世銀 Grobal Economic Prospect と機械受注統計から
昨日、世銀から Global Economic Prospect, Winter 2011 が発表されました。昨年夏から年2回発表されるようになった世銀の世界経済見通しです。pdf の全文リポートも入手できます。私の認識からすれば、世銀は国際協力の機関であり、経済開発協力機構 (OECD) や国際通貨基金 (IMF) の経済見通しほどエコノミストの間で重視されているわけではありませんが、それなりの注目を集めることも事実であり、一応、簡単に見ておきたいと思います。
まず、世界経済の成長率は2010年の+3.9%から2011年は+3.3%にやや減速するものの、2012年には3.6%に少し加速すると見通しています。まず、成長率見通しの総括表は以下の通りです。もっとも、縮小し過ぎて実用に適しませんから、本邦初公開の試みとして、下の画像をクリックすれば別画面でリポートの p.4 Table 1 The Global Outlook in summary の1ページだけの pdf ファイルが見られるようにしてみました。
しかしながら、アクロバット・リーダーはかなり普及しているというものの、このままでは、やや不親切な気もしますので、私の関心の範囲で主要国の成長率見通しを抜き出して表を作成しました。以下の通りです。当然ながら、成長率ですから単位はパーセントであり、カッコ内は昨年6月時点での世銀見通しです。なお、どうでもいいことですが、世銀の見通しの場合、国際通貨基金 (IMF) と違って、ひとつの表でかなり多くの国を収めた便利な総括表は存在しません。地域別の Annex を見る必要があります。例えば、アジアの主要な途上国・新興国はリポートの p.75 Table R1.4 East Asia and Pacific country forecasts に出て来ます。
2010 | 2011 | 2012 | |
世界 | +3.9 (+3.3) | +3.3 (+3.3) | +3.6 (+3.5) |
世界 (PPP) | +4.8 (+4.2) | +4.1 (+4.0) | +4.4 (+4.3) |
OECD | +2.7 (+2.2) | +2.3 (+2.3) | +2.6 (+2.6) |
日本 | +4.4 (+2.5) | +1.8 (+2.1) | +2.0 (+2.2) |
米国 | +2.8 (+3.3) | +2.8 (+2.9) | +2.9 (+3.0) |
ユーロ圏 | +1.7 (+0.7) | +1.4 (+1.3) | +2.0 (+1.8) |
中国 | +10.0 (+9.5) | +8.7 (+8.5) | +8.4 (+8.2) |
インド | +9.5 (+8.2) | +8.4 (+8.7) | +8.7 (+8.2) |
日本は2011年+1.8%成長の後、2012年は+2.0%と見込まれています。カッコ内の昨年6月時点の見通しから少し下方修正されています。米国よりかなり低く、OECD 平均をやや下回る成長率となっています。中国やインドと成長率を比べるのはもはや何の意味もありません。先進国と途上国・新興国で景気回復のテンポがまるっきり違っているからです。先進国の中でも日欧は成長率が低くなっています。
この日欧の成長率をさらに押し下げる要因があります。財政再建です。世銀見通しでは、財政再建そのものの下押し圧力に投資家心理の影響も加味して、成長率へのインパクトを推計しています。上の表の通り、リポートの p.18 Table 4 Estimated impact of increased fiscal consolidation and investor nervousness を引用しています。先進国で▲1%程度の推計結果となっています。想像するに、いろいろと差障りがあって個別の国についての推計結果は出していないんでしょうが、私の方で試算したわけではないものの、日本で本格的に財政再建に取り組めば、▲1%くらいの成長率への影響では済まないような気もします。
世銀見通しとは別件になりますが、本日、内閣府から11月の機械受注統計の結果が発表されました。統計のヘッドラインであり、民間設備投資の先行指標である季節調整済み系列の船舶と電力を除く民需の受注額は前月比▲3.0%減の7230億円と、3か月連続の減少を記録しました。いつものグラフは上の通りです。上のパネルから順に、船舶と電力を除く民需のいわゆるコア機械受注とその後方6か月移動平均、及び、船舶と電力に加えて携帯電話も除く民需のいわゆるコアコア機械受注の推移、真ん中のパネルは外需、製造業、船舶を除く非製造業の需要者別の推移、一番下のパネルは船舶を除く機械受注の受注残高とそれを販売額で除した手持ち月数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。
市場の事前コンセンサスは前月比で+2%かそれに近い伸びだったことから、ややネガティブな印象をもって受け止められています。特に、製造業では季節調整済みの前月比で2ケタ増だったにもかかわらず、非製造業では逆に2ケタ減であったことから、内閣府では基調判断を「持ち直している」から「持ち直し傾向にあるものの、非製造業で弱い動きが見られる」に変更しています。現時点で、昨夜のエントリーで書いたように消費に明るさが見え始めた一方で、機械受注に関しては踊り場から脱したとは見られず、極めて緩やかな成長のために雇用と同じように要素需要がまだ活発になっていないと受け止めています。設備投資も今年いっぱいくらいは拡大にはつながらず、雇用や設備への要素需要が本格化するのはもう少し先なのかもしれません。
今夜のエントリーは2つのテーマを同時に取り上げて、やや中途半端になったかもしれません。反省しています。
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