はパーセントです。棒グラフの需要項目への対応は凡例に示した通りです。

GDP前期比成長率と需要項目別寄与度の推移

1次QEからの改定については、個人消費、住宅投資、輸出がほぼ変わらずで、その他の設備投資、在庫投資、公的需要、輸入がすべて成長率押上げの方向に改定されました。ただし、控除項目である輸入は減少して成長率を押し上げています。市場の事前コンセンサスにミートしたのでサプライズはありませんでした。ということで、先行きに注目が集まっています。このブログでは今週になってから同じことを何度か書いたような気がしますが、しつこく繰り返すと以下の通りです。すなわち、7-9月期まではそこそこの成長が続きます。少なくともプラス成長と私は考えています。個人消費については、昨年より増加したボーナスでサポートされつつ、猛暑・酷暑の効果があり、エコカー減税・補助金の駆込み需要があり、規模は小さいながら、タバコ値上げ直前の買いだめ需要も考えられます。他方、設備投資や輸出にはまだ円高のダメージはほとんど現れません。当然ながら、猛暑・酷暑の消費増加効果と政策変更に伴う駆込み需要はまったくサステイナブルではなく、その後、天候要因や政策効果の剥落に加えて、設備投資や輸出に円高のダメージが徐々に出始めますから、10-12月期に入ると成長率は大きく鈍化すると考えられます。プラス成長でもゼロ近傍、マイナス成長の可能性も十分あり得ます。その意味で、本格的に踊り場に入るのは10-12月期からであると私は予想しています。たぶん、多くのエコノミストもそうなんだろうと想像しています。

GDP projections

そして、忘れてならなのは世界経済がゆっくりと減速に向かう可能性が高いことです。上のグラフは、昨日、経済協力開発機構 (OECD) が発表した最新の経済見通しである Interim Economic Assessment から引用しています。凡例にある通り、赤いドットが今年5月時点での各国の成長率見通しで、青い棒グラフが今回の見通しです。今年後半は大きく下方修正されており、特に、米国が時を追って成長率を低下させる見通しになっているのが見て取れます。

他方、本日、政府は「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」を決定しています。規模的には国費9,150億円程度を投入し、、事業規模9.8兆円程度とされており、実質GDP押上げ効果は0.3%程度、雇用創出・下支え効果は20万人程度(うち新卒者に対する効果は約5万人)と見込んでいます。私は頭が悪いのか、国費と事業規模の間の10倍を超える開きや、事業規模がGDPの2%近いにもかかわらず成長率の押上げ効果が0.3%にとどまるといったあたりが理解しにくいんですが、副題が「円高、デフレへの緊急対応」となっており、私は大いに期待が持てると考えています。

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2010年9月 9日 (木)

よく負けなかった、でも勝ちたかった!

 十一十二 HE
中  日100100000000 2110
阪  神001000001000 2111

9回ウラ土俵際でよく追いつき、負けはしませんでしたが、勝ちに等しい引き分けとまでは評価し難いような気がします。さ来週にナゴヤドームでの最終3連戦が控えているだけに、勝ちたかったところです。その意味では、誠に残念。なお、昨夜のエントリーでは「久保投手の先発」と書きましたが、能見投手が復活しました。シーズン終盤で優勝に必要な戦力です。誠に力強く感じます。

明日は、
がんばれタイガース!

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若年者雇用のもうひとつの阻害要因は教育か?

先週9月3日のエントリーでは若年者雇用の阻害要因のひとつとして何らかの経済合理的でない偏見や既得権が若年者の雇用に不利に作用している可能性を指摘しましたが、その際に「見識がない」の一言で省略した若年者のスキルの問題について、教育費との関係でもう一度考えたいと思います。もっとも、教育と教育費、さらには、教育と職業上のスキルの関係については、引き続き、私には見識がないんですが、取りあえず、若年者雇用を阻害する要因としてスキルの問題があるのであれば、その根本には何らかの意味で教育の問題が横たわっていることは確かでしょうから、その教育を支える教育費の問題について考えることも無意味ではないという気がします。
というのは、一昨日、経済協力開発機構 (OECD) から Education at a Glance 2010: OECD Indicators が発表され、我が国の教育費の公的負担のGDP比が加盟国中最低との結果が明らかになりました。まず、このOECDのリポートに関する朝日新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

日本の教育予算、OECD最下位 GDP比3.4%
経済協力開発機構(OECD)は7日、日本や欧米など32カ国の教育状況をデータで紹介する「図表でみる教育 2010」を発表した。2007年現在の統計で、教育機関に支出される日本の公的支出の割合は、国内総生産(GDP)比で3.4%と、データのある加盟28カ国の中で最下位になった。
統計は、小中学校や高校、大学など全教育機関に対する国や自治体などからの公的な支出の額(奨学金を含む)を国際比較した。
GDP比の公的支出は加盟国平均で5.2%で、最も高かったのはデンマークの7.8%。次いでアイスランドが7.4%、スウェーデンとノルウェーが6.7%だった。ただ、日本では今年度からすべて国費で高校の授業料無償化を始めているが、その予算はまだ調査に反映されていない。
日本では子ども1人あたりの教育支出はOECD平均を上回っているが、家計などの私費負担の割合が高い。日本は教育支出のうち私費負担が33.3%を占め、加盟国平均の17.4%を大きく上回る。特に、小学校入学前の就学前教育(56.2%)と、大学などの高等教育(67.5%)で高い水準になった。
教育と労働の関係を見ると、高卒より大卒の方が就職率が高く失業率が低い傾向にあり、加盟国の平均的な姿に近い。特に女性は高卒と大卒の所得差が大きいという。加盟諸国の統計からは、教育への投資は労働市場に影響し、税収にも還元されることがうかがえるといい、OECDは「どの国も財政が苦しい中で、どのような政策を選択し組みあわせればより効率的で効果が上がるかを考えていくべきだ」と指摘している。

引用した記事にある2種類の各国比較をグラフにすると以下の通りです。まず、教育に対する公的支出のGDP比をプロットしています。2007年の統計です。引用した記事にもある通り、最大はデンマークの7.8%、OECD平均が5.2%、日本はわずかに3.4%で比較できるOECD加盟国の中で最低となっています。データの出典は Education at a Glance 2010: OECD Indicators の p.243 Table Table B4.1. Total public expenditure on education (1995, 2000, 2007) です。

Public expenditure on education as a percentage of GDP 2007

当然の帰結として、日本では教育費に占める公的資金の割合が低いわけで、わずか66.7%に過ぎず、残りの33.3%が家計からの私的な負担となっています。公的負担割合が最も高いのがフィンランドの97.5%で、OECD加盟国平均は82.6%となっています。以下のグラフの通りです。データの出典は Education at a Glance 2010: OECD Indicators の p.231 Table Table B3.1. Relative proportions of public and private expenditure on educational institutions, for all levels of education (2000, 2007) です。

