国際通貨基金 (IMF) の「アジア太平洋地域経済見通し」
国際通貨基金 (IMF) の「世界経済見通し」 World Economic Outlook については、すでに10月4日付けのエントリーで分析編を、7日に見通し編を、それぞれ取り上げたところですが、昨日、「アジア太平洋地域経済見通し」 Regional Economic Outlook Asia and Pacific: Consolidating the Recovery and Building Sustainable Growth が発表されました。もちろん、pdf の全文リポートもアップされています。私のブログの特徴のひとつは国際機関のリポートを取り上げることにありますので、今夜は、この全文リポートから私が重要と考えている図表や囲み記事を紹介したいと思います。
まず、上の図表は成長率見通しです。実は、すでに取り上げた「世界経済見通し」 World Economic Outlook の p.64 Table 2.1. Selected Asian Economies: Real GDP, Consumer Prices, Current Account Balance, and Unemployment と数字は変わりありません。でも、下のファンチャートは初出かもしれません。上の表はリポート p.24 Table 1.1. Asia: Real GDP Growth を、下のファンチャートは p.26 Figure 1.36. Asia: GDP Growth を、それぞれ引用しています。
見通しそのものは初出ではないということで、今回のリポートで私が注目したのは2点あり、第1は上のグラフの通りです。リポートの p.15 Figure 1.19. Asia: Estimated Output Gap Closure Dates から引用しています。タイトル通り、産出ギャップがゼロに戻る時期の推計結果です。台湾やシンガポールがすでに産出ギャップをゼロに戻していて、インド、韓国、タイ、フィリピンも今年中くらいとされているのに対して、日本は2015年いっぱいかかって産出ギャップがゼロに戻る、と試算されています。この表に掲げられたアジアの国や地域の中でもっとも遅いわけです。しかも、今年4月時点の推計から後ズレしているのは日本くらいのものです
第2に、私が注目したのは pp.8-10 の Box 1.2. The Yen's Appreciation and Its Implication for Japan's Outlook です。先月の為替市場介入について簡単に分析がなされています。日本円について、欧州のソブリン・リスクと米国の成長鈍化に従って円が買われて円高を招来したとし、かつて、円高は即時の株価下落とラグを伴った輸出減少をもたらしたが、現時点では、アジア域内貿易の比重も高まり、長期的なインフレ期待を通じたデフレの深刻化が問題、と指摘しています。
その昔1970年代後半、当時のカーター米国大統領にはドイツとともに「世界経済の機関車」と持ち上げられ、20年前にはボーゲル教授の著書で『ジャパン・アズ・ナンバーワン』と称されたにもかかわらず、今や日本経済はアジア地域のお荷物になり果ててしまっているのかもしれません。
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