全国消費実態調査2009年調査の概要から
知っている人は知っているんだと思いますが、昨年の暮れ12月24日に総務省統計局から全国消費実態調査2009年調査の「2人以上の世帯の家計収支及び貯蓄・負債に関する結果」が公表されています。消費構造などを明らかにすべく、5年に1度実施される大サンプル調査ですので、簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、いつも注目されるジニ係数ですが、厚生労働省の国民生活基礎調査とともに最近10年ほどの推移は以下の通りです。世帯別の所得のジニ係数であり、世帯人員数で調整はしていません。全国消費実態調査が5年に1度の調査である上に、国民生活基礎調査が必ずしも毎年ではないので、全国消費実態調査に合わせて近くの年の国民生活基礎調査の結果を並べるように工夫してあります。
年 | 全国消費実態調査 (統計局) | 国民生活基礎調査 (厚生労働省) |
2009 | 0.311 | n.a. |
2008 | n.a. | 0.4041 |
2004 | 0.308 | 0.3999 |
2000 | n.a. | 0.3997 |
1999 | 0.301 | n.a. |
両調査で同じ年に比較できる結果は多くないんですが、直感的に全国消費実態調査の方が国民生活基礎調査よりもジニ係数が小さくなっています。いうまでもなく、ジニ係数は不平等を計測するひとつの目安なんですが、実は、相対的な不平等だけでなく、絶対的な貧困の度合いについても全国消費実態調査の方が国民生活基礎調査よりも低くなる傾向が見られるのはエコノミストの間で広く合意されているような気がします。原因のひとつは全国消費実態調査が2人以上世帯であるのに対して、国民生活基礎調査は単身世帯を含むといった調査対象のバイアスが指摘されています。ただし、いずれの調査結果においても年を経るごとにジニ係数が上昇して、要するに、我が国で不平等が高まっているのは一致しています。
次に、今回の調査結果のひとつの特徴が上のグラフで示されています。全国消費実態調査のサイトから引用しています。すなわち、ライフステージを5種類に分けてそれぞれの1か月平均消費支出の費目構成を見ています。各ライフステージの詳細は以下の通りです。
- 第1ステージ: 夫婦のみの世帯 (夫30歳未満)
- 第2ステージ: 夫婦と子供が2人の世帯 (長子が未就学児)
- 第3ステージ: 夫婦と子供が2人の世帯 (長子が中学生)
- 第4ステージ: 夫婦と子供が2人の世帯 (長子が大学生・大学院生)
- 第5ステージ:夫婦のみの世帯 (夫60歳以上)
持ち家率が低いことが主たる原因なのでしょうが、第1ステージでは「住居」の比率が高く、その後、子供が成長するに従って「食料」や「教育」がウェイトを高めます。「食料」の比率は第3ステージでピークをつけます。実は、我が家はこのステージに位置していたりします。「教育」は第4ステージでピークとなった後、第5ステージではほぼゼロに激減します。また、計数表の引用はしませんが、第4ステージでは消費支出が可処分所得を超えて、平均消費性向は1を超えます。もっとも、第4ステージほど大きくはありませんが、第5ステージでも引退世代に近いんでしょうから平均消費性向は1を超えます。
この全国消費実態調査はいくつか非常に興味深い結果を提供してくれています。私はマクロ経済のエコノミストですが、マイクロな情報に興味ある向きには情報の宝庫かもしれません。
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