今年のノーベル経済学賞は清滝教授に授賞されるか?
昨年、ウィリアムソン教授とオストロム教授に授賞されたノーベル経済学賞ですが、昨日、トムソン・ロイターから "Thomson Reuters Predicts Nobel Laureates" と出して、今年の科学分野のノーベル賞受賞者予想が公表されています。科学分野ですから、経済学賞を含んでおり、文学賞と平和賞は除かれています。ノーベル経済学賞についてのみ引用すると以下の通りです。
- Albert Alesina
Nathaniel Ropes Professor of Political Economics, Department of Economics, Harvard University, Cambridge, Mass., USA
For theoretical and empirical studies on the relationship between politics and macroeconomics, and specifically for research on politico-economic cycles. - Nobuhiro Kiyotaki
Professor of Economics, Department of Economics, Princeton University, Princeton N.J., USA
-and-
John H. Moore
George Watson's and Daniel Stewart's Professor of Political Economics, University of Edinburgh, Edinburgh, Scotland, and Professor of Economics, Department of Economics, London School of Economics, London, England
For formulation of the Kiyotaki-Moore model, which describes how small shocks to an economy may lead to a cycle of lower output resulting from a decline in collateral values that create a restrictive credit environment. - Kevin M. Murphy
George J. Stigler Distinguished Service Professor of Economics, University of Chicago Booth School of Business, Chicago, Il., USA, and Senior Fellow, Hoover Institution, Stanford, Calif., USA
For pioneering empirical research in social economics, including wage inequality and labor demand, unemployment, addiction, and the economic return on investment in medical research among other topics.
最初にアレジーナ教授が上げられていて、この分野の共同研究も多いペロッティ教授の名がないのはやや不思議な気がするんですが、それはともかく、トムソン・ロイターの英語のサイト "Thomson Reuters Predicts Nobel Laureates"では、たぶん、上の順の通りにならんでいる一方で、一見して分かるようにプリンストン大学の清滝教授が入っていますので、同社の日本語のサイト「21名の新たなノーベル賞有力候補者を発表」では、清滝教授とムーア教授が最初に来ています。
日本人エコノミストとして世間的な注目を集めるんではないかと思いますので、このブログでも清滝教授の業績についてごく簡単に見ておきたいと思います。まず、あえてカテゴリー分けすると清滝教授はニュー・ケインジアンであり、マクロ経済学のミクロ的な基礎付けの研究で大きな成果を上げたと私は認識しています。初期には、ブランシャール教授とともに独占的競争が集合的需要にもたらす効果に関するペーパーもあります。リファレンスは以下の通りですが、リンクはありません。
- Blanchard, Olivier Jean and Nobuhiro Kiyotaki (1987) "Monopolistic Competition and the Effects of Aggregate Demand," American Economic Review 77(4), September 1987, pp.647-66
何年か前から清滝教授が日本人の中でノーベル経済学賞候補として注目を集めたのは、私の記憶が正しければ、ライト教授との共著になるペーパーで、いわゆる清滝・ライトの貨幣需要関数がきっかけでした。リファレンスは以下の通りです。
ただし、トムソン・ロイターが業績として上げたのは、この清滝・ライトの貨幣需要関数ではなく、先に引用した通り、small shock がどのように生産性下落の cycle を引き起こすかを示す清滝・ムーア・モデルの構築ということになっていたりします。こちらのリファレンスは以下の通りです。
ノーベル経済学賞候補として、私自身が注目するエコノミストとしては、昨年と同じですが、時系列分析に関する貢献で、シムズ教授、ストック教授、ワトソン教授あたり、成長論でバロー教授やジョルゲンソン教授あたり、私の専門である景気循環論の貢献によりハミルトン教授あたり、ではないかと考えています。日本人としては引き続き消費関数理論に関する貢献により、林文夫教授が考えられるんではないかと受け止めています。要するに、自分の専門以外はよく知らなかったりするわけです。なお、ノーベル賞のホームページから、各賞発表のスケジュールは以下の通りです。ストックホルム時間ではないかと思います。今夜のエントリーで注目した経済学賞は10月11日の体育の日です。
- The Nobel Prize in Physiology or Medicine
Monday, October 4 11:30 a.m. at the earliest - The Nobel Prize in Physics
Tuesday, October 5 11:45 a.m. at the earliest - The Nobel Prize in Chemistry
Wednesday, October 6 11:45 a.m. at the earliest - The Nobel Peace Prize
Friday, October 8 11:00 a.m. - The Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel
Monday, October 11 1:00 p.m. at the earliest
上の日程は6月4日の記者発表なんですが、伝統に従い、その時点でまだ文学賞の発表予定は明らかにされていませんでした。日本人受賞者の最有力候補は、清滝教授には申し訳ないながら、私は今年も村上春樹さんのノーベル文学賞であると考えています。
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