景気動向指数から景気の先行きを考える
本日、内閣府から7月の景気動向指数が発表されました。ヘッドラインとなるCI一致指数は季節調整済みの系列で前月比+0.5ポイント上昇しましたが、逆に、先行指数は▲0.8ポイント低下しました。DI一致指数は50、DI先行指数は30まで低下しました。足元も少し弱含んでいるような気もしますが、先行きはもっと弱くなっているようです。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
景気一致指数、7月も0.5ポイント上昇 基調判断は据え置き
内閣府が7日発表した7月の景気動向指数(CI、2005年=100、速報)によると、景気の現状を示す一致指数は前月比0.5ポイント上昇の101.8と2カ月連続で上昇した。中小企業売上高(製造業)や有効求人倍率(除学卒)の上昇などが寄与した。
数カ月後の景気の先行きを示す先行指数は0.8ポイント低下の98.2と2カ月ぶりの低下。景気に数カ月遅れる遅行指数は2.2ポイント上昇の85.7と2カ月ぶりに上昇した。
内閣府は基調判断を10カ月連続で「改善を示している」に据え置いた。
記者会見した津村啓介内閣府政務官は「(基調判断に用いる3カ月後方移動平均の)前月差の上昇幅が小さくなってきている。来月以降、一致CIの動向には引き続き注視が必要」との見方を示した。一方で先行指数の低下については「マーケットの先行き懸念を反映した結果。現時点で(景気が)踊り場入りしているという判断はしていない」と説明した。
次にいつものグラフは以下の通りです。上のパネルはCIの一致指数と先行指数、下はDI一致指数です。いずれも季節調整済みの系列で、影を付けた部分は景気後退期です。
上のグラフから明らかですが、特に上のパネルから、CI一致指数の回復が緩やかになったことと先行指数がマイナスに転じたことを読み取るべきです。下のパネルのDI一致指数は50に達しました。教科書的なDIの見方からすると、上から50のラインを切るのは景気転換点の谷ということになります。CIとDIを見る限り、最近の動向は2004年半ばから2005年にかけての第14循環における景気の踊り場に似通っていると私は受け止めています。もっとも、現時点で日本経済が踊り場入りしているかどうかについて、もう少し詳しく考えると、先月の1次QE発表後には、内閣府の経済財政担当大臣と政務官とで踊り場入りについて必ずしも一致しない見解が聞かれたような報道を見かけましたが、先に引用した日経新聞の記事を見る限り、政府においても「踊り場入りしていない」との見解で一致したようです。昨夜のエントリーでお示ししたように、サステイナブルでないながら、いくつかの要因に引っ張られて、7-9月期までそこそこの成長を記録した後、10-12月期にはマイナス成長かゼロすれすれまで成長率が大幅に低下する、との基本シナリオを私も持っていますので、正確に表現すれば、7-9月期までは踊り場には入っておらず、10-12月期から踊り場に入る予想を持っている、ということになります。
もう少し先行き景気に影響を及ぼす要因を詳しく考えると、第1に、円高が上げられます。今日まで開催されていた日銀金融政策決定会合の景気認識に基づいた政策運営がなされるとすれば、円高がさらに進む可能性を排除できません。なお、日銀については最後のパラでもう一度振り返ります。第2に政策動向も重要です。エコカー減税・補助金はほぼ終了、あるいは、家電エコポイントは5ツ星に限って3月まで延長、との報道を見かけますが、いずれにせよ、従来からのこの2つの政策による景気拡大効果はほぼ終了しつつあり、今週中に策定と報じられている経済対策を見極める必要があると私は考えています。第3に、何といっても金融市場に影響を及ぼすのは海外経済の動向です。米国経済については少し前まで毎日のように悲観論と楽観論の間で揺れ動いていたんですが、何とか、方向性が見えてきたような気がします。しかし、欧州経済も含めて、引き続き、不透明感が強いことは言うまでもありません。
最後に、景気動向指数を少し離れて、日銀の金融政策決定会合について少し補足すると以下の通りです。実は、私は若いころに米国連邦準備制度理事会 (FED) のリサーチ・アシスタントとして研修を受けたことがあり、FED は連邦公開市場委員会 (FOMC) 後に記者会見を開くでもなく、1枚っぺらのステートメントを公表して終わりであるのを目の当たりにしたこともあるせいか、今日まで開催されていた日銀の金融政策決定会合でもステートメントから判断するクセがあり、第2パラで「わが国の景気は、緩やかに回復しつつある。」と高らかに宣言し、第3パラで「先行きの中心的な見通しとしては、かが国経済は、回復傾向を辿るとみられる。」と断定されると、日銀文学に疎い私は大本営発表のような不気味さを感じてしまいました。
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