政府と日銀、ついでに IMF の経済見通しを見比べる
昨日、「平成23年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」、平たくいえば政府経済見通しが閣議決定され、また、昨日から開催されていた日銀金融政策決定会合では、本日、政策金利を現状の0-0.1%で据え置き、金融資産を買い入れのための5兆円基金も現状維持すると決定して終了するとともに、「展望リポート」についても中間評価を実施し、先行き経済見通しについて発表されたステートメントの p.3 に発表されています。ついでながら、国際通貨基金 (IMF) も「世界経済見通し改定」 World Economic Outlook Update を明らかにしています。まず、これらの来年度2011年度の実質成長率と物価の見通しを見比べると以下の表の通りです。ただし、IMF だけは財政年度ではなく暦年となっています。今夜のエントリーではタイトル通り、IMF はあくまで参考とし、政府と日銀の見通しを中心に簡単に見ておきたいと思います。
政府 | 日銀 | IMF | |
実質成長率 | +1.5 | +1.6 | +1.6 |
国内企業物価 | +0.4 | +1.0 | n.a. |
消費者物価 | ±0.0 | +0.3 |
実質成長率については IMF まで含めて考えても0.1%ポイントの差ですが、物価上昇率については政府と日銀でやや大きな差が見られます。この差を生じるいくつかの要因は、政府経済見通しの p.9 の注や日銀が発表したステートメントの p.3 の注に見られます。しかし、注意すべきなのは高校実質無償化の影響です。消費者物価上昇率に対して▲0.5%ポイントくらいの寄与度を持っていますが、2011年4月以降の統計には影響を与えません。また、政府見通しは消費者物価総合であり、日銀は生鮮食品を除いていますから、少しベースが異なります。2010年度は天候不順の影響で生鮮食品が高騰しましたので、反動で来年は下がる可能性が高いと考えられ、生鮮食品を除く日銀のベースでは高めに出る可能性も排除できません。しかし、もっとも大きい差は商品市況と消費者物価の基準改定に起因するのではないかと私は考えています。商品市況については、政府経済見通しでは2011年度中の原油輸入価格をバレル当たり86.6ドル、為替相場は1ドル82.4円を前提とする旨明示していますが、日銀は明瞭に示していません。政府見通しよりも商品市況が高くなる見通しを日銀が持っている可能性があります。また、基準改定については、例えば、第一生命経済研究所のリポートによれば、▲0.7%ポイントの下方改定が見込まれています。特に薄型テレビの影響が強調されています。今年8月の消費者物価の発表から基準年は2010年になります。しかし、日銀はこれを無視している旨を明記しています。当然ながら、物価を司る金融政策の目標変数も、その時の商品市況を前提としつつ2010年基準になります。基準改定については5年前に、日銀がやや混乱をもたらすような情報を流したため、今回は自粛しているのかもしれませんが、商品市況や基準改定をフォワードルッキングに視野に収めた金融政策運営が必要であることは言うまでもありません。
景気判断として、「景気改善テンポの鈍化した状況から徐々に脱し、緩やかな回復経路に復していく」という日銀の見方は私も支持するんですが、商品市況や基準改定などを恣意的に盛り込んだり、盛り込まなかったりする政策運営は国民に支持されるかどうか、いささか怪しいと私は受け止めています。
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