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2011年1月14日 (金)

輸入財や素原材料から上昇が波及しつつある企業物価をどう見るか?

本日、日銀から12月の企業物価指数 (CGPI) が発表されました。国内企業物価の前年同月比上昇率は1.2%を記録し、原油価格がが高騰していた2008年以来の高い上昇率となりました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の企業物価1.2%上昇 2年1カ月ぶり高水準
日銀が14日発表した昨年12月の国内企業物価指数(2005年=100、速報値)は103.4となり、前年同月に比べ1.2%上昇した。上昇は3カ月連続で、上げ幅は08年11月(2.4%)以来2年1カ月ぶりの大きさだった。新興国の需要増などを反映した資源価格の上昇で、国内の金属や石油の関連製品の値上がりが目立った。
企業物価指数は企業が出荷や卸売り段階で相互にやり取りするモノの価格水準を示す。昨年12月には資源高の影響を受けやすい金属関係で、スクラップ類(上昇率32.5%)、非鉄金属(同10.9%)、鉄鋼(同10.2%)がいずれも2ケタ上昇。石油・石炭製品も7.8%高くなった。
一方、価格競争が激しい製品には値下げ圧力が継続。情報通信機器が5.8%、電気機器が3.9%、電子部品・デバイスが3.7%それぞれ下落した。輸送用機器も1.3%下がった。調査対象の855品目のうち、低下した品目数の割合は42.8%で、上昇した品目数の割合(37.4%)を上回った。
経済全体でみれば、幅広い分野で価格が持続的に下落するデフレ圧力は根強く、日銀は「資源価格高が企業物価の上昇を促す流れが続くかを注視していく」としている。
同時に発表した10年の国内企業物価指数は102.8となり、前年比0.2%低下した。景気の持ち直しや資源高で、低下幅は過去最大だった09年(5.2%)から縮小したが、2年連続で前年比マイナスだった。

企業物価指数の前年同月比上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネルは国内物価と輸出入物価に分けたグラフ、下は需要段階に分けた財別のグラフとなっています。

企業物価の推移

国内企業物価の上昇は3か月連続となり、12月はとうとう1%を超えました。商品価格の上昇などに伴う輸入物価がけん引する物価上昇になっています。まだまだデフレ圧力は根強いながら、下のパネルから明らかですが、素原材料の上昇が中間財に波及し、そろそろ最終財もプラスに転じようかというタイミングと見受けられます。少なくとも国内の需給ギャップに応じた物価上昇ではないと私は受け止めています。というのは、下のグラフは内閣府の「今週の指標」No.973から引用しているんですが、2010年7-9月期でもまだGDPギャップは▲3%以上残っている上に、10-12月期はマイナス成長が予測されていて、GDPギャップのマイナス幅が拡大する可能性が高いからです。

GDPギャップの推移

他方、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数からみた日本経済」(2010年6月) に従えば、企業物価指数 (CGPI) ではなく、企業サービス価格指数 (CSPI) が需給ギャップとの相関が高いと計測されています。すなわち、景気循環に対して敏感に動く傾向が強いということになります。もっとも、最近のサンプルではこの傾向は弱まっているものの、相対的に CSPI が最も景気に感応的であることに変わりありません。

需給ギャップとの相関

しかし、各国中央銀行はそれぞれの観点から、金融政策運営上で最も重視する物価指標を以下の通り明らかにしています。日銀レビュー「金融政策の説明に使われている物価指数」(2006年2月) から引用しています。我が国でも、「エネルギーと食料を除く欧米流コア消費者物価」と称される指標が発表されていますが、実は、英国も含めて欧州ではヘッドラインの総合の消費者物価が金融政策の指標とされていたりします。

各国中央銀行が金融政策運営の説明に用いている物価指標

今日発表された企業物価指数からエントリーを始めて、微妙に外れて行っている気がしないでもありません。でも、ついでながら、中央銀行がターゲットにすべき物価指標について、主としてインフレーション・ターゲッティングの場合なんですが、理論的実証的に明らかにしたマンキュー教授らの論文へのリファレンスを置いておきます。ハーバード大学や NBER のワーキングペーパーでも利用可能だと思います。

企業物価とは関係もなく、最後のグラフです。先月12月13日付けの Heartland Monitor Poll を取り上げたエントリーにおいて、「最強の経済大国は中国」との調査結果をお示ししましたが、一昨日1月12日に Pew Research Center for the People & the Press から "Strengthen Ties with China, But Get Tough on Trade: Public's Global Focus Turns from Europe to Asia" と題する同様の調査結果が発表されています。米国民は「経済大国は中国、軍事大国は米国」と考えているようです。いろんな意味で欧州の存在感が低下しているのかもしれません。

China Seen as Leading Economic Power; U.S. as Military Power

で、日本の存在感はというと、今日、小幅ながら内閣改造がありました。ほとんどの役所は少なくとも大臣の変更はなさそうなんですが、経済官庁の一部と官邸と国土交通省や法務省などでは大臣が交代しました。我が国の存在感は高まるんでしょうか。下の新内閣の名簿は朝日新聞のサイトから引用しています。

新内閣の顔ぶれ

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