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2010年9月27日 (月)

貿易統計の輸出は明確な鈍化を示す、ほか

本日、財務省から8月の貿易統計が発表されました。ヘッドラインとなる貿易黒字は1032億円と前年同月比▲37.5%減少しました。基本的には、貿易黒字の縮小の原因は輸出であると受け止めています。輸出は季節調整していない原系列で見て前年同月比伸び率を大きく鈍化させ、季節調整済みの亀裂の前月比で見て減少を続けています。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

貿易黒字が15カ月ぶり減少 8月、輸出の伸び縮小
財務省が27日発表した8月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支の黒字幅が1032億円と前年同月比37.5%減少した。前年同月を下回るのは2009年5月以来1年3カ月ぶり。輸出の伸び率が15.8%と7月(23.5%)から縮小したのが主因だ。円高や海外経済の減速を背景に、米国向けなどで輸出の鈍化が目立ってきた。
8月の貿易黒字額は季節要因から貿易が停滞する1月を除くと09年4月(490億円)以来の低水準となる。ただ17カ月連続の黒字は維持した。輸出額は5兆2241億円で9カ月連続で増加。輸入額は5兆1209億円と前年同月から17.9%増えた。
8月の輸出を地域別にみると、米国向けが前年同月比8.8%増の7761億円だった。伸び率は7月の25.9%から大幅に鈍化した。灯油などの鉱物性燃料、建機類は増えたが、円高の影響もあって自動車の輸出額は前年同月に比べ8.3%減った。
アジア向けも前年同月比18.6%増と、7月の伸び率(23.8%)を下回った。増加に寄与したのは韓国向け鉄鋼やタイ向け金属加工機械、シンガポール向け半導体など。うち中国向けは18.5%増。金属加工に使うマシニングセンターや半導体、自動車などが増えた。
欧州連合(EU)向け輸出額は前年同月比13.7%増と前月とほぼ同水準の伸びとなった。ユーロ安の影響で景気回復が進むドイツ向けの自動車部品が増えたほか、英国向け船舶なども全体を押し上げた。
輸出額はリーマン・ショック後の反動もあり、昨年末から2ケタの伸びを続けてきた。しかし諸外国で打ち出された景気対策の効果が一巡する一方、個人消費や設備投資の本格的な回復が遅れていることから、足元で伸びが鈍っている。
直近の動向を示す季節調整済み輸出額(財務省試算値)をみると、8月は前月比2.3%減となり、4カ月連続で減少した。8月の為替レートは平均で1ドル=86円37銭と前年同月に比べ9.1%の円高・ドル安で推移した。
一方、輸入はマレーシアからの液化天然ガスが増えたほか、オーストラリアからの鉄鉱石も全体を押し上げた。猛暑でエネルギー需要が増えた可能性がある。

次に、貿易統計の推移を示したいつものグラフは以下の通りです。いずれも輸出入とその差額である貿易収支なんですが、上のパネルは季節調整していない原系列の計数、下のパネルは季節調整済みの系列です。

貿易統計の推移

青い折れ線グラフが輸出、赤が輸入、緑の棒グラフがその差額である貿易収支なんですが、下のパネルの季節調整済みの系列で見て、4月をピークにジワジワと輸出が減少を続けているのが見て取れます。季節調整していない原系列の輸出ではまだ前年同月比でプラスをつづけているんですが、そのプラス幅は大きく縮小し、季節調整済みの系列ではすでに前月比でマイナスに入っている、というのが貿易統計における輸出の真の姿であろうと受け止めています。

輸出数量の動向

その輸出をもう少し詳しく見たのが上のグラフです。一番上のパネルは金額ベースの輸出の前年同月比伸び率を数量と価格の貿易指数で寄与度分解したものです。真ん中のパネルは輸出数量指数の前年同月比伸び率を3か月リードを取った OECD の先行指数 (OECD/CLI) の前年同月比と対比してプロットしています。一番下は同じく輸出数量指数の前年同月比と鉱工業生産の前年同月比を対比してプロットしています。前年同月比のグラフを並べて何が分かるかというと、ここ数か月の金額ベースの輸出の伸びの鈍化は価格ではなく数量に起因し、その輸出数量の鈍化は世界経済の減速に起因し、最後に、輸出数量の鈍化は生産の減速に帰結する、ということです。付け加えるのであれば、7-9月期のGDP統計の外需はマイナスになる可能性があります。猛暑やエコカー減税に支えられた消費がGDPを引っ張るでしょうから、目立ちはしませんし、シロート目には内需がプラスで外需がマイナスという、一見して、カギカッコ付きの「望ましい姿」に見えなくもありませんが、内需の盛り上がりはサステイナブルではありませんから、決して楽観すべきではありません。ついでに、明後日に発表される鉱工業生産指数は予測指数の+1.6%増は下回りそうです。
もちろん、我が国の輸出数量の鈍化については、世界経済の減速だけでなく、円高要因もあります。為替相場については、昨年8月の1ドル94.97円から今年の8月は86.37円と9.1%もの大幅な円高になりました。1年間の円高の影響がラグを伴って表れていることも事実です。為替のラグは直観的に2-4四半期でしょうから、為替介入で注目された8月下旬からの円高の輸出への悪影響はこの現状にさらにオンされるものであると考えるべきです。

さて、貿易統計を離れて、タイトルの「ほか」の部分ですが、本日の日経新聞の「経済教室」における一橋大学の渡辺教授の議論を簡単に取り上げておきたいと思います。渡辺教授の結論は、為替介入資金の非不胎化は市場の期待を通じた将来の金融緩和効果により、不胎化介入よりも円安効果が大きいというものです。日銀ご出身らしく、量的緩和の効果にはやや否定的ないし限定的な見方を示し、量的緩和期には貨幣は飽和しているので非不胎化介入はさらなる量的緩和の効果はなく、非不胎化資金が将来の非ゼロ金利下で金融緩和効果を有する可能性があることから、この市場の金融緩和期待が為替の円安効果をさらに高める、という考え方です。ですから、量的緩和レジームではなく、いまだに金利レジーム下にある現時点で、非不胎化した為替介入は量的緩和も含めて、もっと効果があるということなんでしょうか。直接には「フィナンシャル・レビュー」第99巻のペーパーを引いていますが、ワーキングペーパーでは以下のものがあります。ご参考まで。

昨日、神戸大学で開催された金融学会における講演に続く質疑応答で、日銀の白川総裁は企業金融の資金調達のしやすさをもって、日銀が先進各国中央銀行に比較してもっとも金融緩和していると主張したようですが、日銀エコノミストの間では中央銀行のバランスシートなどは金融政策とは何の関係もないと考えられていたりするんでしょうか?

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