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2010年12月17日 (金)

来年度税制と予算案について考える

広く報じられているように、昨日、来年度の税制改正大綱が閣議決定されました。大雑把に高所得家計に増税、法人税は減税となっていることはよく知られた通りです。今夜のエントリーは以下の政府およびメディアのニュースソースから簡単に取りまとめています。

まず、日経新聞のサイトから税制改正の全体像をビジュアルに示した画像は以下の通りです。

2011年度税制改正大綱のポイント

さらに、別の日経新聞のサイトの情報を基にして、私なりに家計と企業の経済主体別に増減税を取りまとめると以下の通りです。なお、明記してあるように単位は億円で平年度ベースの国税ですから、初年度ベースではなく、地方税は含まれていません。当然ながら、プラスは増税、マイナスは減税を示しています。

平年度ベースの国税、単位は億円
家計+4,900
相続税の基礎控除縮減等+2,900
給与所得控除の縮減+1,200
成年扶養控除の縮減+800
退職所得課税の見直し+100
贈与税の減税▲100
企業▲5,800
法人実効税率5%引下げ▲13,500
中小企業軽減税率3%引下げ▲700
雇用促進税制の創設等▲700
減価償却制度見直しなど課税ベース拡大+6,500
地球温暖化対策税(環境税)の導入+2,400
中小企業向け租税特別措置の見直し+200

税制だけでなく歳出も含めて考えて、家計の可処分所得に対する影響をニッセイ基礎研が「制度改正による2011・12年の家計への影響」として発表しています。このリポートにはいくつかのケースが試算されているんですが、このリポートでいうところのケース2、すなわち、4人家族で配偶者と13歳と10歳の子ども2人のモデルケースでは、年収水準別にみた可処分所得の増減は以下のグラフの通りになります。横軸は万円単位の家計の年収であり、縦軸は2010年から2011年への可処分所得の増減差で、単位は同じく万円です。オレンジ色の折れ線グラフが合計の可処分所得の差、棒グラフはその内訳で、色分けは凡例の通りです。年収1000万円前後が増減の分れ目になっていることが読み取れます。リポートの p.7 にある図表を基にプロットしました。

年収水準別にみた可処分所得の増減

先週12月10日にお示しした歳出と合わせて、来年度予算の全体像で特徴を考えると、以下の3点に要約できると私は考えています。第1に、根拠の乏しいつじつま合わせになっている点です。特に、今年度の当初予算における新規国債発行額の44.3兆円を来年度予算では下回るとの目標が設定されましたが、これは経済学的にどのような意味があるのかまったく意味不明です。「44兆円枠」を順守すれば我が国の財政はサステイナブルであるという根拠はまったく示されておらず、単なる数字合わせと受け止めているのは私だけなんでしょうか。第2に、総選挙のマニフェストとの関係が不明です。マニフェストに固執して歪みを生じている項目がある一方で、マニフェストにあったガソリン暫定税率の廃止と地球温暖化税(環境税)の導入は全く矛盾しているように見えるのは私の頭が悪いからなんでしょうか。堂々とマニフェストを見直す時期に差しかかっている気がしてなりません。第3に、消費税論議を避けることにより高齢者の逃切りを許す結果となったことです。何度もこのブログで論じた通り、高齢者への過度の優遇が財政を悪化させている一因であることは明らかなんですが、政府もメディアも何ら改善の意欲は見られません。一応、「平成23年度予算編成の基本方針」の p.7 に「平成23年半ば頃、中期財政フレームの改訂を行い、平成24年度から平成26年度までを対象とする新たな中期財政フレームを定める」とありますが、どこまで議論が進むかは不透明です。ここまで高齢者パワーの温存を許すシステムが継続されるのであれば、我が国財政は破綻に向かう可能性があると受け止めるべきです。そして、単なる仮定ではありますが、もしも財政が破綻する場合、高齢者はそのレガシー・コストを部分的にしか負わずに一部は逃げ切ってしまう可能性がますます高くなっています。

エコノミストの目から見て民主党の政策の最も不可解なところは、何らかの基準がどこからか降って湧いて来るところです。例えば、普天間は今年5月までに結論、新規国債発行額は44兆円まで、TPP参加の基本方針は来年6月に決定、などなど、普天間はともかく、エコノミストから見て根拠が不明確な数字や期限が山盛りであると受け止めています。このままでは将来の消費税増税や国債発行についても十分な国民的議論を経ることなく、民主党的な根拠のハッキリしない「落としどころ」にいつの間にか決まってしまう危険を感じてしまいます。

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