Relative proportions of public and private expenditure on education

もしも、教育に支払われるリソースが教育の質を決定し、そして、教育の質が教育を受けた若年者のスキルに支配的な影響を及ぼすとすれば、という2重の大きな仮定に依存しますが、これらの仮定が成り立つとすれば、若年者雇用に対する教育リソースの不足、特に公的リソースの不足は以下の2点の問題を生じる可能性があります。まず、第1に、若年者のスキルの不足です。教育に先進国並みのリソースをつぎ込んでいませんから、そのリソース不足の教育を受けた若年者のスキルが十分でないのは当然です。第2に、若年者間のスキルの不平等です。平等性の高い公的リソースではなく、家計から支払われるリソースに頼る割合が各国比較で相対的に高いんですから、その家計の支払い能力により若年者間でのスキルの不平等度合いが日本では諸外国に比較して高くなるのは当然です。しかも、家計の支払い能力により教育の質や卒業後のスキルが決定される可能性が高いのであれば、格差や不平等が世襲される恐れが大きいと受け止めるべきです。なお、私はマクロ経済をウォッチするエコノミストとして、従来から、求職する側のスキルは必ずしも重視せず、求人する側と言うべきマクロ経済、すなわち、潜在GDPと比較したGDPギャップをより重視していますが、スキルの果たす役割がゼロであると主張しているわけではありません。総合的に考えて、公的な教育費をケチっていることが、若年者の雇用に何らかの悪影響を及ぼしている可能性は否定できないと考えるべきです。
で、日本ではどのくらい教育に支出すべき公的なリソースが不足しているかといえば、最初のグラフのOECD加盟国平均と比較すると、GDP比で1.5-2.0%ということになります。極めて大雑把に名目GDPを500兆円強とすれば8-10兆円です。ですから、第1に、半額実施で始まった子ども手当の2.3兆円に高校授業料実質無償化の0.4兆円を加えても不十分と考えるべきです。これをカウントしてもまだ5兆円以上不足します。第2に、私のような世代間格差是正論者からすれば、この教育への財源は高齢者向けの支出から調達することが効率的です。そこで、同じようにOECD加盟国で横断的に社会保障を分析したリポートを調べると、以下のようなグラフがありました。出典は Adema, Willem and Maxime Ladaique (2009) "How Expensive is the Welfare State? Gross and Net Indicators in the OECD Social Expenditure Database (SOCX)," OECD Social, Employment and Migration Working Papers No.92,, Organisation for Economic Co-operation and Development, November 2009 の p.26 にある Chart 4.3: On average OECD countries spend 7% of GDP on pensions and 6% on health services の左半分です。

Cash benefits for Pensions and Income support to working age population

すべて2005年のデータでGDP比です。各国国名の後ろのカッコ内は公的な社会保障給付のGDP比であり、この大きさでソートしてあります。棒グラフは現金給付 Cash benefits であり、そのうちの黒の部分は高齢者向けの年金など Pensions (old age and survivors)、グレーは勤労世代向けの所得保障 Income support to the working age population となっています。前者はOECD30カ国平均でGDP比7.2%、後者は4.4%なんですが、日本ではこのバランスが著しく高齢者向けの年金などに偏り、前者が8.7%に達している一方で、勤労世代向け所得保障は1.5%に過ぎません。この数字は社会保障における現金給付だけですから、医療や介護などの現物給付は含んでおらず、また、我が国では他国に比較して高齢者の人口比率が高い上に所得格差が大きいことも考慮する必要がありますから、一定の注意をもって慎重に検討する必要がありますが、シロート目で単純に考えれば、日本では高齢者向けの年金などがOECD平均に比べてGDP比で1.0-1.5%くらい手厚い可能性があり、この年金を削減して教育費に回せば両方でOECD加盟国平均に近づくような気がします。繰返しになりますが、シロート計算でどこか間違っている可能性もありますし、何といっても、9月3日のエントリーでも取り上げた「シルバー・デモクラシー」の観点から実現可能性が不透明ではありますが、高齢者向けの社会保障を聖域なく切り込めば、教育費の先進国並み増額のための財源捻出は不可能ではないと私は考えています。

高齢者向けの年金も重要ですが、将来的な日本の生産性の向上や経済成長に寄与するとの観点からは、教育につぎ込むリソースを増加させ、若年者をスキルアップさせることも必要です。World Economic Forum の The Global Competitiveness Report 2010-2011 によれば、日本の国際競争力は世界第6位と昨年より上昇しましたが、若年者のスキルアップのための教育の財源を考えるに際して、我が国はすでに多額の財政赤字や国債残高を抱えているわけですから、「予算の1割削減」や行政のムダの排除のための「事業仕分け」も大いに活用しつつ、これらに加えて、予算の配分について世代間の公平を考慮すべき段階に差しかかっている可能性を指摘したいと思います。

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2010年9月 8日 (水)

ダイナマイト打線が手も足も出ず大敗!

  HE
中  日500200300 10140
阪  神010000000 192

タイガース投手陣はドラゴンズ打線に節目節目で打ち込まれる一方で、中日先発の山井投手にブラゼル内野手のソロ1発のみで、さすがのダイナマイト打線が手も足も出ずに大敗でした。こんな試合もあります。阪神が勝つにはダイナマイト打線の爆発しかないんですから、その打線が1点だけでは勝てるハズもありません。単にそれだけです。監督の采配も何もあったものではありません。
明日は中4日を2回続けた久保投手の先発でしょう。これは極めてギャンブルです。すなわち、もしも久保投手で明日の試合を落とすと、先発投手のローテから考えて、そのまま週末の東京ヤクルト戦までズルズルと負けを続ける可能性があります。久保投手も一時の信頼性はありませんから、カギになるのは打線であり、ダイナマイト打線が爆発することを祈りましょう。

明日の甲子園では、
がんばれタイガース!

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回復示す機械受注、その他の経済指標

本日、各種経済指標が発表されました。まず、内閣府から7月の機械受注統計と8月の景気ウォッチャー調査、財務省から7月の経常収支、日銀から8月のマネーストック統計がそれぞれ発表されています。機械受注は変動の激しい電力・船舶を除く民需の季節調整済み系列で見て前月比+8.8%増と、市場の事前コンセンサスを大きく上回りました。景気ウオッチャーは久し振りに大きく落ち、経常収支はリーマン証券破綻前の水準に戻っています。マネーストックはM2、M3とも増加していますが、資金需要がなく銀行貸出は9か月連続で前年同月比マイナスを記録しています。長くなりますが、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

