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2010年12月22日 (水)

横ばい圏内の踊り場続く輸出もほのかに明るさ

本日、財務省から11月の貿易統計が発表されました。ヘッドラインとなる貿易収支は1628億円の黒字で前年同月と比べて半減しました。市場の事前コンセンサスは5000億円近いとの見方でしたので、これを大きく下回りました。なお、輸出は前年同月比+9.1%増の5兆4411億円、輸入は+14.2%増の5兆2783億円でした。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の輸出9.1%増、9カ月ぶり拡大 貿易黒字1628億円
財務省が22日発表した11月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額は前年同月に比べ9.1%増の5兆4411億円となり、12カ月連続のプラスだった。伸び率も9カ月ぶりに拡大した。中国などアジア向けの輸出がけん引し、欧州連合(EU)向けの自動車も好調だった。ただ米国向け輸出の鈍化や円高など不安要素も残り、このまま輸出の伸びが加速するかは不透明だ。
輸入額は14.2%増の5兆2783億円。鉄鉱石など輸入素材の価格上昇に加え、家電エコポイント縮小に伴う駆け込み需要でアジアからの家電輸入が急増した。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は前年同月比55.4%減の1628億円となり、黒字幅は3カ月ぶりに減少した。為替レートは1ドル=81円39銭で前年同月比10%の円高・ドル安だった。
地域別の輸出動向ではアジア向けが前年同月に比べ13.0%増となり、10カ月ぶりに伸びが拡大した。このうち中国向けは18.3%増と好調を持続した。金属加工機械や鉄鋼の輸出がけん引した。EU向けは10.1%増で、2カ月ぶりにプラスに転じた。イタリア向けの自動車や自動車部品が大きく増えた。
一方で米国向けは前年同月比1.2%増にとどまり、伸び率は2カ月連続で縮んだ。建設用機械が増えたものの、自動車が7.5%減った。ただ自動車の輸出数量は増えていることから、財務省は「輸出額が伸び悩んだのは単価が下がった影響が大きい」とみている。
直近の動きを示す季節調整済みの前月比でみると、11月の輸出は1.7%増の微増にとどまった。大和総研チーフエコノミストの熊谷亮丸氏は「輸出は横ばい圏の推移で、今後も踊り場が続く」と予測している。

次に、貿易統計のいつものグラフは以下の通りです。上のパネルが季節調整していない原系列、下が季節調整済みの系列で、いずれも水色の折れ線グラフが輸出、赤が輸入、緑色の棒グラフがその差額である貿易収支です。

貿易統計の推移

今年に入ってから、2月の中国の天候と春節ショックを経て、輸出はほぼ横ばい圏内の動きが続いています。猛暑やエコカー補助金、家電エコポイントなどの一時的・制度的な要因とともに、この輸出の動きが生産を通じて我が国の景気動向を左右していると私は受け止めています。そして、輸出の鈍化は世界経済の鈍化と円高に起因しています。下のグラフは、一番上のパネルが金額ベースの輸出の前年同月比を数量と価格で寄与度分解し、真ん中のパネルでは OECD 先行指標と我が国の輸出のそれぞれの前年同月比を並べ、一番下のパネルで輸出と鉱工業生産指数の前年同月比伸び率をプロットしています。

輸出数量指数の推移

2点ほど付け加えると、第1に、もしも為替相場に大きな変化がないと仮定すれば、来年春先から年央くらいで我が国の輸出は再び回復軌道に復帰する可能性が高いと私は見込んでいます。割合と単純に、そのあたりから世界経済が再加速すると考えるからです。輸出にはほのかに明るさが見えます。第2に、さはさりながら、現時点までの貿易統計を見る限り、資源価格の上昇に加えて液晶テレビや航空機の増加などから輸入が増加していることもあり、今年10-12月期の外需はGDP成長率に対してマイナスの寄与を示すと私は受け止めています。GDP全体で考えて、家電エコポイントの駆込み需要が観察されるものの、エコカー補助金の打切りに伴う減産が見られ、さらに外需もマイナス寄与となれば、今年2010年10-12月期のGDP成長率はマイナスに落ち込むことはほぼ確定です。

長期的には人口動態というか、人口減少の影響により、また、短期的には金融政策の無策により、いずれにせよ、内需はサッパリ伸びそうにもありません。我が国の成長率が限界的に外需に大きく依存する状態がまだまだ続くのかもしれません。それだけに、為替の影響を重視すべきであろうと思います。

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