« 財政再建のために減速しつつ、さらに二極化する欧州経済見通し | トップページ | 最近読んだ話題のペーパーから »

2010年12月 2日 (木)

増収増益も企業活動の鈍化を示す法人企業統計調査

本日、財務省から7-9月期の法人企業統計調査の結果が発表されました。ヘッドラインとなる売上げ、営業利益、経常利益などは季節調整をしていない原系列の前年同期比では増収増益でしたが、前期に比較してその幅は縮小しており企業活動の鈍化を示す形となりました。ただし、設備投資は前年同期比で3年半振りにプラスを記録しました。製造業がけん引しています。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

設備投資3年半ぶりプラス 7-9月法人企業統計
経常利益は54%増

財務省が2日発表した7-9月期の法人企業統計によると、企業の設備投資は前年同期比5.0%増の9兆5550億円となった。輸送用機械を中心に製造業の投資が伸び、14期ぶりにプラスに転じた。売上高は6.5%、経常利益は54.1%それぞれ増え、3四半期連続の増収増益となった。ただ円高や海外経済の減速の影響で伸び幅は縮んでおり、先行きには不透明感も残っている。
今回の結果により、内閣府が9日に発表する国内総生産(GDP)の改定値で設備投資の項目が上方修正されるとの見方が強まっている。
法人企業統計は財務省が企業の収益動向や設備投資などを調べる統計で、四半期別調査では資本金1千万円以上の企業の仮決算をまとめる。財務省は7-9月期の結果について「総じて引き続き改善傾向にある」と判断している。
設備投資は参考系列として財務省が算出した季節調整値での足元の動きでも増加傾向。前期(4-6月)に比べ、1.9%増加した。実額ベースではリーマン・ショック当時の2008年7-9月期と比べて7割程度の水準にとどまっている。
産業別にみると、製造業では前年同期に比べて9.1%増で、9四半期ぶりのプラス。ハイブリッド車など輸送用機械、情報通信機械が数字を押し上げた。一方、景気の先行きの不透明感から石炭・石油業の投資は減った。非製造業は2.9%増で3期連続のプラスだった。コンビニエンスストアの出店で卸売・小売業が増えたほか、レンタカー事業者を中心に物品賃貸業が伸びた。
売上高は337兆2751億円で、3期連続の増収となった。ただ季節調整値での前期比では8.1%減となり、5四半期ぶりのマイナス。円高やアジア経済の減速による輸出の鈍化が、売上高に影を落としている。
産業別では、製造業が前年同期比で12.2%増加。自動車など輸送用機械や薄型テレビがけん引した。非製造業は4.1%のプラスだった。商社が扱う資源価格の上昇で卸売・小売業が好調だった。
経常利益は10兆7493億円となり、4期連続の増益を維持した。輸送用機械が好調だった製造業では、前年同期比で約3倍の利益を確保。非製造業では、自動車やたばこの販売増に企業のコスト削減効果も加わり19.9%増加した。

次に、報じ企業統計調査のヘッドラインをプロットしたグラフは以下の通りです。上のパネルは左軸に対応する売上高と右軸の経常利益、下はソフトウェアを除く設備投資です。単位はいずれも兆円ですが、引用した新聞記事とは異なり、季節調整済みの系列ですから、少し印象が異なるかもしれません。

法人企業統計調査の推移

引用した記事にもある通り、上のパネルの水色の折れ線で示した売上げ高は5四半期振りにマイナスを記録しています。製造業では円高や世界経済の鈍化に伴う輸出、それに、非製造業ではデフレの継続などに起因すると私は受け止めています。全体としても、前年同期で見た売上高や利益は伸び率を低下させており、企業活動が踊り場に差しかかっている可能性を示唆しています。特に、消費に関して政策や制度に起因する変動が大きく、たばこ値上げに伴う駆込み需要とその反動は影響が小さいとしても、エコカー補助金の終了と家電エコポイントの制度変更については、生産に及ぼす影響も大きく、今日発表された7-9月期の統計よりも10-12月期の統計でさらに大きな影響が観察される可能性があります。他方、設備投資は底を打って反転した印象がありますが、水準はまだかなり低いと言わざるを得ません。

労働分配率の推移

売上げや利益水準、設備投資などのヘッドラインに加えて、今回、私が注目したのは労働分配率です。上のグラフの通りですが、やや簡便に人件費を経常利益・減価償却・人件費の合計で除した比率です。いずれも季節調整済みの系列が発表されていませんので、後方4四半期移動平均を取りました。見れば一目瞭然なんですが、傾向として移動平均ではまだ下がっていますが、足元では2四半期連続で上昇しています。一昨日、雇用統計が発表された際に、恐ろしいほど緩やかな回復しか示していないと書きましたが、ひとつの背景と受け止めています。また、従来の景気循環局面と違って、極めて急激に上昇した後に、これまた、極めて急激に低下しています。雇用調整のあり方が従来と異なっている可能性が示唆されています。

最後に、来週の12月9日に発表される予定の7-9月期GDP速報2次QEに対しては、設備投資は上方修正される可能性が高いと私は受け止めています。このブログでも近く2次QE予想を取りまとめたいと考えています。

|

« 財政再建のために減速しつつ、さらに二極化する欧州経済見通し | トップページ | 最近読んだ話題のペーパーから »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/207184/37933098

この記事へのトラックバック一覧です: 増収増益も企業活動の鈍化を示す法人企業統計調査:

« 財政再建のために減速しつつ、さらに二極化する欧州経済見通し | トップページ | 最近読んだ話題のペーパーから »