明日の新成長戦略実現会議に提出される財政試算についての予備的メモ
いくつかのメディアで、明日開催される新成長戦略実現会議に提出される予定の「経済財政に関する中長期試算」(仮称)の内容がリークされています。私が見た範囲は読売新聞と日経新聞なんですが、サイトへのリンクは出現順に以下の通りです。なお、今夜のエントリーでリンクを張ったサイトを閲覧するためには何らかの無料登録を要求されるかもしれません。悪しからず。
特に、後の方の日経新聞から2020年度までの基礎的財政収支の目標と見通しのグラフを引用すると以下の通りです。また、「経済財政に関する中長期試算」のリークではないんですが、Financial Times では与謝野大臣へのインタビューを基に、"Japan hits 'critical point' on state debt" と題する記事も見かけました。海外メディアでも日本の財政再建に注目しているのかもしれません。
現在の政府は中長期的な財政運営について、基礎的財政収支 primary balance の赤字を2015年度までに2010年度比で半減し、さらに、2020年度に黒字化することを目標にしており、これは最大野党の自民党も同様です。読売新聞と日経新聞にほぼ共通しているのは、現状のままでは2020年度において基礎的財政収支は大幅な赤字を続け、黒字化するためには消費税率に引き直して8-9%の引上げでは不足する、という点です。一昨日のエントリーで国際通貨基金 (IMF) のオススメは消費税率15パーセントらしいと書きましたが、2020年度に基礎的財政収支を黒字化するための消費税率にほぼジャストミートしています。
私が気にかかっているのは、内閣府などの財政試算を一昨年あたりから振り返って、時を追って財政再建所要額が増加しているように見えることです。マンキュー教授らのペーパーに "The Deficit Gamble" というのがあって、公債残高の対GDP比の膨張を将来へ先送りすることが不可能と判断されるレベルまで拡大する確率を正規乱数の発生によるモンテカルロ法で推計していますが、直観的な私の感触ながら、日本についてはこの限界が近づいているのかもしれません。
私自身の予備的メモですので、一昨年くらいからの内閣府による中長期的な財政試算をリンクとともにアーカイブしておきたいと思います。なお、最後を除いてリンク先はすべて pdf ファイルとなっています。また、最後のリンクは内閣府ではなく、毎年の財務省の後年度影響試算です。
- 2009年1月16日 「経済財政の中長期方針と10年展望比較試算」
- 2009年6月23日 「中長期の道ゆきを考えるための機械的試算」
- 2010年2月5日 「国・地方の基礎的財政収支・財政収支の推計」
- 2010年6月22日 「経済財政の中長期試算」
- 後年度影響試算
なお、内閣府の最新の試算である「経済財政の中長期試算」について、2011年度の予算編成との関係で時事通信のサイトから図解を引用すると以下の通りです。ただし、これは国債発行を44.3兆円に抑えることを前提にすれば、2011年度予算の財源不足額が5兆円を超えるとの図解であり、基礎的財政収支と直接の関係を示したものではありません。
最後に、いろいろと試算を並べてしまいましたが、昨年度の参議院財政金融委員会調査室から三菱UFJリサーチ&コンサルティングへの委託調査の成果物で、「政府の経済・財政に関する各種試算の整合性の検証についての調査」と題するリポートが明らかにされています。p.87 から財政試算、p.94 からプライマリーバランスをそれぞれ取り上げています。整合性に関する結論は明瞭ではありません。何らご参考まで。
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