国連ミレニアム開発目標 (MDGs) は達成できるか?
昨年1月18日付けのエントリーで国連ミレニアム開発目標 (Millennium Development Goals, MDGs) を取り上げて、英語表記の Target や Indicator の表をお示ししました。やや旧聞に属する話題ですが、菅総理大臣も出席した今回の第65回国連総会の主たる議題のひとつはこの MDGs です、というか、これまた菅総理大臣がスピーチした MDGs 首脳会議の開催とその結果の議論、といった方が正確かもしれません。もっとも、我が国のメディアでは MDGs もさることながら、菅総理大臣とオバマ米国大統領との会談とか、日中首脳会談見送りなどの報道が目立っていたことも事実ですし、菅総理大臣は国連総会でのスピーチ核廃絶にも触れていました。
まず、日本語に翻訳された MDGs は以下の通りです。なお、外務省のサイトには MGDs の和訳がありますが、ナンバリングが少し違っています。
| 目標とターゲット | 指標 |
|---|---|
| ゴール 1: 極度の貧困と飢餓の撲滅 | |
| ターゲット 1 2015年までに1日1ドル未満で生活する人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる。 | 1.1日1ドル未満で生活する人口の割合 2.貧困格差の比率 (貧困度別の発生頻度) 3.国内消費全体のうち、最も貧しい5分の1の人口が占める割合 |
| ターゲット 2 2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる。 | 4.平均体重を下回る5歳未満の子どもの割合 5.カロリー消費が必要最低限のレベル未満の人口の割合 |
| ゴール2: 初等教育の完全普及の達成 | |
| ターゲット 3 2015年までに、全ての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする。 | 6.初等教育における純就学率 7.第1学年に就学した生徒が第5学年まで到達する割合 8.15-24歳の識字率 |
| ゴール3: ジェンダー平等推進と女性の地位向上 | |
| ターゲット 4 可能な限り2005年までに、初等・中等教育における男女格差を解消し、2015年までに全ての教育レベルにおける男女格差を解消する。 | 9.初等・中等・高等教育における男子生徒に対する女子生徒の比率 10.15-24歳の男性識字率に対する女性識字率 11.非農業部門における女性賃金労働者の割合 12.国会における女性議員の割合 |
| ゴール4: 乳幼児死亡率の削減 | |
| ターゲット 5 2015年までに5歳児未満の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する。 | 13.5歳児未満の死亡率 14.乳児死亡率 15.はしかの予防接種を受けた1歳児の割合 |
| ゴール5: 妊産婦の健康の改善 | |
| ターゲット 6 2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1に削減する。 | 16.妊産婦死亡率 17.医師・助産婦の立ち会いによる出産の割合 |
| ゴール6: HIV / エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止 | |
| ターゲット 7 HIV / エイズの蔓延を2015年までに食い止め、その後減少させる。 | 18.15-24歳の妊婦のHIV感染率 19.避妊具普及率におけるコンドーム使用率 20.10-14歳の、エイズ孤児ではない子どもの就学率に対するエイズ孤児の就学率 |
| ターゲット 8 マラリア及びその他の主要な疾病の発生を2015年までに食い止め、その後発生率を減少させる。 | 21.マラリア有病率及びマラリアによる死亡率 22.マラリアに感染しやすい地域において、有効なマラリア予防及び治療処置を受けている人口の割合 23.結核の有病率及び結核による死亡率 24.DOTS (短期科学療法を用いた直接監視下治療) の下で発見され、治療された結核患者の割合 |
| ゴール7: 環境の持続可能性確保 | |
| ターゲット9 持続可能な開発の原則を国家政策及びプログラムに反映させ、環境資源の損失を減少させる。 | 25.森林面積の割合 26.地表面積に対する、生物多様性の維持のための保護区域の面積の割合 27.GDP1,000ドル当たりのエネルギー消費量 28.1人当たりの二酸化炭素排出量及びオゾン層を減少させるフロンの消費量 29.固体燃料を使用する人口の割合 |
| ターゲット10 2015年までに、安全な飲料水及び衛生施設を継続的に利用できない人々の割合を半減する。 | 30.浄化された水源を継続して利用できる人口の割合(都市部及び農村部) 31.適切な衛生施設を利用できる人口の割合 |