機械受注8.8%の大幅増 7月、円高で先行きは不透明
内閣府が8日発表した7月の機械受注統計は、民間設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)が前月に比べて8.8%増の7663億円になった。プラスは2カ月連続で、市場の事前予測を大幅に上回る増加率となった。内閣府は前月に続き「持ち直しの動きがみられる」との判断を示した。ただ、15年ぶりの水準まで上昇した円高の影響などで先行きは不透明だ。
機械受注統計は工場の生産設備などの受注額をまとめたもので、3カ月程度先の民間設備投資の動向を示す。日経グループのQUICKがまとめたエコノミストの事前見通し中央値(前月比1.9%増)を大幅に上回った。変動が大きい携帯電話の受注額を除いたベースでも6.4%増の7103億円と堅調だった。
ただ、会見で内閣府の津村啓介政務官は「円高リスクが設備投資に与える悪影響に危機感を持っている」と先行きに懸念を示した。政策対応として、10日に閣議決定する経済対策に盛り込んだ「国内投資促進プログラム」を活用し、投資の国外流出を防ぎたいとの考えを述べた。
業種別に受注額を見ると、製造業は前月比10.1%増と2カ月連続でプラス。一般機械から金属加工につかう工作機械の引き合いがあったほか、化学工業から合成樹脂の加工機械などが増えた。
非製造業からの受注額は船舶・電力を含んだベースで前月比4.9%増と2カ月連続で伸びた。金融・保険業や卸売り・小売業からコンピュータ類の引き合いが増えた。
内閣府の調査では7-9月期の受注見通しは船舶・電力を除くベースで前期比0.8%増だった。7月時点で大きく伸びたことから、仮に8-9月がそれぞれ前月比ゼロ%の伸びでも、7-9月期は前期比6.5%増を確保するという。
経常黒字、7月26.1%増 3カ月ぶりプラス
財務省が8日発表した7月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆6759億円の黒字だった。経常黒字は18カ月連続で黒字幅は前年同月に比べ26.1%増加した。3カ月ぶりのプラスとなる。所得収支の黒字幅は縮小したが、アジア向けを中心に自動車などの輸出が好調で貿易黒字が大きく拡大した。ただ、8月以降の円高の進行で、輸出が鈍るとの指摘もある。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は9161億円の黒字で、前年同月に比べ2.1倍の規模となった。輸出額は24.7%増の5兆6633億円。中国や米国向けの自動車や鉄鋼、半導体の輸出が寄与した。
輸入は4兆7472億円で15.7%増えた。主にアジア地域からの輸入が増加しており、商品別では液化天然ガスや鉄鉱石、非鉄金属が増えている。
投資による稼ぎを示す所得収支は1兆218億円で、黒字幅が17.7%縮小した。世界的な金利の低下で海外債券の利子収入が減ったほか、海外子会社の内部留保が目減りしていることが響いている。所得収支の黒字幅の縮小は13カ月連続となる。
運輸や旅行などによるサービス収支は1778億円の赤字で、赤字幅は1068億円縮小した。貿易量の拡大で仲介貿易による収入が増えたほか、海上輸送の赤字幅が縮小した。
8月街角景気、ドバイショック以来の大幅悪化 判断を下方修正
内閣府が8日発表した8月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数は前月比4.7ポイント低下の45.1と2カ月ぶりに悪化した。ドバイショックのあった2009年11月(7.0ポイント低下)以来の下げ幅で、過去4番目の大幅悪化。
猛暑で夏物商品の販売が好調だった半面、秋物商品の売れ行き落ち込みや客足の減少が響いた。円高による企業採算悪化を懸念する声もあり、指数を構成する家計、企業、雇用のすべての分野が悪化した。
2-3カ月先の先行き判断指数は6.6ポイント低下の40.0と、4カ月連続で悪化。エコカー補助金の終了や、株安や円高への懸念を反映した。内閣府は判断を「景気は引き続き厳しいなかで、持ち直しの動きがこのところ緩やかになっている」と9カ月ぶりに下方修正した。
記者会見した内閣府の津村啓介政務官は「円高と猛暑が大きなマイナス要素となって、非常に厳しい結果が出た。少しマインドが大きくふれている面があるのではないか」と語った。
調査は景気に敏感な小売業関係者など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価してもらい、指数化する。今回の調査期間は8月25日から月末まで。
銀行貸出残高、8月2.0%減 9カ月連続の減少
日銀が8日発表した8月の「貸出・資金吸収動向」によると、全国銀行の貸出残高(月中平均)は前年同月比2.0%減の394兆2030億円で、9カ月連続の減少となった。企業の運転資金や設備投資などに絡む資金需要が引き続き弱めで推移している。
内訳をみると、都銀が3.9%減の200兆7551億円と10カ月連続で減った。地方銀行と第二地方銀行の合計は3カ月連続で増加し193兆4479億円。8月末のコマーシャルペーパー(CP)引受残高は14.0%減の10兆617億円だった。
実質預金(手形や小切手を除き、譲渡性預金を含む)は2.7%増の544兆3243億円だった。

まず、機械受注統計のいつものグラフは以下の通りです。青い折れ線グラフが電力・船舶を除くコア機械受注、赤がその後方6カ月移動平均、緑がコア機械受注からさらに携帯電話を除くコアコア機械受注の推移です。いずれも季節調整済みの系列で、単位は兆円となっています。影を付けた部分は景気後退期です。昨年暮れから今年年初くらいに底を打った後、いきなり減速局面入りしていたように見ていましたが、久々にドカンと増加しました。しかし、先月時点で発表された7-9月の見通しはコア機械受注で前期比+0.8%増でしたから、8月か9月には反動減となる可能性が大いにあります。もちろん、最大の懸念材料は政府・日銀の対応策をものともせずに進行している円高です。円高に加えて、一向に改善されないデフレや内外景気の減速など、内外のマクロ経済要因は決して企業活動にポジティブではないんですが、政府の経済対策による効果を含めて、この先、設備や雇用の動向がどうなるのか、大いに懸念しています。

コア機械受注統計の推移

次に、経常収支の結果は以下のグラフの通りです。青の折れ線が季節調整済みの経常収支です。棒グラフがその内訳になっていて、上から順に、赤が所得収支、黒が貿易収支、緑がサービス収支、黄色が移転収支です。2008年末から2009年初の Great Recession 時には貿易収支が赤字を記録して経常収支も大きく落ち込みましたが、ほぼ以前の状態に戻りました。引用した記事にあるように輸出は堅調なんですが、ongoing で進行している円高が貿易収支や経常収支に影響を及ぼすのは確実であり、世界経済の停滞とともに、今後、貿易収支や経常収支の黒字幅を縮小させるものと考えられます。

経常収支の推移

次に、景気ウォッチャー調査の結果は下のグラフの通りです。赤い折れ線が現状判断DI、水色が先行き判断DIのそれぞれの推移で、影を付けた部分は景気後退期です。先月の段階から先行き判断DIが下降を始めていて、今月は現状判断DIも大きく低下しました。引用した記事にもある通り、調査期間が円高の進行していた8月下旬だったことも影響があったと考えられますが、「景気判断理由の概要」では、特に先行きに関してはエコカー減税・補助金や家電エコポイントなどの需要先食い政策終了後の反動を懸念する意見がチラホラ見受けられます。国民は政策効果がサステイナブルでないことを見抜いているんだろうと受け止めています。

景気ウォッチャー調査の推移

最後に、銀行貸出とマネーストックM2及びM3の前年同月比の推移は以下のグラフの通りです。銀行貸出は個人の住宅ローン以外は資金需要が乏しく、9か月連続で前年同期を下回っています。M2とM3は伸びているんですが、エコノミストの間では、株式市場の低迷からマネーと定義される安全資産に逃避している可能性を指摘する意見も聞こえて来ます。

銀行貸出とマネーストックM2M3の推移

一度に多くの経済指標が発表されましたので、極めて大雑把な印象だけですが、以上の通り取りまとめておきます。

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2010年9月 7日 (火)

中日相手にやや無謀な采配で首位攻防戦を制す!

