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2010年11月26日 (金)

一時的な制度要因で下落幅が縮小した消費者物価

本日、総務省統計局から10月の消費者物価指数 (CPI) が発表されました。生鮮食品を除くいわゆるコアCPIは前年同月比で▲0.6%の下落を示しました。20か月連続のマイナスなんですが、たばこと傷害保険料という制度要因により下落幅はかなり縮小しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月消費者物価0.6%低下 20カ月連続
総務省が26日発表した10月の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動の大きい生鮮食品を除くベースで99.5となり前年同月に比べて0.6%低下した。20カ月連続のマイナスで、下落幅は前月に比べ0.5ポイント縮んだ。ただ、たばこ増税や傷害保険料の引き上げによる特殊要因が大きく、物価が継続的に落ち込むデフレの基調は変わっていない。
生鮮食品を含めた物価の総合指数は前年同月比で0.2%上昇と1年10カ月ぶりにプラスに転じた。たばこ増税に加え、夏の猛暑などによる生鮮野菜の値上がりが響いた。食料とエネルギー価格を除いた総合指数(欧米型コア)は0.8%低下。低下幅は前月より0.7ポイント縮小した。
品目別でみると、押し上げ要因となったたばこが前年同月と比べて38.6%、傷害保険料が11.8%それぞれ上がった。この2品目で指数の下落幅をおよそ0.4ポイント圧縮した。エネルギーは4.0%上昇。都市ガス代の上昇幅が拡大した。
一方で家電や耐久財の下落傾向は変わっていない。激しい値下げ競争が続くデジタル家電では、薄型テレビが前年同月比で35.3%、デジタルカメラが37.8%それぞれ低下。電気冷蔵庫など家庭用耐久財も9.9%下がった。
物価の先行指数となる東京都区部の11月のCPI(中旬速報値)は、生鮮食品を除く総合指数が前年同月比0.5%低下、食料とエネルギー価格を除いた総合指数は0.6%下がった。いずれも低下幅は先月と変わらなかった。

続いて、いつものグラフは以下の通りです。すべて前年同月比上昇率なんですが、まず、折れ線は青が生鮮食品を除く全国のコアCPI、赤が全国のコアコアCPI、グレーが東京都区部のコアCPIです。コアコアCPIでは食料とエネルギーを除いており、引用した上の記事では「欧米型コア」と呼ばれています。そして、棒グラフは全国コアCPIの前年同月比上昇率に対する寄与度を示しています。色分けは凡例の通りです。

消費者物価上昇率の推移

10月の全国については、コアCPIもコアコアCPIもともに下落幅を縮小しました。要因は最初に書いたようにタバコと傷害保険料の値上げという一時的な制度要因が大きくなっています。引用した記事にもある通り、この2品目の寄与度を合計すると約0.4%ポイントの下落幅縮小に寄与したことになります。コアCPI全体の下落幅縮小は0.5%ポイントですから、ほとんどこの2品目で尽きているんですが、それ以外にも0.1%ポイントの寄与があるのはめでたい限りです。なお、東京都区部の統計は長らく全国の先行指標になっていない気がしていたんですが、この10月は見事に先行しました。ウェイトは別にして、たばこと傷害保険料という全国一律の制度要因ですから当然かもしれません。4月には公立高校授業料無償化という、これまた全国一律の制度要因で大きく下げたCPIなんですが、徐々にデフレ脱却に向けてマイナス幅を縮小しているように見えなくもありません。ひとつのサポート要因は3月から前年同月比でプラスを続けている毎月勤労統計の給与です。下のグラフの通りです。5人以上事業所の現金給与総額、季節調整していない原系列の前年同月比上昇率の推移です。もちろん、リーマン・ショック後の大幅下落の反動の要素は大きいんですが、GDPギャップ縮小がデフレ脱却の必要条件である一方で、賃金上昇がデフレ脱却の十分条件、との私の考えは何度かこのブログでも表明したことと思います。でも、来年8月には基準改定が控えており、5年前には大きく物価上昇率が下振れした記憶が強く残っていますので、一直線でデフレ脱却とはとても思えません。

現金給与総額上昇率の推移

10月のコアCPIはやや制度要因で振れた一方で、昨日紹介したように、7-9月期1次QEに基づくGDPギャップは縮小したと試算されていますが、足元でGDPギャップに敏感な企業向けサービス価格指数 (CSPI) はマイナス幅を拡大しており、私は CSPI の動向が足元の現状をよく表しているんではないかと受け止めています。

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