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2010年11月29日 (月)

2010年ベスト経済書やいかに?

この週末に「ヒット商品番付」を取り上げたりして、そろそろ、今年を振り返る季節になりました。特に、経済週刊誌では来月12月には、いわゆる2010年ベスト経済書の特集が組まれたりするんではないかと思います。私もこういったアンケートに回答したことがあったりするんですが、今夜は少し趣きを変えて私なりのカテゴリーに分けて今年の経済書を何冊か振り返りたいと思います。もっとも、読んでいないのがあったりしますので少し無責任なんですが、私が管理しているブログですから、「こんなんもんだ」とご容赦ください。

岩田一政『デフレとの闘い』 (日本経済新聞社)

まず、第1の観点として、ケインズ的ないわゆる「美人投票」、すなわち、みんなが選びそうなベスト経済書ということになれば、私は上の岩田一政『デフレとの闘い』 (日本経済新聞社) ではないかと考えています。副題は「日銀副総裁の1800日」です。各章に付論があって、モデルの解説などもていねいになされています。もっとも印象に残った点のひとつは、デフレが何らかの不均衡の結果として生じるものだけではなく、特に、日本の場合はデフレは均衡であることが示唆されており、このデフレ均衡から脱するのが金融政策の重要な課題のひとつという視点です。第3章に詳しいです。

細野薫『金融危機のミクロ経済分析』 (東京大学出版会)

第2に、決して一般向きではないものの、学術書としての観点からすれば、細野薫『金融危機のミクロ経済分析』 (東京大学出版会) がオススメです。私はミクロ経済学は必ずしも詳しくありませんし、本書のような詳細かつ最新のエコノメの手法に対する理解力があるとまで自信を持っているわけではありませんが、例えば、大学院のテキストなんかにはうってつけではないかと思います。不良債権に限っても、問題の長期化が銀行による何らかの会計手続きの結果であるとか、逆に、繰延税金資産の圧縮などの会計基準の厳格化が不良債権処理を進めたとか、あるいは、公的資金投入による資本増強は不良債権減少への寄与はほとんどなかった、などについて詳細なデータを駆使した実証分析結果は一般的なエコノミストの印象論とほぼ合致する一方で、逆の意味で、常識から外れてびっくりするような結論ではないのも、物足りないというか、よしあしだという気がします。なお、私の専門分野から、銀行の株式保有が景気循環を増幅しているというのは興味を引きました。加えて、学術書らしく価格が高いことを難点と見なす向きがあるかもしれませんが、一昨年のベスト経済書のひとつだった現在の日銀白川総裁による『現代の金融政策』も分厚くて高価だった気がします。

アン・アリスン『菊とポケモン』 (新潮社)

最初のケインズの「美人投票」的な観点を離れて、独自に自分の書評が特記される可能性を求めるのであれば独自性を追う必要があります。その観点から、私が読んだ中ではアン・アリスン『菊とポケモン』 (新潮社) を推したい気がします。ただし、タイトルについては、英語の原題は Millennial Monsters で、上の画像に見る通りです。日本語版へのあとがきでも、ベネディクト女史の『菊と刀』になぞらえたタイトルは「ショック」と著者本人も書いていますし、私も少し疑問に思わないでもありません。やや商業的な日本語タイトルといえます。でも、セーラームーン、たまごっち、ポケモンと日本のサブカルを的確に分析して、もはや、トヨタやソニーといった伝統的な企業ではなく、ハリウッドを擁する米国に代わって日本ブランドが子供向けの消費の主役になっていることを明らかにしています。経済書というよりは著者の専門からすれば文化人類学の学術書なのかもしれませんが、興味深い内容です。

岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』 (ダイヤモンド社)

ベストセラーという観点からは岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』 (ダイヤモンド社) ではないでしょうか。私は読んでいませんので内容は分かりませんが、説明の必要もないくらいでしょう。はなはだよく売れていることは確かで、100万部を突破したとの報道を見た記憶があります。私が登録している限りで、港区立図書館、渋谷区立図書館、新宿区立図書館などのサイトを見たんですが、予約は軽く500番台でした。所蔵数は確認しませんでしたが、待ち時間はかなり長そうです。

竹内啓『偶然とは何か』 (岩波新書)

最後に、新書からは竹内啓『偶然とは何か』 (岩波新書) が印象に残ります。歴史における偶然の果たす役割などについて著者独自の観点から論が進められています。ただし、「偶然」と「ランダム」の違いなど、少し分かりにくい部分もあります。また、第2章の章末コラムは明示してありませんが、モンティ・ホール問題を解説しています。私のこのブログでは3年前の2007年11月14日に取り上げています。私は図書館で借りてしか新書を読みませんが、新書ながらベスト経済書に入る本も多いですから、単純に新書から私の趣味で選ぶとこの本になります。

来月12月になると、経済週刊誌ではいっせいに今年2010年の経済書ベスト100とか何とかを特集すると思います。私自身は読書量には決して自信がないだけに、読書家のエコノミスト諸氏の評価が気になるところです。特段の理由はありませんが、「読書感想文の日記」ではなく、「経済評論の日記」に分類しておきます。

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