国際機関からのリポート3本ほか、増え続ける国債残高
やや旧聞に属するものも含めて、先週から今週にかけて、私の気になっている国際機関のリポートを取りまとめておきたいと思います。まず、第1に、国際通貨基金 (IMF) の Fiscal Monitor です。先週11月4日に公表されています。取り上げるのが遅れた一つの理由ですが、国内のメディアにはあまり注目されなかったような気がします。どうして国内メディアに注目されなかったのかというと、憶測するに、メインテーマが副題の通り、Fiscal Exit: From Strategy to Implementation となっていて、財政政策の出口戦略から最も遠い日本では等閑視されたのかもしれません。例えば、pdf の全文リポートの p.25 Figure 2.1. Advanced Economies: General Government Debt (2010) and Financing Needs (2011) は以下の通りです。縦軸に財政調整必要額、横軸に債務残高のGDO比を取ったグラフで、日本だけが右上に飛び離れているのが分かります。
国際機関のリポートから離れますが、この点と関連して、本日、財務省から9月末現在での「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」が発表されています。政府保証債務を別にして、国債残高は以下のテーブルの通りです。数字の単位は億円です。とっくにグロスで900兆円を超えて、今年度に入ってからの増加額は半年で25兆円を超えています。1,000兆円を目指す展開になっているような気がします。なお、一番右の「増減」欄は昨年度末、すなわち、2010年3月末に対する増減です。
区分 | 金額 | 増減 | ||
内国債 | 7,412,878 | 207,988 | ||
普通国債 | 6,138,134 | 198,417 | ||
長期国債 (10年以上) | 3,911,225 | 179,680 | ||
中期国債 (2年から5年) | 1,843,385 | 71,454 | ||
短期国債 (1年以下) | 383,524 | ▲52,716 | ||
財政投融資特別会計国債 | 1,232,799 | 10,546 | ||
長期国債 (10年以上) | 1,017,317 | 14,574 | ||
中期国債 (2年から5年) | 215,482 | ▲4,028 | ||
交付国債 | 3,824 | ▲672 | ||
出資・拠出国債 | 17,368 | ▲303 | ||
株式会社日本政策投資銀行危機対応業務国債 | 13,500 | - | ||
日本高速道路保有・債務返済機構債券承継国債 | 7,254 | - | ||
借入金 | 543,903 | ▲20,160 | ||
長期 (1年超) | 202,830 | ▲8,091 | ||
短期 (1年以下) | 341,073 | ▲12,069 | ||
政府短期証券 | 1,131,836 | 71,555 | ||
合計 | 9,088,617 | 259,382 |
第2に、いくつかの国内メディアで報じられていたように、昨日、経済開発協力機構 (OECD) から Southeast Asian Economic Outlook 2010 が発表されています。東南アジアが対象ですから、ASEAN が中心で中国やインドは含まれていません。ペーパーバックの書籍として売り出されるようです。OECD パリ本部のサイトでは html のテーブルしか見つけられなかったんですが、東京事務所のサイトにある「エグゼクティブ・サマリー」から以下の表を引用しています。東南アジア諸国の経済成長は Great Recession の前の pre-crisis の水準に復帰したと評価しています。
最後に、第3に、国際エネルギー機関 (IEA) から World Energy Outlook 2010 が発表されました。昨年の Early Excerpt は気候変動に関する章だったんですが、今年は Energy Poverty と題して国連ミレニアム開発目標に合わせてエネルギーへのアクセスを取り上げていましたので、私は特に興味ありませんでした。下のグラフは Key Graphs の最後のページから引用した Change in oil demand by region in the 450 Scenario compared with 2008 です。プレスへのプレゼン資料にも同様のグラフがあります。なお、450シナリオとは昨年からIEAが提言し始めたエネルギー政策で、大気中の温室効果ガスのCO2換算濃度450ppmに抑えることを目標にすることから命名されています。このためには、2050年までにCO2排出量を現状より50%削減することが必要で、また、これが達成されれば、気温上昇を2度程度に抑えることが出来ることから、国連や昨年のCOP15の議論とも整合的といえます。この450シナリオの他に、IEAでは、エネルギー消費がバンバン増える現状維持シナリオと、この両者の中間の新政策シナリオの3セットで示されることが多いんですが、下のグラフは450シナリオに従っていますから、エネルギー消費が逆U字型の環境クズネッツ曲線に沿って目に見えて減少する結果となっています。でも、大雑把に中国やインドなどの新興国のエネルギー消費増を米欧の先進国の減少で吸収する形であることは、グラフを見れば分かると思います。日本は明示されていませんが、一番下の Other OECD に含まれるものと考えられます。
少し遅れてしまったモノもありますし、特徴的な図表の引用だけのいつもの手抜きではありますが、国際機関のリポートをグラフも含めて世間一般のメディアよりも少し詳しく取り上げるのが私のブログの特徴だったりします。今夜はまとめて3本ピックアップしておきます。
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