  HE
中  日000000000 050
阪  神00001000X 180

今夜は7時半に帰宅し、いきなり、決勝点となる5回ウラの鳥谷遊撃手の犠牲フライの場面に遭遇します。それ以前は、ゼロが並んでいますから投手戦だったんでしょう。ハイライトを見ると、阪神が押し気味に試合を進めていたようです。そして、何と8回表のアタマから藤川投手の起用に遭遇します。その前からブルペンでは藤川投手しかいなかったので、テレビの解説でもそのようなウワサはしていましたが、私は大いに疑問に感じました。
今日の試合を勝つ、目先の中日の攻撃をゼロで抑える、それはそれで重要なんですが、それよりも、指揮官としては、この3連戦を2勝1敗で乗り切る、さらに言うのであれば、さ来週のナゴヤドームでの3連戦を1勝2敗でガマンする、そういったゲームプランを見せて欲しかった気がします。第1戦を取ったのは大きいですが、明日は藤川投手は頼りにならない気がしますから、明日と明後日のどちらか、あるいは両方はダイナマイト打線の打力で勝ち取るしかありません。今日の1勝を先食いしたツケは何らかの形で出るような気がします。でも、プロ野球ですから、ある程度は結果論です。勝てばOKということになります。

明日はダイナマイト打線の爆発を信じて、
がんばれタイガース!

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景気動向指数から景気の先行きを考える

本日、内閣府から7月の景気動向指数が発表されました。ヘッドラインとなるCI一致指数は季節調整済みの系列で前月比+0.5ポイント上昇しましたが、逆に、先行指数は▲0.8ポイント低下しました。DI一致指数は50、DI先行指数は30まで低下しました。足元も少し弱含んでいるような気もしますが、先行きはもっと弱くなっているようです。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

景気一致指数、7月も0.5ポイント上昇 基調判断は据え置き
内閣府が7日発表した7月の景気動向指数(CI、2005年=100、速報)によると、景気の現状を示す一致指数は前月比0.5ポイント上昇の101.8と2カ月連続で上昇した。中小企業売上高(製造業)や有効求人倍率(除学卒)の上昇などが寄与した。
数カ月後の景気の先行きを示す先行指数は0.8ポイント低下の98.2と2カ月ぶりの低下。景気に数カ月遅れる遅行指数は2.2ポイント上昇の85.7と2カ月ぶりに上昇した。
内閣府は基調判断を10カ月連続で「改善を示している」に据え置いた。
記者会見した津村啓介内閣府政務官は「(基調判断に用いる3カ月後方移動平均の)前月差の上昇幅が小さくなってきている。来月以降、一致CIの動向には引き続き注視が必要」との見方を示した。一方で先行指数の低下については「マーケットの先行き懸念を反映した結果。現時点で(景気が)踊り場入りしているという判断はしていない」と説明した。

次にいつものグラフは以下の通りです。上のパネルはCIの一致指数と先行指数、下はDI一致指数です。いずれも季節調整済みの系列で、影を付けた部分は景気後退期です。

景気動向指数の推移

上のグラフから明らかですが、特に上のパネルから、CI一致指数の回復が緩やかになったことと先行指数がマイナスに転じたことを読み取るべきです。下のパネルのDI一致指数は50に達しました。教科書的なDIの見方からすると、上から50のラインを切るのは景気転換点の谷ということになります。CIとDIを見る限り、最近の動向は2004年半ばから2005年にかけての第14循環における景気の踊り場に似通っていると私は受け止めています。もっとも、現時点で日本経済が踊り場入りしているかどうかについて、もう少し詳しく考えると、先月の1次QE発表後には、内閣府の経済財政担当大臣と政務官とで踊り場入りについて必ずしも一致しない見解が聞かれたような報道を見かけましたが、先に引用した日経新聞の記事を見る限り、政府においても「踊り場入りしていない」との見解で一致したようです。昨夜のエントリーでお示ししたように、サステイナブルでないながら、いくつかの要因に引っ張られて、7-9月期までそこそこの成長を記録した後、10-12月期にはマイナス成長かゼロすれすれまで成長率が大幅に低下する、との基本シナリオを私も持っていますので、正確に表現すれば、7-9月期までは踊り場には入っておらず、10-12月期から踊り場に入る予想を持っている、ということになります。
もう少し先行き景気に影響を及ぼす要因を詳しく考えると、第1に、円高が上げられます。今日まで開催されていた日銀金融政策決定会合の景気認識に基づいた政策運営がなされるとすれば、円高がさらに進む可能性を排除できません。なお、日銀については最後のパラでもう一度振り返ります。第2に政策動向も重要です。エコカー減税・補助金はほぼ終了、あるいは、家電エコポイントは5ツ星に限って3月まで延長、との報道を見かけますが、いずれにせよ、従来からのこの2つの政策による景気拡大効果はほぼ終了しつつあり、今週中に策定と報じられている経済対策を見極める必要があると私は考えています。第3に、何といっても金融市場に影響を及ぼすのは海外経済の動向です。米国経済については少し前まで毎日のように悲観論と楽観論の間で揺れ動いていたんですが、何とか、方向性が見えてきたような気がします。しかし、欧州経済も含めて、引き続き、不透明感が強いことは言うまでもありません。

最後に、景気動向指数を少し離れて、日銀の金融政策決定会合について少し補足すると以下の通りです。実は、私は若いころに米国連邦準備制度理事会 (FED) のリサーチ・アシスタントとして研修を受けたことがあり、FED は連邦公開市場委員会 (FOMC) 後に記者会見を開くでもなく、1枚っぺらのステートメントを公表して終わりであるのを目の当たりにしたこともあるせいか、今日まで開催されていた日銀の金融政策決定会合でもステートメントから判断するクセがあり、第2パラで「わが国の景気は、緩やかに回復しつつある。」と高らかに宣言し、第3パラで「先行きの中心的な見通しとしては、かが国経済は、回復傾向を辿るとみられる。」と断定されると、日銀文学に疎い私は大本営発表のような不気味さを感じてしまいました。

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2010年9月 6日 (月)

