映画「武士の家計簿」を見に行く
今日は、有楽町マリオンに映画を見に行きました。森田芳光監督作品になる「武士の家計簿」です。一応、原作は新潮新書から出ている『武士の家計簿』という本なんですが、この本は決して小説ではなく、学術書に近い歴史ものの新書だったりします。
マリオンではハリー・ポッターの「死の秘宝」と隣合わせの劇場で上演されており、私的な視点からはマリオンで上映されるのは「メジャーな映画」と考えていますので、それにふさわしい内容と受け止めています。お客さんはいっぱいでした。封切りから1週間ほどですから、まだまだ話題の映画なのかもしれません。心なしか観客の平均年齢が高かったような気がします。私は2階席の最終列から2番目の真ん中を取ったんですが、劇場を出るのに一苦労しました。観客の歩みが遅くてサッパリ出口に進まなかったような印象でした。
時代背景は幕末から明治初期、舞台は加賀藩の金沢です。算盤を使った会計処理の専門家、御算用者として代々加賀藩の財政に携わって来た猪山家8代目の猪山直之とその妻お駒を主人公に、猪山直之の嫡男成之のナレーションで物語は進みます。主人公の猪山直之は、飢饉の際の「お救い米」の横流しを帳簿から発見して、上司が握り潰して左遷されそうになるところを、逆に、悪事が露呈して昇進し、殿様のお側取次まで栄達します。しかし、嫡男成之の着袴の儀の折にお駒から家計の実情を知らされ、嫡男の武士としての重要な冠婚葬祭の通過儀礼の儀式でさえ「絵鯛」で済ませたり、家財道具を処分し借金の返済に充てることにより、猪山家が一家を上げて倹約生活を実行して行くとともに、嫡男成之に厳しいエリート教育を授ける、というストーリーです。
まず、会計処理の専門家と書きましたが、おばばさまが『塵劫記』を読んでひ孫の猪山成之に今でいう鶴亀算の問題を出題したりしていますので、広い意味での数学の家ともいえます。その意味で、今年の本屋大賞を受賞した『天地明察』と共通する部分があります。他方、映画の中では強調されませんでしたが、明治維新に伴って没落した武士が多い中で、大村益次郎に見出されて算盤と筆だけで海軍主計大監となった猪山成之は例外的な存在ともいえます。私が調べた範囲では、海軍主計大監は大佐クラスの奏任一等官であり、今の役所に当てはめると本省の課長クラスですから、ほぼ私と同じ職階です。私自身と同じ職階だけに、ストレートに「成功者」と言いづらいんですが、明治維新後の没落士族と比べれば世の移り変わりをうまく乗り切ったと言えそうな気がします。
この年末年始の邦画は「ヤマト」に話題が集中しているような気がしないでもないんですが、この「武士の家計簿」もよく出来たいい映画です。1人でも多くの方がご覧になるようオススメします。
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