円高の影響が表われ始めた経常収支と先行き消費の下げ止まりを示唆する景気ウォッチャー
本日、財務省から経常収支を含む11月の国際収支が、また、内閣府から12月の景気ウォッチャー調査の結果が、それぞれ発表されました。ヘッドラインとなる統計は、まず、国際収支について季節調整していない原系列で見て、経常収支が+9,262億円の黒字で、前年同月比▲1,731億円の黒字幅縮小、また、経常収支の主要なコンポーネントのひとつである貿易収支も+2,597億円の黒字で、前年同月比▲2,266億円の黒字幅縮小となりました。季節調整済みの系列を見ると、経常収支が+11,451億円、貿易収支が+2060億円のそれぞれ黒字ながら、前月比で大きく黒字幅を縮小しています。景気ウォッチャー調査は2か月連続の改善で現状判断DIが45.1となり、前月比1.5ポイント上昇し、基調判断が上方修正されました。いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
11月の経常黒字15%減 円高で輸出鈍化鮮明に
財務省が12日発表した2010年11月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支は9262億円の黒字になった。円高を背景に輸出の伸びが鈍ったことで、経常黒字幅は前年同月比で15.7%縮小した。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2597億円の黒字で、前年同月比で46.6%減少した。輸出額は9.3%増の5兆1459億円。中国や欧州向けの金属加工機械や鉄鋼が好調だったが、30%前後の伸び率が続いた10年前半と比べると鈍化している。
輸入額は15.7%増の5兆8862億円。鉄鉱石や液化天然ガスが大きく伸びたほか、エコポイントの効果で中国などからの薄型テレビの輸入が3倍に急増した。
投資による稼ぎを示す所得収支は8229億円の黒字になり、13.0%増加した。世界的な低金利で外国債券の利子収入が伸び悩む一方、海外子会社の業績改善が所得収支を押し上げた。旅行や輸送などのサービス収支は993億円の赤字。海外旅行客の増加などで赤字幅が拡大した。
12月の街角景気、2カ月連続改善 判断も9カ月ぶり上方修正
内閣府が12日発表した12月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数は前月比1.5ポイント上昇の45.1と、2カ月連続で改善した。年末やクリスマス商戦で消費に下げ止まり感がみられたほか、海外での設備投資増加で一部の企業の受注が増えたことを反映した。
2-3カ月先の先行き判断指数は2.5ポイント上昇の43.9と2カ月連続で改善。消費回復継続への期待などから指数を構成する家計、企業、雇用すべての指数が上昇した。
内閣府は基調判断を「景気は、このところ持ち直しの動きがみられる」と9カ月ぶりに上方修正した。エコカー補助金や家電エコポイントなどの政策効果の反動減がみられるなか、現状・先行きとも指数が2カ月連続で改善したことを評価した。前月は「景気は、これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」だった。
調査は景気に敏感な小売業関係者など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や、2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価してもらい、指数化する。今回の調査期間は12月25日から月末まで。
次に経常収支の推移を示すグラフは以下の通りです。月次の季節調整済みの経常収支の統計が青い折れ線グラフで示してあり、同じく季節調整済みの各コンポーネントが棒グラフで積み上げられています。色分けは凡例にある通りです。
細かいことですが、昨年10月11月と経常収支は黒字幅を縮小させ、特に、11月については貿易収支の黒字縮小が大きくなっているのが見て取れます。引用した記事にもある通り、11月は家電エコポイントの制度変更に伴う駆込み需要が発生し、中国などからテレビの輸入が増加したり、あるいは、世界的な商品市況の上昇による原油などの資源輸入が増加しましたが、同時に、為替相場が円高に振れたために輸出が鈍化したことも忘れるべきではありません。下のグラフは対ドルと対ユーロの円レートの推移を示しています。一昨年の政権交代からほぼ一貫して円高が進んでいるのが読み取れます。私のこのブログでも、先行き景気動向の最大のリスクは為替であるとたびたび指摘している通りです。
次に、景気ウォッチャー調査は下のグラフの通り2か月連続の改善を示し、12月の現状判断DIは45.1となり、前月比1.5ポイント上昇しました。また、先行き判断DIも前月比2.5ポイント上昇の43.9となりました。内閣府では基調判断を、前月の「景気は、これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」から、「景気は、このところ持ち直しの動きがみられる」に上方修正しました。上方修正は9か月振りだそうです。特に家計部門で、家電エコポイント制度の変更に伴う11月の駆込み需要の反動による落ち込みが12月に見られた一方で、クリスマス・年末商戦は順調で、消費動向に下げ止まりの期待が持たれています。今回調査の範囲外かもしれませんが、私の実感と報道を見る限りではお正月の初売りなどもまずまずだった印象を持っています。
消費は家電エコポイントの制度変更や終了とともにやや不可解な要因で動く可能性がありますが、今年はお正月から消費には明るさが見えるように私は感じています。繰返しになりますが、最も注意すべきリスクファクターは為替ではなかろうかと考えています。
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