GDP統計2次QE予想から景気のサステイナビリティを考える

内閣府による今週9月10日の発表を前に、先週の法人企業統計をはじめとして2次QEに必要な経済指標がほぼ出尽くし、各シンクタンクや金融機関などから4-6月期の2次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。今回の2次QEはいきなり「過去の数字」とみなされる可能性があることから、可能な範囲で10-12月期に関する見方を取ったつもりですが、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府 1次QE+0.1%
(+0.4%)
n.a.
みずほ総研+0.3%
(+1.4%)
10-12月期には相当の反動減に至る可能性
ニッセイ基礎研+0.3%
(+1.2%)
4-6月期・GDP2次速報は上方修正を予測
三菱UFJモルガン・スタンレー証券+0.4%
(+1.5%)
設備投資、在庫投資、公共投資の上方修正が見込まれる
第一生命経済研+0.5%
(+1.8%)
7-9月期は持ち直しも、10-12月期はマイナス成長へ
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.5%
(+2.1%)
設備投資は1次速報値の前期比+0.5%から同+1.6%に上方修正
三菱総研+0.4%
(+1.5%)
景気の回復テンポは、足元鈍化

上の表の通り、主たる予測対象である4-6月期GDP統計の他は触れていないリポートもありますが、7-9月期までそこそこの成長を記録した後、10-12月期にはマイナス成長かゼロすれすれまで成長率が大幅に低下する、という私の直観的な見通しに多くのエコノミストは賛同してくれそうな気がします。大雑把に言って、4-6月期は3月末での家電エコポイントの制度変更に伴う駆込み需要の反動と4-5月の天候不順の影響により経済はイマイチでした。その後、7-9月期は猛暑とエコカー減税・補助金の政策効果、さらに、ボーナス増加による所得環境好転により、そこそこの成長を記録すると考えられます。ひょっとしたら、10月1日からのタバコ値上げの駆込み需要もあるかもしれません。しかし、10-12月期からは円高の影響が少しずつ現れるでしょうし、エコカー減税・補助金が9月いっぱいで打ち切られることから、政策効果も縮小します。大きく経済は減速するものと私は考えています。なお、家電エコポイントについては3月末まで延長となれば、最後の需要の盛り上がりは年内ではなく2-3月にズレ込む可能性が高いと私は受け止めています。すなわち、家電エコポイントの延長それ自体としては10-12月期には成長にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

ここでタイトル通り、景気のサステイナビリティの観点から、4点考えたいと思います。第1に、円高の影響です。少なくとも短期的には日本経済にマイナスの影響を及ぼすことは間違いありません。政府・日銀の経済政策が万能であり、自由に円レートを決められるなんて言うつもりは毛頭ありませんが、私にはかなり消極的に見受けられます。少なくとも、通貨価値の安定、すなわち、円レートの安定を目指すのか、円高による短期的な景気へのマイナス効果を相殺しようとするのか、やや不明です。前者は相対的により中長期的な課題であり、後者は為替介入も含めてかなり短期的な政策対応であるハズです。しかし、政策対応が不十分であるとすれば、多くの企業には円高がサステイナブルであると受け止められている可能性があります。中長期的に雇用や設備などの要素需要に影響を及ぼす可能性を排除できません。第2に、政策対応や制度的な要因です。最も重要なのはエコカー減税・補助金と家電エコポイントであることは言うまでもありません。場合によっては、10月1日からのタバコ値上げも含めていいかもしれません。少なくとも、これらの政策効果は景気にサステイナブルではないことを理解すべきです。例えば、下のグラフは今年8月の「月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料」の p.18 「各国の自動車買換え・購入支援策と自動車販売」から引用していますが、米国を例外にして、「0か月」で示された支援策の終了とともに自動車販売が下降線をたどっているのが見て取れます。日本が例外となる根拠はありません。

各国の自動車買換え・購入支援策と自動車販売

第3点は天候要因です。夏場の猛暑はエアコンや飲み物などの消費を大いに喚起することになりましたが、少なくとも、これまた景気に対してサステイナブルではありません。より一般的な地球温暖化の議論はさて置いて、このまま単に気温が高いだけだとすれば、秋冬物衣料の販売にはマイナス要因となりかねないことは明らかです。最後の第4点は所得です。所得に関しては特に恒常所得仮説との関係でサステイナビリティが問われます。一時的な所得であれば消費を増加させるインパクトは小さいと考えるエコノミストが多いのは言うまでもありません。そして、やや私の目に奇異に映るのは、今夏のボーナスへの着目度は高いんですが、政策的な所得増要因、すなわち、4月からの高校実質無償化と子ども手当については、メディアなどでほぼ無視されていることです。私も実際に簡単な計算をしてみましたが、確かに、子ども手当による所得増分は量的に見てボーナスに大きく見劣りすることも事実です。他方、この政策自身がサステイナブルかどうかについても、少し不確実性を感じないでもありません。少なくとも、子ども手当については昨年の総選挙のマニフェストに比較して半額実施で始まっているわけですし、経済界などからの反対論が強いことも確かです。量的なインパクトが小さいうえに、サステイナビリティの面からも疑問があるのであれば、私のように世代間の不公平緩和の観点から強く支持するエコノミストがいる一方で、不公平是正の質的な面を離れて、実際の経済への量的な効果は小さいのかもしれません。

どんどん2次QEから話題がそれて行くんですが、最後に、私が子ども手当を支持しているのは、世代間不公平の緩和とともに、財政リソースの使途を政府が決めるのではなく国民に委ねるという点も重視しているからです。この点からだけ見れば、昨年の定額給付金も子ども手当も同じだったりします。でも、政府が使い道を決める経済対策を今週中に決めると報道されていることも事実です。経済効果は大きいのかもしれませんが、まだ政府の "the best and the brightest" が決めるんですかねえ、という気がします。

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2010年9月 5日 (日)

ダイナマイト打線、今日は当たりの日!

  HE
阪  神005200013 11201
広  島000000500 551

秋山投手の2勝目と藤川投手の150セーブ、おめでとうございます。今日は、ダイナマイト打線が当たった日でした。4番がほとんど打たなかったのに、大したもんです。従来からの私の観察では、投手陣は誰が先発でも今日のようにほぼコンスタントに5-6点取られますので、打線が5点を下回ると、すなわち、昨日や一昨日くらいショボいと負け、今日のように10点以上だと勝ち、5点から10点の間だと投手陣の踏ん張りによります。今日のように10点以上取ってしまえば、先発もリリーフも誰が投げても関係ありません。
でも、相変わらず、慌てふためいてオタオタした投手リレーはやや見苦しいところがあります。7回途中で秋山投手から久保田投手に切り替え、結果論としてやや失敗気味、8回も3点差あってもフォアボールで投手交代はチト早過ぎやしないかと思います。今日の試合は5-10点の間に落ちそうだったので、出来るだけベストの投手起用といえなくもありませんが、連続の中4日で久保投手を消耗させたり、イニングをまたいで藤川投手を投入するのは、一部に、真弓監督が今季限りではないかとの邪推を招きかねません。出来れば、ヤメにして欲しいです。

今週の中日戦は勝ち越すべく、
がんばれタイガース!

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2010年9月 4日 (土)

当たるもダイナマイト打線、当たらぬもダイナマイト打線!