| ターゲット11 2020年までに、少なくとも1億人のスラム居住者の生活を大幅に改善する。 | 32.土地及び住居への安定したアクセスを有する世帯の割合 |
| ゴール8: 開発のためのグローバルなパートナーシップの推進 | |
| ターゲット12 さらに開放的で、ルールに基づく、予測可能でかつ差別的でない貿易及び金融システムを構築する。 (良い統治、開発及び貧困削減を国内的及び国際的に公約することを含む。) ターゲット13 後発開発途上国の特別なニーズに取り組む。 (1) 後発開発途上国からの輸入品に対する無税・無枠 (2) 重債務貧困国 (HIPC) に対する債務救済及び二国間債務の帳消しのための拡大プログラム (3) 貧困削減にコミットしている国に対するより寛大なODAの供与を含む。 ターゲット14 内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国の特別なニーズに取り組む。 (バルバドス・プログラム及び第22回国連総会特別会合の規定に基づき) ターゲット15 債務を長期的に持続可能なものとするために、国内及び国際的措置を通じて開発途上国の債務問題に包括的に取り組む。 | 以下に挙げられた指標のいくつかについては、後発開発途上国、アフリカ、内陸開発途上国、小島嶼開発途上国に関してそれぞれ個別にモニターされる。 政府開発援助 (ODA) 33.OECD開発援助委員会(DAC)ドナー諸国の国民総所得(GNI)に対するODA支出純額の割合 (注: 2015年までにODAの0.7%目標、2010年までに後発開発途上国向け0.15~0.20%目標) 34.基礎的社会サービスに対するODAの割合 (基礎教育、基礎医療、栄養、安全な水及び衛生) 35.DACドナー諸国のアンタイド化された二国間ODAの割合 36.内陸開発途上国のGNIに対するODA受取額 37.小島嶼開発途上国のGNIに対するODA受取額 市場アクセス 38.先進国における、開発途上国及び後発開発途上国からの輸入品の無税での輸入割合 (価格ベース。武器を除く。) 39.先進国における、開発途上国からの農産品及び繊維・衣料輸入品に対する平均関税率 40.OECD諸国における国内農業補助金の国民総生産(GDP)比 41.貿易キャパシティ育成支援のためのODAの割合 債務持続可能性 42.HIPCイニシアティブの決定時点及び完了時点に到達した国の数 43.HIPCイニシアティブの下でコミットされた債務救済額 44.商品及びサービスの輸出額に対する債務返済額の割合 |
| ターゲット16 開発途上国と協力し、適切で生産的な仕事を若者に提供するための戦略を策定・実施する。 | 45.15-24歳の男女別及び全体の失業率 |
| ターゲット17 製薬会社と協力して、開発途上国において人々が安価で必要不可欠な医薬品を入手できるようにする。 | 46.安価で必要不可欠な医薬品を継続的に入手できる人口の割合 |
| ターゲット18 民間部門と協力して、特に情報・通信における新技術による利益が得られるようにする。 | 47.人口100人当たりの電話回線及び携帯電話加入者数 48.人口100人当たりの使用パソコン台数及びインターネット利用者数 |
MDGs の達成目標は2015年とされています。毎年出されている国連のThe Millennium Development Goals Report 2010 にも詳しく報告されていますが、大雑把な地域別進捗状況の一覧は Millennium Development Goals: 2010 Progress Chart においてビジュアルに明らかにされています。この仮訳を外務省のサイトから引用すると以下の通りです。

一番下の注にある通り、色分けは2015年の目標達成に向けた進展度合いを示しており、緑色が「達成済み、または、達成間近」の目標なのに対して、赤は「進展なし、または、悪化」、オレンジが「現状のままでは2015年には目標達成不可能」となっています。一見しても、まだまだ赤やオレンジが多く、2015年までの目標達成は決して容易ではない、と考えるべきです。地域別ではサブサハラ・アフリカ、西アジア、オセアニアに赤やオレンジが目立っています。
9月22日夕刻にニューヨークの国連本部で開催された首脳会議において、菅総理大臣から保健や教育を重点として5年間で総額85億ドルを拠出する「菅コミットメント」が明らかにされています。「疾病」を「しつびょう」と読んでいる動画が YouTube サイトにアップされていますが、オバマ米国大統領のスピーチが終わった後で席を立った関係者も多く、当然ながら、そこまで日本語を理解する出席者がいっぱいいたとはとても考えられませんから、ほとんど何の影響もありません。それよりも、途上国の貧困削減などをはじめとする MDGs 目標達成のために、援助はもちろん、貿易や投資など、さまざまな努力が必要とされていることを、豊かな日本からも十分に認識すべきと私は考えています。
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