本日の日経新聞経済教室の「経済学者アンケート」と海外情報2件
昨年に続いて、日本経済学会と日本経済新聞のコラボにより、経済学者アンケートが実施され、マクロ政策、菅政権の政策、世界経済の3点について、本日付けの日経新聞の経済教室に取り上げられています。なお、私もいくつか経済学に関連する学会に所属してるんですが、誠に残念ながら、日本経済学会とはご縁がなく、当然ながら、このアンケートにも回答していません。ということで、ごく簡単に日経新聞のサイトからアンケート結果のグラフを引用して、私の感想を述べたいと思います。なお、グラフを引用した日経新聞のサイトを開くには何らかの登録が必要かも知れません。悪しからず。
まず、「日本のマクロ経済政策に対する考え方」について、最初の問いである「90年代以降の財政・金融政策」はともに「あまり効果なし」と私は考えています。ただし、理由が異なっていて、財政政策は構造的に効果が小さくなっている可能性があるのに対して、金融政策はまじめに取り組んで来なかったので効果がないんだと考えています。ですから、次の「財政拡大は必要か」に対する回答は「拡大すべきではない」になります。どうして、「金融緩和は必要か」という問いがないのかは理解できませんが、問いがあれば「無条件で緩和を」くらいを回答するんではないかと思います。
次の消費税に関する2つの問いは、誠に申し訳ないながら、「わからない」と「その他」です。現時点で私自身の考えがまとまっていません。基本的には、高齢者に対する大盤振る舞いを止めれば消費税の増税は必要ないような気もしないでもないんですが、キチンとした試算はしていないという意味で、考えがまとまっていません。それから、金融政策に関する次の2つの問いについては「非伝統的な金融政策」は「積極的に実施・強化」すべきであると考えていますし、「インフレ目標政策」も「採用すべきだ」というのはリフレ派のエコノミストとして当然でしょう。
次に、「菅政権の政策など」についての問いでは、「『第三の道』に対する考え方」は「支持できない」と言わざるを得ません。忌憚なくいえば、私には「トンデモ経済学」にしか見えません。「労働者派遣法改正の方向」は「製造業も登録型も禁止すべきではない」と考えます。ひょっとしたら、唯一の多数意見に一致なのかもしれません。「移民受け入れ」には「慎重であるべき」と考えています。最後の「福祉の水準と負担のバランスは」の問いに対する回答のグラフはネットだけにあって、新聞の方にはありませんでしたが、私は「その他」であって、国民が選択すべき課題であると考えます。ここでは意見を述べるだけでしょうから OK なんですが、少なくとも、「今後の消費税」とともに、一連の問いの中でもっとも国民の決定に委ねるべき問題であるという気がします。
最後に、紙面では見かけずに、ネットだけにアップされていた「世界経済の行方」に関するグラフは上の通りです。「今の世界経済の状況は」日本と違って、というただし書きが必要ですが、「克服しつつある」ように私には見受けられます。さらに、「5年後の中国経済は」これまためずらしく多数意見と同じで、「成長率は鈍化するが、引き続き安定成長で世界経済を下支え」するんではないかと期待している一方で、さらに先の、例えば、20年後は「成長率が大きく落ち込み、世界経済の波乱要因に」なっている可能性が否定できないと考えています。どこまで短期や長期を考えるかで中国経済の評価は異なります。どうしてかというと、「一人っ子政策」のために日本よりさらに急速に人口の高齢化が進むからです。
経済学者のアンケートを離れて、海外からのトピックを2点ほど、軽く取り上げておきます。第1に、米国連邦準備制度理事会 (FED) の連邦公開市場委員会 (FOMC) が開催され、広く報じられているように、2011年6月までに6000億ドルの長期国債を購入すると発表しました。市場の事前コンセンサスは5000億ドルでしたので、「予想の範囲内」との受止めで為替相場は大きく変動しませんでした。FED はさらにバランスシートを拡大させ、3兆ドルを目指すことになります。上のグラフはクリーブランド連銀のサイトにあるデータを基に書いています。なお、グラフに凡例がないんですが、上からグレーが "FED Agency Debt Mortgage-Backed Securities Purchases"、黄色が "Liquidity to Key Credit Markets"、緑色が "Lending to Financial Institutions"、赤が今回増額を決定した "Long Term Treasury Purchases"、最後に、青が "Traditional Security Holdings" となっています。また、縦軸の単位は兆ドルです。
第2に、昨日、G20 ソウル会議に向けて OECD から提出予定の政策提言資料がプレスに発表されています。財政再建をメインテーマにしていますが、次の経済見通し Economic Outlook No.88 で11月18日に明らかにされる予定の OECD の成長率見通しも含まれています。小さいですが、上の表の通りです。Economic Outlook and Requirements for Economic Policy と題する記者発表資料の p.3 を引用しています。大雑把に、2010年から2011年にかけて成長率が鈍化するのは先進国で共通ですが、欧米では小幅ながら2012年には成長率が持ち直すものの、日本では下がり続けるシナリオを OECD は持っているようです。日本経済が冴えないのは世界のコンセンサスになりつつあるのかもしれません。
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