  HE
阪  神210000000 350
広  島12100013x 870

今日のダイナマイト打線は不発に終わりました。当たるもダイナマイト打線、当たらぬもダイナマイト打線です。昨日今日と当たらない方の目が出たようです。5安打では線香花火打線かもしれません。いずれにせよ、この先のシーズンは打ち勝つしかありません。投手陣は平均的に5-6点取られることを覚悟しなければなりません。打てなければ負けです。勝とうと思えば「当たり」の目を出すしかありません。サイコロを振るようなもんです。でも、アインシュタインではないですが、「神はサイコロを振る」んです。明日は勝てるかもしれません。もちろん、負けるかもしれませんが。

明日は当たりの目が出ますように、
がんばれタイガース!

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米国雇用統計のグラフィックス

昨日、米国労働省から8月の米国雇用統計が発表されました。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は季節調整済みの前月差で▲54千人の減少となりましたが、センサスに伴う政府臨時職員の減少が大きく、このうちの民間部門は+67千人増となりました。しかし、失業率は0.1%ポイント上昇して9.6%を記録しています。基本的に、米国雇用の回復は思わしくないんですが、8月の統計については市場の事前コンセンサスを上回った、ということで株価なんかは上げているようです。週末ですので、簡単に取り上げておきます。まず、いつもの New York Times のサイトから記事を最初の4パラだけ引用すると以下の通りです。

Private Sector in U.S. Added More Jobs Over the Summer
American businesses added more jobs in the last three months than originally estimated, but the wheels of the economic recovery are still spinning in place.
The private sector added 67,000 jobs in August, according to the Labor Department. That was higher than consensus forecasts, and the government upwardly revised its numbers for June and July, suggesting that job creation was slightly stronger over the summer than originally reported.
But the continuing wind-down of the 2010 Census, as well as state and local government layoffs, led to an overall loss of 54,000 jobs in August.
With businesses adding about half the number of positions needed simply to accommodate population growth - much less dent the ranks of the jobless - the unemployment rate ticked up to 9.6 percent, from 9.5 percent.

続いて、これまた、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減とそのうちの民間部門です。前者が赤の折れ線で、後者は水色です。下のパネルの緑色の折れ線は失業率です。上下のパネルに共通して、計数はすべて季節調整済の系列で、影をつけた部分は景気後退期なんですが、直近の米国景気の谷は昨年2009年6月と仮置きしています。

米国雇用統計の推移

最後に、私のこのブログの特徴として、ヨソさまのフラッシュに直リンするんですが、今月はいつもの New York Times のブログ・サイトのひとつである Economix Blog にリンクしてあります。雇用統計だけでなく、米国の最新経済指標が幅広く取り入れられています。

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2010年9月 3日 (金)

競った試合を落として6連勝ならず!

  HE
阪  神021000100 4101
広  島001002200 5120

広島と接戦でした。久保投手の先発なんですから勝っておきたいところでしたが、最後は競り負けました。自慢の勝ちパターンのリリーフ陣も、昨日あたりから西村投手が打たれるようになって来ています。さすがに、シーズンインしてから60試合を投げているんですから、若いとはいえ疲れもたまっているのかもしれません。勝ち試合や負け試合にかかわらず、毎夜のように投げたツケが出つつあるのかもしれません。
今日の惜敗は仕方ないとして、勝ちパターンのリリーフは西村投手、久保田投手、藤川投手で決まりなんですから、上手に使ってやって欲しいと思います。

明日は、
がんばれタイガース!

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厚生労働省「若年者雇用実態調査」のバックグラウンドを考える

まず、本日、財務省から4-6月期の法人企業統計が発表されました。下のグラフの通りなんですが、上のパネルは、季節調整済みの系列の前期比で見て、売上高が+7.1%増、経常利益が+2.3%増で、3四半期連続の増収増益となりました。同じく季節調整済みの系列の前期比で、ソフトウェアを除く設備投資は製造業+11.5%増、非製造業+4.1%増、下のパネルの通り、両者を合わせて+6.4%増と回復を示しました。私はかなり強い数字と受け止めています。ですから、4-6月期のGDP速報、すなわち、来週9月10日発表予定の2次QEは1次QEよりも上方に改定されると私は予想しています。

法人企業統計の推移

ただし、先行きは極めて不透明であり、特に、円高の影響が7-9月期から現れることが確実なため、4-6月期のGDP統計は発表されるや否や、「過去の数字」の扱いを受けそうな気がします。例えば、下の表では日本総研のリポート「円高が製造業の企業収益に与える影響」から、試算結果を引用しています。

円高の企業収益への影響

本来の話題に転じて、昨日、厚生労働省から「若年者雇用実態調査」の結果について発表がありました。世間一般では、学校を卒業しても正社員で採用されないとか、フリーターが正社員になりにくいとか、の点に注目していたような気がします。まず、朝日新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

非正規就職の若者、6割が正社員なれぬまま 厚労省調査
厚生労働省は2日、2009年の若年者雇用実態調査を発表した。学校卒業後に非正社員として就職した人のうち6割は、その後も非正社員として働いていることがわかった。
対象は15-34歳の労働者。5人以上の従業員のいる9457事業所と、それらの事業所で働く1万5124人が答えた。昨年10-11月に実施した。
労働者には、学校卒業後1年間の状況と現在の就業形態を聞いた。卒業後に「正社員として就職した」は、71.2%、「正社員以外として就職」は22.9%、「無業だった」は5.2%。
「正社員以外として就職」のうち、現在も正社員以外の人は64.7%にのぼる。男性は54.4%、女性は72.9%。年齢別では、15-19歳が88.7%、20-24歳が79.6%、25-29歳が61.3%、30-34歳で52.8%だった。
またフリーターを正社員に採用するかどうかでは、事業所の87.5%が「採用する場合がある」と答えたものの、過去3年間に「採用に至った」のは11.6%にとどまった。

若年者の雇用が厳しい理由については、私は3点あると考えています。第1に、マクロ経済要因、すなわち、需要不足です。これについては、失業や学生の内定などは圧倒的にマクロ経済要因で決まると、従来からこのブログで強調しているところです。しかし、このマクロ経済要因は年齢に関係ありませんから、特に若年者の雇用については以下の2点を考慮する必要があります。第2に、年齢によるスキルの違いです。若年者は相対的に年齢の高い階層に比べてスキルが低いことは容易に想像できます。しかし、この点については私のようなマクロ・エコノミストは確たる見識がありません。そこで考えたのは、第3に、何らかの経済合理的でない偏見や既得権が若年者の雇用に不利に作用している可能性です。最後の点に関して、私が注目しているのは、最近3-4年でいわゆる団塊の世代が労働市場に留まり続けていることです。例えば、60-64歳階級の労働力人口比率を少し長く見ると、下のグラフの通りです。バブル経済の時期に上昇したのは経済合理性があると考えられますが、その後、バブルが崩壊して長期に低下を続けながら、2005年を境に大きく上昇し、最近2009年では60%に達しました。データの出典は総務省統計局の労働力調査です。

