« 本日の日経新聞経済教室の「経済学者アンケート」と海外情報2件 | トップページ | 米国雇用統計のグラフィックス »

2010年11月 5日 (金)

今冬の年末ボーナスは期待できるか?

11月に入って年の瀬も近づき、そろそろボーナスが気になる時期を迎えました。ということで、やや強引ながら、今夜のエントリーでは、シンクタンクなどから出そろった年末ボーナスの予想を取り上げたいと思います。思い起こせば、2年ほど前、2008年9月のリーマン・ブラザース証券の破たんに端を発する金融危機とその少し前から始まっていた景気後退のために、昨年2009年のボーナスは夏も冬も壊滅的な打撃を受けましたが、その後、今年に入って緩やかながら徐々にお給料全般が回復し始めているような実感があります。まず、厚生労働省の毎月勤労統計から今年の夏季ボーナスの額を産業別に見ると以下の通りです。

2010年夏季ボーナス額

最近の雇用統計では、医療・福祉の雇用者数の伸びが大きいんですが、少なくとも、今夏のボーナス額で見る限り、それほどお給料のいい業種ではないのかもしれません。それはさて置き、厚生労働省の毎月勤労統計に従えば、2010年夏季ボーナスは5人以上事業所の平均で前年比+1.1%増でした。で、年末ボーナスの予想がどうかというと、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名民間
(伸び率)
公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研38.3万円
(+0.8%)
59.4万円
(▲8.1%)
昨年の大幅減を埋め合わせるには至らず、水準としては1980年代前半並みにとどまる見通し
みずほ総研38.5万円
(+1.3%)
69.9万円
(▲9.3%)
前年の落ち込みに比べてプラス幅は小さい。今後弱含みが予想される個人消費を下支えするには力不足
三菱UFJリサーチ&コンサルティング39.3万円
(+3.3%)
58.6万円
(▲9.4%)
2010年冬のボーナスは、2年ぶりに増加すると予想
第一生命経済研38.6万円
(+1.5%)
57.4万円
(▲9.0%)
冬季賞与も夏季賞与同様に小幅な増加が続く可能性が高い

いつも思うことですが、ボーナスこそ官民格差が最も激しい指標であり、国家公務員になってよかったと思う瞬間です。なお、上の表の中でみずほ総研の公務員ボーナス額がとりわけ大きくなっているのは、管理職を含めているからといわれています。それから、日本総研と三菱リサーチ&コンサルティングの両社は国家公務員と地方公務員を別々に算出しており、平均は明らかではありませんので、自分の興味の対象として国家公務員で代表させています。悪しからず。

年末賞与平均金額の推移

上のグラフは表にある日本総研のリポートから引用しています。昨年の年末ボーナスが10%近く減少したのに対して、今年の増加は小幅にとどまっており、5人以上事業所でも50万円を超えていたかつての支給水準に遠く及びません。もちろん、上の4機関の年末ボーナス見通しでは、すべて、民間ボーナスが1人当たりで増加し、さらに、支給対象者数も増加すると見込まれていますので、このかけ算の結果であるボーナス支給総額は当然ながら増加します。しかし、年末ボーナスが増加するとはいえ、エコカー補助金や家電エコポイントなどの政策や制度要因で大きな変動を生じ、10-12月期にはほぼ確実にマイナスを記録するであろう個人消費を下支えするには力不足と私は受け止めています。

単にボーナスだけの問題ではないんですが、従来から繰り返して主張している通り、私はデフレからの脱却の必要条件が需給ギャップの縮小、あるいは、需要超過への逆転である一方で、十分条件は賃金の上昇であると考えています。

|

« 本日の日経新聞経済教室の「経済学者アンケート」と海外情報2件 | トップページ | 米国雇用統計のグラフィックス »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 今冬の年末ボーナスは期待できるか?:

« 本日の日経新聞経済教室の「経済学者アンケート」と海外情報2件 | トップページ | 米国雇用統計のグラフィックス »