60-64歳の労働力人口比率の推移

もちろん、世間一般に観察される60歳定年で労働市場を退出しなければならない積極的な理由は存在しませんし、技術の継承という観点からは経済合理的な面もあります。さらに、これも「超一般論」として、日本は人口減少社会に入っているわけですから、女性や高齢者の労働市場参入を促進することが経済成長に必要、という意見は極めてもっともなんですが、実は、すでに日本の高齢者の労働市場参加率が先進国の中でもかなり高い、という事実は意図せずか意図的にか見逃されているような気がします。下のグラフは、G5諸国について60歳以上の年齢階層別の経済活動人口比率をプロットしたものです。データ出典は国際労働機構 (ILO) の LABORSTA です。ILO の経済活動人口比率はほぼ我が国総務省統計局の労働参加比率に相当すると考えられます。

G5諸国の年齢階級別経済活動人口比率

先の人口減少社会における「超一般論」はともかく、現実論として、すでにかなり高い日本の高齢者の労働力人口比率をさらに高めることが経済合理的かどうかは十分な検証が必要です。もちろん、私のオススメは若年労働者を雇用することです。しかしながら、見て来たように、高齢者雇用の既得権が若年者雇用を阻害している可能性があると私は受け止めています。特に、いわゆる団塊の世代が60歳に達した時期、すなわち、最近3-4年でその傾向が強まっているような気がしてなりません。政府の政策というよりも、民間企業の雇用慣行に近い問題ではないかと私は考えていますから、何とか、若年者雇用に目が向くような方策はないものかと思案しているところです。

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2010年9月 2日 (木)

甲子園で横浜を3タテし5連勝で首位固め!

  HE
横  浜100100010 381
阪  神01000230x 6131

長期ロードを負け越して甲子園に戻った我が阪神ですが、横浜を3タテして神宮の東京ヤクルト戦から数えて5連勝でしっかり首位固めをしました。この3連戦はすべて先発投手が勝ち投手になり、今夜の試合にはほぼ1週間ぶりで勝ちパターンの投手リレーも見られ、甲子園に詰めかけた満員の阪神ファンには満足度の高い試合が続いたんではないでしょうか。今夜は6回ウラの桧山選手の逆点打もさることながら、7回の表裏の攻防が勝負の分かれ目だった気もします。
他方、あくまで横浜相手の3連勝3タテであって、巨人や中日といった上位チームにもこれくらい勝てるのか、それほど今のタイガースは調子がいいのかと言えば、そこは疑問なしとしないんですが、多くのエコノミストがお金に色はついていないと考えるのとまったく同様に、勝ち星に軽重はありません。横浜に勝っても、巨人や中日に勝っても1勝は1勝です。勝てる相手から勝っておけばいいんだと私は考えています。

広島のマツダ・スタジアムでも、
がんばれタイガース!

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厚生労働省「所得再分配調査結果」に見る引退世代に偏った再配分

昨日、厚生労働省から「平成20年所得再分配調査」の結果について発表がありました。世間一般では再配分前の当初所得の不平等度合いを示すジニ係数が既往最高を記録したことが注目されているように見受けられます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

所得格差の修正幅、過去最大に 再分配機能で
08年厚労省調べ

税制や社会保障制度による所得格差の修正幅が2008年に過去最大になったことが、厚生労働省が1日発表した所得再分配調査で分かった。世帯所得の格差を示す「ジニ係数」のうち、税金や社会保険料を差し引き、公的年金などを加えた所得でみた係数は0.3758と、所得再分配前の当初所得でみた係数よりも29.3%縮小した。高齢化や単身世帯の増加などで所得格差は広がっているが、政府の所得再分配機能による修正が進んでいる格好だ。
同調査は3年ごとに実施する。ジニ係数は所得格差がどの程度あるかを示す指標。0から1までの数値で示し、1に近いほど格差が大きい。例えば係数が0.5の場合、所得の高い方から4分の1の世帯の所得が、所得全体の4分の3を占めている状態を指す。
再分配前の当初所得でみた係数は0.5318と、05年調査(0.5263)を上回り、過去最大になった。所得格差が広がったのは、高齢世帯と単身世帯の増加が要因だ。試算によると、05年調査から高齢化で0.0034ポイント、世帯人員の減少で0.0119ポイント係数を押し上げた。2つの要因による押し上げ効果は実際の係数の上昇分を上回るため、これを除くと係数は05年調査よりも小さくなり、格差が縮小していた計算になる。
一方、年金や医療などの社会保険料、所得税などを引き、年金給付、介護や保育の現物給付などを加えた後の係数は05年調査よりも0.0115小さくなり、格差が6年ぶりに縮小した。格差が再分配後にどれくらい縮小したのかを示す修正幅は29.3%で、05年調査(26.4%)を上回り、過去最大になった。
修正幅は社会保障の寄与が26.6%を占めた。1世帯平均の当初所得は445.1万円だが、再分配後には517.9万円に増えた。
年齢階級別に当初所得のジニ係数を比べると、20-59歳は0.3程度だが、60歳以上は0.5を超え、高齢になるほど係数も大きい。再分配による修正幅も59歳までは20%未満だが、65歳以上は40%を超える。
日本のジニ係数は上昇傾向にあるが、国際的には中位に位置している。国際比較のため、総務省が経済協力開発機構(OECD)の基準に沿って算出しているジニ係数は04年時点で0.278。比較可能な先進24カ国中で12位だった。

メディアでは所得に関するジニ係数を用いた不平等指標が注目されていて、ジニ係数以外の不平等指標、すなわち、一般化エントロピー (generalized entropy) やアトキンソン指標は算出されていないようですし、ましてや、所得ではなく支出や消費の不平等は無視されているようです。専門的なエコノミストの分析ではないので、それはそれで仕方ない気もしますが、より気にかかる点は、ほぼすべての報道が世帯人員数を考慮しないベースでの評価となっていることです。大雑把に、子育て世代は引退世代よりも世帯構成員が多いのではないかと考えられますので、私は世帯人員数を無視することには大きな疑問を感じます。従って、以下のグラフなどは世帯人員数の平方根で除した等価所得をベースに考えたいと思います。ということで、等価所得をベースにしたジニ係数の最近の推移は以下の通りです。報道されているように、再配分前の当初所得でもジニ係数が0.5を超えることはありません。

等価当初所得と等価再配分所得のジニ係数の推移

等価所得で見ると、ジニ係数の水準として、当初所得でも0.5を下回っていますし、再配分所得でもかなり小さくなります。もっとも、年を追って再配分前の当初所得でのジニ係数が上昇していることに変わりはありません。もちろん、大阪大学の大竹教授の『日本の不平等』などの結論と部分的に同じで、引用した記事の第3パラにある通り、世帯人員数を考慮しない合計所得のベースながら、人口の高齢化と単身世帯の増加がジニ係数上昇の大きな要因であることも確かです。等価当初所得で見て、世帯主年齢が60歳以上の場合、ジニ係数が急激に上昇し、75歳以上世帯では0.7を超えます。この60歳以上の世帯は大雑把に引退世代と私は考えています。下のグラフは、世帯人員数を考慮した等価所得のベースで世帯主の年齢別の再配分前の当初所得と再配分所得のジニ係数をプロットしています。赤い折れ線で示した再配分前の当初所得での大きなジニ係数が、青の折れ線の再配分所得では見事に抑えられているのが見て取れます。

年齢階層別のジニ係数

しかし、これは少しやり過ぎで引退世代に偏りが見られるんではないかと私は考えています。なぜなら、再配分前後の差額を単純に移転とみなせば、60歳以上の引退世代のジニ係数をここまで引き下げるために、かなり多額の移転所得を必要とするからです。それを見たのが下のグラフで、これも世帯人員数を考慮した等価所得のベースで世帯主の年齢階層別の所得をプロットしています。赤い折れ線の再配分前の当初所得と青の再配分所得、さらにその差額を緑色の棒グラフで示しています。65-69歳世帯では自分自身の稼ぎと移転収入がほぼ同等、65歳以上世帯では稼ぐ以上に移転を得ています。この財源を捻出するために、59歳以下世帯はすべてマイナス移転となっています。

年齢階層別の所得と再配分差額

上のグラフのうち世帯主年齢20歳以上に限定すれば、直観的にグラフから明らかですが、次の2点の少子高齢化促進要因が指摘できます。第1に、20代世帯、すなわち、世帯主年齢が20-24歳及び25-29歳の世帯のマイナス移転の額が年齢階層間で最大になっています。結婚阻害要因といえるかもしれません。第2に、世帯人員数を考慮した等価所得では30歳代、すなわち、30-34歳及び35-39歳の世帯の等価再配分所得が水準として最も低くなっています。医療や介護などの現物給付が算入されている一方で、役所の所管が異なるためか、公立学校等の現物給付が入っていない点に留意する必要はありますが、子育て阻害要因とみなせる可能性を指摘しておきます。

年齢階層別の有権者数と投票者数

この引退世代への手厚い再配分所得の移転は、7月9日付けで「子ども手当に関するノート: 世代間格差是正の観点から」を取り上げたエントリーにも書きましたが、シルバー・デモクラシーに起因すると私は考えています。上のグラフは、少し前に日経ビジネス online の記事で見かけて保存しておいたものですが、男女別にそれぞれの有権者総数に占める年齢階層別の有権者と白抜きの投票者のパーセンテージをプロットしたものです。30代半ばより若い層はそもそも人口として少ない上に、加えて、投票率が低いため圧倒的に投票者数として少なくなっているのが読み取れます。投票に基づく代議制民主主義のシステムに基づく以上、現在の人口動学的な条件下で引退世代の意見が反映されやすい、といえるかもしれません。

政策目標として、日本全体のジニ係数を引き下げるためには60歳以上の引退世代のジニ係数を低く抑えるのは有効である可能性が高いんですが、見て来たように、20代や30代の負担もかなりのもので、少子高齢化促進要因になりかねません。この引退世代に偏った不平等を緩和するためには子ども手当も一定の有効性を持っていると私は考えています。

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2010年9月 1日 (水)

今夜は序盤から大量得点で横浜を圧倒!

  HE
横  浜001000011 3100
阪  神42020020x 10160

昨夜は6回がビッグイニングで6点を取りましたが、今夜は初回から猛打爆発で4点を先取し、昨夜に続いて先発投手に勝ち星のつく理想的な試合展開でした。ここ何試合か続けて早い回にノックアウトされていた先発の下柳投手でしたが、大量点に守られて6回を1失点と、1か月振りで久々の勝ち星でした。先発がそこそこ投げてくれて、クリンナップで8打点と打ちまくれば、勝てないハズはありません。同一リーグに横浜がいてくれて有り難いと感じた昨日今日でした。

明日は3タテ目指して、
がんばれタイガース!

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伊坂幸太郎『バイバイ、ブラックバード』(双葉社) を読む

伊坂幸太郎『バイバイ、ブラックバード』(双葉社)

伊坂幸太郎さんの『バイバイ、ブラックバード』 (双葉社) を読みました。ついでながら、上の画像にある通り、『「バイバイ、ブラックバード」をより楽しむために』(ポスタル・ノベル編) も併せて読みました。
まず、本体ともいうべき『バイバイ、ブラックバード』は6編の連作短編集から成っていますが、最初の5編は「郵便小説」という形で、1話について50人の当選者に郵送されたそうです。最後の第6話だけ書下ろしです。連作短編集という形だけに着目すると、伊坂作品としては『死神の精度』や『終末のフール』を思い浮かべる人も多いでしょう。また、双葉社といえば何といっても「クレヨンしんちゃん」ですが、私も愛読している「居眠り磐音 江戸双紙」なんかも出していたりします。『「バイバイ、ブラックバード」をより楽しむために』の方は解説編というか、作者のインタビューがあったり、また、この『バイバイ、ブラックバード』の基となった太宰の未完の遺作『グッド・バイ』が収められたりしています。以下、ネタバレがあるかもしれません。未読の方はご注意の上、自己責任で読み進むようお願いします。
繰返しになりますが、『バイバイ、ブラックバード』は太宰の『グッド・バイ』を下敷きにした複数の女性と別れる物語です。すなわち、主人公の星野君がとある不明の事情から180センチ180キロの巨体の繭美なる女性に捕まって、<あのバス>に乗せられる前に付き合いのあった5人の女性に別れを告げに行く、という内容です。最初の5編はこの5人の女性に対応します。最後の第6話は締めくくりです。4月25日付けのエントリーで取り上げた『オー! ファーザー』が4人の父親を持つ高校生を主人公にした四股のストーリーだったんですが、コチラの『バイバイ、ブラックバード』はその上を行く五股なわけです。各編の最初の節だけ星野君が付き合っていた女性の1人称で語られた後、その次からは3人称の語り口になります。5人は、出現順に、普通の女性、バツイチで男の子のいる銀行員、3姉妹の泥棒マンガ「キャッツアイ」に憧れて黒装束でロープを持ったりする女性、税理士事務所に勤めて数字に強く数字の語呂合わせの好きな女性、そして、最後の5人目は女優さんだったりします。
『「バイバイ、ブラックバード」をより楽しむために』を読めば分かるネタバレですが、星野君は<あのバス>に乗せられるものの、その行き先や実体は最後まで明らかになりません。というか、明らかになる前で小説が終わります。巨体で無神経で常識外れの規格外生物の繭美については、最初は読者の誰もが嫌悪感を持つと思いますが、読み進むに従って慣れるというか、少し繭美に対する見方が変化していくように感じました。そして、とっても興味深いラストを迎えます。

やや評価の難しい小説ではないかと思います。『オー! ファーザー』は文句なく第1期を締めくくるにふさわしい伊坂作品だといえますが、この『バイバイ、ブラックバード』は、ばらまかれた伏線が収束するわけではありませんし、明確なラストを迎えるわけでもありません。でも、第2期の作品である『あるキング』や『SOSの猿』よりも、第1期に近い雰囲気で楽しめる伊坂作品と評価できそうな気がします。

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